以前から「読解力」なるものに、関心を持っていました。同じ文章を読んでも、自分の読みは「浅いな」って感じることが多かったからです。もっと深く、文章を読みこなしたい。そのためにはどうすれば良いんでしょう。
そう思って読んだのが、こちらの「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」です。
もうね。目からウロコが出まくりでした。「読解力」という抽象的な表現がどういう能力であるのか、「読めた」とはどういう状態なのか、というのがとっても丁寧に説明されています。そして、「浅く読んでしまう」要因についてもはっきりと説明されていました。
これですぐに劇的に読解力が改善する、というわけではないかもしれませんが、確実に文章の読み方は変わるでしょう。
読解力が伸びない原因は「わかったつもり」になること
本書の中では、読解力が伸びない原因に、「わかったつもりになってしまう」ことが挙げられています。人は文章の中に不明点がなく整合性がとれた状態と認識すると「わかった」と理解します。
その「わかったつもり」というのは、もっと深く事実を考えたり整理すれば、もっと深く内容を理解できるはずなのに、その手前で考えることをやめてしまうという、結構厄介な事象です。
本書はその「わかったつもり」を体験できる例文が用意されています。僕も見事に引っかかってしまい、「ああ、そう。こうやってわかったつもりになってるのに、もっと考えるといろいろわかることがあるんだよな」って感心しながら読んでしまいました。
正直、ここまで論理的に「読解力」の構造をわかりやすく説明してくれた本を僕は知りませんよ。学生の頃、国語の教科が自分にとってどういう意味を持っているのか、よくわかっていませんでした。なんとなく解いても正解に辿り着けることがありましたし、「読解」や「語学力」というものを自分が全然わかっていなかったんだと思います。この本は、そういった個人的な長年の謎をすっきりさせてくれました。
読解力を向上させることは、人生を豊かにする
人は文章を読むとき、知らない間に自分の経験や知識で文章を「補完」し、イメージを創りだしています。それをスキーマと呼びますが、スキーマは文章の読解力を向上させる手段でもあり、一方で思い込みを作り出す厄介なものでもあります。
文章の読み方に深みを持たせるためには、このスキーマの数を増やしてあげるしかありません。様々なスキーマを自分の中に持つことで、文章を様々な角度から読み、理解し、想像することができるようになります。
最近「弱いつながり」という本が出版されました。僕は読んでいませんが、この記事を読むとおおよその主旨を理解することができると思います。
「弱いつながり」で今の「階級」から脱出する:日経ビジネスオンライン
東浩紀『弱いつながり』〜環境管理型権力を出し抜く「観光客」としての生き方
なぜこの本の話を持ちだしたかと言うと、「読解力を高めるためには多様なスキーマの獲得が必要」であり、「スキーマを広げるには自分の経験を広げる必要がある」と思ったからです。読解力の構造は理解できた。そして実際に自分の読解力を向上させていくためには、自分の知識や経験を大きく広げることが必要だ、というのが僕の理解です。
読解力を向上させるということは、自分の人生を豊かにすることにつながる。いや、本当この本を読んでそこまで思うことができました。感謝です。