クラブライセンス制度が導入されたJリーグは、今後どう変わるか?

Jリーグではクラブライセンス制度が導入されています。3年間赤字が続くとJFLに降格になってしまいます。赤字クラブがいるのは今に始まったことではないですが、なんで今導入なんでしょうか。

ひとつ参考になる数字を出してみました。以下のグラフがそれです。これは、2005~2012年の8年間で、各クラブの営業利益(損失)を並べてみたものです。左が黒字で右にいくにつれて赤字になっていきます。

Jクラブの営業利益(損失)(2005-2012)
Jクラブの営業利益(損失)(2005-2012)

眺めてもらえばわかりますが、黒字に比べて赤字の方が絶対額も大きいですし、数も多いです。実際、サンプル数275のうち、黒字は145。赤字は130です。

また、黒字の総額は11,303百万円。赤字の総額は-20,810百万円。総額としては、-9,507百万円の負け越しになっています。

というわけで、Jリーグは全体として赤字です。

 

UEFAで始まっているファイナンシャル・フェアプレー

UEFAでもファイナンシャル・フェアプレーという、同様の財務規律を求める制度が開始されています。導入の目的は、この記事に書かれています。

ファイナンシャル・フェアプレーの主要目標は、クラブサッカーの財務に規律と合理性を植え付けること、俸給や移籍金にかかる上昇圧力を和らげてインフレ効果を制限すること、クラブに支出を収入の範囲内に抑えることを奨励すること、クラブが確実に債務を期日までに返済できるようにすること、そして欧州クラブサッカーの長期的持続性を守ることにある。

UEFAチャンピオンズリーグ – ニュース – UEFA.com

これまでは、テレビ放映権の高騰や、特定オーナーによってサッカークラブに資金が流れ込み、選手の年俸もインフレ傾向にありました。そうなると抑制がきかなくなるので、クラブの実力にも格差が生じて、リーグ全体がバランスを崩していくことになります。それを抑制するのが、ファイナンシャル・フェアプレーというわけです。

これを破ると、UEFAチャンピオンズリーグなどの出場できなくなるなど、それなりに大きな制裁が与えられます。

 

財政規律を高める影響

影響はいくつか考えられますが、この記事に列挙されていてわかりやすいです。

ファイナンシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後 – 22番の蹴球ファカルティ

「移籍マーケットの縮小」「オフの期間の海外遠征の増加」なんかは、まさにそうだと思います。マンUもアーセナルも日本に来ていましたね。

 

また育成の活性化です。最近では、セレッソ大阪で何人か芽が出てきており育成型クラブが注目されていますが、財政的な理由も存在します。

育成への投資は別会計であるので、バルセロナのように育成を通じた選手の確保や選手の売却資金は有効な手立てであり、さらにこの流れが加速していく。また、日本でもバルセロナやチェルシー、ミランなどが子供向けのサッカースクールを展開しているが、このような動きもコマーシャルとクラブのブランド強化のために広がっていくと予想される。

ファイナンシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後 – 22番の蹴球ファカルティ

 

必要なのはマーケティング能力

サッカービジネスの基礎知識」でも書いてありましたが、最終的にクラブの収益基盤を高めるのはマーケティング能力です。

浦和、鹿島、磐田など収支の黒字転換を果たしたクラブと、そうでないクラブの差を一言で言えば「継続したマーケティング実践能力」である。チーム戦力の実力と魅力がその上に乗って初めて「ブランド価値」が生まれ、クラブ法人は資産を持てる。

いかに目玉となる選手を育成したり、獲得するかという点も重要です。カズが未だに現役であることは素晴らしいですが、クラブとしては選手としての能力以外にも、経済効果も加味しているはずです。

カズの経済効果とは? サッカー選手・三浦知良のリアルな商品価値 | フットボールチャンネル

 

まとめ

  • 財務規律の強化は日本も欧州も同じ
  • 目的は、選手年俸のインフレ抑制を含めた、安定的な財務状況の確立
  • マーケティングを含めたクラブ経営能力が一層必要になる

という感じです。Jリーグは選手年俸が高騰しているという数字は見えませんが、赤字のままでは持続的に発展はできません。どうお金を稼いでいくか、という財務基盤が確立してこそ、選手年俸も健全に上昇できる、ということでしょう。

今日はこのへんで。

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