AIはどうやって社会に浸透していくのか?「予測マシンの世紀」を読んで理解する

AIという言葉はすっかりいろんなところで使われるワードになりましたが、実際どのように世の中を変えていくのか、というところでいえば、まだまだ実感できる人は少ないんじゃないでしょうか。

ソフトバンクの孫さんが「AIは予測」と言っていましたが、

孫社長は「AIの一番得意なことは予測だ。何でもかんでもやらせるべきではない」とも指摘。需要と供給を適切に予測することで、ビジネスでは在庫の回転率や販売効率の劇的な改善が期待できると説明した。

「日本、AI活用に目覚めよ」ソフトバンクG孫社長  :日本経済新聞より引用

この本を読むとその意味がわかるでしょう。

本書は、第三次AIブームのきっかけとなったトロント大学の経済学者が書いたAIの現状を示した一冊です。経済学の観点から書かれた本書は、AIがビジネス活動などに使われたときに、どういう効果をもたらすかを具体的に示してくれています。

基本的なAIの知識を理解したら、ぜひこの本を読むことをおすすめします。

AIはこれから幻滅されていく?どうしたらビジネスの現場で使われるのか

ガードナーのハイプ・サイクルによると、AIはこれから「幻滅期」を迎えるようです。

AIやブロックチェーンは幻滅期へ–ガートナー、日本の最新ハイプ・サイクルを発表 – ZDNet Japan

ディープラーニングで始まった第3次AIブームによって、いろんな場面でAIは使われて、どんどん世の中を変えていくというイメージを持たれているかもしれませんが、実際には様々な制約や限界があり、どのようなテーマでも万能に使えるわけではありません。そのことにいろんな人が気づき始めています。

 

本書ではAIが出す結果は基本的には「予測」であると言っています。そして「予測」とは次のように表現されています。

予測とは、欠落している情報を補充するプロセスである。予測においては、しばしば「データ」と呼ばれる手持ちの情報に基づいて、新たな情報を生み出していく。

 

なので、単純に「未来を予測する」ということだけでなく、様々な用途に対する「予測」が意味合いとしては含まれます。例えば、直近の顧客の行動を「予測する」であったり、何等かの行動を行った結果がOK/NGなのかを「予測する」であったり。

AIはこのような「予測」をコンピュータ上で実現することで、予測コストを低下させていきます。この予測コストの低下に対して、AIの投資額がバランスされれば、AIの導入されることになります。まずここで重要なのは、AIには適用領域の向き・不向きがあるので、適切にその領域を見極めることが重要だということです。

どういう条件を満たしたら、AIが人間を置き換えるのか?

ただ、AIはそれだけでは実はうまく使われないことが多いです。

AIは万能的な何かだと思っている人もまだいる気がしますが、実際はそうではありません。間違った判断を下すケースもあります。具体的には、AIは正解を不正解と言う場合もあれば、その逆で正解を不正解と言ってしまうケースもあります。その確率がどの程度かによって、実際の経済的な効果がわかるのです。

本書ではクレジットカードによる不正利用の検出が例として出てくるのですが、クレジットカードのある決済データを「不正利用」とAIが判断したときに、それが正しい場合と誤っている場合があります。正しいときは問題ないですが、誤っている場合は「正しく使っている人を不正として、ユーザーの利便性を低下させている」となります。

誤検出が多くてユーザーの利便性を大きく低下させると、ユーザーが離反してしまうかもしれません。AIの使い方によっては、そういう経済的リスクを誘発する可能性があるわけですね。

機械の判断の正しさを確信できるときには、プログラム化された判断に基づいて機械が行動を決めても問題はない。しかし状況が不確かなときは、機械に判断を任せる前に予め、間違えた場合のコストを慎重に評価しておかなければならない。予測が正しい場合と間違っている場合のどちらに関しても、人間の判断が必要とされる。結局のところ不確実な状況では、特定の決断からどんな見返りが得られるか判断するためのコストが高くついてしまう。

 

こういう、AIがどういうリスクを考慮し、導入を考えなければならないかがちゃんと書かれているのが、本書が良いなと思うポイントです。

AIが導入されると、その業務はどう変化するのか?

本書では、Googleやアマゾンが台頭してきたときに、経済的な価値としてどういうことが起こったのかが述べられています。

例えばGoogleが情報探索コストを著しく低下させたことで、調べる行為そのものではなく、得られた結果からどう判断するかが、人として重要な価値になりました。

ビジネスにAIが導入されることで、様々な業務プロセスの一部に大きなコストの低下が生じる可能性が高いです。そうやって価値が低下した部分にフォーカスするのではなく、その周辺の変化に注目すべきでしょう。

スクールバスの運転手の例が挙げられていました。

「スクールバスの運転手」と呼ばれる人物が、子どもの自宅と学校を往復するバスの運転をしなくなったら、給料を支払う必要のなくなった自治体はそのぶんを別の支出にまわすべきなのだろうか。いや、そうはならない。バスが自動運転になったとしても、現在のスクールバスの運転手は運転のほかにもたくさんの役割を引き受けている。まず彼らには、大人として大勢の学童の集団を監督する責任があり、バスの外で発生する危険から子どもたちを守らなければならない。同じように重要な役割が、バスのなかの規律を維持することだ。子どもたちを管理して、お互いにトラブルを起こさないよう配慮するためには、人間の判断が未だに必要とされる。バスが自動的に動いても、こうした補足的なタスクが消滅するわけではない。むしろ、バスに同乗している大人はこれらのタスクにもっと集中できるようになる。

 

何か新しい技術やサービスが出てきても、すぐに置き換わることの方が少ない。そして、改めてAIが代替する価値や、置き換えられない要素を考えるきっかけになるでしょう。

 

技術的な理解も重要ですが、ビジネスや社会に浸透していくことを考えると、経済学的なアプローチからAIを理解することが非常に有効ですね。新しい技術のきらびやかさに目を奪われるのではなく、冷静に俯瞰してとらえることで、惑わされることなく本質的な理解ができるということです。AIは万能なものではなく、あくまでツールです。今のところは。

CASE時代の自動車業界を理解するための本4冊

自動車業界の激変がすごいです。

イーロンマスクのテスラの時価総額がGMを抜いたり、Uberが上場したり、トヨタとソフトバンクが提携したりと、激動になっています。

テスラ、GM抜き時価総額で全米首位の自動車メーカーに – Bloomberg

自動車という捉え方だけでなく、モビリティという広い概念も多く登場するようになっています。

これらの自動車を取り巻くモビリティ関連が、どのような方向に進んでいるのか理解したくて、4冊ほど読みました。

2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路

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まず、全体の動向を知るならこれ。世界各国の方針、自動車メーカーの動向だけでなく、米中のIT企業、Uberなどのライドシェア企業まで、それぞれのアプローチが書かれています。様々な領域で自動車産業に関連する動きが生じていることがよくわかります。

Mobility 3.0―ディスラプターは誰だ?

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こちらは最近出たものですね。コンサル会社の本らしく、いろんな調査結果や、コンセプトが整理されていて、示唆が多いです。

例えば、大きな動きのひとつでいえば、バリューチェーン全体でみると、価値の源泉がこれまでの自動車製造領域から、下流のサービス領域にシフトするというものです。そうなると、顧客とのコンタクトポイントをどう作るか、コネクテッドカーという取り組みが重要になったり、シェアリングサービス会社が強くなったりと、いろんな変化が今後生まれると分析されています。

MaaS モビリティ革命の先にある全産業のゲームチェンジ

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MaaSは、Mobiliry as a Serviceということで、移動手段ごとに最適化されるのではなく、人の移動を中心に最適な移動手段を提供するというコンセプトです。

MaaSという考え方が海外でどうやって生まれ、今各社がどう取り組んでいるのか。公的機関、鉄道会社、自動車メーカー、IT企業など、様々なプレイヤーが入り乱れる、混沌さがすごい領域です。

今後の移動需要については、交通密集地である都市部で発展するという話と、地方部の方は過疎化で足がなくなるのでニーズが高い、という両方の側面があります。実証実験を含め、国内でもいくつか動きが出てきているので、今後も動向は注目です。

こちらの記事が、日本版MaaSの動きやポイントがまとまっていて、おすすめす。

【MaaS】日本版MaaSのポイントは3つ~中間とりまとめ要点と今後の動き~国土交通省公共交通政策部小川課長補佐[インタビュー] | レスポンス(Response.jp)

5Gビジネス

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自動車業界というよりは、ちょっと違う角度から、5Gで通信規格が変わったときに、いろんな社会や産業にどう影響あるのか知りたくて読みました。

自動車についても一通り触れられており、今後のCASE時代に、5Gの影響もあるのがわかります。通信が大容量、高信頼性、多数同時接続が実現したときに、コネクテッドを中心にした自動車の制御やサービスについても、いろんな変化が生まれるでしょう。

特に自動車の制御系は、遅延が許されない領域なので、5Gの恩恵を受ける可能性が高いですね。

 

以上です。直接は読んでいませんが、他にコネクテッドやEVに特化した本もあるようなので、こちらも興味がある方は読んでみると良いかもしれません。

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このブログで売れたビジネス書(2018年版)

もう2019年も1月が終わろうとしていますが、今更ながら2018年にこのブログで売れたビジネス書をまとめておきます。あまり上半期から変化は見られませんでしたが、若干の入れ替わりもあります。

このブログを読む人たちの傾向を知るための定点観測として。

第20位 全史×成功事例で読む 「マーケティング」大全

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このブログでは、1冊にまとめて学習できる本が好まれているように思いますが、マーケティングの事例を絡めたものであれば、この本。

第19位 小倉昌男 経営学

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上半期では入っていませんでしたが、根強い人気ですね。ヤマト宅急便を新しい事業として生み出した経緯から、経営哲学が見える良書です。

第18位 わかったつもり 読解力がつかない本当の原因

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読解力は、最近「AI vs. 教科書が読めない子供たち」でも懸念が提示されていましたが、これからの人間にとって、とても重要になるスキルでしょう。

第17位 グロービスMBAマネジメント・ブック

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グロービスの本は、経営知識を幅広く学ぶには良いシリーズ。

第16位 入門経済学

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お堅いイメージのあるタイトルと表紙ですが、意外に読みやすいのが特徴。

第15位 イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」

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個人的にも時々読み返す一冊。課題解決アプローチの教科書的な本です。

第14位 ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件

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この本も時々読み返しますね。「競争戦略って複雑で美しいものだな」って読むたびに思います。

第13位 知識創造企業

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ナレッジマネジメントを知るには欠かせない一冊。SECIモデルとか知っておくと、組織運営にも役立ちます。

第12位 グロービスMBAマーケティング

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第11位 リーン・スタートアップ

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第10位 ドラッカーが教える 実践マーケティング戦略

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ドラッカーは根強い人気ですね。

第9位 ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

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2018年の中で、注目だったのはこの本ですね。働き方改革、副業解禁など、いろいろ職場や働き方のモデルが変わっていく中で、どういう組織運営が今後在りうるのかを考えさせられます。

第8位 20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義

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第7位 ざっくり分かるファイナンス 経営センスを磨くための財務

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ファイナンス思考」でも紹介されていた本書ですが、ファイナンスを学ぶという意味では、最初の一冊として良いと思います。

第6位 この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講

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とっつきにくいと思われる経済学をわかりやすくマンガで説明してくれる本。

第5位 財務3表図解分析法

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第4位 この世で一番おもしろいマクロ経済学――みんながもっと豊かになれるかもしれない16講

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第3位 モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか

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最近ますます、モチベーションというものが、ビジネスや生活を豊かにするものだと思ってます。情報やお金は流通しやすくなっていて制約がなくなっていく中で、個人のモチベーションが何かを成し遂げる上で重要なものになってる気がします。

第2位 財務3表一体理解法

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5位と合わせて、根強い人気のシリーズ。財務入門書にどうぞ。

第1位 経営戦略全史

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いまだによく売れる本書。経営戦略というのは、歴史の浅い領域ではあるのですが、その発展を網羅的に学べる一冊。

 

以上です。経営を勉強したい人は、ご参考に。

AI時代にこれから求められる人間のスキルは「読解力」

少しタイムリーではないですが、こちらの本を、読みました。

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東大合格を目指すAIの東ロボくんの研究開発をされている数学者の方が著者です。その研究を通して得られた知見から、今後AIがどう人の仕事を変えていくのか、そのときに人に求められるスキルは何か、を書かれています。

AIの特性については、僕はディープラーニング検定で読んだテキストを読んでいたので、そうたよねって感じで納得しながら読みました。

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「AIはこのまま進化すれば万能になり、いずれは人間の仕事はすべて奪われる」というイメージがありますが、AIを構成する技術には未だに結構制約は多いですし、少なくともAIが人間に替わって全ての作業に対応できるわけではありません。

 

ただ、本書の恐ろしさは後半にあります。

数学などのパターンに応じた問題は解けるのですが、読解が苦手なのですね。そこは今後も人間が活躍できる領域というわけですが、実は読解力は最近人間も低下傾向にある、というのです。

そうなると、やはりAIに仕事を奪われる人が多くなってしまうのでは?というのが著者の懸念です。

昔、読解力について記事を書きましたが、読解力というのは、文章を丁寧に読み、論理的に構成しながら意味を理解する力です。

読解力を高めたい!同じ文章を読んでも、深く読み取れる人は何が違うのか?

僕も苦手でした。幼少期からもっと本を読んで、読解力が身についていたら良かったな、とそのときは思いましたが、個人的な経験からすれば、訓練すれば何歳からでも、今よりはマシになります。

ルールに従った対応はAIは得意なので、抽象的な概念で捉える、コンテキストを理解するなど、人間にしかない能力を鍛えないと、これけらの人材は勝てないんだなーと、末恐ろしくなりました。

インターネットツールは、テキストから画像、動画へと、消費する負担が少ない方へシフトしてきていますが、これから求められる能力は逆に、複雑な文章を読み、コンテキストを理解できる人材だということです。

 

これから社会人になる人は大変ですね。すでに社会人の人も、自分のスキルが陳腐化するリスクは常にありますが。

子供や若手を育てる立場にいる人や、親世代の人にはご一読おすすめです。

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当然ながら超面白い。「サピエンス全史」の続編であり、人類の未来を示す「ホモ・デウス」

前作の「サピエンス全史」を読んで衝撃を受け、その続編である「ホモ・デウス」が早く邦訳されるのを待っていました。

マジでおすすめ。「サピエンス全史」は人間の本質や今の社会の仕組みを新しい視点で理解できる

前作は人類の歴史を俯瞰的に整理し、なぜこれほど人類が地球上で繁栄できたのかが解き明かされていましたが、今回は未来の話です。

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これから人類は、どういう方向に進んでいくのかという内容になっており、またしても刺激的でした。

今後の人類は何を目指すのか

最初に結論を書いてしまいますが、本書の中で述べられているのは、「不死と幸福と神性」です。これからの人類は、これらに向かって進んでいくそうです。

成功は野心を生む。だから、人類は昨今の素晴らしい業績に背中を押されて、今やさらに大胆な目標を立てようとしている。前例のない水準の繁栄と健康と平和を確保した人類は、過去の記録や現在の価値観を考えると、次に不死と幸福と神性を標的とする可能性がある。

確かに、人はどんどん長生きになっているし、それを望むようになっている。平和な世界で、経済的な裕福も大事だけれど、精神的な豊かさを強く求めるようになっている。そして、「神性」というのが個人的にはピンときづらい表現ではあるものの、科学やテクノロジーの力によって、人間自身が「世界の神」になろうとしている、ということで良いのかな、と思います。

そのような方向性に進むのだとして、重要なのはその過程で人類社会に何が起こるのか、ということです。

人間は労働力ではなくなり、二分化する世界

いろいろな変化が提示されているのですが、印象に残っていることをひとつ取り上げておきます。

産業革命から始まった世界は、人間が労働力となり、経済を発展させてきました。それに伴って、労働者の人権や健康状態も徐々に改善されていき、いろんな人が裕福になっていきました。

世界全体の共通認識として、多くの人が健康的に生活・労働・納税できることが、全体の幸福につながっていったわけです。

しかし、これからは違うかもしれません。

人の労働力が経済のドライバーではなく、知的資本が経済のドライバーになってきたからです。

貧しい人々が軍事的にも経済的にも不可欠なので、彼らの問題を解決することがエリート層の関心事だった二〇世紀と違い、二一世紀には無用の三等車を置き去りにして、一等車だけで突き進むのが(冷酷ではあるものの)最も効率的な戦略となりうる。日本と競争するためには、ブラジルにとっては何百万もの平凡で健康な労働者よりも、一握りのアップグレードされた超人のほうが、はるかに必要性が高いかもしれない。

そうなると、一部のエリートを確保・育成することの方が優先的になってきます。教育や健康に多くが投資され、そのエリートが世界をアップグレードさせていく。そういう流れが今後は強まっていくのかもしれません。どうなんでしょう。

ただ、これを読むとベーシックインカムとかますます重要な気がしてきますね。

 

それ以外にも、宗教の役割や自意識とアルゴリズムの関係に関するエピソードが僕は好きでした。本当、いろいろ考えさせられ過ぎて、咀嚼できないほどの知的圧倒さがありますが、超おすすめです。

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【書評】1日のタスクが1時間で片づく アマゾンのスピード仕事術

「仕事術」系のビジネス書は過去にも何冊も読んできたので、最近はあまり手に取らないようにしているのですが、この本はつい読んでしまいました。

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結論を先に書いてしまうと、Amazonのレビューでも書いてある通り、(失礼ながら)本書の内容はこれまでいろんなビジネス本で語られてきたものから、目新しさが特段あるわけではないかもしれません。ただ、それを実際に「あのアマゾン」がやっている、ということに本書の意味があるんだと僕は思います。やはり説得力が全然違いますよね。

いくつかその中で、気になった点を書いておきたいと思います。

 

KPIや実績などの指標チェックは、計画との対比で行っているか

アマゾンの話が中心なので、やはり指標を業務に落とし込んでゴリゴリPDCAを回していく、ということが書かれています。そのときに個人的に「ああ、そうだよな」と思ったのは、実績数値を「何と比較するか?」が書かれていることでした。

端的にいえば、「計画を立てたなら、それとの比較を常にウォッチすべきで、(計画を達成できなくても昨年度比は上回っているという意味で)昨年度比を言い訳にしてはいけない」ということでした。

これは自分が普段仕事を進める上でも、「計画で目標を決めたのに前年度比を確認する意味とは何か?」という違和感を持っていたところなので、非常に腹落ちしました。前年度比は目標を立てるときには重要になりますし、過去からのトレンドを理解するという点では貴重なデータではありますが、まずは計画を達成することを念頭に仕事を進めるべきでしょう。

 

自分の数値目標を即答できるか

本書の中では、自分の数値目標を即答できるか?という問いが出てきます。

これを読んで、改めて自分の目標を即答できないことに気づきました。確かに計画を立てたときとか、誰かに確認されたときは思い出すのですが、気づいたらすぐ忘れてしまっているんですよね。

ということで、自分の年間目標から月間・週間に落とし込んで目標を整理しなおしました。そうなると、今週の予定や自分の時間の使い方が、本当に目標達成に寄与するのか?ということも考えるようになったので、やはり自分の目標が意識されていることは重要だと思ってます。

 

データを活用できる仕組み

本書はさすがにアマゾンの話なので、いろんなデータが自動で取得してグラフ化できると書かれています。データが確認できれば、すぐに検証し、アクションすることができるようになります。

しかし、いろんな企業とお付き合いすると、意外と数字が取得できない、取得されていてもすぐに活用できる状態になっていないと企業はたくさん存在しています。

このあたりは、ダッシュボードなど様々なテクノロジーが進んでいるのですが、それを使いこなす人材やリテラシーは、まだまだ企業ごとに大きな差異があるし、中小・中堅企業でも十分に環境が整っているわけではない、と思います。

ただ、先ほどの目標の話とも通じますが、「必要なデータがいつでも簡単に取得・確認できる」というのはビジネスのスピードや生産性を上げるためにも非常に重要なことです。BIツールやダッシュボードツールも増えてきていますし、こういう環境を整えることが、PDCAサイクルの高速化をもたらすでしょう。

Windows環境でBIダッシュボードを構築できるOSS「Metabase」が手軽すぎて良い

それ以外にも、仕事を効率的に進めるアプローチやアイデアが書かれているので、自分のケースに当てはめてみると良いんじゃないでしょうか。

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新しいビジネスアイデアをどのように構想するか「構想力の方法論」

「ビジネス日本では社会が成熟してきており、日本社会は成熟してきていて、新しを生み出さないと成長・存続が難しくなってきています。しかし、いきなり「新しいビジネスを生み出せるアイデアを出せ」と言われてもが確立されておらず、「新しいビジネスを生み出せるアイデアを出せ」と言われても、一部の天才に頼ってるどうアイデアを作り出し、育ててよいかわからなくなります。

そんな漠然としたことを思っていたら、「構想力の方法論」という本を見つけました。

【書評】世界史を変えた詐欺師たち

お盆休みではありますが、市場はトルコリラで相当激しく動いておりますね。

さて、休みの間に経済に関する面白い本を読みました。本書はタイトルには詐欺師と書いてありますが、経済に関連する読み物です。

本書の中で登場する数々の人たちは、実際の詐欺師もいれば、経済学者など経済の観点で名声を得ている人たちもいます。

詐欺のスキームを理解する

ミシシッピバブルを生み出したジョン・ローや、ポンジ・スキームと言う名で自分の名前を残している詐欺師チャールズ・ポンチなどは、よく語られる詐欺のスキームです。

ミシシッピバブルや南海バブルなどは、こちらの記事がわかりやすくて良いです。続編を楽しみにしているのですが、まだですかね。

ペペラのバブル物語〜経済&金融バブルをわかり易く解説〜

ポンジ・スキームなどは今でも見られます。少し前に話題になった「つなぎ融資の女王」は、まさにポンジ・スキームです。

詐欺で逮捕された「つなぎ融資の女王」 謎の半生を独占告白│NEWSポストセブン

古くからある手口ではあるのですが、今でも騙されることがあるということです。

経済学をどこまで信じるべきか

少し評価が難しくなるのは、ケインズ経済学として名前が残っているジョン・メイナード・ケインズや、アメリカのFRBで長く議長を務めたアラン・グリーンスパンです。

これらの人々は、今での評価は分かれています。グリーンスパンは議長だった当時好景気を生み出し、発言力を増していきました。しかし、歴史を振り返ってみると、必ずしも高評価だと素直に言えない部分が多々見られます。

それはITバブルや、リーマンショックを引き起こすことになった住宅バブルがはじけた後の傷跡を見れば、グリーンスパンの采配というのはどうなったんだろうと疑問を抱くでしょう。

一方、リーマンショック後に再注目されたケインズ経済学も、本書の中で紹介されている通り、ケインズ自身は自説が結構変節しており、なかなか評価が難しい人です。

しかし、経済学は再現性がなく過去に対する1つの仮説は提示できたとしても、その時々で処方箋は変わると言う特性を持っています。経済学者や評論家は様々なことを、その時々で唱えますが、後から検証することが難しいこともしばしばあり、どこまで信用するのか難しいところです。

最後に仮想通貨も登場します。これもある種のバブルでしたね。これからどう社会に浸透するかはわかりませんが。

本書読むと、経済は再現がなく様々な事象が複雑に絡んでいること、人々の信用が重要なポイントになることから、詐欺と相性が良いんだな、と認識しました。

非常に面白い読み物でした。

あなたは一日で本当に集中しているのは何分だろうか。「Deep Work」を読んで仕事を見直す

ディープワークという本が以前から気になっていたのですが、ようやく読了しました。

この本は、様々な要因で集中力を失っている現代人に、大きな付加価値を生み出す働き方を示しています。

ホワイトワーカーと集中力の問題

昔から集中力は気になっていました。この記事を書いたのは2011年です。

https://synapse-diary.com/?p=678

年々、人々の集中力を奪っているのは明白で、その要因はインターネットの発展と関係しています。

知的労働者がディープ・ワークに努めなくなっている理由は、はっきりし ている。ネットワーク・ツールのためだ。メールのようなコミュニケーショ ン・サービス、ツイッターやフェイスブックのようなソーシャル・メディア・ネットワーク、そして派手に乱立する娯楽情報番組を牛耳る広範な分野のことである。概して、こうしたツールの台頭は、スマートフォンやネットワークに接続したオフィスのコンピュータを通じて簡単にアクセスできるためでもあるが、このことは大半の知的労働者の関心を分散させた。

スマホなどのハードウェア、チャットなどのソフトウェアが発展して、リアルタイム性、双方向性が加速してきました。その影響で、どんどん人は細かなアテンションで阻害されています。

実際、自分でもすぐにメールやチャットで連絡が来ると、ついチェックしてしまいます。何か作業していても、メールが来たらチェックして、また作業に戻ることが頻繁に発生しています。

この確認は時間にすれば数十秒間です。これは軽微な時間ですが、人の意識の特性として、集中力が一度途切れると、それを戻すのは簡単ではありません。

例えば、「○分ごとにメールの受信トレイをちらっと見るくらいは問題ないと思うかもしれない。でも、ちょっとチェックするだけでも注意はそれる。もっと悪いことに、すぐに対処できないメッセージを目にした場合、未処理の仕事をかかえて主業務に戻ることになる。切り替わらないままの注意残余」のせいで、仕事の生産性は低下する。

こんな状況なので、集中力を低下させる人が非常に多くなっている現在では、逆に集中力を維持した環境を作り出す重要性が高まっているのです。

ディープワークに取り組む方法

本書では、ディープワークを実現する様々なアプローチが紹介されていますが、個人的に印象に残っているのは、目標の絞り込みです。

『戦略を、実行できる組織、実行できない組織。』の著者たちが説明しているように、「多くのことをしようと努めるほど、それだけ実際には少ししかできない」。少数の「最も重要な目標」に的をしぼって実行すべきである。この単純さこそが、組織のエネルギーを集約して実際の成果をもたらすのに役に立つ。

OKRKPIマネジメントで学んだ通り、目標達成のためには、目標自体を絞り込み、エネルギーを集中させるのが有効です。

また、人間は適切なフィードバックがなければ、自分が最も楽で安易な行動を選択しがちである、という特性があります。なので、自分や組織で、そういう状況を防ぐためのルールや仕組みを取り入れていかないと、ディープワークは実現できません。

ついついチェックしてしまうメールやSNSなど、誘惑的な行動を阻止してみましょう。ちなみに、本書の中では、メールや電話を部分的に禁止しても、仕事には影響が出ないという事例が紹介されています。

例えば、前に挙げたハーバード・ビジネススクール教授、レスリー・パーローの調査で、経営コンサルタントたちに一週間のうちのウィークデーの一 日、完全に外部との連絡を絶たせた。コンサルタントたちはクライアントが嫌がるのではと心配したが、クライアントは気にしなかった。ユング、グラント、それにパーローの話で判明したのは、人々はこうした期間が明確で、きちんと知らされ、その期間以外はたやすく連絡がつくなら、そうする権利を尊重してくれるということだった。

生産性を上げたり、新しいアイデアを深めたりすることができるようになるのなら、自分が集中できる環境を作り出したいと思いますが、どうやって作り出そうかな。まずは、今やっていることのいくつかをやめることからでしょうかね。メールやSNSの頻繁なチェックとか。

チクセントミハイのフロー体験とも通じるものがありますね。

「フロー体験」理論のあまりの凄さに戸惑いを隠せない:YLOGオルタナティブ:オルタナティブ・ブログ

お盆休みや旅行中の読書に。目標を達成する力を高める本4冊

暑い夏が続きますが、そろそろお盆休みも近づいています。休みをとって旅行に行く人もいるでしょう。ということで、普段はなかなか読めない本も読む良い機会かなと思うので、おすすめの本を紹介しておきます。

今回のテーマは、「目標を達成する力」です。

 

やり抜く人の9つの習慣

最近読んだこちらの本。

目標に向けてやり抜く人の習慣を、9つに分けて紹介しています。

海外のビジネス本によくありがちな、余分なエピソードや冗長的な表現は一切なし。コロンビア大学ビジネススクールに属する人の本だけあって、最近の科学的な研究に基づいたエッセンスが述べられているのが特徴です。

どういう習慣が実行力を高めるのか、一通り理解できるので、この領域を学ぶのに手始めとして良いと思います。

 

ただ、これだけだと詳細を知りたい人には物足りないと思うので、以下は本書に書かれている要素をもっと深く理解するための3冊です。

 

最高の結果を出すKPIマネジメント

やり抜く習慣を作るためには、具体的な行動計画を作るのが重要になります。そのときに、本書の考えが参考になるはずです。

到達したい目標を設定し、成功への道筋をモデリングして、必要な行動をKPIとして管理します。リクルートのノウハウだけあって、具体的で有効な内容です。

自分の行動を定量的に把握するところから、始めてみましょう。

KPIを設定したけど成果が出てないと思う人はこの本を読もう

 

やり抜く力

成功を決めるのは、才能ではなく「やり抜く力」。それを理解し、自分の中で「やり抜く力」を身に着けるために本書を読みましょう。

最近改めて読み返しましたが、何度読んでも発見があって面白いです。誰でも実行を積み重ねることで高いところにたどり着ける可能性があるって、良いことですね。

才能や学歴ではない。仕事で結果を残せる人は、何が違うのか

 

スタンフォードの自分を変える教室

人間は誰しも完璧ではないですし、余裕がないときは誰でもイライラしたり、ダイエットに失敗してしまうものです。

そういう、人間が持つ意志の特性を理解して、目標達成に近づける意志力を解き明かしたのが本書です。

人間の意志の特性を理解して、訓練することで、目標達成に向けた忍耐強い行動ができるようになる、ということですね。意志が弱いと思う人も、これを読めば意志力を少しずつ高める方法が理解できるでしょう。

スタンフォードの自分を変える教室

 

最初の一冊「やり抜く人の9つの習慣」を読んだら、いろいろ関連した本の内容が書いてあり、必要な要素は共通してるんだなーと改めて感じました。

休みのあいだに、自分の振り返りやリフレッシュにどうぞ。

 

あと、旅行にはKindleが最適です。何冊も持っていかなくて良いので、常に旅のお供になりました。バッテリーも十分持ちますしね。