クラブライセンス制度が導入されたJリーグは、今後どう変わるか?

Jリーグではクラブライセンス制度が導入されています。3年間赤字が続くとJFLに降格になってしまいます。赤字クラブがいるのは今に始まったことではないですが、なんで今導入なんでしょうか。

ひとつ参考になる数字を出してみました。以下のグラフがそれです。これは、2005~2012年の8年間で、各クラブの営業利益(損失)を並べてみたものです。左が黒字で右にいくにつれて赤字になっていきます。

Jクラブの営業利益(損失)(2005-2012)
Jクラブの営業利益(損失)(2005-2012)

眺めてもらえばわかりますが、黒字に比べて赤字の方が絶対額も大きいですし、数も多いです。実際、サンプル数275のうち、黒字は145。赤字は130です。

また、黒字の総額は11,303百万円。赤字の総額は-20,810百万円。総額としては、-9,507百万円の負け越しになっています。

というわけで、Jリーグは全体として赤字です。

 

UEFAで始まっているファイナンシャル・フェアプレー

UEFAでもファイナンシャル・フェアプレーという、同様の財務規律を求める制度が開始されています。導入の目的は、この記事に書かれています。

ファイナンシャル・フェアプレーの主要目標は、クラブサッカーの財務に規律と合理性を植え付けること、俸給や移籍金にかかる上昇圧力を和らげてインフレ効果を制限すること、クラブに支出を収入の範囲内に抑えることを奨励すること、クラブが確実に債務を期日までに返済できるようにすること、そして欧州クラブサッカーの長期的持続性を守ることにある。

UEFAチャンピオンズリーグ – ニュース – UEFA.com

これまでは、テレビ放映権の高騰や、特定オーナーによってサッカークラブに資金が流れ込み、選手の年俸もインフレ傾向にありました。そうなると抑制がきかなくなるので、クラブの実力にも格差が生じて、リーグ全体がバランスを崩していくことになります。それを抑制するのが、ファイナンシャル・フェアプレーというわけです。

これを破ると、UEFAチャンピオンズリーグなどの出場できなくなるなど、それなりに大きな制裁が与えられます。

 

財政規律を高める影響

影響はいくつか考えられますが、この記事に列挙されていてわかりやすいです。

ファイナンシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後 – 22番の蹴球ファカルティ

「移籍マーケットの縮小」「オフの期間の海外遠征の増加」なんかは、まさにそうだと思います。マンUもアーセナルも日本に来ていましたね。

 

また育成の活性化です。最近では、セレッソ大阪で何人か芽が出てきており育成型クラブが注目されていますが、財政的な理由も存在します。

育成への投資は別会計であるので、バルセロナのように育成を通じた選手の確保や選手の売却資金は有効な手立てであり、さらにこの流れが加速していく。また、日本でもバルセロナやチェルシー、ミランなどが子供向けのサッカースクールを展開しているが、このような動きもコマーシャルとクラブのブランド強化のために広がっていくと予想される。

ファイナンシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後 – 22番の蹴球ファカルティ

 

必要なのはマーケティング能力

サッカービジネスの基礎知識」でも書いてありましたが、最終的にクラブの収益基盤を高めるのはマーケティング能力です。

浦和、鹿島、磐田など収支の黒字転換を果たしたクラブと、そうでないクラブの差を一言で言えば「継続したマーケティング実践能力」である。チーム戦力の実力と魅力がその上に乗って初めて「ブランド価値」が生まれ、クラブ法人は資産を持てる。

いかに目玉となる選手を育成したり、獲得するかという点も重要です。カズが未だに現役であることは素晴らしいですが、クラブとしては選手としての能力以外にも、経済効果も加味しているはずです。

カズの経済効果とは? サッカー選手・三浦知良のリアルな商品価値 | フットボールチャンネル

 

まとめ

  • 財務規律の強化は日本も欧州も同じ
  • 目的は、選手年俸のインフレ抑制を含めた、安定的な財務状況の確立
  • マーケティングを含めたクラブ経営能力が一層必要になる

という感じです。Jリーグは選手年俸が高騰しているという数字は見えませんが、赤字のままでは持続的に発展はできません。どうお金を稼いでいくか、という財務基盤が確立してこそ、選手年俸も健全に上昇できる、ということでしょう。

今日はこのへんで。

未来予測 ―ITの次に見える未来、価値観の激変と直感への回帰

元TechWave編集長・湯川鶴章さんの著書。IT業界のトレンドなどを追いかけるのは、個人的にも好きなわけで、この「未来予測」という、ある意味大胆なタイトルに惹かれてしまいました。

 

技術的に次はどうなる、というのは正直あまり書かれていません。Next Big Thingはもうないんじゃないかとも書かれています。

Googleはインターネットを「世界最大の図書館」にした。Facebookはネットを「世界最大の公民館」にした。地球というグローバル・ビレッジに「図書館」と「公民館」が出来た今、グローバル・ビレッジという「村」はもうこれ以上の施設を必要としないのではないか・・・。もはやNext Big Thingなど、インターネット業界には存在しないのではないだろうか・・・。

そんなスケール感ではなく、今後のビジネスがどう展開されていくのか、どう生きていくべきなのか、というテーゼを発信しているところが、思考を刺激してくるのです。

 

これから訪れる「価値観の変化」

もう既に訪れているのかもしれません。価値観の変化、という大きなテーマが、僕の中では非常に大きくひっかかりを覚えました。

本書の中ではいろいろ例が出てきます。ムダなことを嫌う、金持ちを羨むより貧乏を楽しむ、など新しい価値観が出てきている、と。それはそれで確かに、と思う反面、経済的な事由もあるんじゃないのか、とも思ってしまいます。ただ、確かにそれも含めて、価値観の変化というのは訪れているのでしょう。

どちらかというと、価値観の変化の要因は、個人のアイデンティティをどこに重ねる時代になっているか、というところが大きい気がしています。昔は国で、これまでは企業だったと捉えると、今後はコミュニティとかに帰属意識を委ねるんでしょうか。それとも、帰属意識をあまり強くもたず、個人という単位をより強く意識するんでしょうかね。

いずれにしても、こういう大きなトレンドは、生き方やビジネスにも影響してきます。

 

ビジネスは何で差別化するのか

とっても面白かったのは、ビジネスモデルは真似されやすくなっていて、ビジネスモデルだけでは差別化が難しい、という下りでした。本書で書かれていたひとつのアプローチは、サービス化であり、コミュニティの形成でした。

機は熟した。今、必要なのはデジタルビジネスやコミュニティマネジメントを理解できる人材や企業だ。単にコンテンツをデジタル化して流通させるという単純なやり方だと、海賊版や違法コピーが出て収益は伸びない。そこでコンテンツにネットサービスやコミュニティサービスを加えればいいと思う。コンテンツはコピーできても、コミュニティはコピーできない。

思えば、Googleが買収したYouTubeだって、動画コンテンツを並べるだけではなくて、それを大量に獲得するとともに、検索・コメントなどのサービスを付加することで、サービス化しているわけです。どうやって人を集め、そこをコミュニティとすることができるか。企業が使っているFacebookページとかTwitterというのも、まさにコミュニティとして吸引することで、差別化を強めようという取組なわけですが、なかなかうまくこなせている、と言える事例は少ないんじゃないですかね。

 

なんか、いろいろ発散している感じの本です。ただ、未来を考えるという意味では、様々な示唆が含まれているので、良い本だと思います。自由に生きなきゃだめだなーと。

 

ちなみに、本書は最近始まったKindleオーナーライブラリーで読みました。Kindle端末を持っているAmazonプライム会員は、月に1冊、無料で電子書籍を購読できる、というサービスです。

Amazon.co.jp: Kindleオーナー ライブラリー

本は急いで欲しい場合があるので、随分前からプライム会員だったのですが、正直宅配だけがメリットだとあんまりお得感がないなと思っていたので、このKindleオーナーライブラリーでやっとAmazonプライムの恩恵を大きく受けられるようになったな、という感じです。

というわけで、まだのヒトは、Amazonにプライム会員申し込んで、Kindle端末を買いましょう。今なら、Kindle Fireも割引中です。

 

 

 

サッカービジネスの基礎知識

Jリーグが20周年を迎え、J3を立ち上げたり、プレミアリーグ構想や2部制の検討を行っています。なぜこのタイミングで、そういう変革を行おうとしているのか、というのはこの「サッカービジネスの基礎知識」を読むと、理解が深まると思います。

 

 

Jリーグの創設前からの歴史を、経営面から紐解いていく一冊なのですが、スポーツビジネスの面白さがとてもよくわかる本だと思います。

 

Jリーグ創設時の成功要因は、マーケティングと体制

Jリーグというのは、立ち上がりが決して順風満帆というわけではありませんでしたが、マーケティング的要素が非常に上手だったことがわかります。初期から博報堂が企画に参加し、「Jリーグ」という用語も含め、ブランディングを図っていきます。

本書の中でも、用語については意図的に新しい言葉を用いていったことがわかります。

また、創設メンバーは用語選択にもこだわった。川淵・小倉は当時を述懐し、「プロ野球とのイメージ差別化を明確にするため、全般にわたって言葉、用語をそれまであまり用いられていなかった新鮮なもの、独自なものにした」と語る。たとえば、フランチャイズとファンではなく「ホームタウン」と「サポーター」、プレジデントではなく「チェアマン」(この用語は岡野俊一郎の発案によるもの)、優勝決定戦は「チャンピオンシップ」といった具合である。

また、川淵チェアマンをある種のマスコットとして、メディアを通じて地域貢献をキーにしたメッセージを発信していきます。

 

さらに、体制面でも違いが挙げられます。Jリーグは日本のプロ野球と異なり、JFAが主導権を握っていて、各クラブオーナーによる発言権はあまりありません。日本野球機構では、コミッショナーにより強い権限を与えた方が良い、という意見もあるようです。

コミッショナー (日本プロ野球) – Wikipedia

もちろん日本のプロ野球も発展してますし、選手年俸などサッカーよりも市場パイが大きくなっていますし、どちらが良い/悪いの問題ではないと思います。ただ、Jリーグの初期に関して言えば、中央集権的な体制を築くことによって、テレビ放映権や商品化権の販売で得た収益を各チームに分配する制度を作るなど、リーグ全体がどう栄えていくか、という観点でより強く進めていくことができたのでしょう。また、テレビ放映権についても排他的独占権で価格をコントロールし、安売りにならないようにするなどの効果もありました。

 

スポーツビジネスのバブルとその後

ヨーロッパサッカーがまさにそうでしたら、メディアによってスポーツが優良なコンテンツとして認められることで、大量のメディアマネーが流れこむようになりました。しかし、それも長くは続かず、金銭的には綱渡りな状況です。ブンデスリーガの記事から引用しますと、

UEFAのミシェル・プラティニ会長は、今シーズンから「ファイナンシャル・フェアプレー」の導入を実施している。これはクラブの経営を健全化させるための制度で、簡単に言えば「収入を上回る支出をしてはいけない」。すなわち、身の丈に合った経営を求めるものだ。規定に違反すればCLやELへの出場権が剥奪され、クラブ経営を根本から揺るがす事態に発展する。現在、イングランド、スペイン、イタリアにおいて、ファイナンシャル・フェアプレーのルールをクリアしているクラブは1つもない。逆にドイツでは、多くのクラブが既に条件を満たしている。中でもバイエルンは欧州で最も健全な経営をしているクラブとして知られており、他のクラブのお手本にもなっている。

健全な競争と経営がドイツに繁栄をもたらす(1/2) – OCNスポーツ サッカーコラム

こんな状況なわけです。Jリーグも赤字が続いているクラブがありますし、他人事ではありません。世界的に、どうやって健全なリーグを作っていくのか、というのがサッカー共通のテーマになっていると思います。

そう考えると、冒頭に述べた通り、Jリーグがいろいろ施策を講じている現状もよくわかるのです。Jリーグを含めたサッカービジネス全体の歴史と現状を一冊でよく分かる良書です。

Jリーグで最も経営状況が悪いクラブはどこか?

Jリーグで一番稼いでいるサッカークラブを以前記事に書きましたが、今日はその逆です。一番稼いでいないクラブを書こうと思います。

 

Jリーグで最も稼いでいないクラブは?

まず、稼いだ金額の多さ。2005〜2012年の8年間累計で赤字額が多いクラブです。

 

1位:ヴィッセル神戸(-36億5,300万円)

ヴィッセル神戸 | VISSEL KOBE
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ヴィッセル神戸は、一番赤字ですね。すごい額です。一度経営破綻しかけたところから、楽天の三木谷さんが個人出資している会社がスポンサーなわけですが、なかなか状況はよろしくないようです。年々赤字額は小さくなってますけどね。

20052006200720082009201020112012
-1,228-669-557-479-276-240-90-114

(単位:百万円)

 

2位:東京ヴェルディ(-26億5,100万円)

東京ヴェルディ/TOKYO VERDY
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Jリーグ設立初期は隆盛を極めたヴェルディですが、今やJ2の常連になっており、利益も乏しい感じです。ずっと赤字というわけではないんですが、特にJ2に落ちたのと日本テレビの赤字で費用削減が行われた2009年はインパクトが大きく、赤字額も大きくなってます。

20052006200720082009201020112012
5-8721010-1,454-36367

(単位:百万円)

 

3位:コンサドーレ札幌(-14億100万円)

コンサドーレ札幌オフィシャルサイト | CONSADOLE SAPPORO
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コンサドーレ札幌も赤字続きです。コンスタントに。

20052006200720082009201020112012
-136-350-187-152-135-234-86-121

(単位:百万円)

 

Jリーグで最も経営が安定していないクラブは?

前回の記事と同じように、単年度赤字回数を見ようと思います。8年間でずっと赤字のチームが3チームあります。が、既に出ているように、ヴィッセル神戸とコンサドーレ札幌は8年間ずっと赤字です。そして、最後の1チームが以下です。

 

アルビレックス新潟

アルビレックス新潟 公式サイト|ALBIREX NIIGATA OFFICIAL WEBSITE
[scshot url=”http://www.albirex.co.jp/”]

Wikipediaにも、経営状況に関する記載がありました。

しかし、J1昇格に伴う強化費の増加に加え、観客動員数の落ち込み等を要因とする営業収入の落ち込みもあり、2005年から公表されている収支報告では毎年営業赤字を計上した。チケット売り上げ等の興業収入は最大時の2005年に約12億円を計上したが、2012年は最大時から5億円減となる約7億円、興業収入の柱となるシーズンチケットの売り上げは最盛期の2万枚からおおよそ半減している[30]。2009年度以降は東北電力が購入した施設命名権による収入や、後援会からの寄付金等で最終的な黒字を確保しているものの、依然3億円を超える累積赤字は解消されていない[35]。

アルビレックス新潟 – Wikipedia

 

チームを強化したりJ1に昇格するためには費用が必要なわけですが、収入がないと赤字が恒常的に発生してしまうわけです。あるいは、強力なスポンサーを獲得しても、東京ヴェルディのようにどこかで状況が変わり、収入を確保することも難しくなるかもしれません。

というわけで、Jリーグがもっと継続的に栄えますように。

AppleTVとChromecastによる今後のリビング戦争を予想する

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AppleTVを買ってから、意外に堪能しているのはホームシェアリングです。これで、Macに保存してある動画や音楽をテレビで再生できるようになります。購入した感想は、以前書きました。

AppleTVを買って2週間ぐらい経ったので使用感まとめ | Synapse Diary

 

ただ、いつの間にかホームシェアリングの調子が悪くなり、なんだかなーと思いながら過ごしていました。しばらくしてから思い立ち、調べてみるとAppleにサポートページがありました。

ホームシェアリングのトラブルシューティング

原因として考えられるのは、ネットワークの問題だったり、Apple IDを確認する、などがあります。結論からすると、我が家の場合はホームシェアリングの台数オーバーで接続できなくなった、ということでした。ホームシェアリングは最大5台までとなっており、それを超過すると接続できなくなるようです。(上記リンクの2つ目を読んで気づきました。)

MacBook Airなどいろいろ接続していたら、いつの間にか5台を超えており、一台接続解除したら、AppleTVからの接続も復活しました。こういうの、気をつけないて見てないと、急に使えなくなる感じになるので、怖いですねという話でした。というのが今日の前振りです。

 

AppleTVとChromecastのリビング戦争

ちなみに、AppleTVはいつの間にか累計販売台数1300万台を突破し、その半数は2012年で達成したそうです。一方で、GoogleはChromecastという、より安価で似たようなデバイスを発売開始しています。

「Chromecast」はグーグルの「ミラクルな端末」 « WIRED.jp
「Chromecast」で狙うテレビ市場–グーグルの三度目の正直 – CNET Japan
ASCII.jp:Google「Chromecast」と「Apple TV」、どこが違う? (1/3)|Apple Geeks
Why Google Chromecast isn’t quite Apple TV… yet | Macworld

これらの記事を読む限り、AppleTVとの違いはオフラインコンテンツのストリーミング可否と価格ぐらいで、対応サービスはいずれあまり変わらなくなるんじゃないでしょうか。正直、テレビというのは未だに生活に大きな影響を及ぼしています。それは、リビングに設置されている場所という意味でも、マスメディアとして流し続けるコンテンツという意味でも。

だって、総務省の調査によると未だに一日のテレビ視聴時間は3時間以上ありますから。この視聴時間をどう奪い、マネタイズしようかと、いろんなプレイヤーが狙っているところだと思います。

1日当たりのテレビジョン放送視聴時間の推移
1日当たりのテレビジョン放送視聴時間の推移

引用:総務省|平成24年版 情報通信白書

そして、AppleTVやChromecastなどは、いまだに使う人を選ぶ感じの敷居の高いデバイスな気がしています。ここの敷居を低めていくのは恐らくゲーム市場あたりだと思っていて、今回ChromecastがSDKを公開して、マルチプラットフォームでいろんなデバイスに対応しているのは、そのあたりのお手軽さと多様なデバイスによる敷居の低さを実現していく戦略なのかな、と思っています。

 

正直、僕はAppleTV持っていますし、ゲームもほとんどやりませんので、Chromecastに興味はありませんが、今後この市場でどういう戦いが繰り広げられていくのかは興味深いところです。

MBAを独学で学ぶためには、どんな本を読むべきか

いろいろ聞かれるのも面倒になってきたっていうのもあるので、ここで思いつくまま列挙しておきます。ただ、いざ洗い出してみると、あまり基本的なテキストが少ないですね。。。

関心がある人たちの参考になればと思います。

 

起業家・経営者

経営を学ぶのであれば、経営者の考え方や体験談を読むのが一番効果的かと思います。理論的なものは薄くても、非常にリアリティがあって、感性的なものを学び取る教材としても良いと思います。

 

宅急便という宅配の革命を市場に起こした、日本で代表される経営者の一人。古くから語り継がれる名著ですが、いつ読んでも非常に価値があると思います。

 

起業家精神というのを学ぶことは難しいとは思いますが、この本はそういう感覚を提示してくれます。

 

 

ビジネスモデル・経営戦略

 

読んだときは衝撃を受けました。経営戦略を「ストーリー」として捉えるというのは、非常に重要な要素だと思います。

 

 

経営に必要な洞察力をどう養うか。ビジネススクールにおけるケースメソッドの利点もよくわかります。

 

ビジネスモデル全体を、総合的に俯瞰できるフレームワーク。あまり詳細な部分は苦手であるのの、複雑な経営環境を全体的に捉えることができます。

 

 

マーケティング

マーケティングというのは、経営に密接に結びついていると思ってます。ただ、あまりおすすめできそうな本がなかった。。。

ビール業界というのは、アサヒのスーパードライが登場してから戦争と呼ばれるぐらいの戦いを繰り広げてきた。マーケティングの良い事例です。

 

 

組織・人事

組織論についてはアメリカを中心に歴史があり、脈々と積み上げられてきた実績があります。ただ、なかなか対象が人間なものですから、とらえどころがあるようでない、という難しいジャンルでもあったりします。

この本は、そういう組織論の歴史をおさらいしつつ、これからの人材にはどういう要素が求められるのか、ということが考察されています。

 

内容はオーソドックスですが、人材マネジメントの基本を抑えるという意味では良い本だと思います。

 

言わずと知れたダニエル・ピンクです。こちらも、モチベーションの源泉を洞察し、今後の組織に必要な要素が述べられています。

 

オペレーション

あまりオペレーション系の本は読んでいませんでした。強いてあげれば、このサービスストラテジーです。サービス業というものを戦略やオペレーションとして捉えていて、とても面白い内容でした。第3次産業隆盛のこの時代に、あまりないジャンルかな、と。

 

財務会計・ファイナンス

財務会計の基本を最初に理解するには、この2冊が良いと思います。図解で示されたときは、目からうろこでした。

 

バフェットの理論というのを学ぶには、この2冊が良いと思います。企業価値や市場と企業の関係、投資の考え方が良くわかります。

 

経済

経済学は、未だにいろんな人がいろんなことを言う、正解が捉えづらい学問だと思っていますが、それでもちゃんと学問として積み上げられています。入門編としてはこの2冊で良いんじゃないかと。

 

古典から読み解く、現在の経済学。歴史によるつながりがわかって、非常に頭が刺激されます。

 

少し前からのトレンドは、やはり行動経済学です。この本は少しヘビーなのですが、たくさんの発見がありました。

 

 

スキル

おまけ的な感じですが、プレゼンスキルとしてこの本を。

 

ざっと思いつく感じで書いたので、漏れてるのがあるかもしれませんが、こうして自分で整理してみると、古典とかちゃんと読んでないことがわかりました。

どなたか、他におすすめの本があれば教えてくださいませ。

 

 

中小企業経営者・HP担当者は「永江一石の『何でも質問&何でも回答』メルマガ」を読もう

永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガを愛読しているのですが、メルマガ中に「宣伝してください」という記載があったので、このメルマガの価値について書こうと思います。

 

Webサイトは中小企業にとって貴重なチャネル

最近改めて思うのですが、中小企業にとってはあまり営業を十分にやるリソースがありません。そうなると、Webサイトを持っておくとか、ちゃんと販売チャネルとして機能させる、ということは、とても重要な位置づけになると思うわけです。

もちろん、簡単にWebサイト立ち上げれば売上が劇的に上がったり、仕事が舞い込んでくるわけではありませんし、それなりに労力をかける必要があります。ただ、Webサイトには物理的制約を超えた販売やプロモーションが可能になりますし、可能性を広げることができるわけです。

 

足りないのはリテラシーとリソース

何となく重要性はわかっても、結構作ったまま放置されているWebサイトもたくさんあります。なぜかといえば、リテラシーがあまり高くない場合が多い気がします。つまり、Webサイトの重要性やどう経営に活用していったら良いのかわからない経営者が多いと思うのです。

また、実際そういうリテラシーがあったとしても、Webサイトには手間とお金がかかります。特に手間の部分は面倒です。ブログであれば、頻繁に更新しないといけませんし、アクセス解析やPPC広告などを打って、効果的に集客しないといけません。そういうリソースが足らない企業が多いのも現状なんじゃないかと思います。

 

BtoBだってホームページは重要になっている

BtoCならまだしも、BtoBだったらWebサイトなくたっていいんじゃないの?という話も聞いたりしますが、僕は正解だとは思いません。もちろん一概には言えませんが、Webサイトの重要性はどんどん高まっていると思います。

ただでさえ営業リソースが不足しているのに加え、営業に行ったとしてもファースト・コンタクトで全てを伝達できるわけではありません。そういう意味でも、事業内容や顧客へのメリットが明確に書かれたWebサイトは案件獲得に寄与するでしょう。

こういう調査結果もあるくらい、Webサイトが重要な情報源になっているわけです。

BtoB向けサイトの重要性 | BtoBサイト調査2012 | 日本ブランド戦略研究所 | Japan Brand Strategy

 

だから、「永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ」を読もう!

そもそもWebサイトを運営するためには、IT技術やデザイン、トレンドなども理解しないといけませんし、それを経営に活かすためには、マーケティングや経営の発想も重要になります。これらは、財務・税務・法務などと同じように、本来であれば外からスペシャリストを招いで獲得するレベルの知識・ノウハウだと思います。

とはいえ、そんなコンサルタントを常に雇うほどのお金はないとなれば、自分で情報収集するところから始めましょう。このメルマガは、価格も安い(315円/月!)ですし、なによりWebをどうやって経営に活かすか、という観点でいろいろ情報が得られるので、大変貴重です。

永江一石の「何でも質問&何でも回答」メルマガ

低価格のため今はまだ赤字なようなので、値上がりするのを防ぐためにも、興味がある人はぜひ購読しましょう。初月は無料ですし。

 

あと、ブログもおすすめです。

More Access! More Fun! | 永江一石のITマーケティング日記

PDFをExcel、Wordに変換するMacソフト「PDFから簡単変換!」

たまに、PDFからExcelやWordに変換する必要に迫られます。ひとつひとつ手でデータを打ち込むしかないのか、と思うと絶望的な気持ちになりますよね。検索したところ、「PDFから簡単変換!」というソフトで問題なく実現できたので、メモとして書き残しておきます。

Mac版「PDFから簡単変換!」|ワンダーシェアー
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複数のPDFファイルを連結してOfficeファイルにすることもできますし、OCR機能を駆使してスキャンしたPDFファイルを変換することもできるようです。細かいところまでは確認していません。

今回試用版で、表形式に印字されたPDFファイルをExcelに変換してみたところ、問題なくできました。1ページごとに1シートで出力される、というのは良いのか悪いのか悩むところでしたが(設定で選べると良いのかな)。

細かい操作方法は、こちらから。
PDF EXCEL 変換。PDFファイルをEXCELに変換するソフトと使用方法

十分有用だと思います。複数回使うことになったら、購入しようかなー。

 

それにしても、未だネット上ではPDFファイルで公開されているデータも多いし、業者が囲い込みのためにPDFファイルしか出力を認めないソフトウェアもあったりするので、こういう変換ツールというのは時にとても有用だったりします。あるいは、クラウドソースとして安い単価で発注できるなら、需要があるかもしれません。

Jリーグにビッグクラブは必要か?勝ち点とお金の関係から考える

「サッカービジネスの基礎知識」を読んでいるのですが、お金とサッカークラブの切っても切れない関係が書かれていて、非常に興味深いです。今日は、本の内容を踏まえてJリーグにビッグクラブが必要であるか、という点を考えたいと思います。

 

 

サッカーにお金が流れこむようになった理由

一言で言えば、メディアによる競争激化です。サッカーが良質なコンテンツとして認識されると、様々なテレビメディアが放映権を獲得するために熾烈な競争を繰り広げていきます。そして、サッカーそのものにお金が流れこむようになると、裕福はクラブは資金力を活かして選手を獲得していきます。これが選手の年俸高騰を生むわけです。

プレミアリーグでは移籍金が高騰し、資金力がある4チーム(マンチェスターユナイテッド,リバプール,チェルシー,アーセナル)しか優勝を狙うことが難しくなっていると書かれています。近年では、マンチェスター・シティが優勝するなど、少し状況は変わってきているようですが。

面白いので、少し引用します。

会計事務所大手デロイト・トウシュは00年、「弱小クラブが生き残るためには近い将来、合併の必要がある」という報告書を発表した。それによると、選手年俸は高騰を続けており、優秀な選手の獲得のためには01年はリーグ全体で2億5000万ポンド(約400億円)の移籍金が支払われ、うち49%が外国籍の選手獲得のため海外市場に吸収された。中堅あるいは下位のクラブが有力クラブに引き離されないようチーム強化を進めようとすれば、ますます出費が増えるという図式となって、エリートクラブはかつてないほど裕福な経営環境にあるが、チーム間の格差が拡大しており「20チームで構成するリーグの維持は困難。同程度の資金力を持つクラブ同士だけの、規模の小さなリーグへの再編は避けられない」とまで結論づけていた。

つまり、ビッグクラブができてお金が回るようになった反面、お金と勝ち点の関係性が非常に高くなってしまい、弱小クラブが生き残るのが厳しくなってしまったというわけです。

 

Jリーグにおけるお金と勝ち点の関係

一方で、Jリーグではお金と勝ち点の関係はどうなっているのでしょうか。各年度のJ1の選手年俸の総額と、各チームの勝ち点と選手年俸との関係を示した決定係数を整理すると、以下のようになります。

年度年俸総額(百万円)決定係数
20038,8040.296
20049,2120.330
200510,9780.011
200610,6550.315
200710,4440.509
200810,5660.127
200911,3580.152
201011,1370.229
201110,2620.465
201210,6180.106

まず選手年俸の総額としては、ここ10年であまり増えていません。むしろチーム数は増えているので、個人の平均としては低下してるんじゃないかと思います。

また、決定係数については年度によって結構異なります。資金力がそのまま成立する年と、そうでない年があるようです。つまり、Jリーグはまだお金以外でも勝負が決まる要因はあるのでしょう。

 

Jリーグにビッグクラブは必要か

冒頭に戻ると、お金が生まれる→資金力で選手を集める→選手の年俸が高騰する→ビッグクラブのみが勝つ、というサイクルがヨーロッパでは生まれている、という話でした。一方で、今のJリーグを見ると、決定係数もまばらですし、実際毎年優勝チームは変わっていて、戦力は均衡状態になっています。

今のJリーグの問題は何かと言えば、リーグ全体が縮小均衡になるのではないか、という危機感です。そのためには、お金を生み出す仕組みが必要であり、アジア進出を狙っているのも、プレミアリーグ構想も、その一環だと思っています。

また、ビッグクラブというのもひとつの解決策でしょう。福田さんが非常にわかりやすい解説をしています。

Jリーグのクラブが常にACLで優勝争いをして、毎回クラブワールドカップに出場することを目指すのであれば、もっと資金力と競争力をつけないといけない。ACLで中国、韓国、中東のクラブと互角以上に渡り合って、さらにクラブワールドカップでヨーロッパや南米のクラブに肉薄することを目標にするのであれば、Jリーグで中心になっていくビッグクラブが存在すべきだ。そこに資金と優秀な選手が集まってくる図式がないと、世界の舞台で勝ち抜いていくことは難しいだろう。

Jリーグにビッグクラブが存在することの功罪を考える|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|J Football

一方で、戦力が偏りすぎると国内リーグがつまらなくなる、というデメリットについても触れています。しかし、それでもビッグクラブはリーグ全体を実力やお金の面で引き上げられる、ということです。

そういえばカズさんも、選手に希望を与えるためにもビッグクラブは必要、と言っていますね。

カズ 開幕から20年、Jにはビッグクラブとスターが必要 ― スポニチ Sponichi Annex サッカー

これは、10年間の各クラブの年俸と勝ち点の関係を示した散布図ですが、やはり中位の層に年俸が集中しています。もう少し、年俸を高く支払えるクラブが多くあっても良いんじゃないか、ということですね。

Jリーグの過去10年における選手年俸と勝ち点の関係
Jリーグの過去10年における選手年俸と勝ち点の関係

 

まとめ

というわけで、ヨーロッパでは、過剰なビッグクラブ志向とメディアバブルの崩壊から、財政面の見直しが進んではいますが、今のJリーグの現状から考えると、個人的にもビッグクラブができあがることには賛成です。

といっても簡単にできるわけではないので、海外を含めたマーケティングに長けたクラブが出てくる必要があると思います。福田さんの言う通り、今一番ビッグクラブに近いのは浦和レッズじゃないですかね。前回書いた通り、浦和は収益力も一番ですし。

Jリーグで最も経営状況が良いクラブはどこか? | Synapse Diary

 

Jリーグで最も経営状況が良いクラブはどこか?

前回の記事「サッカーのクラブ経営を費用分解から考える」で、Jリーグクラブの費用構造を見ましたが、やはりクラブによっていろいろ状況は違います。というわけで、今回は各クラブの経営状況の違いを見たいと思います。

 

Jリーグで最も稼いでいるクラブは?

まず、稼いだ金額の多さ。2005~2012年の8年間で最も利益を上げたクラブです。途中から参加しているクラブにとっては不利になりますが、まあ仕方ありません。

 

1位:浦和レッズ(8億7,700万円)

浦和レッドダイヤモンズ公式サイト|URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE
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なんだかんだと抜群の観客動員数を誇る浦和。素晴らしい限りです。Wikipediaではこんな分析が書かれていました。

Jリーグトップの営業収益を上げる背景には以下の点が挙げられる。 過去に13シーズン(1996年-1999年、2001年-2002年、2006年以降)でJリーグ観客動員1位を記録。2007年はカップ戦(ナビスコ杯4試合、ACL6試合)を含めた年間観客動員数がJリーグクラブでは初めて100万人を突破し、2008年はリーグ戦でJリーグ史上最高となる809,353人を動員した。 1人当たり動員単価が約2,900円(新潟:約1,700円)と比較的高水準である。これは、招待券による入場者が極めて少なく(同年度0.5%[5])、割引率10%未満にも関わらずシーズンチケット(埼玉スタジアムの約2万2,000枚を含む)が軒並み完売していることから、それらが入場料収入の確保に高い安定性をもたらしていることが挙げられる。

浦和レッドダイヤモンズ – Wikipedia

 

2位:京都サンガ(8億5,200万円)

京都サンガF.C.オフィシャルサイト
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あまり意識していなかったですが、京都サンガも結構稼いでいます。収入は浦和レッズの半分以下ですが、費用管理が適切なんでしょうね。

 

3位:ジェフユナイテッド千葉(8億4,900万円)

ジェフユナイテッド市原・千葉オフィシャルサイト | JEF UNITED ICHIHARA CHIBA Official Web Site
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こちらも比較的安定経営です。収入の額でいえば、京都とほぼ変わらない感じですね。

 

Jリーグで最も経営が安定しているクラブは?

利益の額で見ましたが、安定性という意味では単年度黒字を継続していることが重要になってきます。というわけで、過去8年で単年度黒字の回数が多いクラブを見てみましょう。1位が同率で2チームいます。

 

同率1位:川崎フロンターレ(単年度黒字回数:8回)

KAWASAKI FRONTALE : ホーム
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ものすごく稼いでいるわけではないですが、ずっと黒字です。

 

同率1位:ヴァンフォーレ甲府(単年度黒字回数:8回)

VENTFORET KOFU – Official Web site –
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こちらもずっと黒字です。川崎と比べても収入は半分以下ですし、J1とJ2を行ったり来たりしていますが、黒字はできるってことですね。

 

3位:浦和レッズ(単年度黒字回数:7回)

浦和レッドダイヤモンズ公式サイト|URAWA RED DIAMONDS OFFICIAL WEBSITE
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3位はレッズでした。過去8年でみると2010年だけ赤字になっているんですよね。

 

というわけで、Jリーグ内でも赤字のクラブもいれば黒字のクラブもあるわけで、J2よりJ1の方が 安定化しやすいと書きましたが、必ずしもそれだけでもないようです。

自分のチームを応援するときに、赤字になっているかどうかはあまり気にしないのかもしれませんが、かつて栄光を極めたヴェルディ川崎(現:東京ヴェルディ)が凋落したように、安定的なクラブ運営を行うためには、クラブ経営能力を高めなければいけないわけです。

参考:安定したクラブ経営を目指して|コラム|サッカー|スポーツナビ