ゲリラ豪雨はなぜ増えた?ゲリラ豪雨に対する原因・対策・予測の現状

最近ゲリラ豪雨と言う言葉が当たり前のように聞かれるようになりましたが、実際に統計的にはどうなっているのか知りたくてちょっと調べてみました。

ゲリラ豪雨の定義

そもそも、「ゲリラ豪雨」というのはどういう状態ととらえればよいのでしょうか。まずWikipediaをみてみると、
ゲリラ豪雨(ゲリラごうう)は、集中豪雨の一種。正式な気象用語ではなく、突発的で天気予報による正確な予測が困難な局地的大雨[1]を、軍事のゲリラ(奇襲を多用する非正規部隊)にたとえたもの。従来から使用されていた驟雨(にわか雨)や集中豪雨、夕立といった言葉をマスメディアなどが代用した表現で、2008年には新語・流行語大賞トップ10に選出されている。局地豪雨、ゲリラ雨、ゲリラ雷雨などの呼び方もある。 
ゲリラ豪雨 – Wikipediaから引用
ということで、正式な気象用語ではないそうです。 コトバンクのブリタニカ国際大百科事典によると、短時間に50mmをこえる豪雨という表現が出てきます。
約 10~数十km2範囲の狭い地域に,時間雨量が 50mmをこえるような豪雨が短時間に降る現象。集中豪雨の一形態。予測が難しく,局地的で突発的に襲うためゲリラという名がつけられ,2008年夏頃からよく使われるようになった。 
ゲリラ豪雨(ゲリラごうう)とは – コトバンクから引用
なので、短時間に局所的に多く降る雨を「ゲリラ豪雨」と呼ぶんだということは理解できました。  

実際にゲリラ豪雨は増えているのか

総務省のワーキンググループに、まさに該当するレポートがありました。 総務省|情報通信審議会|情報通信審議会 情報通信技術分科会 陸上無線通信委員会 気象レーダー作業班 X帯サブ・ワーキング・グループ(第2回)   ウェザーニューズが出しているレポートです。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000526164.pdf   「時間降水量50㎜以上の「非常に激しい雨」はここ30年で約1.3倍に増加」とあります。
(出所:株式会社ウェザーニューズ「最近の気象現象の変化について」)   「時間降水量80㎜以上の「猛烈な雨」もここ30年で約1.7倍に増加」だそうです。
(出所:株式会社ウェザーニューズ「最近の気象現象の変化について」)   ということで、統計的にみれば短時間の大雨が増えているようです。レポートをもう少し読むと、エリアによっても異なると書いてあります。
(出所:株式会社ウェザーニューズ「最近の気象現象の変化について」)   全国一律で増加しているわけでなく、地理的な差異もあるようです。  

ゲリラ豪雨が増える要因は?

先ほどのレポートをみても、なぜ増えているのかという根本原因は触れられていませんでした。毎年、台風の発生状況によっても変動するようです。 気象予報士の方が書いたこちらの記事を読むと、ヒートアイランド現象などの温暖化が原因のひとつであると書かれています。
なぜ、大雨が増えているのでしょうか。 その理由は、気候変動やヒートアイランド現象など、複数の原因が重なって、日本の気温が上昇傾向にあることと関係があります。 そもそも、雨というのは、空気中に含まれる水が落下したものです。空気中の水蒸気が上空で冷やされて水や氷の粒になったものが雲で、雲の粒が大きくなって落下すると雨になります(雲の粒が氷の場合は、落下する途中で溶けると雨に、溶けない場合は雪になります)。 ここで、気温が高くなると、空気中に含むことのできる水蒸気の量が増えます。だから、以前よりも気温が高くなれば、ひとつの雲からより大量の雨を降らすことが可能になるのです。これが、年々大雨がひどくなっている理由だと考えられています。 
「ゲリラ豪雨」が増えているのは、なぜなのか | 天気・天候 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準から引用
  こちらの記事を読んでも、大雨が増えた原因のひとつに地球温暖化が挙げられています。 豪雨の原因は「線状降水帯」/積乱雲が発生、滞留して同じ場所に大量の雨 | ハフポスト   さらに、将来的には雨の回数が減り、一回あたりの量が増えるようになる、と予測されています。
大雨に関しては、「1時間降水量が50mm以上(滝のように降る雨)の発生回数が全国平均で2倍以上になる」とした。逆に「雨の降らない日数は全国的に増える」ことになりそうだ。雨の回数は減り、降る時は一度に大量の「ドカ降り」になるということだ。 
豪雨の原因は「線状降水帯」/積乱雲が発生、滞留して同じ場所に大量の雨 | ハフポストから引用

対策を進める国や自治体

雨が局所的に多く降ることと、都市化が進展してきたことで、被害も大きくなっています。特に、河川が氾濫して浸水するような被害に加えて、「内水氾濫」と呼ばれる被害が増えているということです。
そもそも内水氾濫とは何かをひとことで言うと、市街地などに降った雨が排水路や下水管の雨水処理能力を超えた際や、雨で川の水位が上昇して市街地などの水を川に排出することができなくなった際に、市街地などに水が溢れてしまう浸水害のことです。 
外水氾濫と内水氾濫とは?それぞれの違いと水害について | 防災テックから引用
  この場合、河川の近くでなくても被害が発生します。実際、2018年7月の西日本豪雨では、内水被害が多く発生していることがレポートされています。   平成30年7月豪雨と浸水対策について
http://www.zenken.com/kensyuu/kousyuukai/H30/645/645_nakata.pdf     国土交通省でも、「100mm/h安心プラン」というものを設け、1時間100mmの降雨でも耐えられるための対策を推進しています。 河川:100mm/h安心プラン – 国土交通省水管理・国土保全局   河川だけでなく、下水・調整池など、内水対策も含め幅広い内容になっているようです。 ゲリラ豪雨・高潮等による水害・土砂災害への緊急的対応の強化
https://www.mlit.go.jp/common/000049305.pdf それだけ対策が必要・重要になっているということでしょう。  

ゲリラ豪雨を予測するAI

では、ゲリラ豪雨の予測はどうなっているかといえば、AIを活用するなど進んでいるところもあるようです。 ゲリラ豪雨の予測サービスの今に迫る【ゲリラ豪雨について調べてみた(2)】 | Park blog   最初に紹介されている「MP-PAWR」については、こちらの記事にも詳しいです。 もうゲリラ豪雨も怖くない メールで「豪雨の直前」通知が来た(坪井 淳子) | ブルーバックス | 講談社(1/3)   ウェザーニューズは、1万人のユーザーがアップする画像、雨雲レーダーの画像解析、物理方程式の組み合わせによって、きめ細かい予測を行っています。 ゲリラ豪雨を9割捕捉、精度支えるデータの源は“人” 予測技術やサービスも進歩しているので、もっと当たり前のように使われていくのかもしれません。  

まとめ

  • 短時間の大雨は増えている
  • 原因は複合的ではあるが、温暖化・ヒートアイランド現象もひとつの要因
  • 河川の氾濫だけでなく内水氾濫も増えており、行政も対策を打ち出している
  • 最新の観測装置やAI技術等によって予測精度も向上中

【書評】すべての教育は「洗脳」である~21世紀の脱・学校論~

ホリエモンが面白い本を出していました。

 

ホリエモンがなぜ教育の本を書くのか?と最初は不思議に思いましたが、教育の観点から今の時代に求められる価値観や考え方を説いていて、とてもポジティブな内容になっていました。

 

教育の構造は、社会の構造から導きだされている

今の人々の価値観を形成するにあたって、教育というのは大きな要因となっています。その教育システムというのは、どういう意味を持っているのでしょうか。

全体を一括して教育する仕組みは、近代から始まったもので、その教育内容は時代の要請に基づいて形成されています。当然といえば当然ですね。

社会に出るのに必要な、知識や立ち振る舞いを教えるのが学校の役割です。日本では様々な知識に加え、道徳や団体行動、忍耐などの重要性を教えられる印象があります。社会に出たら会社や上司の言うことを聞いて数年は我慢しなければいけない、などなど。

結局これは、これまでの社会で扱いやすい人を量産するのが目的になっており、ある意味合理的な時代もあったと思うのですが、今の時代では合わなくなっているんじゃないかというのが、本書の主旨の一つであります。

最近は同質的な人間が協力して集団の力を発揮するのではなく、人と違うことを考えて状況を打開できるイノベーティブな人間が世界中で求められています。イノベーティブなことを考え実行できる人材は貴重な資源なので、世界中で奪い合ってるのです。

スタートトゥデイは有能なら一億円出すと言って、最近話題になりましたね。

スタートトゥデイ、「天才」1億円で雇います IT人材募集  :日本経済新聞

 

大前研一氏も、2017年を総括したこちらの本で、同じことを言っていました。

 

また、今の日本の教育制度は20世紀の大量生産・大量消費時代における中の上くらいの人材を大量につくるものでしかありません。エッジの効いた変わった人材、尖った人材をつくり育て21世紀の経済をシェイプしていくような仕掛けが全くないのです。そのことに気づいてからそういったシステムづくりに着手しても、効果が見えるまでには20年かかります。日本の今の病だと言えますが、これは治らないと私は思います。

 

自分が持っている価値観自体を疑った方が良い時代なんだと思います。ただ、自分で価値観を疑う事は結構難しいので、本を読んだり人と話して自覚していく意識が重要でしょう。

 

自分のやりたいと思うことを学び続ける

では実際どういう価値観で行動していったらよいのかと言うのは、具体的には本書を読んでいただくとして。

エッセンスだけ書いておくと、自分がやりたいと思うことにできるだけ素直になっていくということ。

さんざんいろんなビジネス誌で言われている通り、これからはAIの発展で、人間がやらなきゃいけないことは減っていきます。そのような中で、人は何をモチベーションに活動していくのか。これまでのように企業に勤め、一日働いて対価を得るという典型的なパターンは崩れていき、もっと自由に流動的に人間は活動していく気もします。

ライフシフトの考え方も重要です。長い人生の中で、自分を変化させていきましょう。何歳になっても遅くありません。

2017年に向けて読む一冊:100年ライフを読んで人生プランを考えよう

社会はこれだけ変化しているのだから、働き方や価値観をアップデートしていくべきですね。

もう横並びで考えていてはダメな時代になってるんだなと思いました。自分もきっといろんな先入観があるんだと思うと、何かを変えなきゃいけない。

 

 

関連本

とにかく働こう。ホリエモンの「ゼロ」を読むとポジティブに働きたくなる

これを読んで、すごい真摯な本だなって思いました。働くことの意味というのを、これを読んでぜひいろんな人に考えて欲しい。

どの企業に就職すれば稼ぐことができるのか、を考える前に

今日は、社会にでて働くとして、どうすれば高い年収を得られるのか?ということを考えてみたいと思います。

特に今日書くのは、個別の企業の話ではありません。個別の企業を見る前に、以下の点を考慮して働くことを考えてみると良いでしょう。いずれも、統計上賃金の違いが生じているものです。

 

業界による違い

まず、業種・業界によって平均は違います。

いくつかデータがありますが、

平均年収ランキング2015(平均年収/生涯賃金) |転職ならDODA(デューダ)
業種別・業界別 平均年収ランキング(平成25-26年版)-年収ラボ

身を置いた業界や職種によって、ある程度年収のボリュームゾーンが見えてくるのは事実かと思います。

似たような話として、「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で、企業の儲かる要因は何なのか?という研究に関する話が登場します。いくつか研究結果が示されているのですが、そのひとつであるマイケル・ポーターの結果は、以下のようになっています。

そしてこの分析で企業利益率のバラツキの約50%を説明できること、その内訳は産業効果が四割ぐらいで、企業固有の効果は六割ぐらいにとどまる、という結果を得たのです。

「産業効果」が4割というのは、企業がどの産業にいるのか?で儲けの4割は説明できる、ということです。結構大きいですね。それぐらい、「そもそもどの産業で勝負するか?」というのは、企業の収益性に与える影響が大きいということです。それはつまり、働く人の賃金にも影響を与えるのは当然のことです。

 

住む場所による違い

日本で考えると、都道府県別でみた場合に、圧倒的に東京での収入が高くなっています。以下は、都道府県別の一人当たり県民所得の推移を示しています。

Image
(出所:県民経済計算(平成13年度 – 平成24年度) – 内閣府)

東京はリーマン・ショックのあたりで落ちていますが、それでも他県と比べて圧倒的な差を形成しています。頑張っているのは愛知県ですね。

これは、いくつか要因はあると思いますが、都市というのは集積するほど効率が良いという点が大きいと思います。都市にいろんなものが集まることによって、インフラ設備の利用効率が上昇します。また、人材についてもコミュニケーションが密に行われることで、イノベーションを誘発しやすいと言われています。

詳細はこちらの本を参考に。

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働くという視点で考えれば、都市に行った方が賃金は稼ぎやすいという点は挙げられるでしょう。

 

企業規模による違い

日本の就職活動では、大企業に志望が集中すると言われていますが、賃金の面でみてもその選択には一定の合理性があります。

以前読んだ「フェルドマン博士の日本経済最新講義」では、大企業とそれ以外の賃金格差を以下のように示されています。

大企業の平均人件費は、中堅企業より七割高い。大企業のほうが資本が多いのですから、一人当たりの平均生産性は高いはずです。しかし、これほど差がつくはずはありません。
大企業では中堅企業より終身雇用が多いという慣習が労働の移動を阻み、賃金の格差につながっていると考えるべきです。逆の見方をすれば、大企業と中堅企業の賃金格差の大きさが、労働の流動性を阻んでいるということもできます。

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これは、大企業に所属するというだけで、賃金が高い傾向にあるということを言っているわけです。

 

ということで、上記をみると、社会に出て働く人たちはみんな東京に出て、平均年収の高い大企業に勤めるのが一番合理的というか、高い年収を期待できるということになります。

ただ、みなさんご存知の通り、ひとつの業界をみても企業によって違いがあります。ユニクロの給与テーブルが公開されて話題になりましたが、比較的年収が高くないとされる小売業において、非常に高い年収を獲得できるチャンスがあることがわかります。

ユニクロの「年収テーブル」公開が話題に 「超絶ブラックと思ってたわ」の声も | キャリコネニュース

最初に戻り、マイケル・ポーターの分析結果でも、企業の業績は「企業固有の効果が六割」も占めるので、個別の企業をよく分析するということも、非常に重要です。

それ以外にも、雇用形態でいえば正規雇用/非正規雇用の違いとか、男性/女性の違いなども統計上ははっきり違いが出ています。

自分はこういう仕事がしたい!ということもとても大事ですし、全く否定するものではないですが、こういう経済的な事実があるということも、頭の片隅に入れておく必要があるのではないか、と思う今日このごろです。

今日はこのへんで。

企業経営者が、新卒採用者を3年で辞めさせないために考えること

大企業と中小企業で、どの程度求人倍率が違うかご存知でしょうか。正解は、大企業が0.5倍に対して、中小企業は3.3倍です。

リクルートワークスの発表によると、2012卒の大卒有効求人倍率は、1,000〜4,999人以上の大手企業で0.74倍・5,000人以上の大企業0.49倍に対して、300人未満の中小企業で3.35倍と圧倒的な差があります。1,000人以上の大手企業の中でも就職人気ランキングのトップ100などの企業はもっと低い求人倍率になっているでしょう。

大企業と中小企業の採用格差 – 企業側から見た就職活動 – 就職活動テクニック –

 

また、新卒者がどの程度企業に定着したか、を示した指標をみると、事業規模が小さい企業ほど、定着率が低いのがわかります。

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(出所:「直近10年間で正社員として採用した新卒者が、現在まで働いている割合」(平成21年度中小企業白書)

 

つまり、中小企業は採用時点でも大きなミスマッチが生じてますし、入社してからも定着していないのが現状だ、というのがわかります。

 

不幸なマッチングの正体

どうしてこういう構造になるんでしょうか。いろいろ要因はあると思いますが、僕はひとつの観点を提示したいと思います。

中小企業の社長や採用担当者と話をすると、こういうことを聞いたりします。

「うちの会社は小さいし、大企業などに比べると採用できる学生のレベルが低い。エントリーや面接で良いな、と思って選んだ学生がいたとしても、最終的には断られてしまう。そうなると、次の学生を採用しようとして、また断られる。そして、企業が「妥協して」選んだ学生が残ることになります。

そうなると、どうでしょう。入社しても「妥協して選んだ学生」だから、教育もどこか諦めが入ってしまい、一人前に育たなくなってしまう。

一方で、就職を間近に控える学生と話をすると、

「たくさん企業の面接を受けて、たくさん不採用になった。いくつか諦めて、残った企業に決めた」

といいます。すると、せっかく入社しても企業に対しても愛着がわかないし、仕事にもやりがいは出てこない。惰性で仕事をするか、とっとと見切りをつけて辞めてしまいます。

 

つまり、お互いが「妥協して決めた」という感情だけが残ってしまいますよね。その結果として、不幸なマッチングになってしまうんじゃないでしょうか。

 

経営者はひとつの解決策を提示することができる

「HARD THINGS」という本を読むと、上記を解決するひとつの答えが書いてあります。

社員一人ひとりの「自分はなぜこの会社で働くことを選んだのか?」という根本的な疑問に答えを与えるのがストーリーの役割だ。社員なら「この会社で働くべき理由」、顧客なら「この製品を買うべき理由」、投資家なら「この会社に投資すべき理由」に答えられなくてはならない。さらには世界の人々に対して「われわれの会社が存在することで世界がより良い場所になる理由」を語れなくてはならない。こうしたストーリーを明確な言葉で語ることが、社員、顧客、投資家、パートナー企業、メディアに対して自社の行動のコンテキストを与えることになる。明確なストーリーを与えることを怠る企業からは、こういう不満が出やすい。

つまり、「なぜこの会社で働くことが素晴らしいのか?」ということに対して、答えを与える必要があるということです。そうなれば、それに共感する社員が残ります。

アメリカにある靴のネット通販で有名なザッポスは、自社の理念やカルチャーを強化することで、本当に会社が好きな人が働ける環境を作りました。

参考:ザッポス伝説

それと同じように、「この会社で働くべき理由」を提示できれば、働いている人も迷わずに働き続けられるんじゃないでしょうか。ストーリーを語りましょう。

 

今日はこのへんで。

今の就職活動は、昔と何が変わったのか

geralt / Pixabay

就職活動が解禁されました。今回から経団連との協定で解禁が3月になっており、いつもより選考期間が短い「短期決戦」と言われています。

二〇一六年春に卒業を予定する大学三年生らを対象とした主要企業の会社説明会が三月一日に解禁され、就職活動が本格化する。経団連の方針変更で今回から解禁が三カ月遅れた短期決戦となるため、学生、企業とも工夫を迫られている。

短期就活戦線スタート 初の3月解禁:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

なにやら大変そうなのですが、具体的に昔と今では何が変わったのでしょう。

最近読んだちきりんの本が、それをうまく説明してくれていました。

 

現在は「社会の市場化」が進んでいる

この本の根底にあるのは、「社会の市場化が進んでいるよ!」ってことです。

「社会の市場化」——この言葉は、過去10年間に起こった日本社会の変化と、次の10年間に起こるであろう変化の両方を、最も的確に捉えることのできる言葉です。

どういうことかというと、インターネットによって情報交換のコストが劇的に低下したことで、需要と供給のマッチング効率が飛躍的に向上しました。それによって、インターネット上でマッチングが行われるようになったのです。就職活動もまさにその最たる例になります。

株取引なども同じですが、市場化が進むと情報がオープンな場所に出されて、その「場」で取引が行われていきます。就職活動の場合、「リクナビ」や「マイナビ」に企業の情報がオープンに掲載され、そこでどんな学生でもエントリーできる仕組みが構築されました。

 

マーケットができたことで、勝つためのルールが変わってきている

市場化されることが良かったのか、悪かったのかといえば、それは正直わかりません。ただ、全体としては良い方向なのだと思います。それはつまり、こういうことです。

地方に生まれた人や、有力な先輩や親戚のいない家庭に生まれた人の得られるチャンスは、飛躍的に大きくなったのです。市場は弱者に厳しいとよくいわれますが、むしろ反対に、持たざる者に大きな可能性を与えるのが、市場の特徴なのです。

誰にでも平等な「機会」が与えられるので、その機会がそもそもなかった人や機会をうまく使える人にとってはプラスに働くことになるでしょう。

 

例えば昔であれば、大学で推薦をもらって就職を決めるとか、人のつながりや地縁で決めるなど「少数の選択肢から選ぶ」ことになっていたので、今は「無数の選択肢から選ぶ」ことになっているわけです。そうなると、「お祈りメール」もたくさん受け取るし、自分で「どこの業界、企業を選ぶのか」というマーケティング的思考がとても重要になっているわけです。でないと、自分のお金も時間も無限にあるわけではないので、自分の限られたリソースを打率が高い領域に打ち込んでいく必要があります。

そうなると、こういう発想も出てきます。これは、今回の「短期決戦」だけでなく、そもそも選択肢が無数に増えていることが背景にあるからです。

短期決戦に備え、エントリーシートの作成代行を業者へ依頼する学生も増えている。 「M&Nコンサルティング」(さいたま市)では、代行を一万九千八百円(八百字以内、税別)で引き受けているが、今年はすでに約三十人から申し込みがあった。例年を上回るペースで、二月以降は問い合わせも急増しているという。中谷充宏代表(47)は「採用期間が短くなったことで、面接回数が減る中、失敗しながら修正していくという従来の就活は難しくなっているのでは」と指摘する。

短期就活戦線スタート 初の3月解禁:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

 

また、自分を埋もれさせないためのPR努力が必要になっています。なので、こういう発想になっているわけですね。

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市場化されているので、逆に企業を選ぶ側にしてしまおう、ということです。

 

就職の成功パターンがなくなっている

もうひとつ、本書では面白い記載がありました。

特に合格率の低い難関資格を要する職業ほど、「高給で安定している」と考えられていたのです。 でもこれからは、お上が国家資格で保証してくれる職業ではなく、市場で強く求められる職業こそが、いい職業です。昔は政府が「すべての都道府県に国立大学をつくる!」と決めれば、大学の先生という職業の数(ポスト数)が、それに合わせて増えました。しかし市場の力が大きくなった現在では、政府の思い通りに需要や供給をコントロールすることはできません。地方大学をいくらつくっても、地方の若者が都会の大学に進学することを選ぶなら、地方大学で教職員のポストが増えるなんてことは起こらないのです。 市場化する社会では、政府が認定した資格を無思考に目指すのではなく、その資格を必要とする職業がおかれた市場の状況について、正しく理解するためのマーケット感覚が不可欠です。

大きな企業に就職する、あるいは難関資格と呼ばれているものを取得する。そういう、ある種「成功パターン」みたいなのが通用しなくなっています。行政がコントロールする領域が小さくなり、市場の変化が早くなっているからです。

そういう意味でも、社会の実態を知り、今のルールを知り、戦っていく素養が就職活動に求められているのです。

 

こうやってみると、大きく就活市場のルールが変わっているのがわかります。大人の経験談は、あまり通用しないかもしれませんね。学生は大人の古い体験談を聞くより、こういう本を読んでマーケット感覚を磨いた方が、楽しい社会人になれるかもしれません。

あなたが作るマニュアルが読まれるために

組織の中にはたくさんマニュアルが存在する。PCが普及して、それなりにきれいなドキュメントをみんなが作れるようになって、なおさら増えたのかもしれない。

だけど、これらのマニュアルの多くは読まれない。残念だけれど。たくさん作られたマニュアルは、最初は読まれるが、その後取り出されることなく、時間とともに忘れられていく。

では、読まれるマニュアルを作るためにどうすべきかを考えてみよう。

 

文書体系を定義する

組織にはいろんな種類のドキュメントがある。基本方針、実施要綱、マニュアル、サンプル。これらが時間とともに乱立していくと、どの文書がどういう位置づけにあるものなのかがわからなくなる。作り手でさえ。

そういうときは、最初に文書体系を定義しておくと良い。

そうすると、内容が重複することもないし、それぞれの文書の目的もはっきりする。

 

わかりやすいマニュアルを作る

「読み手の立場にたって、わかりいやすいマニュアルを作ろう!」

これは言うのは簡単だけれど、実際に行うのは難しい。ただ、いくつか考え方のヒントはある。

必要な情報のみを記載する

これは、本当に必要な情報を簡潔に書く、ということ。マニュアルが読まれない理由のひとつに、「情報量が多くて読むのも面倒」というところにある。思い切って重要度が低い情報は削るか、興味が持った人のみアクセスできるような別資料にしておくのも有効な手段。

読み手の利用シーンを想定する

読み手がどういう場面で使うのか、具体的に定めておく。実際に使われ方がわかると、それに合った資料構成、情報量、提供の仕方がわかってくる。

わかりやすい資料の書き方を学ぶ

具体的には、こういうテクニックについても必要。

マニュアル執筆が怖くなくなる、12の執筆ポイント - @IT自分戦略研究所

マニュアル執筆が怖くなくなる、12の執筆ポイント - @IT自分戦略研究所

 

いつでも参照できるようにする

必要なときにマニュアルが手元になければ、意味がない。配っても、引き出しの奥で眠っていてはマニュアルの出番はない。

紙媒体で配布するだけじゃなくて、メールで電子媒体を送ったり、内部ポータルに掲載しておくとか、ユーザが必要なタイミングで参照できる工夫をしておく。

 

事務フローのなかに組み込む

何かの事務処理を円滑に行うためにマニュアルがあるのだとすれば、マニュアルと事務処理を一体化させるのもひとつの手段。例えば、チェックリストなどの帳票を使う事務フローの場合、帳票に詳細な説明や手順なども記載しておく。

こうすることで、マニュアルを参照して事務処理する、というユーザの手間を小さくすることができる。

 

更新ルールを決めておく

ドキュメントは作ったきりだと、どんどん内容は古くなる。また、マニュアルをちゃんと作るほど、たくさん記載される要素が増えるので、その分更新するのも大変になる。

なので、予め更新する手間を組織的作業として織り込んでおく必要があるし、どのタイミングで実施するのかを決めておくと良い。

また、更新するための材料を集める方法も想定してくのが望ましい。研修会を開いたときの受講者アンケートや、ポータル上に掲載したマニュアルのアクセス頻度だったり。インプットをどのように取得し、それをマニュアルに反映していくかはルールとして設けておくと円滑にドキュメントを更新していける。

 

とりあえずこんなところか。よく作りっぱなしになるマニュアル。最終的に有効にするのは、マニュアルをどう運用するか、というところが重要なわけです。

情報を削ることには価値がある

バリー・シュワルツ氏が語る、選択のパラドックスについて

 

このTEDの動画で、面白いことを語ってましたよ。

選択肢が多いことは、自由の獲得に値するものだと思われるが、現代では選択肢が豊富すぎてその弊害も発生しているんだとか。

・人は選択肢が多いと、選ぶだけでエネルギーをたくさん消費する
・選択肢が多いほど事前の期待値が高くなる
・選んだ後の満足度が低い

さっくり言えば、こんなところです。これは確かにそうだよね。

つまり情報が豊富すぎると、生きているだけでいろんな場面で選択を求められるし、ちゃんと選んだつもりでも「他の製品のほうが良かったんじゃないか」と誰かがTwitterでささやいたり、いろいろ気になって、結局満足できない。そういう疲れた生活を僕らはしているんじゃないかと。

昔、似たような話として、決断するのにエネルギーを要する、ということを書いた。

「決断」の種類と重要性について考える

 

だから、ちゃんと情報を絞らないといけない。これは自分の生活で反省することでもある。結局自分が一生で成し遂げられることなんて限られている。上司に報告するときも、ちゃんと情報を削ろう。自分が思ったことや起こった出来事を羅列するだけなら、まったく価値はない。

 

あと、選ぶ手間とか考える手間を削るっていうのもサービスの着眼点としてあるよね。最近なるほどーと思ったのは、おまかせフォトブック。

フォトブック・フォトアルバム作成なら写真を送るだけできる「おまかせ!フォトブック」

写真をちゃんと選んでレイアウトを考えるとか手間だし、誰がやったってそんなに変なことにはならないと思う。むしろ、慣れている人のほうが良いレイアウトを作れるかもしれない。っていうのをちゃんと考慮されているんだと思う。

 

Appleも製品を絞って市場に投入している。これはこれで、少ない製品ラインナップで多くのユーザにリーチさせる必要があるので、大変なことなんだけど、製品を絞り込むことでユーザ側からすると選ぶコストを下げている。WindowsPCなんて、辟易するぐらい種類あるもんね。うんざりする。

 

人が一度に取り扱える情報量には限界があるし、だからテレビや新聞の勢いは低下しているし、いろんな場面で情報をダイエットする方法が求められるんだろうなあ。

年齢を重ねると細かいことは誰も注意してくれない

昔親に、「会社に入ったら、どんなに辛くても不合理なことがあっても3年は続けろ。そうすれば見えてくるものがある。」と言われた。実際に同じ会社で3年は過ぎたわけだが、確かに見えてくるものは経験とともに変わってくる。

ただ、最近気づいたのはその逆のことで、年齢を重ねると、新人の頃に教えてもらったような基礎的なことは誰も教えてくれなくなる、ということだ。例えば、日本語文章の「てにをは」や、挨拶の仕方など、それ以外の各種業務の「基本のキ」と言われるようなことは、自分が十分に行き届いていなくても、教えてくれなくなる。注意してくれなくなるのだ。

誰も教えてくれなくなる理由

理由はいくつかあるが、一番シンプルな理由としては「できて当然」だからだ。働く以上は、年齢とともに経験値を上げ、コストパフォーマンスを上げることが求められる。だから、年齢が上がればそれ相応のコストパフォーマンスが当然のレベルになるし、今更基本的なことを教えるなんて、ありえない。

次に、研修にはコストがかかる。教える時間、それを準備する時間。その分作業効率は落ちる。最初に入社してから数年経てば企業としては人材に対する投資時期を終え、収穫時期に入る。いつまでも研修なんてしてられない。

あとは心情的な問題。組織上偉い立場になると、基本的なことを誰かが指摘するのは結構勇気がいる。プライドを汚すことになるし、余計な軋轢を生まないためにも、そっとしておくことが合理的な行動になる。

自分に基本ができていなかったらどうする

というわけで、経験を重ねるといろんなことを誰かから受動的に教わることは難しくなっていく。これを解決するためにはどうすれば良いだろうか。

受動的に教わることが難しい、ということは逆に自分から学ぶ姿勢を作る必要があるということだと思う。自分で気づく機会を作って、自分で学習して、実践していく。誰かが積極的に教えてくれる時期は過ぎたのだから、自分から学んでいかないとダメなんだろうな。

あと、プライドも自分の中で整理しないといけないかもしれない。プライドは自信を持って仕事をしていく上では重要だと思うんだけど、時に逆効果というか、変に持ってしまうとなかなか純粋にいろんなことを吸収しづらくなる。自分もぼちぼちそうなってるかもしれない。

そういう意味では、MBAでは利害関係もないし、自分がやっぱりできていない部分があるんだなって再認識させてくれるところも大きい。ひとつのコミュニティだけじゃなく、いろんなコミュニティに所属する、というのは環境を変えると個人間の利害関係も変わって、新しい気づきを得やすいというメリットもあるんだろうな。

 

というわけで、何年か社会人景観を積んだ方々は、自分で積極的に学ぶ機会を作ろうね。そんだけです。あと、それでもいろいろ教えてくれる人が周りにいるのであれば、大事にしたほうが良いということです。

知識と実践のあいだにあるもの

知っているし頭ではわかっているつもりだけど、実際に現場で活かせないこととかあるよね。今回はそういう話。

 

先日、ITILの資格を取得した。試験を受ける前に「この資格取っても実践で役立てるのは難しいよ」と周囲から聞いた。正直、「取得する意味あるのかなー」と思ったけど、それでも自分の軽い挑戦だと思って、勉強して受験した。そして感じたのは、やはり「知識と実践のあいだ」には隔たりがある、ということだ。出題される問題に対する答えは何となく覚えるし、ITILそのものに対する理解も深まっていくとは思うのだが、どうしても現場でどう活用しようか、というイメージが沸かない。

別の話。最近飲んだときも、「上司の言っていることはわかる。指摘されて自分も反省して、次こそはと思う。でも、なぜか実践するとなると、うまく行動に反映できなくて、身についていないことを痛感する」という話をした。わかっているけど、できない。このもどかしさは何ともいえない。

 

それからしばらく「知識と実践のあいだ」にあるものを考えていたけど、自分の中でひとつの結論に達した。「知識と実践のあいだ」にあるものを乗り越えるためには、とにかく実践する。実践する場がなければ、つくるということだ。

とにかく知識を使う場を増やすしかないんだと思う。例えば、多少強引にでも、今やってるやり方をITIL形式に見直してみるとか。「実際に使う」という意識をして、実践に落とし込む経験を積み重ねていくことが重要になる。

 

そして、そういう実践の場がなければ、つくるしかない。新しい仕事の機会を求めても良いかもしれないし、それが難しければ、内部の勉強会を開催してみるとか、ブログに書いてみるとか。とにかくアウトプットする機会をつくるのが良いと思う。

もうひとつは、人は年齢を重ねるほど変わるのが難しくなる、という「○○歳限界説」みたいなのを自覚する必要があるのかもしれない。僕も少しずつ凝り固まっているし、自分の価値観や考え方を変えるためには、大きなショックが必要になっていると思う。自分を変えて、行動に反映していくためには、大きな覚悟や劇的な環境の変化を自分に課していく必要があるんじゃないだろうか。

 

 

というわけで、僕はMBAに行くのです。独学で身につけた経営知識を、少しでも実践の近づけるために。

最初に入った会社が自分に与える影響は大きい

社会人としての経験を積み重ねている自分は、どんどん会社に染まってしまっているのかもしれない。

 

自分が社会人として経験を重ねるようになると、だんだん誰かからちゃんと指導してもらうような機会はほとんどなくなる。自分で学習して成長していかなければいけない。そうなるとは知っていたけどね。

 

最近、自分は入社して最初に経験したスキルや物事の考え方みたいなもので今は生きてるなって感覚がある。逆に、数年経験を積むと、その会社の思考にどっぷり浸かってしまって、新しい価値観や考え方を受け入れづらくなってしまっている自分がいる。

入社して数カ月後に、新人の頃の教育担当だった先輩に会って飲んだのだが、そのときに「気づいていないだろうが、お前たちも既に会社に染まり始めている」というコメントをいただいた。結構ショックだったというか、「ああ、確かにそうだな」と自覚したのを覚えている。

 

最初に入った会社は、学生とは違う世界で初めて教えられることばかりだ。だから、いろいろ受け入れやすいし、吸収も早い。逆にいえば、ある程度経験してしまうと、これらのメリットは全部裏返しで自分にやってくるのだ。どんどん自分は硬直的になり、多様性を認められなくなる。少しずつそうなっているのかもしれない。なんて恐ろしいんだ。

 

というわけで、新社会人で会社勤めになる方は、そこで学べるものをできるだけ学んでください。ただ、それが社会のすべてではないし、最初の会社で必死に身につけた仕事に対する考え方や姿勢は、その先長い間も残るもの。それを忘れずに頑張れば良いんじゃないかと。