新しい知識と経験を求めよう。「RANGE(レンジ) 知識の「幅」が最強の武器になる」

年末年始に読んでいたんですが、この本が大変面白かったです。

個人や組織が良い選択をしていくために、どのような学習が必要かが書かれています。AI時代に人がどう学ぶべきか、という点も書かれています。
基本的にはタイトルにもなっている通り、”学習の幅”が重要なのですが、それも様々な角度から検証されていてとても刺激的でした。

早い時期から専門性を高めるのは良いことか

子供を育てている方であれば、自分の子供がどういう学習の仕方をしていくと将来活躍できるのだろうかということを考えると思います。幼少期から専門的な教育を行うことで、一流の人になれるのではないか、という話です。
タイガーウッズなど、早期教育で活躍した例なども検証しながら、教育の効果についてひも解いていきます。そしてひとつ示されるのは、創造性が求められる領域については、「訓練の幅が重要になる」ということです。
全体として見えてくることは、ある代表的な研究の結果と一致する。その研究は音楽だけに限定した研究ではないが、それによると、「訓練の幅の広さは、応用の幅の広さにつながる」。言い換えると、多くの文脈で学べば学ぶほど、学習者は抽象的なモデルをより多く構築するということだ。学習者は、これまでに見たことがない状況に知識を応用するのがうまくなる。これこそが、クリエイティビティーの根幹だ。


専門性の重要さが失われるわけではないと思いますが、いろんな領域に触れておくことが重要ということです。

我慢して続けることがポジティブか

GRIT(やり抜く力)という有名な本があるのですが、「RANGE」でもこのGRITの本について触れられるところが出てきます。
力を発揮しようと思うときに、やり抜く力が重要という点はだれしも「そうだろう」と考えると思いますが、この「RANGE」では「自分の適性を理解して、時には何かをやめて、場を離れることが重要だと説いています。
自分で活躍するフィールドを築く人は、辞めるタイミングも理解し、より自分が活躍できる場所へ進んでいる、ということですね。

幅広い意見を受け入れるために

あとは、この示唆も個人的には好きでした。
科学にとても興味のある人たちは、その内容が自分の現在の信念に合っていてもいなくても、常に新たなエビデンスを見ることを選んだ。一方、あまり科学に興味のない人たちはハリネズミ的で、知識を得ると、自分の考えに反するエビデンスにはさらに抵抗するようになり、政治的により偏向していった。科学に興味がある人はこの傾向に逆らった。

科学リテラシーは、自分の意見をうまく軌道修正しながら考えていけるのに役立つのだな、と。

ネットフリックスの革新的な人事ルールを学ぼう。「NO RULES 世界一「自由」な会社、NETFLIX」

ネットフリックスといえば、DVDレンタルから始まり、ストリーミング、独自コンテンツ配信とどんどんビジネスモデルを変化・進化させてきました。

グローバル展開も進んでおり、最近では売上が200億ドルを超えています。

Netflix, Inc.の業績推移 | Strainer

様々なイノベーティブな転換を図りながら躍進しているネットフリックスの、人事がどのように運営されているかが示されたのが本書です。

すごい評判になってるな、と思っていましたが、ようやく読めました。結論、評判通りというかすごい刺激的な内容でした。

イノベーションは「人材密度の濃さ」から生まれる

本の内容は、ネットフリックスの創業時から振り返り、文化や人事制度をどのように考え、施策を展開してきたのかが詳細に書かれています。

その始まりは、「凡庸なメンバーが増えることでイノベーティブな活動が減る」という経験・考えから来ています。会社が拡大するにつれ、メンバーが増えていく。その中で、人材の質が会社の求めるレベルから少しずつ下がっていく。そうすることで、様々な問題が起こったと書いてあります。

するとふたつのことが起きた。まず会社は迅速にイノベーションを生み出せなくなった。業務の効率は高まったが、クリエイティビティは低下していったのだ。成長するためにはイノベーティブな製品を生み出している会社を買収しなければならなくなった。それによって会社はますます複雑になり、ルールや手続きがますます増えていった。

しかし新しい発想や速く変化することより、プロセスに従うことが得意な人材を選び、そのような職場環境を整えてきたために、変化に適応することができなかった。

こういう問題を解消するため、ネットフリックスが純粋に求める人、市場でトップクラスの人を採用・確保することがベースになっているそうです。これは思うのは簡単だけれど、実現するのはとても難しい。それを実現するためのルールや施策が書かれているのも、本書のすごい魅力的なところです。

基本はルールを極力撤廃し、自由と責任を与えるということなのですが、結構驚くようなルールが撤廃されています。「そういうルールがないと、こういう不正が行われたりしませんか?」という想定問答に対して、答えが用意されているのもすごいです。

”自由と責任”というのはよくいわれるけれども、組織のカルチャーや制度としてここまで浸透しているのは、純粋にすごいなと思いました。

フィートバックの重要さ

もうひとつ印象に残ったのは、組織内でのフィードバックがとても重視されていることでした。イノベーティブな活動を支えるひとつとして、様々な意見が適切な方向に取り入れられていくのが、とても重要になるということですね。

ここまでは簡単な話なのですが、特筆すべきは「フィードバックというのは受け手にとってネガティブに受け止められて、人間関係や組織の雰囲気を悪くする恐れがある」という問題に、真正面から向き合っていることです。

日本だと顕著である、と書かれていますが、誰かが誰かに意見をする、改善を促すようなコメントをすると、聞いた相手はいやな気持ちになり、空気を悪くする恐れがあります。あるいは、それを見越して意見を言わないようにする、というのも大いにあるでしょう。

昔、360度評価を行っている企業で、部下が気を使って当たり障りのない意見しか出てこなかったり、本質的でない不満などの本音が出すぎたりと、企業が狙った形に制度が浸透せず、廃止してしまったという話を聞いたことがあります。

一方で、多面的で多様な意見を受け入れるというのは、変化しながら生存していくためには有効な手段であったりします。政治における民主主義というのは、独裁より効率が悪いとわかりつつ、今でも使われているのは、ある人や考えに固執することのリスクをヘッジする意味がある、という考えも聞いたことがあります。企業においても、変化を起こしていくためには、様々な意見を適切に取り入れることが重要になるのだと思います。

ネットフリックスでも、自分に否定的ともとれる意見を受け入れることで、企業や個人が成長していくという共通認識を持って、適切なフィードバックを立場にかかわらずお互いに出し合う文化を育てているとのことでした。

ディナーの席で自分の「要改善」の部分を全員の前でさらされるのはどんな気分か、と尋ねると、だいたいこのような回答が返ってくる。恥ずかしさを感じることもあるし、たいていとても居心地が悪い思いをする。だが最終的には、自分のパフォーマンスを大幅に高めるのに役立つ。

ネットフリックスの躍進は、こういう人事の取り組みが下支えされているのだと、すごい納得感がありました。上記以外にも様々な施策が、根拠などとともに描かれているので、人事やこういうカルチャー醸成に興味ある方はご一読の価値ありです。

「時短の科学」を読んで労働集約型の仕事でどう働き方改革を実現するか考える

最近めっきりブログを書くことをさぼってました。アウトプットがおろそかになってる気がしてましたが、少し前に読んだ本について久しぶりに書きます。

 

日本のホワイトカラーは生産性が低いと言われています。さらに最近では、人手不足が様々な場所で顕在化しており、生産性改善を必須です。

ただ、「生産性を上げろ」と言われてもどこから始めたら良いかわからなくないですか?

本書を読むと、そのヒントが書かれています。特にサービス産業の時短を実現する取組例やアイデアが、実際の事例とともに書かれているのが本書の特徴です。

残業を減らす=売上が減るという恐怖との闘い

残業を減らすと繁忙期に対応できないのではないか?売上が減ってしまうのではないか?というリスクがよく議論になります。

しかし、そうではなく、残業削減と売上向上の両方を実現することも可能なんですね。そのためには、業務の無駄を取り除きつつ、本質的にどういうサービスを提供すべきかという考えをはっきりさせることが重要です。

サービス業の原理原則を知る

サービス業は、在庫がなく、また現場では多様で複雑な判断・対応が求められます。それを踏まえて、「リアルタイム・サービス法」と名付けられたアプローチが提案されています。

このリアルタイム・サービス法は、現場業務の「場所」「時間」「情報」をできる限りお客に近づけるという考え方です。「場所」とは、各業務を行う場所をお客に近づけること。「時間」とは、各業務を行うタイミングをお客に近づけること。「情報」とは、お客が求めていることと、提供するサービスの内容のギャップを埋めていくことです。

 

言われてみると当たり前なんですが、この考え方はいろんな場面で適用できるんじゃないかなと思いました。

シフト調整という負担

本書の中で、シフトの話が出てきます。

シフトが「平日用」と「週末用」の二パターンしかない会社もありました。見込み客数を考慮することもなく、ただ単にカレンダーの曜日を見てシフトを組んでいるだけです。「平日は客数が少ないので、少ない人数で対応しています」と話していましたが、実際には平日でも客数が多い日もある。天候や周辺の祭事などの影響で、週末でも客数が少ない日もあるはず。実際のお客の動きを従業員のシフトに反映させていないのです。  適切な人員配置やシフトを心がければ、最低限必要なだけの従業員数を現場に投入できるので、総労働時間は減り、生産性は上がります。そして人手不足を解消して、顧客満足も同時に上げられるのです。

 

効率的なシフトを作るというのは、無駄なリソースを省き、繁忙期の回転率を向上させる、全体最適の観点が必要になります。本書の中では、特に「ひまなときのシフトに注目すべき」という話があります。

忙しくないときに従業員の手が空いている時間、つまり「手待ち時間」をどう減らすかが、生産性向上につながるのです。経営者がコントロールすべきなのは、忙しい時間帯ではなく、ひまな日や時間帯なのです。

 

一方で、このシフト作成という領域は、もちろん業種・業界によって様々だと思いますが、管理職の膨大な作業負担になっています。あるいは職人芸みたいになっていて、経験が豊富な人はすぐにシフトを組んだり調整することができるが、そこに至るまでにすごい年数を要したりしています。

ここを自動化・効率化できるソリューションが普及していけば、調整業務の負担を減らしつつ、全体最適の観点からシフトを作ることができるようになるんじゃないでしょうか。

 

働き方改革っていうのも、科学的に考えていけば良いアプローチを作れるかもと思えました。

 

ちなみに、今「トヨトミの野望」を読んでます。今更かもしれないけど、面白い。

「採用学」を読んでこれまでとこれからの人材採用を考える

HR TechやPeople Analyticsへの関心が強まっていて、先日もこういう記事を書きましたが、

HRテックやピープルアナリティクスを勉強するための本をいくつかご紹介

今回は、特に人材採用について理解を深めるために、こちらの本を読みました。

[amazon_link asins=’4106037882′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’da7d7db8-61eb-4f60-b9c2-a91c0895cf7f’]

 

何かの本でこれが薦められていたので読んでみたのですが、正解でした。組織における人材採用について理解を深めるのにも良いですし、また採用をどうデータに基づいた活動に変えていくのか、ということを理解するにも、非常に良い一冊だと思います。

採用活動にパラダイムシフトが起こっているのでは

本書で語られているのは、今の採用市場はパターンが形成されており、成熟化する中でアンチパターンが生まれてきている、ということです。

リクナビやマイナビに代表される就活サイトが台頭し、マッチングの入り口が集約されていくとともに、エントリーシート→グループディスカッション→面接2回ぐらいという、テンプレートのような採用活動がどの企業でも採用されている、という実態があります。

そういう採用パターンが形成されてくると、対策も高度化してきて、エントリーシートの書き方、面接での受け答えなどで、「正解」らしきものをちゃんと学生側も習得するようになります。そうなると、「本当に企業が求める人材は誰か?」ということがわかりづらくなってしまいますよね。

根本的な問題は、「多くの企業が採用をパターン化してしまっている」というところにあります。本書では、はっきりこう述べられていますね。

まず一つ目は、就職情報サイトが日本の採用・就職のスタンダードとして定着した結果、企業の内部から、採用力の一部が失われていったということだ。

しかし、本書ではそういう状況から脱却するように、新しい採用方法を実施する企業の例も豊富に紹介されています。改めて、「自社に合った採用とは何だろう?」ということを考えるきっかけになるでしょう。

就職情報サイトが採用ツールとして普及・定着し、それを使うことが多くの企業にとって当たり前になってきたいま、それを使うこと自体はもはや、人材獲得競争上の優位をもたらさなくなりつつある。そのことに、一部の情報感度の高い求職者は気づき始めているから、今後、一部の求職者については就職情報サイトを 使わずに 就職活動を行う傾向が強まっていくだろう。

数年前からそうだとは感じていますが、このような採用パターンからの脱却、パラダイムシフトが起こってきているのが現在なのだと思います。

就職試験でよく語られる「コミュニケーション能力」ってなんだ?

よく採用の場面で語られる「コミュニケーション能力」というのは、一体どういうものでしょう?

本書の中では、それについても深く探求されています。僕の理解でいえば、日本企業は「評価基準が曖昧」であり、「その曖昧な基準をどの企業も採用している」という構造が存在しているということです。

日本のガラパゴス的な採用は、同じような評価基準により、同じような「優秀さ」をめぐるきわめて同質化した競争になっている。

代表的なものが「コミュニケーション能力」というものであり、本来的にはいろんな「コミュニケーション」の在り方があるし、それによって評価ポイントは異なるはずなのですが、それをひとつの「コミュニケーション能力」という言葉で、いろんな人が各自イメージした曖昧な「コミュニケーション能力」を評価するようになってしまっている、ということです。

しかし面白いのは、あるコンサルタントの考察として、人の能力には「変わりやすい能力と変わりにくい能力」があるといったものが紹介されています。そして、「変わりやすい能力」のひとつにコミュニケーション能力があるのです。あくまで個人の見解にはなりますが、確かにコミュニケーションは、程度の差こそあれ、誰でも場数を踏めばある程度は話したり説明できるようになります。

そうなると、今はうまく話すことができなくても、入社して教育すれば良いということになります。であれば、入社時点ではその点を実は重視しなくても良いのでは?という仮説も出てきます。

さらに、面接官によって自由に質問して評価するより、画一的な評価基準で面接評価した方が、入社後のパフォーマンスと面接時の評価に相関関係が出るという研究結果も紹介されています。このような「構造化面接」の方が、科学的でばらつきを抑えられて、検証もしやすいというメリットがあるということでしょう(もちろん、素晴らしい面接官が直感で見抜いた方が評価精度が高いということもあるでしょうが)。

就職情報サイトを中心とした採用活動は成熟してきてしまっており、新しい動きが出てきています。その中で、科学的なアプローチや新しいアイデアによって、採用活動を工夫する企業や手法が登場してきているのが現在です。面白いですよねー。採用する側も採用される側も、新しい動きが求められている、ということですね。

[amazon_link asins=’4106037882′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’da7d7db8-61eb-4f60-b9c2-a91c0895cf7f’]

 

ちなみに、こちらの記事は、本書の事例として登場する三幸製菓で人事をやられていた方の講演記事です。こちらも具体的な事例が語られていて、非常に参考になります。

「御社が求めている人材は、もう社内にいますよ」 モザイクワーク・杉浦二郎氏が語る、採用活動の再定義 – ログミー[o_O]

こちらは、People Analyticsに関して具体的に書かれていて、理解が深まったのでご紹介しておきます。

あなたは会社の美意識を理解しているか– 採用×People Analytics – – marumaru – Medium

HRテックやピープルアナリティクスを勉強するための本をいくつかご紹介

最近、HRテックやピープルアナリティクスに興味を持ったので、いくつか本を読んでみました。

これらを読むと、だいたいこの領域のトレンドや技術動向を理解できるでしょう。関心ある方の参考になれば幸いです。

Work Rules

いきなり1冊目は、自分が読んでいないので紹介するのが後ろめたいのですが。。。ただ、人事系のデータを分析して科学する、というのはこの本から注目が高まったといろんな場面で取り上げられています。

入り口としては、この本を紹介しないわけにはいかないので、触れておきます。

僕は、一部Work Rulesとも内容が重複している「How Google Works」を読んだのですが、こちらでも人事領域のGoogleの考え方や取り組みがわかります。

HRテクノロジーで人事が変わる

こちらはタイトル通りのがっつりした本ではあるんですけど、人事系のテクノロジーに関するトレンドや法律面など様々な観点から語られている一冊です。

幅広くテーマがカバーされているので、これを読むだけでも、HRテクノロジー分野に関しての今の状況は十分に理解できるでしょう。むしろちょっとボリュームがありすぎて、お腹いっぱいになるかもしれません。

データサイエンティスト養成読本 ビジネス活用編

最近発売されたデータサイエンティストのビジネス活用編です。注目すべきは最後の2つが、ピープルアナリティクスに関する内容だって言うことです。

僕は、ピープルアナリティクスの記事を読みたいがためにこの本を買ったと言っても過言ではありません。ビジネス活用というテーマで、ピープルアナリティクスが取り上げられているということは、それだけデータ分析の領域でも人事は非常に注目をされているということでしょう。

専門書を1冊読むよりはライトな内容になっていますし、人事領域のデータ分析とは?という概要を理解しつつ少し事例を読めるので、ピープルアナリティクスの要点やトレンドを理解するという意味では非常に良いと思っています。

日本の人事を科学する

人事領域のデータ分析を具体的に扱った一冊です。

本書の内容をしっかり理解するためには、データ分析に関する数学的な知識が多少求められますが、それでもわかりやすさにも配慮されており、人事のデータを使ってどういう風に分析をするかというのが具体的な事例で語られているのが特徴です。

しかも日本の事例になるので、「データ分析といっても、どういうところから始めたら良いのか?
」という疑問に対して、本書は非常に参考になると思います。

タレントマネジメント概論

本書はHRテクノロジーやデータ分析ど真ん中というわけではありませんが、最近の人事領域ではタレントマネジメントは1つのキーワードになっているので紹介しておきます。

人材リソースの活用、社内の人事データの可視化、サクセッションプランやリーダー育成という様々な人事系の切り口は、「タレントマネジメント」という考え方に取り込まれています。

この1冊は、タレントマネジメントに至るまでの人材管理の潮流や、どのような考え方でマネジメントを行っていくかが具体的に書かれており、タレントマネジメントを知りたい方には良い一冊でしょう。

 

これらを読んでいくと、人事系の領域が今とても活況で、様々なサービスも登場し、管理手法も進化していっているのだ、ということがわかります。これからこれらで扱われているような考え方、マネジメント手法、ソリューションは普及していくんだと思いますし、乗り遅れないようにしたいな、と。

これからの人事戦略である「タレントマネジメント」を学ぼう

最近人事の領域で、タレントマネジメントというアプローチが高まっている気がしており、タレントマネジメントに興味を持ったので、この本を読みました。

タレントマネジメントは人事領域においてひとつのトレンドになっていると感じています。本書を読んで、その感覚はより高まりましたし、経営戦略におけるタレントマネジメントの位置づけ、取り組み内容を理解できました。

 

なぜタレントマネジメントが注目されているのか

タレントマネジメントの考え方は、人材の流動性が高いアメリカで始まりました。流動性が高いと、従業員をつなぎとめておくための仕組みが必要になります。

例えば、魅力的なキャリアプランやリーダー教育の提供などです。本人が欲している機会が提供されれば、できるだけ長く会社に在籍してくれる、というわけです。企業側からみても、人材と職務環境のミスマッチによる流出を防ぐことができます。

人材の確保が難しくなっている日本市場で、企業側も社内の人材を育成し、働きやすく能力を発揮してもらいやすい環境を整備する必要性が高まっています。

実際、タレントマネジメントシステムの導入が日本でも進んでいるようです(少し古い数字ですが)。

しかし、昨今、日本国内においてタレントマネジメントは急速に広がっている。2011年から翌2012年にかけてタレントマネジメントに用いるシステムのパッケージライセンスは、19.9%伸びている。これはあくまでシステムの話で、現実のタレントマネジメントが浸透しているかどうかとは区別して考える必要はあるのだが、多くの会社でタレントマネジメントが求められていることに間違いないと言えるであろう

 

また今は、だれか一人が新しいビジネスを作り上げるほど、個人が経営に与える影響力が高くなっています。

これまで培ってきたビジネス資産(技術や人材のタレント等)を用いて、別の事業へ転換することをバリュートランスフォーメーションと呼ぶ。タレントマネジメントは、人のタレントに着目し、事業価値の転換、すなわちバリュートランスフォーメーションを可能にする。

そのため、個人はタレントという観点で自分の市場価値を高めていくことが求められていますし、企業側も優秀な人材を確保することで、ビジネスを変革したいと考えているのです。

【書評】「タレント」の時代 世界で勝ち続ける企業の人材戦略論

 

企業と個人の関係性は変化している

これまでは企業の方は強く、企業が「人を雇う」「人を管理する」という関係性がありました。しかし、最近はその関係性が変わってきており、より対等な関係に近くなっています。

タレントマネジメントでも、そのような考えに基づき、企業と個人がそれぞれ良い関係であろうとすることが根底にあります。個人のエンゲージメントを高め、企業において個人のタレントを十分に発揮できるような施策が必要になるのです。

本書の中で紹介されているヒューマンキャピタルという考え方も、まさに企業にとっては人はパーツではなく投資すべき「資産」であり、育てた人材のタレントによってリターンを得ていくものだという考え方になっています。

そういう視点を得ると、企業には中長期的な考え方が生まれてきます。

新しく人材を採用する際、これまでは、いま現在不足しているポストにふさわしい能力や実績、経験を持つかどうかという観点で評価していたのではないだろうか。タレントマネジメントに取り組めば、5年後、10年後の中長期の経営戦略の実現のためのタレントを持っているのかどうか、設計で定義されたタレントと照らし合わせて、いまは持ち合わせていなくとも、将来、育成される可能性があるのかどうかという観点で人材を見る目線が加わるだろう。

裏を返せば、企業の考え方や仕組みを見直さないと、タレントマネジメントだけ導入するのは難しいのではないか、と思う次第です。

 

「人材管理」から始まった人事分野の考え方は、新しいフェーズを迎えていると思います。人が採用できない、社内に有望な人材がいないと言う企業がいれば、考え方を見直し、神田戦略を再構築する時期に来ているんじゃないでしょうか。

タレントマネジメントを調べている中で、こちらの記事も非常にわかりやすかったです。

タレントマネジメントの意味とは?定義や目的、事例をまとめてご紹介 | BizHint(ビズヒント)- 事業の課題にヒントを届けるビジネスメディア

KPIを設定したけど成果が出てないと思う人はこの本を読もう

KPIという言葉はすっかり当たり前になりましたね。Googleトレンドでみても、年々増えています。

ただ、ちゃんとKPIをマネジメントして成果を出す、というのは結構難しくないですか?

KPIマネジメントでよくある課題

KPIを設定したのに、うまく成果に結びつかないときに、理由はいろいろ考えられます。

KPIと称して目標数字をかけるものの、効果が出ない。効果が出ないどころかほとんどみんな途中から数字を忘れてしまう。達成できないことによるあきらめが感じられる。

「KPIを設定し、PDCAサイクルを回しましょう」という考え方はわかるもののの、ほんとにそれを実行し効果を出すためには、何かが足らないのではないでしょうか?

成果を出すためのKPIマネジメントについて、より実践的な方法を知りたいと思っていました。

リクルートの実践的なKPIマネジメント手法

リクルートに関連する記事や本を読むと、ビジネスを発展させるためにKPIを設定して、それをぐるぐる回して改善した、という話がよく登場します。

例えばこの本。

リクルートの手法から学ぶ新規事業の作り方・育て方

ビジネスモデルを成長させる仕組みに、KPIマネジメントが含まれています。

それで、具体的にどうやってマネジメントしているのか気になっていたのですが、その内容を知ることができる良い本と出会うことができました。

新しい目標管理制度「OKR」を学ぼう

以前から気になっていた、新しい目標管理制度であるOKRの本を読みました。

【書評】マーケティングは組織革命である

USJのCMOで有名だった森岡さんの最新本を読みました。

[amazon_link asins=’4822257959′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’7e9431c0-affb-444a-b823-5d90a89a9c92′]

 

森岡さんの本は、過去にも2冊読んできました。

革新的なアイデアはどんな人でも思いつけるかもしれない。この本を読めば

【書評】確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

 

特に「確立思考の戦略論」は、数式をモデルにしたマーケティング理論が詳細に展開されており、読んだときは衝撃を受けたものです。

で、期待をして本書を読んでみたのですが、内容としては「マーケティングというより組織の本」という印象でした。

組織運営も「社内マーケティング」として捉えなおす

簡単に言ってしまえば、組織運営を「社内マーケティング」と捉えなおしたものです。ただ、「言うは易く行うは難し」で、実経験を伴った言葉には、説得力を感じます。

企業にはいろんな阻害要因が付き物ではありますが、この本を読むと、最初はマーケティング部部長という、最後のCMOから比べると役職も低く、権限が十分でなかった著者が、様々なロジックと戦略を駆使して、社内を説得し、変えていったことがわかります。

プロ・マーケターとしてUSJに雇われた2010年、私の立場は「マーケティング部長」という部長級でした。もちろん社長の強い期待を背負って入りましたが、職務権限そのものは 10 人程度いる各部門長の中の一人にすぎませんし、部長級以上の幹部の中では格段に最年少でした。しかも、上方向には、社長、取締役、片手の人数くらいの執行役員達(直の上司だったマーケティング営業本部長をはじめ、他部門を統括する本部長達)がいましたし、横方向にも他の部長や次長が数十人もいて、マーケティング部長として本気で仕事をすれば、上下左右と多くの衝突が避けられない構造に置かれていました。会社全体を動かせるような立場ではそもそもなかったのです。

そういう前提で本書を読むと、自分が置かれている状況がどうであろうと、言い訳できなくなるんじゃないでしょうか。例えば、こんな感じです。

  • 同意してくれる人がいない →相手の立場にたってロジックを組み立てよう
  • 邪魔する人がいる →意思決定者を絞り込んで説得しよう
  • 経営資源がない →段階を踏んだ計画を立てよう

こういう考え方を知っておくと、組織の中で腐らずに頑張ろうかなと思えます。

 

組織の弊害をどう取り除くか

みなさん、組織が良い雰囲気で、結果を出していきたいと思うでしょう。

そのためには人間の本質を踏まえた上で、組織の弊害をどう取り除き、仕組や風土を作るのかも具体的に書かれています。

人間には元来自分を安全に守る本能があり、至る場面でその本能が顔を出します。それを理解した上で、コミュニケーションや制度設計を行うべきです。

例えば人事評価について、本書ではこう書かれています。

安易な方向に流れやすい個々人を、あえてちょっとだけ緊張感のある環境に置く…。自己保存のために、部下はより高い成果を出すのに必死、上司も部下に良い仕事をさせるのに必死、そういう連鎖が拡がれば会社の業績は上がります。毎年、同じようなことを繰り返しておけば許される組織では、人は楽に生きようとします。そんな組織からは、革新的なアイデアや、常により良い業績を生み出す執念は生まれてきません。人間はある程度追い詰められないと本当の力を発揮できないからです。

結果を出すためには、アイデアや自分の役割だけでなく、組織を機能させる仕組みまでコミットしなければいけない、ということです。

これを読むと、どんな役割・役職であれ、組織を動かしてビジネスをしようと思ったら、組織マネジメントについて知っておかなきゃならないと改めて思いますね。

ちなみに、読みながらすごいうなずいたのが、「組織のメンバーに対する捉え方」です。

しかし私は、 社長と平社員は役割が違うだけで対等な存在 だと考えるようにしています。「年齢差による呪い」と同様で、どちらの方が偉いとか、偉くないとか、役割の違いを優劣や上下で捉えると、お互いに対等にコミュニケーションができなくなる呪いに支配されてしまうからです。

組織は、役割が違う人が集まって構成されています。そのどれかが欠けると、組織は力を失ってしまうという意味では、「全員が対等」であるところから出発する必要があると思ってます。責任範囲も含む役割が違うだけだと。こういう考え方で組織を運営したいなっていつも思いますね。

 

最後に収録されている対談4本も読みごたえがあってよいです。もともとは雑誌の企画だったようですが。

[amazon_link asins=’4822257959′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’7e9431c0-affb-444a-b823-5d90a89a9c92′]

これからの時代に求められる能力とは?「ニューエリート」を読んで

時代の変化を捉えた本というのはたくさん出ていますが、この一冊もそれに分類されます。新しいエリート像がどのようなものかを述べた本です。