「シン・ニホン」を読んで日本の現状と未来を考える

多忙を理由に、ほとんど書いていなかったブログですが、その間でも少しずつ本は読んでいます。で、最近ようやく「シン・ニホン」を読み終えたので、熱い気持ちが収まらないうちに、感じたことを書き留めておこうと思います。

「シン・ニホン」を楽しみにしていた理由

そもそも、なぜこの本の発売を知ってからずっと楽しみにしていたかといえば、この本を書いた安宅和人氏は、いまでもビジネス書の名著である「イシューからはじめよ」の著者であり、Yahooのデータサイエンティストであり、様々な国の機関にも名を連ねている方だからです。

この「イシューからはじめよ」は本当に名作なので、読んでない人はぜひ読んでほしい。数年に一度は読み返してます。

イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」

データサイエンティストであり、コンサルタントでもある方が、膨大なデータから導く課題ドリブンの日本改革アプローチを書いたのが「シン・ニホン」です。そりゃ期待せずにはいられないでしょう。

期待通りというかそれ以上に、様々なデータに基づいた分析の上に、これからの日本社会に対する提言がなされていました。

世界から取り残されている日本

冒頭からガツンとやられるのは、課題の捉え方。日本が世界の競争環境においてどのような立場になっているのか、競争軸のどの点で負けてきているのかが、痛いほどよくわかります。

こういう表現が出てきますからね。

手なりでこれからもある程度以上に豊かな国でいられ続けるのか」という問いについて言えば、ほぼNOであることは答えが出ている。ここまで見てきたとおりの現状で、このまま経済的な推進力を失ってしまえば、この国はそれほど遠くない未来に半ば中進国になることが見えているからだ。

 

もう既に日本は、先進国で居続けることは難しいと言わざるをえない状況なんですよね。

例えば、人材育成への投資の話。

一方で、日本は経済規模に比して歴然と人材投資をしていないことが明らかになっている。2000年代を例に取るとG7内での標準的なレベルの7〜8分の1に過ぎない(図2‐16)。多くの経営者は日本の学校教育には期待していないと言いながら、自分も人材開発にリソースを投下していないのだ。おそらくここで浮いた費用が残業代になっているという悲しい現実が推測される。

 

日本の若者に、投資が十分回っていないことが示されています。未来を作る人たちに十分なお金が回っていない社会というのは、将来への希望が見えないのでは・・・。

あとは、こういう話ですね。

しかも人材の質に大いなる課題がある。大半がシステムインテグレーター(SIer) における古典的なプログラマー、コードを書く人(coder) といった人材であり、研究と開発のギャップを乗り越えられる人が少ない。すなわち、自然言語処理や機械学習などの研究・実験環境を、堅牢で大規模かつリアルタイムの本番環境につなげられる人材が足りていない。また、高速データ収集、分散環境、ロギング周りの仕組みを作れて、回せる人が極めて限定的という課題もある。言い換えれば、大量データを処理するデータエンジニアリングに熟達した人材も足りていない。

 

こういう指摘がバンバン出てきます。詳細はぜひ本書を読んでいただくとして、簡単にいえば、若者や先端技術への投資がとても少なくなっているのです。これが非常に厳しい。

今のままでは、社会を継続的に続けていける構造になっていない。その危機感に包まれていきます。

事実を受け止めることの重要さ

最近、別の本でジャレド・ダイヤモンドの「人類の危機」を読みました。

近代に起こった人類史の中で、著者が取り上げた各国の「危機」に対して、どうやって乗り越えられるのか、重要なことは何かが分析されているのですが、その中に日本の明治維新もひとつのケースとして取り上げられています。

そして重要なことのひとつに、「危機を受け入れる」というのがあるんですね。

これはシン・ニホンで書かれていることとまさに共通していて、今が日本の重要な転換点だとすれば、その事実を多くの人が知り、そして受け入れる必要があるということなんじゃないかと思います。

 

お金の配分を未来へ

ではどうしたら良いのか。シン・ニホンではそういう点もしっかり書かれています。例えばこちら。

子どもたちが我々の未来であることは間違いない。彼らが生まれたときからせめて成人になるまでは、月に5000円でもいいから国(コミュニティ全体) が積み立て、それを運用するという仕組みに変える。子どもたちの将来不安は劇的に解消するし、自分たちがこの社会にとって本当に大切な存在だということを深く実感できるだろう。年間100万人、一人年間6万円だとすると、一学年600億円。 20 学年分で1・2兆円と、今の社会保障給付費の約1%だ。年金総額が年間 60 兆円近いことを考えればこのぐらいの投資は未来に向けて行うべきではないだろうか。

 

最後のように、具体的な数字と、全体感の中でどれぐらいの割合なのかも示されているのがポイントですね。非常にリアリスティックであることがわかります。

こういう教育や新しいテクノロジーへの投資配分を増やしていけるのではないか、という希望も持てます。

 

自分が社会へ還元しなければいけない世代になってきていることを実感してきています。具体的なアクションを行い、未来につないでいくことをしなければ。

 

 

新しいビジネスアイデアをどのように構想するか「構想力の方法論」

「ビジネス日本では社会が成熟してきており、日本社会は成熟してきていて、新しを生み出さないと成長・存続が難しくなってきています。しかし、いきなり「新しいビジネスを生み出せるアイデアを出せ」と言われてもが確立されておらず、「新しいビジネスを生み出せるアイデアを出せ」と言われても、一部の天才に頼ってるどうアイデアを作り出し、育ててよいかわからなくなります。

そんな漠然としたことを思っていたら、「構想力の方法論」という本を見つけました。

あなたは一日で本当に集中しているのは何分だろうか。「Deep Work」を読んで仕事を見直す

ディープワークという本が以前から気になっていたのですが、ようやく読了しました。

この本は、様々な要因で集中力を失っている現代人に、大きな付加価値を生み出す働き方を示しています。

ホワイトワーカーと集中力の問題

昔から集中力は気になっていました。この記事を書いたのは2011年です。

https://synapse-diary.com/?p=678

年々、人々の集中力を奪っているのは明白で、その要因はインターネットの発展と関係しています。

知的労働者がディープ・ワークに努めなくなっている理由は、はっきりし ている。ネットワーク・ツールのためだ。メールのようなコミュニケーショ ン・サービス、ツイッターやフェイスブックのようなソーシャル・メディア・ネットワーク、そして派手に乱立する娯楽情報番組を牛耳る広範な分野のことである。概して、こうしたツールの台頭は、スマートフォンやネットワークに接続したオフィスのコンピュータを通じて簡単にアクセスできるためでもあるが、このことは大半の知的労働者の関心を分散させた。

スマホなどのハードウェア、チャットなどのソフトウェアが発展して、リアルタイム性、双方向性が加速してきました。その影響で、どんどん人は細かなアテンションで阻害されています。

実際、自分でもすぐにメールやチャットで連絡が来ると、ついチェックしてしまいます。何か作業していても、メールが来たらチェックして、また作業に戻ることが頻繁に発生しています。

この確認は時間にすれば数十秒間です。これは軽微な時間ですが、人の意識の特性として、集中力が一度途切れると、それを戻すのは簡単ではありません。

例えば、「○分ごとにメールの受信トレイをちらっと見るくらいは問題ないと思うかもしれない。でも、ちょっとチェックするだけでも注意はそれる。もっと悪いことに、すぐに対処できないメッセージを目にした場合、未処理の仕事をかかえて主業務に戻ることになる。切り替わらないままの注意残余」のせいで、仕事の生産性は低下する。

こんな状況なので、集中力を低下させる人が非常に多くなっている現在では、逆に集中力を維持した環境を作り出す重要性が高まっているのです。

ディープワークに取り組む方法

本書では、ディープワークを実現する様々なアプローチが紹介されていますが、個人的に印象に残っているのは、目標の絞り込みです。

『戦略を、実行できる組織、実行できない組織。』の著者たちが説明しているように、「多くのことをしようと努めるほど、それだけ実際には少ししかできない」。少数の「最も重要な目標」に的をしぼって実行すべきである。この単純さこそが、組織のエネルギーを集約して実際の成果をもたらすのに役に立つ。

OKRKPIマネジメントで学んだ通り、目標達成のためには、目標自体を絞り込み、エネルギーを集中させるのが有効です。

また、人間は適切なフィードバックがなければ、自分が最も楽で安易な行動を選択しがちである、という特性があります。なので、自分や組織で、そういう状況を防ぐためのルールや仕組みを取り入れていかないと、ディープワークは実現できません。

ついついチェックしてしまうメールやSNSなど、誘惑的な行動を阻止してみましょう。ちなみに、本書の中では、メールや電話を部分的に禁止しても、仕事には影響が出ないという事例が紹介されています。

例えば、前に挙げたハーバード・ビジネススクール教授、レスリー・パーローの調査で、経営コンサルタントたちに一週間のうちのウィークデーの一 日、完全に外部との連絡を絶たせた。コンサルタントたちはクライアントが嫌がるのではと心配したが、クライアントは気にしなかった。ユング、グラント、それにパーローの話で判明したのは、人々はこうした期間が明確で、きちんと知らされ、その期間以外はたやすく連絡がつくなら、そうする権利を尊重してくれるということだった。

生産性を上げたり、新しいアイデアを深めたりすることができるようになるのなら、自分が集中できる環境を作り出したいと思いますが、どうやって作り出そうかな。まずは、今やっていることのいくつかをやめることからでしょうかね。メールやSNSの頻繁なチェックとか。

チクセントミハイのフロー体験とも通じるものがありますね。

「フロー体験」理論のあまりの凄さに戸惑いを隠せない:YLOGオルタナティブ:オルタナティブ・ブログ

【書評】企業参謀―戦略的思考とはなにか

誰かが、ビジネス書は処女作が面白いと言っていましたが、この本はまさにそう。著名な経営コンサルタント・大前研一氏の処女作を読みました。

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厳密には、新装版は「企業参謀」と「続・企業参謀」の合冊です。

出版当時、非常に話題になり、マッキンゼーへの仕事依頼が増えたとのことです。たしかに本書では経営コンサルタントのノウハウや思考が具体的に書いてあり、しかも小手先ではなく思考アプローチを軸にした内容なので、今もってしても通じるものです。時間が経っても陳腐化しないというのは、まさに名著と言えるでしょう。

企業戦略を考える場合もそうですが、それ以外でも戦略的に考えると言うアプローチはいろんな場面で活用できそうだなって思いながら読みました。

 

戦略的に考えるとはどういうことか

戦略的に考えるってどういうことなんでしょう。本書の中から3つの言葉を引用して、そのヒントを考えてみましょう。

「戦略的」と私が考えている思考の根底にあるのは、一見混然一体となっていたり、常識というパッケージに包まれてしまっていたりする事象を分析し、ものの本質に基づいてバラバラにしたうえでそれぞれの持つ意味あいを自分にとって最も有利となるように組み立てたうえで、攻勢に転じるやり方

 

物事を深く理解するためには、基本的にはこういう考え方になると思います。深く分析するためには、要素を分解せざるを得ません。しかし、それだけではバラバラな事象が並ぶだけなので、分析した事項をもう一度違うアプローチで整理し直す作業が求められます。

つまり、要素を分解し、原因やキーファクターを特定し、グルーピングする作業が必要だということです。

 

もう少し違う表現だと、こちらでしょうか。

このことを逆に見れば、われわれの成長過程で、二つの重要な能力の開発がおろそかにされる可能性の高いことを示唆している。「分析力」と「概念をつくり出す力」である。

 

これを読んで、唸りました。ここで書かれている二つはどちらも同じくらい重要だと思いますが、特に重要で説明が難しいのは後者ですね。これがみんなが納得しやすい戦略になれるかを決めるポイントになると思ってます。後述しますが、良い戦略というのは、みんなが理解し納得できて、迷いが生じないものです。そのときに、この「概念をつくり出す力」が重要になってくるのです。

 

また戦略的に考えるという点は、個人ではなく組織単位でももちろん言えます。このあたりの言葉もビシビシきますね。

こうした状況に対処するためには、 ① まず判断を従来よりも分析的・科学的に行うこと、 ② 分析を行う力を内部的につけること、 ③ 判断を個人または特定職制のもの、という認識から、会社全体のものであるという認識に変えること、 ④ さらに、こうすることによって一度下った決定でも、誰も当惑することなく、逆転できるようにしておく、ということが行われなくてはならない。 ①、② の分析的アプローチについては Ⅰ 部で詳述したので、ここでは特に ③、④ について強調しておきたい。

 

データアナリティクスが普及してきている今では、①②で書かれているような分析的アプローチの重要性は増していますし、やりやすい環境にあります。

また、組織としての判断プロセスも、属人的な企業もまだたくさんあるのではないでしょうか。ファクトに基づいて、組織全体で判断できるようにするのは、全員の納得感やモチベーションに大きく作用しますし、企業としても誰かに強く依存せず、長期的に強い文化を作ることにも寄与するでしょう。

 

良い戦略とは何か

では実際に戦略的に考えたとして、その結果出てきた内容がどうやったら良いものだと言えるんでしょうか。

これについても、はっきりと4つの内容を書いてくれています。

したがって、数々の成功した事業の例を見ると、確かに先見性に富んでおり、予言者の意思に基づいて進んできたかのような印象は受けるが、その背景には実に首尾一貫した「成功のパターン」が透視される。これを先見性の必要・十分条件と呼んでもよい。すなわち次の四つの要件が、成功した事業に必ずみられるのである。

(1)事業領域の定義が、明確になされている。
(2)(将来の予言ではなく)現状の分析から将来の方向を推察し因果関係について、きわめて簡潔な論旨の仮説が述べられている。
(3)自分のとるべき方向についていくつかの可能な選択肢のうち、比較的少数のもののみが採択されている。また選択された案の実行に当たってはかなり強引に人、物、金を総動員して、たとえ同じようなことを行っている競争相手がいても時間軸で差が出ている。
(4)基本仮定を覚え続けており、状況が全く変化した場合を除いて原則から外れない。

人はこれらの四つのプロセスを踏んできた事業家を「先見性があった」と評する

 

特に重要だと思うのは2と3ですね。たくさん分析をして、いろんなことがわかったとしてもそれは簡潔に構造的になっていないとは、人は動かないんだなと言うのは経験上からもよくわかります。

3については、同じように人が動いていくためには、選択肢は限定されている方が良いです。多くの選択肢が残されていると、方向性が定まりきらず、組織としての一体感やエネルギーが集中できなくなります。

ということで、上記の条件がそろうのが良い戦略なのですが、言うは易しで、これを考え実行するのはとても難しい。だから経営コンサルタントという職業もなくならないのだと思いますが・・・。

 

それ以外にも、コンサルティングの具体的なノウハウも満載です。

例えば、中期経営戦略をどのように作成していくのかは、8つのステップに分かれて説明されており、具体的かつ緻密な内容になっていました。また、事業分析をどういう観点で行うのか、キーファクターがどういう業種の場合にどこに存在するのかがちゃんと説明されています。

このようなエッセンスがたくさん出てくるのです。濃密すぎて、一回読んだだけでは消化できていない感じがしますね。

 

この本が出版された当時とても注目されたのがよくわかります。事例は確かに時代を感じますが、今でも充分通じる内容ばかりです。戦略的に物事を考えるのに関心がある方におすすめです。

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あなたが明日からクリエイティブなアイデアマンになる方法

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あなたは、自分に創造力があると思いますか。あるいは、周囲にアイデアマンと呼ばれる人はいるでしょうか。

 

僕がビジネススクールに行っていたのはもう数年前になっていますが、そのときは「もうビジネスにおいて論理的に管理したりするのは20世紀型で、21世紀はイノベーションやクリエイティビティだ」、と言われたりしていました。今、ビジネスシーンで必要なのは、創造力やアイデア、デザインと呼ばれるような領域になってきています。

 

ビジネスにおけるデザインやクリエイティビティが注目されるようになった

実際、IDEOというデザイン会社がビジネスコンサルティングの市場に進出するようになり、これまでボストンコンサルティングやマッキンゼーに代表されるようなコンサルティング会社は、新しい軸での競争に迫られてきたわけです。

そして、最近はその流れがどんどん加速してきており、コンサルティング会社がデザイン会社を買収する事例が増えています。

IDEOやfrog designも!マッキンゼーがLUNAR買収と聞いて、デザイン会社のM&Aを調べてみた – Tayoriブログ

また、ビジネススクールにおいても、「dスクール」というビジネスデザインを学ぶカリキュラムが注目を浴びています。

それぐらい、デザインやクリエイティビティというのは注目される分野になっており、ビジネス上の競争優位性になっているのです。

 

誰でもクリエイティブになれるか

さて、今回僕は、IDEOの創業者であり、dスクールを創設したデヴィッド・ケリーと、その兄弟であるトム・ケリーの本を読みました。それは「クリエイティブ・マインドセット」というタイトルで、誰にだってクリエイティブになれる素質があるという前提に立ち、それを身につけるための方法論が書かれたものでした。

自分でいうのもの何なんですが、クリエイティブだとはとても言えない人だと思っているので、「誰でもクリエイティブになれるなんて」という半信半疑で本書を読んでみた次第です。

僕が注目したのは、「創造性は誰もが持っているが、その自信を自分の中に持てるかが大きく変わる」ということです。(ちなみに洋書のタイトルは「クリエイティブ・コンフィデンス(=創造力に対する自信)」です。)

 

以下は、いろんな人に創造性を持ってもらうためにdスクールを設立することを考えていた著者の一節です。「創造力に対する自信」をこう説明しています。

私たちが気づいたのは、創造性を一から生み出す必要はない、という点だ。人々がすでに持っているものー世界にふたつとないアイデアを想像したり発展させたりする能力ーを再発見する手助けをするだけでいいのだ。しかし、アイデアを実行に移す勇気を奮い起さないかぎり、創造性の真の価値は発揮されない。つまり、新しいアイデアを思いつく能力と、アイデアを実行に移す勇気ーこのふたつの組み合わせこそが、創造力に対する自信の特徴といえるのだ。

アイデアを思いつく能力とアイデアを実行に移す勇気。その組み合わせによって、創造力は発揮されるということです。

 

創造力を発揮するために大切なのは、行動を起こすことだ

そして本書では、行動を起こすために重要な点への説明に進んでいきます。

しかし、行動を起こすためには、何よりもまず、今まで創造性を妨げてきた恐怖を克服する必要がある。

失敗に対する恐怖は、あらゆるスキルを学んだり、リスクを冒したり、新しい課題に挑戦したりする妨げになる。創造力に対する自信を手に入れるには、失敗に対する恐怖を克服する必要がある。

失敗に対する恐怖を克服することで、行動を起こす勇気が得られるということです。確かに失敗をネガティブに捉える組織ではみんな斬新なアイデアを出さないし、無難でミスをしない方策を考えるようになりますよね。

 

自分について考えても、思えばたくさん失敗を重ねてきました。今思い出しても恥ずかしい失敗もありますし、それによって気づいたり成長できたこともたくさんあります。逆に、新しい挑戦をして良い結果を得たこともあります。思い返してみると、実は日々の小さな出来事においては、失敗しても大きな損害を与えるとか誰かに迷惑をかける、というのはほとんどなくて、「変なことを言っている人だと思われたくない」や「言い出して失敗したら白い目で見られる」という、他人の目線を気にして躊躇している要素が無意識に大きく作用している気がしています。

でも、誰かが失敗したことを自分がそれほど覚えていないように、周囲もあまり覚えていないようです。だからいつまでも失敗を恥ずかしいと思わず生きていける気がします。

つまりは、自分が新しいアイデアを思いついたら、「恥ずかしいとか失敗したときのことを考えず、とりあえずやってみろ」ってことですし、組織を管理する立場のリーダーであれば、「失敗しても許容される雰囲気をつくれ」ということです。

 

ということで、本書はクリエイティビティに関する内容にフォーカスされていますが、それ以外にも気づきが多い、刺激的な内容になっています。あなたも私も、創造力を高められますように。まずは行動しましょう。その積み重ねが、きっと自信となってさらに創造力を高めてくれるでしょう。

 

最後に、失敗に対する勇気を与えてくれる言葉を。

何より、ハンガリーの随筆家、ジョルジュ・コンラッドはこんなことを言っている。「勇気とは、小さなステップの積み重ねにすぎない」

では、今日はこのへんで。

 

地銀業界全体を動かす1枚のペーパーの威力

週刊ダイヤモンドが銀行特集でした。特に地銀の動きが大きくなっていますね。

 

内容は雑誌で確認してもらうとして、人口減少を迎える地方における地銀の多くが、利益を出せなくなるという危機感があります。そうなる前に手を打っていかなければいけません。

これ読んで思ったのは、地域を限定されるドメスティックな職種は、外部環境の変化にとても弱いということです。その地域に勢いがなくなると、急速にしぼんでしまいます。地銀はまさにそういう状況なのだと思います。

それはさておき、今回の地銀の動きは、ある1枚のペーパーから始まっていると言われています。

昨年12月、金融庁は地銀各行の頭取に、「金融機関の将来にわたる収益構造の分析について」という1枚のペーパーを配った。縦軸に各地銀が基盤を置く地域の将来の市場規模の縮小度合いを、横軸に現状の収益性を取ったグラフに、それぞれの地銀の位置が点でプロットされたものである。  通称、森ペーパー──。理論派といわれる森検査局長の肝いりで作られたこのペーパーは、地銀の行く末を案じ、再編を含めた生き残り策について、本気で議論していこうという金融庁の意思を雄弁に語っていた。

過去最高益の裏で金融庁が目論む「地銀再編プロジェクト」の全貌|今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ|ダイヤモンド・オンライン

週刊ダイヤモンドには、このペーパーの内容も具体的に書かれていました。「この1枚を見ただけで地銀の現状と課題がわかる」という意味で、すごい破壊力だったのだと思います。

 

また、昔あるコンサルタントに、「顧客である経営者に会って、ある紙を1枚見せたら、すぐに自分の会社の課題を理解して、翌日には行動していた」という話を聞いたことがあります。

 

何が言いたいのかといえば、的確に問題を捉えていれば、1枚のペーパーでも大きく物事を動かすほどの説得力を持たせることができる、ということです。そういう破壊力あるペーパーを作るためには、たくさん調べ、考えなければいけません。紙を作る部分というのは、労力のうち本当ちょっとでしかないのです。そういうペーパーを作れる人が、今後はもっと必要とされていくのでしょう。

短くても、本質を突き、そして人に端的に説明できる人が。

進捗が芳しくないプロジェクトを確実に前進させる方法

いかにプロジェクトを確実に素早く遂行していくかっていう点で、ひとつ意識していることがあります。特に最近強く意識しています。

それは、「打合せでは曖昧な事項を残さない」ということです。ビジネスを進めていくにあたって、物事をいろいろ検討していきます。そこで、曖昧なままに終わってしまう事柄がよくあるんですよね。

例えば、

  • 次回の打合せはいつやるのか
  • 打合せ中に提起されたタスクは、誰がいつまでにやるのか
  • 次の打合せでは何を議題にするのか

などなどです。このあたりが具体的に決まらないまま打合せが終わると、結局誰も作業をやらない、次いつ集まるのかわからない、など、いつまでたってもプロジェクトが進まないことになります。

なので、プロジェクトを推進したい人は、ちゃんと次までのタスクの内容や期日を決めて、次の機会までに行うべきアクションを明確にしましょう。それだけで、物事は確実に素早く進んでいきます。

 

こういう話って、昔読んだ「吉越式会議」に書いてあったなー。と思い出した次第です。

【書評】吉越式会議 | Synapse Diary

ビジネスマンのための「行動観察」入門

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photo credit: juhansonin via photopin cc

ビッグデータが新しい課題解決アプローチとしてビジネス上注目されていますが、課題解決アプローチはそれだけではありません。

「行動観察」というアプローチは、データ分析や論理的に考えるだけではなく、新しい発想によって課題を解決するためのひとつの方法です。IDEOというデザインコンサルタント会社が、行動観察によって問題を解決する手法をとっています。

地下鉄の自販機の売り上げをアップさせた、IDEOのユニークな行動観察調査手法 – Feel Like A Fallinstar

そして、行動観察をより理解するための一冊が本書です。

行動観察は仮説をつくるために行うもの

本書は行動観察のエキスパートが書かれた体験と、それを裏付けする理論やアプローチを説明するものです。行動観察というのが、なぜ注目に値するアプローチなのかは、この言葉から理解することができます。

では、なぜ行動観察という手法が注目されているのか?その理由は「経験を科学すること」が重要になっているからだ。

「経験を科学する」という表現が何となくピンときづらいかもしれませんが、行動観察は、人間が何となくやる行動をつぶさに観察することで、その理由や背景、解決策などの仮説を導くことを目的とします。単純に行動を観察して何かヒントを得よう、というだけではなく、行動を観察して得られた結果と、認知心理学や社会心理学などの知識を組み合わせて、「この行動を人々がとる理由はこうで、もっと良くするためにはこうすれば解決するはずだ」という仮説を組み立てることに、行動観察の目的があるわけです。

そこで必要なのは、人々の行動を「ストーリー」として捉える力です。「なぜ、この人はこういう行動をとるのか」ということを、理由や背景などを合わせてストーリーとして構築する力が求められます。

 

ビッグデータとはある意味対極的な課題解決手法

ビッグデータは、全量データを分析することで、因果関係ではなく相関関係で答えを導くことができると言われています。「なぜ起こるのか」を考えなくても、「実際起こっている」という関係性が導ければ良いという考えもできます。

一方で行動観察というのは、人が実際に行動を観察するわけですから、おのずと観察データに限界があります。統計学でいえばほとんど有意にならないぐらいのデータでしょう。しかし、それでもひとつの有効な手法と考えることができます。

それは、「深く知ることで、仮説をつくる」からです。対象を深く知り、人間の想像力を高めて、洞察を得ることで、新しい何かを生み出すことができます。少ないデータから仮説を組み立て、課題解決を図ります。

ビッグデータを否定するものではありません。アプローチが異なる、ということと、それぞれに得意とする分野が違うということです。行動観察は、データ化しづらい領域(店舗での人の動き)などに向いているのだと思います。実際、本書で登場してくる例も、それが多いです。

 

実際に「行動を観察することで、問題が解決できるのか?」と思っていましたが、本書では、ひとつひとつのアプローチや、著者の実際の悩み、解決するまでのプロセスが細かく書かれているので、「行動観察とはこういうものだ」ということが、読書を通じて理解できると思います。

ということで、いろんなことを課題意識を持って観察すること、それをストーリーとして想像することが、新しい課題解決手法を生み出すきっかけになるでしょう。

採用基準 - 地頭より論理的思考力より大切なもの

タイトルから得られるイメージとは異なって、内容の多くはリーダーシップの本。捉え方がとても構造的で、新しい観点をたくさんいただいた。感心した考え方を2つ書いておこうと思う。

 

思考力は「思考スキル・思考意欲・思考体力」で構成される

最初の外資コンサルの採用に対するイメージについて、もやっとしていた部分が晴れた気がした。

なによりも面接担当者が知りたいのは、「その候補者がどれほど考えることが好きか」、そして「どんな考え方をする人なのか」という点です。考えることが好きな人なら、どんな課題についても熱心に考えようとするでしょう。「考えることが楽しくて楽しくて」という人でないと、毎日何時間も考える仕事に就くのは不可能です。

考える力を、思考スキル・思考意欲・思考体力に分けていたのも、目からウロコだった。巷では思考スキルだけがフォーカスされることがあるが、どちらかというと重要なのは思考意欲や思考体力の方だ、と。確かにそう思う。思考スキルは身に付けることが難しくないけど、思考意欲や思考体力は、パーソナリティに依存する部分が大きいからだろう。

これらは確かにバランス良く備える必要があるが、これまで見てきた人を思い出しても、どれかが高かったり低かったりして、それぞれ「思考のクセ」みたいなものがあった。自分はどれもまだまだだと思うけど、今の自分を振り返る良いきっかけをもらった。

 

「リーダーシップ・キャパシティ」という考え方

多様性に溢れ、不確実性が高い今の時代に必要なのは、中央集権的で一部のリーダーが全体を引っ張るのではなく、いろんな場所・いろんなレベルで各自が主体的に考え、行動して、物事を動かしていくことである。そのためには、ひとりの優秀なリーダーのみでなく、各自がリーダーとなる必要がある。そのように、組織や社会をマクロで俯瞰した場合に、必要なリーダーシップを「リーダーシップ・キャパシティ」と表現している。

そして、本書の中ではリーダーの定義、必要な要素についても言及されている。例えば、リーダーシップが必要とされる状況とは、以下のようなことだ。

このように、高い成果目標がチームに課された時、初めてリーダーシップは必要とされます。そして、成果が厳しく求められない状況が多いからこそ、日本ではリーダーシップが問われることが少ないのです。成果が達成されてもされなくてもよいのであれば、あえて摩擦を起こし、他部署の意見に強く反対する必要性は誰にも見つけられないでしょう。

日本社会が今後活性化していくためには、リーダーシップを持つ人を育て、ひとりでも多く社会に輩出することだ、という主張には、心から賛同する。

 

それ以外にも、京都大学の採用が難しくなっている現状や、アメリカのMBAが日本人留学生を減らしインド人などの留学生を増やしている理由などが語られており、グローバルレベルで見た場合の人材事情が知ることができたので、自分がどう働いていくか、どのようなスキルを身につけていくべきか、ということをずっと考えながら読んでいた。

自分を定期的にメタ認知して、自分を修正する

昔、コミュニケーションコストを考えて仕事しろ、と偉そうなことを書いたけど、今日は逆のことを思った。
見えない「調整コスト」を考える | Synapse Diary

あえて円滑にコミュニケーションしすぎることなく、適切な距離を確保することで、緊張感を双方に持ち、お互いが理論武装をしっかりやったり、品質を保とうとする。つまり、仲良くなることは良いこと、多様なコミュニケーションをとることは良いこと、と思う。だけど、それが「馴れ合い」になり、自分たちに自覚がないまま、緊張感がなくなって刺激が低くなっていき、仕事の品質が落ちていく。

人は誰しも憎まれたくないし、嫌われたくないから摩擦を減らそうとするけど、その反面で、摩擦が良い結果、新しい発見を生むことが多い。そして、これも昔似たようなことを書いてるんだよね。
組織における「衝突」の意味 | Synapse Diary

 

で、最終的に何を思ったかと言うと、常に自分を自覚しているというのは難しいこと。だから、繰り返し気づくきっかけを作り、修正していくことが必要になる。これを日頃から実現するためには、メタ認知ができるような仕組みを持っておくことが重要になるんじゃないかと思う。

もっと細かく書けば、「トリガー」と「アンテナ」が必要になると思うわけです。

「トリガー」というのは、メタ認知を刺激するきっかけのこと。それは誰かと話す機会を設けることでも良いし、テレビやネットで情報収集することでも良い。自分がメタ認知を行うきっかけを、意図的に自分の生活パターンに組み込んでおくこと。

「アンテナ」は、トリガーが発信した情報を、ちゃんと受け取り、解釈し、自分の中に取り込んでいくこと。これは、どちらかというと思考を整理しておくことだと思う。仕事の切り口、考え方、視点などを整理しておくことで、ある情報に触れたとき、自分がどう解釈して取り込めば良いかを考えられるようになる。これは、ブログなどで思考を整理しても良いし、人と話すことも整理になる。

 

人という生き物は、自分を戒めることが難しい。経営者なんかは、定期的に経営セミナーに参加して、自分を戒めることをしている人もいるんだと聞いたことがある。特に経営者はあまり周囲から指摘されないので、裸の王様になりやすいし、自分を客観視する必要がある。