これからは「地方の時代」でもなく「都市の時代」でもない

アクセンチュアのこれまでのスマートシティーの取り組みなどを踏まえた、これからの日本の社会構造を示唆した本を読みながら、これからはやはり都市への集約と言うのは見直されるのかもしれないと改めて思いました。

都市へ移動する人々

もともとは、都市機能が集約すると、効率性が上がると言われています。こちらのTED動画がわかりやすいです。

都市および組織の意外な数学的法則

世界でみても、これからは都市へ人が移動するとも言われています。

国際連合「世界都市人口予測・2018年改訂版 [United Nations (2018). 2018 Revision of World Urbanization Prospects.]」概要 | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

年収も都市の方が高いのは自明です。

【書評】年収は「住むところ」で決まる

 

都市はQoLを上げてくれる場所か

冒頭で紹介した本では、都市コストが高くなっていることを数字で示しています。例えば、家賃だとこんな感じ。

それでは、都心部の住みやすさはどうだろうか。市民生活に関連するいくつかの指標から東京の住みやすさを考察してみよう。  まず、1㎡当たりの家賃。東京の家賃は2595円と、全国平均の1319円の約2倍。東京を含む首都圏全体でも2031円と、かなり高い水準だ。こうしたこともあってか、2018年に総務省が行った「住宅・土地統計調査」によると、一住宅当たりの延べ床面積は東京都が最も狭い 65・18 ㎡となっている。最も広かった富山県の143・57 ㎡と比べると半分以下だ。東京のような大都市圏で暮らす多くの若い人にとって、広い住宅を構えて悠々と暮らすのはかなわぬ夢となっている。

 

それ以外にも、食費は全国平均の1.5倍、刑法犯認知件数も1.2倍という数字が挙げられています。加えて、通勤ラッシュによる経済損失も大きくなっており、ワークライフバランスをとりづらい点も触れられています。

このようなネガティブな側面がありつつも、それを上回る都市のメリットがあるからこそ、集積が進められてきたわけですが、それも「価値観の変化」によって変わってきているのかもしれません。

これまで経済的な向上、個人で言えば年収のような指標が幸福度に近いものと捉えられて(もちろん、それが全てではないとみんな理解しつつも)いました。しかし、キャリアが多様化する中で、価値観も変化してきており、経済的な指標だけではなく、いろんな価値観での幸福観・人生観が増えていった気がします。

 

というようなことを考えていたら、ちょうどこんな記事をお見かけしました。

年収マウンティングそろそろ滅びろ|池澤 あやか|note

全く同感です。お金は必要不可欠なものではあるし、労働搾取なども当然ながらよくありません。ただ、人が大事にするもの中には、お金以外にもあるし、人や場面によって重要度は変わるのだと思うわけです。

 

二項対立ではないどこか

都市がダメ、田舎の方が素敵、とかは全く思わないわけですが、これまで都市化が進んできていた流れというのは、前述したような価値観の流れの中で、コロナがショック療法的に人々に浸透させた可能性があるのでは、と考えています。

安宅さんの「シン・ニホン」でも、本書の最後のあたりに「都市集中型の未来に対するおオルタナティブ」として、「風の谷」いう構想を提唱しています。

「シン・ニホン」を読んで日本の現状と未来を考える

(これがコロナ前の2月に発売されたことを思うと、本当に先見の明があるとしか言えない)

一方で、地方はインフラを維持するのが難しくなっています。単純に「地方の方が幸せになれる」というわけではなく、課題は山積です。再度冒頭のアクセンチュアの本によると、人口減少による課題がこう述べられています。

人口減少局面において、大きな影響を受けるのは、店舗やサービスなどの生活インフラだけではない。電気・通信・ガス・水道・交通・公共施設といったハードインフラへの影響も必至だ。  高度経済成長期に構築・整備されたインフラは、①人口減少による維持財源(有料サービスは売上、公共サービスについては予算) の不足、②維持するための労働力不足、③更新タイミングの波、の3重苦に襲われる。

 

この影響がすでに顕在化しているのが、地方の過疎地です。移動というテーマだけみても、こういう課題が加速しています。

こうして、地方部においては移動困難者、交通事故死亡者数、移動手段のための財政負担の3つがスパイラル式に増加する「負のサイクル」が加速している。地方部において、自ら運転しなくても生活に支障をきたさず暮らせる地域インフラの再構築が早急に求められている。

 

JR四国は赤字になっており、交通インフラを維持するのは本当に厳しくなっています。
過疎地における地方版MaaSの取り組みが増えているのも、その流れからいかに効率的な仕組みによって交通インフラを整備するかが求められているからです。

今年度12億円の赤字見通し JR四国はなぜ苦境なのか? 好調なJR九州との違いは(小林拓矢) – 個人 – Yahoo!ニュース

 

そういう意味では、今の都市もそうでない郊外も、既存の仕組みの延長では難しいのではないかという気がしてきます。もっと大きな枠組みで都市構造を見直すタイミングがきてるのかもしれませんし、いろんな取り組みが始まっているのも事実です。

「都市vsそれ以外」という二項対立ではない新しい形を考える時です。

MaaSが世の中に浸透したら社会はどう変わるか「Beyond MaaS」

MaaSという言葉をいろんな場面で目にすることが多くなりました。

2019年はMaaS元年だった

Googleトレンドでみると、日本でMaaSというキーワードが認知され始めたのが2018年、検索ボリュームが大きくなったのは2019年。まさに2019年が日本での「MaaS元年」であったと言える気がします。

日本でも海外でも、いろんな形で実証実験が行われていたりします。

MaaSについては、以前この本を読みました。

MaaSが都市と地方の交通事情を激変させるかもしれない

 

今回、その続編として「Beyond MaaS」が出ていました。

MaaSはいろんな業界を変革していく

前作はMaaSの動きはわかるものの、それによって社会がどう変わっていくのかを具体的にイメージするのは少し難しかったのですが、今回はそれによっていろんな業界を巻き込んで、どう変わっていくのかを踏み込んで理解できる内容になっています。

本書で取り上げられている業界を見ると、その幅広さがわかるものです。

鉄道
バス
タクシー
航空

住宅・不動産
観光
医療・介護・ヘルスケア
飲食・サービス
小売り
電力
モバイル・通信
フィンテック・金融
保険
広告・プロモーション
ゲーム・イベント
シェアオフィス・働き方改革
物流
災害・防災
農業

それ以外でも、MaaSビジネスがどういうプレイヤーで構成され、それぞれがどういう役割や商流になるのかも示されています。曖昧な雰囲気の漂うMaaSですが、自分がどの立ち位置を目指すのか、どういう影響を受けるのかもイメージできるようになります。

自動車業界はどうなるかといえば、結構な危機感が示されています。

もうお気づきかと思うが、自動車メーカーはMaaSのエコシステムを形成するプレーヤーには入っていない。サービスドリブンで考えた時、重要なのは交通事業者(より広くはモビリティサービスプロバイダー)であり、自動車メーカーを含め、乗り物自体をつくる企業は二義的な存在と見なされている印象だ。

 

こういう状況になると、今の自動車会社を頂点にしたピラミッド構成が崩れてしまうことに、大きな危機感を自動車メーカーは持っているのだと思います。

MaaSは都市と結合する

MaaS界隈を調べていると、だんだん話は「都市」の問題へスライドしていきます。

再度Googleトレンドをみると、スマートシティという単語を2018年頃にMaaSが逆転しています。しかし、スマートシティ自体も検索ボリュームはあがってきています。

ということで、今後はMaaSと合わせてスマートシティの議論ももっと活発になっていくでしょう。最近だと、トヨタとNTTが業務資本提携しましたしね。

NTTとトヨタ自動車、業務資本提携に合意 | コーポレート | グローバルニュースルーム | トヨタ自動車株式会社 公式企業サイト

都市OSを構築し、プラットフォーマーのポジションを真剣に取りに行く表れですね。

都市という話でいえば、MaaSは都市部だけのものか?という問いに対して、ルーラルMaaS(郊外型MaaS)という考え方、事例も紹介されています。どのエリアであっても、これからもっと変革が起こるでしょう。

 

MaaS界隈はこれからもっと盛り上がりそうですね。

シェア自転車

中国で一時期非常に騒がれていたシェア自転車ですが、最近はあまり話題を聞かなくなりました。

MaaSの本を読んだときに、個人のラストワンマイルの移動手段として、シェア自転車が取り上げられていたので、改めて「最近どうなってるんだろう?」と思い、軽く調べてみたのです。

MaaSが都市と地方の交通事情を激変させるかもしれない

 

検索してみると、解説した記事が見つかりました。中国の状況は、こちらを読めばわかります。

中国のシェア自転車はなぜ失速したのか~投資偏重「中国的経営」の限界

半年で日本撤退のシェア自転車ofoに破産準備報道。「中国新四大発明」の倒産ラッシュ | BUSINESS INSIDER JAPAN

これらを読むと、中国のシェア自転車の特徴はこんな感じです。

  • スマホを使ったロック解除・決済が可能
  • 料金が安い
  • 乗り捨て自由

その結果何が起こったかといえば、

  • スケール勝負になり、拡大が急速
  • 放置自転車の回収や自転車の修理などが急拡大で追いつかず
  • 競争激化で収益源が確保できず

 

ということで、スケールが拡大してプラットフォームを握れば、収益が安定したり、利用データで別ビジネスを展開するなどの青写真があったと思われますが、その前にコストが追い付かず、行き詰ってしまったようです。

日本だと、DMMが参入をあきらめた経緯が書かれています。

DMMが一転、シェア自転車参入を「やめた」理由 | インターネット | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

やはり放置自転車の回収コストなどが合わず、放置自転車があふれるとブランドイメージも悪くなる、という懸念が提示されていますね。

 

一方で、メルカリが「メルチャリ」を展開しています。

メルチャリ

今は福岡市と東京都国立市だけで展開されていますが、「乗り捨て」ができないのがひとつの特徴のようです。

福岡で「メルチャリ」体験、乗り心地は最高 – Engadget 日本版

ポートを設置して、ポート間の移動を前提としていることや、個人がポート設置や放置自転車を回収するインセンティブを設計するなど、いくつか中国版より変更・工夫が取り入れられています。

 

いろいろ調べてみると、コストの割に売り上げを上げるのが難しく、プラットフォームを構築した後の新たな収益モデルもまだ見えていないのが課題ということでした。

とはいえ、交通手段としてはこれからも自転車は必要になると思うので、これからどうなるのか注目ですね。

MaaSが都市と地方の交通事情を激変させるかもしれない

最近よく聞く「MaaS(Mobility as a Service)」という言葉。

今後MaaSというものが、どういう形で普及していくのか、その際の課題は何かを知りたくて、本書を読みました。

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これまでそれぞれの交通サービスは、行政や民間が運営してきましたが、それらをユーザ目線から捉え直し、使えるやすくしたのがMaaSのコンセプトです。UberなどUXが優れたサービスや、自動運転の技術向上などによって、これらのサービスコンセプトが注目されています。

いくつか海外では事例も生まれてきており、日本でもソフトバンクとトヨタが協業して、モネテクノロジーズが立ち上げられるなど、MaaSを推進していく動きが見られています。

モネ テクノロジーズはMaaSプレーヤーと自動車メーカーを結ぶ立場で、同社自体はMaaSオペレーターの立ち位置を目指しているのだろう。初期は需給最適化システムを利用し、ヒト・モノ・サービスを好きなときに呼べるモビリティサービスの提供を考えているという。国内で戦略特区の設置などによって地方自治体と連携し、モネ テクノロジーズのプラットフォームを100地区での導入を目指す。2020年代前半からはイーパレットを活用したモビリティサービスの実現を目指す。

最近だと、ホンダや日野自動車もモネテクノロジーズに出資していて、企業を横断して、勢いが増しています。

トヨタとソフトバンクのMONET、日野自動車およびホンダと資本・業務提携 – Car Watch

 

経済面でみると、人口減少で悩む地方の交通インフラの救世主がMaaSです。

それなりに公共交通が整備されているのにマイカー依存率が高いというエリアにMaaSは向いているので(MaaSグローバルもそういう場所を狙って展開しているという)、地方の政令市はMaaS導入の適地だ。

それだけではない。ドイツ、スイス、オーストリアなど、欧州の地方都市には、マイカーから公共交通へのシフトに成功してきたところが多いが、これらの地域を見ると、所有から利用へのシフトが何をもたらすかがよく分かる。中心市街地に人の往来が戻り、町なかの商店などがにぎわい、歩いて楽しい町、出歩きたくなる町になるのである。

マイカーを前提とした郊外型の生活スタイルから、中心市街地への回帰を促すことが期待されています。コンパクトシティという言葉も随分前から聞かれますが、マイカー依存から脱却できれば、その実現も近づくでしょう。

MaaSが普及していくと、それ以外にもスマートシティレベルで、様々な産業が生まれていくことも本書で指摘されています。本格的なうねりは日本だとどこから生まれるんでしょうか。

フィンランドで生まれたMaaSの先駆的プレイヤーwhimが日本に上陸とも言われています。これから盛り上がる領域でしょう。

世界初のMaaSアプリ、2019年に日本上陸か。スマホ一つで全ての移動手段を手配・決済 | BUSINESS INSIDER JAPAN

 

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AIで大量失業が発生したら、ベーシックインカムは必要になるか

すっかりブログを更新する頻度は落ちていますが、生きています。書評はこまめに書いていませんが、本も読んでいます。ということで、今日は久々に一冊紹介したい本について書きます。

先日書いた、「AI vs 教科書が読めない子供たち」でも触れられていたのですが、ベーシックインカムに対する関心が年々高まっています。

AI時代にこれから求められる人間のスキルは「読解力」

そのベーシックインカムについて、もう少し知りたくなったので、一冊読みました。

AIとベーシックインカムの関係

AIとベーシックインカムが結び付く筋書きは、僕が理解する限りでは、以下のような流れです。すごい単純化していますが。

AIが発展すると、人の仕事が奪われる

代わりに新しい仕事はうまれるが、全ての人がそれらの職に対応できるわけではない
対応できたとしても、賃金が低い職が多くなる(ホワイトワーカーの職が奪われるため)

失業者対策など社会安定のため、ベーシックインカムで最低限の所得を保証する

TEDでも、こちらの講演をみるとわかるのですが、AIとベーシックインカムがセットで語られています。

これからAIが普及していったとき、本当にベーシックインカムという制度は必要になるのでしょうか。どういうメリットがあるのでしょうか。

ベーシックインカムに関する幅広い論点を学ぶ

これだけ注目されているベーシックインカムを、わかりやすく解説してくれたのが本書です。

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失礼ながら、新書だしクイックに浅く広く分かればいいなと思って読み始めたのですが、貨幣制度の歴史や問題点について語られていたり、「最低限の保証」と「勤労意欲」との関係を政治的イデオロギーから読み解いていたりと、幅広い角度からベーシックインカムの論点が整理されていました。

特に貨幣制度については、これまでちゃんと理解したことがなく、非常に新鮮でした。中央銀行の制度がいつ頃、なぜできあがったのか。ヘリコプターマネーの目的とリスクはどのようなものか。そういう点が説明されていて、ベーシックインカムだけでなく、経済における現行制度の限界も知ることができたのは、良かったです。

ヘリコプターマネーについては、こちらの記事もわかりやすかったです。

夢の政策かばらまきか。「ヘリコプターマネー」政策、その効果とリスク | ハフポスト

 

AIの普及でなぜ人々は貧しくなるのか?

ベーシックインカムが議論されているのは、「今後人々の仕事はAIに奪われる」という可能性が高まっているからです。

ただ、楽観的な見方として「新しい技術は人々の雇用を奪うが、新しい仕事も作り出す。」というものもあります。僕もそういう考えが強かったのですが、「AI vs 教科書が読めない子供たち」や本書を読んで、ちょっと考えが変わってきています。本書でも、なぜAIが人を貧しくしてしまうのかが書かれています。

だが、AIを含むあらゆるITに当てはまることだが、ITが奪う雇用は、ITが増やす雇用よりも絶えず大きい。例えば、旅行サイトの構築・運営に携わる人員は、旅行代理店の人員より少ないはずだ。

AIはホワイトカラーの仕事を奪ってしまうので、一部のクリエイティブな人たちは高給な仕事を維持しますが、多くの人はブルーカラーに移ってしまう=賃金が低下するという構図です。つまり、AIはいろんな仕事を奪うのではなく、ある特定領域の仕事を奪う可能性が高く、それが賃金の「二極化」と「全体低下」を招くということです。

このような事態を防ぐための解決策として、ベーシックインカムが提唱されているわけですね。一人あたり月7万円ぐらいが目安のようですが、これによって生活も安定し、労働意欲も減退しないのであれば、試してみる価値はありそうな気がします。

ちなみに、Wikipediaの情報が豊富でした。

ベーシックインカム – Wikipedia

世界でも少しずつ試されているところがあるようです。

シカゴ、ベーシックインカムの導入実験を行うアメリカ最大の都市に | BUSINESS INSIDER JAPAN

 

貨幣制度や社会福祉制度、これまでの労働価値観などが変わる要素を含んでいるので、なかなか最初は「え?」という感じではあるのですが、こうやって勉強してみると、これからは社会構造全体が変わっていくと思うし、その中で有力な手段になるように思えました。

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【書評】世界史を変えた詐欺師たち

お盆休みではありますが、市場はトルコリラで相当激しく動いておりますね。

さて、休みの間に経済に関する面白い本を読みました。本書はタイトルには詐欺師と書いてありますが、経済に関連する読み物です。

本書の中で登場する数々の人たちは、実際の詐欺師もいれば、経済学者など経済の観点で名声を得ている人たちもいます。

詐欺のスキームを理解する

ミシシッピバブルを生み出したジョン・ローや、ポンジ・スキームと言う名で自分の名前を残している詐欺師チャールズ・ポンチなどは、よく語られる詐欺のスキームです。

ミシシッピバブルや南海バブルなどは、こちらの記事がわかりやすくて良いです。続編を楽しみにしているのですが、まだですかね。

ペペラのバブル物語〜経済&金融バブルをわかり易く解説〜

ポンジ・スキームなどは今でも見られます。少し前に話題になった「つなぎ融資の女王」は、まさにポンジ・スキームです。

詐欺で逮捕された「つなぎ融資の女王」 謎の半生を独占告白│NEWSポストセブン

古くからある手口ではあるのですが、今でも騙されることがあるということです。

経済学をどこまで信じるべきか

少し評価が難しくなるのは、ケインズ経済学として名前が残っているジョン・メイナード・ケインズや、アメリカのFRBで長く議長を務めたアラン・グリーンスパンです。

これらの人々は、今での評価は分かれています。グリーンスパンは議長だった当時好景気を生み出し、発言力を増していきました。しかし、歴史を振り返ってみると、必ずしも高評価だと素直に言えない部分が多々見られます。

それはITバブルや、リーマンショックを引き起こすことになった住宅バブルがはじけた後の傷跡を見れば、グリーンスパンの采配というのはどうなったんだろうと疑問を抱くでしょう。

一方、リーマンショック後に再注目されたケインズ経済学も、本書の中で紹介されている通り、ケインズ自身は自説が結構変節しており、なかなか評価が難しい人です。

しかし、経済学は再現性がなく過去に対する1つの仮説は提示できたとしても、その時々で処方箋は変わると言う特性を持っています。経済学者や評論家は様々なことを、その時々で唱えますが、後から検証することが難しいこともしばしばあり、どこまで信用するのか難しいところです。

最後に仮想通貨も登場します。これもある種のバブルでしたね。これからどう社会に浸透するかはわかりませんが。

本書読むと、経済は再現がなく様々な事象が複雑に絡んでいること、人々の信用が重要なポイントになることから、詐欺と相性が良いんだな、と認識しました。

非常に面白い読み物でした。

経済の仕組み自体が変わる中で僕らはどう行動するべきか?

どんどんお金の価値が変わっていると言われていますが、テクノロジーの進化や人々の価値観の変化によって、ついにこれまでの資本主義社会から経済のルールが大きく変化するんじゃないかと感じます。

それらのお金の変化を、経済の観点から整理したのが本書「お金2.0」です。

「お金の流れで見る戦国時代」で経済学のエッセンスと信長のすごさを知る

経済学という形で発達したのは近代以降だったので、あまりイメージがありませんでしたが、戦国時代を経済で捉える主旨の本があり、興味を持ちました。

この記事を読んで面白そうだったので読んでみたのです。

『お金の流れで見る戦国時代』って本が面白すぎたよ。|三輪のアウトプット用ブログ(目標1記事30分)|note

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戦国時代というと、合戦や権謀術数がイメージされますが、この本を読むと戦国武将はやはり国を統治するのが重要であり、その統治能力によって戦力も大きく変わったことがよくわかります。

その統治能力というのは権力闘争だけでなく、経済的なセンスが求められるんですね。

 

経済センスあふれる信長

天下統一を果たした織田信長は、経済センスあふれていたことが本書を読んでよくわかりました。

戦国時代に他の領土へ攻め込むためには、領域内の経済を活性化し税収を多く取れるようにしなければいけません。

織田信長は、経済を活性化させるために「楽市楽座」を推進したことで有名です(織田信長が初めて楽市楽座をやったわけではないようです)。これによって、経済活性化と領域の安定を果たします。楽市楽座以外にも、貿易が盛んな境を抑えることで、税収を確保します。

また当時はまだ珍しかった「常備兵」の制度を確立し、強い軍によって領土を拡大させていきました。それまでは農民が「副業として戦争」を行っていたのです。これも、経済振興によって安定的な税収があればこそ、です。

つまり信長の戦略はこういうサイクルが描けます。

見事にいろんな施策が全体に整合しています。

あと、寺社仏閣など既得権への切り込み、主要都市の押さえ込みなどなど、経済利権を確立していく様はセンスがすごいなーと改めて関心します。

貨幣問題への取り組みも、大名によって異なったようです。明との貿易、明の貨幣の減少から悪貨の流通、石高制への移行まで、まさに経済学だなって思います。詳しくはぜひ読んでみてください。

 

経済学というのは、時折直感と異なることが正しい、ということがあります。

本書の中でも武田信玄と織田信長の経済施策の対比が前半にあるのですが、関所に関する対応をみると、武田信玄は関所をたくさん立てて税収を増やそうとしてます。一方の織田信長は、関所を廃止して物流を促進して経済を活性化させることで、自分たちの領内を豊かにしていきます。

安直に考えれば関所を増やすことで短期的には収入が増えるんですが、経済全体の促進を阻害して、長期的には衰退していきます。このあたりにセンスというか理解があるかどうかでも、統治のあり方は変わったんですね。

 

世界の構造を捉える力

それ以外にも、上杉謙信がなぜ有力大名だったのに天下を取らず自分の領土から出なかったのかが、理由として面白かったです。これは経済とはちょっと違うがしれませんが。

上杉謙信は信長よりも早く京都に入っていますが、天下人にはなりませんでした。なぜでしょうか。

謙信はあくまで、室町幕府の秩序の中での出世を望んでいた。逆にいえば、「室町幕府の秩序や社会システムはすでに崩壊し、強力なパワーによる新しい秩序の建設が必要だ」ということを認識していなかった。自分が天下を押さえ、新しい国家をつくろうということには思いも及んでいないのだ。

 

これは面白い考察です。秩序が乱れ、これまでの社会システムが崩れようとしているのに、それを見誤ったのが謙信、というのです。このように、時代のなあれや構造を俯瞰してとらえることで、行動も変わってくるという示唆ですね。

また、土地に対する考え方の著者の仮説も興味深いものがあります。そこから明智光秀の謀反まで結びつけるのも、妄想を掻き立てるものがありますね。こちらも詳細は本書を読んでください。

 

信長が制覇できた理由は単純ではないですが、それにしても経済センスが見事だなーと感心しながら読みました。歴史好きには新しい角度の面白い本だと思います。

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関連本

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こちらも本能寺の変を起こした明智光秀の動機や、当時の状況を考察したものです。歴史はいろんな読み解き方があるので、そういう発見を知るのが楽しいですよね。

 

今後日本の業界再編がいろんなところで起こる中で、自分はどう生きていくべきか

ブログを書くのが久々になってしまいました。少し更新が途切れると、ついつい期間が開いてしまうんですよね。でも、ブログを書くと自分の考えもまとまっていくので、続けたいなと。

さて、今日は少し前に読んだ本のご紹介です。M&Aコンサルティングの著者が書いた、今後の10年間で日本の市場で起こる様々な業界再編を描いた一冊です。

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これからの将来は、人口減少で日本の経済衰退は避けられない状況です。パイが限られていく中で、企業の競争は激化し、いくつかの企業が淘汰されていくでしょう。そうやって事業再編が今後どんどん増えていく、というのが本書の趣旨です。

面白かったのは、その事業再編が起こるための、飽和点となる具体的な店舗数やシェアが書かれている点で、これらの法則を自分が関心ある業界に当てはめてみれば、今後どうなりそうかを見極めやすくなるので、それらの情報がとても参考になりました。

国内において6万拠点というのは、拠点ビジネスの臨界点だ。これは、国内におけるあらゆる業種業態に当てはまる法則である。日本の総人口に照らして考えると、およそ2200人に1拠点となる。そして、その後に業界再編が起きて、自然淘汰されていく。  具体的には、ガソリンスタンド、コンビニエンスストア、歯科医院、そして現在再編が活発化している運送会社、調剤薬局も当てはまる。

ということで、興味がある業界があれば、ぜひ読んで今後の展望を考えるきっかけにしてはどうでしょう。

もうひとつ読んでいて印象に残ったのは、今後の日本市場縮退による事業再編に、企業はどう向かっていくのかという点が述べられている箇所があり、その中で従来の情報産業という観点ではなく、リアルな業種業界によるデジタル化が加速し、再編をリードしていくようになると述べられていたことです。

要は、あらゆる業種業界でIT化・デジタル化が重要だということです。最近読んだ本ではことごとくこの辺でデジタル化が気になると言われています。具体的には、このあたりですね。

最近聞くデジタルマーケティングって何?

営業にもITテクノロジーは必須なんだと確認する一冊「SALES GROWTH」

ITに関するビジネスはどんどん変化していますが、むしろいろんな領域でITが活用されるのはまさにこれから、と言われています。企業もそれに気づき、これから取り組みを加速させていきそうです。

過半数の企業が「ビジネスのデジタル化」に取り組む、JUAS調査 | 日経 xTECH(クロステック)

ということで、これからもいろんな業界で激変が起こるでしょうし、その中で勝っていくためには、ITをはじめ様々な努力が必要になるでしょう。そういう激変していく中で、自分がどう身の振り方をするべきか。今後の日本の市場や業界再編の動きをと言う広い視点を捉えながら、考えていきましょう。

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【書評】幸せとお金の経済学

経済学というのは、今の経済社会をどう捉えたら良いか、様々なヒントをくれます。さらに、最近は心理経済学や行動経済学と言われるような、GDPなどの経済指標だけではない、幅広い研究が進んでいます。

最近読んだ「幸せとお金の経済学」も、まさに「経済発展だけでは人は幸せにならないのではないか」という問いからアプローチした一冊です。

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中間層の崩壊による幸福感の欠如

戦後の世界の経済発展は目まぐるしく、多くの先進国では経済発展とともに人々の幸福が増していきました。しかし、1980年代ごろから経済発展と幸福感にはリンクしなくなってきています。

その1つの要因が、中間層の崩壊です。それによって経済格差が大きくなり、多くの人々が相対的な幸福感を感じづらくなっていると言われています。日本でも、相対的な貧困率は上昇しており、格差拡大傾向にあります。

相対的貧困率等に関する調査分析結果について |厚生労働省

その幸福感を感じづらい要因として、裕福な層への妬みではなく、経済格差が引き起こす消費活動への影響が要因だと書かれており、それが地位財・非地位財という捉え方で整理されています。これが本書のキーになるところです。

 

地位財と非地位財

人には、絶対的な指標によって幸福感を感じる部分と、相対的な指標によって幸福感を感じる部分の両方があるようです。

それを、この本では経済学上の観点として、地位財と非地位財という観点で捉えています。

●地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの。(例:所得、社会的地位、車、家など)
●非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの、(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境など)

これが非常に目から鱗をでして、このような観点を知っておけば、自分がどこにお金を投じれば幸福感を感じやすく、かつそれが長く持続するのかを考えることができるでしょう。

簡単に言えば、相対的な幸福を感じるための「地位財」ではなく、できるだけ非地位財に投資するよう心がけることが、幸福感が長く持続する秘訣になります。

本書では、広い家で長時間通勤と、狭い家で短時間通勤の比較が出てきます。家の広さというのは地位財で、通勤時間(=ストレス・健康)は非地位財なのですが、これも通勤時間を重視するのが良いわけです。

そういえば林先生も、テレビで長時間通勤の弊害を語っていましたね。

林修先生が長時間通勤がもたらす弊害を指摘 「ストレスで失うもの大きい」 – ライブドアニュース

 

とはいえ、個人の力だけで地位財・非地位財を区別して、うまく投資できるわけではありません。経済格差は、否が応でも中間層に必要な消費を増大させて、貧困を招きます。

本書の後半では、どのように経済格差を小さくする社会にするかが書かれています。これも、経済学の観点から興味深いものがあります。

 

自分の消費行動を見つめ直してみると、できるだけ非地位財につながるものを選択するようにしてみたいですね。特に非地位財は他人から見えづらい価値観で形成されており、周りからは理解されない可能性が高いです。しかし、自分の価値観に従って選べるようにしたいものですね。

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