多忙を理由に、ほとんど書いていなかったブログですが、その間でも少しずつ本は読んでいます。で、最近ようやく「シン・ニホン」を読み終えたので、熱い気持ちが収まらないうちに、感じたことを書き留めておこうと思います。
「シン・ニホン」を楽しみにしていた理由
そもそも、なぜこの本の発売を知ってからずっと楽しみにしていたかといえば、この本を書いた安宅和人氏は、いまでもビジネス書の名著である「イシューからはじめよ」の著者であり、Yahooのデータサイエンティストであり、様々な国の機関にも名を連ねている方だからです。
この「イシューからはじめよ」は本当に名作なので、読んでない人はぜひ読んでほしい。数年に一度は読み返してます。
データサイエンティストであり、コンサルタントでもある方が、膨大なデータから導く課題ドリブンの日本改革アプローチを書いたのが「シン・ニホン」です。そりゃ期待せずにはいられないでしょう。
期待通りというかそれ以上に、様々なデータに基づいた分析の上に、これからの日本社会に対する提言がなされていました。
世界から取り残されている日本
冒頭からガツンとやられるのは、課題の捉え方。日本が世界の競争環境においてどのような立場になっているのか、競争軸のどの点で負けてきているのかが、痛いほどよくわかります。
こういう表現が出てきますからね。
手なりでこれからもある程度以上に豊かな国でいられ続けるのか」という問いについて言えば、ほぼNOであることは答えが出ている。ここまで見てきたとおりの現状で、このまま経済的な推進力を失ってしまえば、この国はそれほど遠くない未来に半ば中進国になることが見えているからだ。
もう既に日本は、先進国で居続けることは難しいと言わざるをえない状況なんですよね。
例えば、人材育成への投資の話。
一方で、日本は経済規模に比して歴然と人材投資をしていないことが明らかになっている。2000年代を例に取るとG7内での標準的なレベルの7〜8分の1に過ぎない(図2‐16)。多くの経営者は日本の学校教育には期待していないと言いながら、自分も人材開発にリソースを投下していないのだ。おそらくここで浮いた費用が残業代になっているという悲しい現実が推測される。
日本の若者に、投資が十分回っていないことが示されています。未来を作る人たちに十分なお金が回っていない社会というのは、将来への希望が見えないのでは・・・。
あとは、こういう話ですね。
しかも人材の質に大いなる課題がある。大半がシステムインテグレーター(SIer) における古典的なプログラマー、コードを書く人(coder) といった人材であり、研究と開発のギャップを乗り越えられる人が少ない。すなわち、自然言語処理や機械学習などの研究・実験環境を、堅牢で大規模かつリアルタイムの本番環境につなげられる人材が足りていない。また、高速データ収集、分散環境、ロギング周りの仕組みを作れて、回せる人が極めて限定的という課題もある。言い換えれば、大量データを処理するデータエンジニアリングに熟達した人材も足りていない。
こういう指摘がバンバン出てきます。詳細はぜひ本書を読んでいただくとして、簡単にいえば、若者や先端技術への投資がとても少なくなっているのです。これが非常に厳しい。
今のままでは、社会を継続的に続けていける構造になっていない。その危機感に包まれていきます。
事実を受け止めることの重要さ
最近、別の本でジャレド・ダイヤモンドの「人類の危機」を読みました。
近代に起こった人類史の中で、著者が取り上げた各国の「危機」に対して、どうやって乗り越えられるのか、重要なことは何かが分析されているのですが、その中に日本の明治維新もひとつのケースとして取り上げられています。
そして重要なことのひとつに、「危機を受け入れる」というのがあるんですね。
これはシン・ニホンで書かれていることとまさに共通していて、今が日本の重要な転換点だとすれば、その事実を多くの人が知り、そして受け入れる必要があるということなんじゃないかと思います。
お金の配分を未来へ
ではどうしたら良いのか。シン・ニホンではそういう点もしっかり書かれています。例えばこちら。
子どもたちが我々の未来であることは間違いない。彼らが生まれたときからせめて成人になるまでは、月に5000円でもいいから国(コミュニティ全体) が積み立て、それを運用するという仕組みに変える。子どもたちの将来不安は劇的に解消するし、自分たちがこの社会にとって本当に大切な存在だということを深く実感できるだろう。年間100万人、一人年間6万円だとすると、一学年600億円。 20 学年分で1・2兆円と、今の社会保障給付費の約1%だ。年金総額が年間 60 兆円近いことを考えればこのぐらいの投資は未来に向けて行うべきではないだろうか。
最後のように、具体的な数字と、全体感の中でどれぐらいの割合なのかも示されているのがポイントですね。非常にリアリスティックであることがわかります。
こういう教育や新しいテクノロジーへの投資配分を増やしていけるのではないか、という希望も持てます。
自分が社会へ還元しなければいけない世代になってきていることを実感してきています。具体的なアクションを行い、未来につないでいくことをしなければ。