少し前になりますが、Facebookが上場しましたね。Facebookの価値がどの程度あるのか、というところが話題になるんだけど、本当のところ、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアは、社会的にどのような役に立っているんだろうか。
単なるコミュニケーションツールであり、飽きられれば衰退する、という繰り返しのひとつなんじゃないか、という意見も聞いたりするわけで(僕は知らないけど、ニフティサーブとかよく引き合いに出されたり)。TwitterやFacebookがなくなっても別に困らない、という人もいるし。(あまり使わない人ほど、「TwitterとかFacebookの社会的価値やビジネス価値がわからない」という言葉を聞いたりする、というのは偏見だろうか。)
っていうわけで、ソーシャルメディアのビジネスモデルを考えてみますよ。
まずはTwitterの収益構造
Twitterはやっと最近収益化に成功してきている。ここらへんの記事を読めばわかる。
Twitterの収益源 | rionaoki.net
ぽんぬれぽーと: 収益から見るTwitter
調査: Twitterの収益は2013年には4億ドルに達する | ブログヘラルド
大きく3つの柱があって、広告ツイート、データコネクト、有料アカウント。この3つの割合はよくわからないけど、記事から推測するに、広告収入のインパクトが大きいようだ。
次はFacebookの収益構造
Facebookの2011年の売り上げの85%を広告収入から、15%を手数料収入から得ていることが分かった。
上場申請書で明らかになったFacebookの収益構造 上場後の戦略はどうなる?【湯川】 : TechWave
Facebookは広告が大半。個人に紐付く情報を持っているので、それと広告をマッチングさせるというところだろう。
クックパッドだって同じなんじゃないの?
TwitterやFacebookを考えてみたけど、例えばクックパッドだって同じような位置づけになるんじゃないの?なんでTwitterやFacebookと比較されないんだろ。というわけで、軽く調べてみた。
営業利益率50%! クックパッドの「七つの秘密」 : プレジデント(プレジデント社)
クックパッドの“儲ける仕組み”をピクト図解してみると…|「ピクト図解」で有望株を見抜け!|ダイヤモンド・オンライン
収益構造は広告配信、企業コンサルティング、有料会員の3つ。
面白いのは、企業コンサルティングと有料会員の比率が結構高いこと。つまり、TwitterやFacebookのような広告モデルに高く依存する体質でもないってことだね。
ソーシャルメディアの収益モデルとは
TwitterとFacebookとクックパッドを取り上げたけど、これらから収益モデルを大きく分類すると、
- プラットフォームに広告を配信する
- 利便性を向上させた有料アカウントを設ける
- 蓄積したデータ、あるいはデータから導かれる分析結果を売る
というところだろうか。これを実現するためには、
- 特徴を持った大量のデータを獲得する
- プラットフォームに対する高いエンゲージメントを実現する
という2点が必要になる。1点目のデータ確保だけでいえば、日経とかシンクタンクのように取材や研究で蓄積したデータを売ることが商売のメインになる。
けれど、ソーシャルメディアの場合、2点目の特徴も合わせ持っているので、広告メディアとしても見ることができる。で、こういうビジネスが廃れるのか、といえば、この2点が失われるとあっという間に廃れることになると思う。
Twitterでいえば、Twitterよりリアルタイム性が高く、操作性などの面でより高いエンゲージメントを実現するようなサービスが現れればTwitterに広告を出稿する理由はなくなる。mixiがFacebookの登場によって存在感が小さくなっていったのも、獲得する情報が似通っていて、かつFacebookの方がエンゲージメントが高かったからだろうと思う。
あるいは、他にもっと面白い情報が登場して、Twitterの緩いソーシャル性とリアルタイム性に価値が感じられなくなると、危うくなるだろう。ここらへんは、マスメディアがその存在意義を相対的に低下させたように、他のメディア・サービスが登場し、そのサービスが持っている情報の優位性が失われると、あっという間に衰退することになる。
誰のためのソーシャルメディアか
これは卵が先か鶏が先か、ということなんだろうけど、ソーシャルメディアにとってはデータを蓄積することと、人が高い頻度で訪問してくれることが重要なわけで、ビジネス上の価値の源泉もそこにある。(そこからどう収益化していくのか、というのは別の問題として大きいのだろうけど。)
僕は、ソーシャルメディアが革命のきっかけになったり、新しい情報取得の媒体になったり、社会的なコミュニケーションコストを劇的に下げている、という価値も認めているけれど、それはやはりビジネス上の価値で考えれば二番目に来る話なのだと思う。
ビジネスとして最も初めに来るのは、「特徴あるデータをどう集めるか」であり、その次に「どうやっていろんな人に使ってもらえるサービスにするか」だと思うのだ。
というわけで、僕はTwitterもFacebookも使うし楽しいけれど、ビジネス上の価値でいえば、情報の種類が限定的で、かつほとんど劣化しないことを活かして、コンサルティングサービスにまで結びつけているクックパッドの方が、ライバルに対しての競争力も強いし、長く生き残るんじゃないかと魅力的に映るわけです。
上阪 徹 角川SSコミュニケーションズ 2009-05-07