顧客の期待値を管理する

スカイマークの苦情に対する表明が話題になっていたので、顧客の期待値について書いてみる。

 

大胆なスカイマーク「苦情受け付けない」「丁寧な言葉遣い義務付けなし」 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

大胆なスカイマーク「苦情受け付けない」「丁寧な言葉遣い義務付けなし」 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

 

 スカイマークは、機内の座席ポケットに備え付けた「サービスコンセプト」と題した文書で「従来の航空会社とは異なるスタイルで機内のサービスをしている」と主張。荷物の収納を「乗務員は援助しない」ことや、乗務員の私語を事実上容認し、服装やヘアスタイルについても、会社支給のポロシャツなどを着用する以外は「自由」とするなど、“大胆”な方針を盛り込んだ。

 

僕は、スカイマークのやり方には賛同する。研修コストや苦情のための対応コストは、見えないが結構大きなものだ。それによって人は時間を奪われるのと、苦情に対応したところで大きな利益向上が見込めるわけではない。

電車には高い接客サービスを期待しないし、ホテルに宿泊するときも値段相応のサービスであれば文句はみんな言わない。それは最初から期待値が低いからだ。

 

事前に相手の期待を適切なレベルで形成する

僕は、働き始めてしばらく経ったときに、「期待管理」という言葉を聞いて驚いた。それが正しい用語なのかは知らないけれど、少なくともちゃんと相手の期待を管理というか、適切なレベルにしなさいと教えられたのだ。これは、相手と交渉をするときや、一緒に作業をする上ではとても重要なのだ。

自分が提供する製品やサービスが、過剰に低すぎて価値を感じてもらえないのもいけないし、過剰に高すぎて失望感につながることもいけない。どこかにあるはずの「適切なレベル」に設定し、期待形成することが、結果的に双方円滑で効率の良い関係を築けるのだ。

 

今回重要なのははっきりは見えない「サービス」部分を可視化したこと

今回のスカイマークの件でも、他と同じように事前にはっきりとサービスを定義して、値段相応と思う人に購入してもらえれば、それが無駄なクレームを生まないし、最も効率的になる。スカイマークとしては、削れるコストは限りなく削りたいだろうから、変な期待を持って苦情を言われて対応するコストが発生することを避けたい。特にJALやANAなどに乗りなれている日本人からすると、「あって当然」と思う人は多いんじゃないだろうか。

航空サービスというのは、見えないサービスがたくさん値段に内包されていて、コストとサービスの関係がわかりづらい。QBハウスがいろんなサービスを削ってシンプルなメニュー化で需要を創出したように、こういう値段の中に隠れて見えない「サービス」の部分を、はっきり示すことは良いことだと思う。

 

まあ、プレスリリースのやり方としてもう少し柔らかい表現はなかったのか、という印象もなくはないけど。がんばれ、スカイマーク。

国内回帰は今後進むか

アメリカで本国回帰っていう話があった。

 

アメリカの本国回帰トレンドを日本にも — 岡本 裕明 : アゴラ – ライブドアブログ

アメリカの本国回帰トレンドを日本にも — 岡本 裕明 : アゴラ – ライブドアブログ

 

アメリカで本国回帰が大きな流れになりつつあり産業、特に製造業の海外拠点から国内へのシフトが目に付くようになってきました。理由は海外、特に狭義の意味で中国の製造コストが上昇、運賃や労働効率性を考えればアメリカ本国で製造しても競争力を維持できるようになってきたのです。

中国の人件費向上はどれくらい?

実際にどれくらいなんだろうと思って検索してみたら、中国の人件費は、ずっと10%前後の上昇を達成しており、2009年時点で上海の年収は66万円程度になっている。

中国の平均年収(年収/所得/給料/賃金/報酬)2010年データ | 上海ではたらくビジネスマンのWEBサイト

中国の平均年収(年収/所得/給料/賃金/報酬)2010年データ | 上海ではたらくビジネスマンのWEBサイト

これに輸送コストや研修コスト、労務管理リスクなどを含めていくと、人件費によるコスト圧縮効果が下がってきているんじゃないか、ということだと思う。今後もこんな感じで人件費が上がっていくことを考えれば、そろそろ事業構造をシフトしておかないと、という危機感もあるのかもなあ。

他に人件費が低い労働力を提供できる国ないの?

中国が人件費が上昇してくるとなると、他のまだ人件費が低い国に資本が集まるんじゃないかとも思うし、タイなどは親日で今後発展が期待されるという話があった気がした。だけど、これを見ると、東南アジアで中国以外に大きな資本投入が見込めるほど人件費が高い国はないんじゃないかと思えてくる。

www.bk.mufg.jp/report/aseantopics/ARS166.pdf

www.bk.mufg.jp/report/aseantopics/ARS166.pdf

それに、カントリーリスクや物理的な距離、人口や土地なども考慮する必要があるので、中国と同じような規模で人口や土地を有している国というのは、アジア地域ではないのかもしれない。

日本でも国内回帰が進むか?

日本でも国内回帰の動きはある。レノボやHPは、日本工場での生産によって、「Made in Japan」のブランド力を利用したり、高い量産品質や柔軟な対応力を取り込んでいる。

レノボ、HP……PCメーカーの「Made in Japan回帰」はなぜか (プレジデント) – Yahoo!ニュース

レノボ、HP……PCメーカーの「Made in Japan回帰」はなぜか (プレジデント) – Yahoo!ニュース

 

アメリカでも日本でも、製造業は旧時代のビジネスのように捉えられているけど、市場としてはまだ立派に存在している。今後はいろんな国でアウトソーシングの意味は変わってくると思う。少なくとも「安い労働力確保」という要素は相対的に低くなっていくと思う。そのとき、日本国内にも投資拡大のチャンスは訪れるんだろうか。

2011年度の国内PCサーバー出荷概況

PCサーバの国内出荷状況が発表されてましたよ。昨年度は台数でも金額でもその前年より増加傾向にあったそうな。震災以降の防災対策の高まりや、スペック向上によってこれまでUNIX系の牙城だった基幹系サーバも席巻しているのが要因のようだ。

 

2011年度 国内PCサーバー出荷概況 – 株式会社 MM総研

2011年度 国内PCサーバー出荷概況 – 株式会社 MM総研

 出荷金額は前年度比6.7%増の2,113億円となり、成長率は出荷台数を若干上回る結果となった。出荷単価は40.9万円と前年度から2万1,000円の上昇となった。仮想化集約などの広がりにより1台あたりに搭載するCPU、メモリ、HDD、SDD等の増加が出荷単価を押し上げていること、また、Linuxなどのオープンソースの活用拡大が大規模システム、基幹系領域にも広がりつつあることもサーバーの単価上昇に寄与している。

あとは、仮想化によって機器集約することから、1台あたりの単価も上がっている。この傾向は今年度も続くとみられている。

 

面白いのはシェア争いで富士通がポジションを上げていることかな。中堅市場以下を狙ったモデルやデータセンターへの対応を強化しているんだとか。

随分前から中堅企業以下の規模の市場をどう崩すかが叫ばれていたけれど、中堅企業からIT関連投資を引き出せるようになっているということかな。実際、企業規模が小さいと、機器スペックの向上や仮想化などによるITリソースの集約ができなかったり、選択肢が多くないため、どうしても現状のITのコストを維持しやすい傾向にある。

 年商が30億円以上50億円未満、50億円以上100億円未満、100億円以上300億円未満の3つの年商帯についてはCAGR2.4〜4.3%の間で、比較的高い伸び率を示している。これらの年商帯では、会計、販売・購買、生産、人事・給与などといった基幹系業務システムを中心に、自社業務への適合などを課題とする試行錯誤がまだ続いているという。

 また、クラウドの活用についても既存システムの現状把握が十分でなく、大企業のように全社規模でITコストを大幅に削減するためのクラウド活用には踏み出しにくいと分析。こうした状況から、既存システムの改善・刷新においては自社内運用とクラウド活用が混在し、年商300億円以上500億円未満のようなITリソースの集約がスムーズに進まないとみている。
Weekly Memo:最新調査にみる中堅・中小企業のIT投資予測 – ITmedia エンタープライズ

 

機器スペックが年々向上しているし、長寿命化しているし、ITサービスも多様化している中で、PCサーバはどこまで拡大できるんだろう。

フィリップのカナル型イヤホンを買った

これまで音楽を聴くときは、GalaxyS買ったときに付属されていたサムスンのイヤホンを使っていたんだけど、ややくたびれてきたので新しいイヤホンを買った。イヤホンは消耗品だと思っているので、あまりお金を出す気はないんだけど、せっかく買うのであればできるだけ良い音が期待できそうなものにしたい。

 

まず、イヤホンの基礎知識はこちらで。

音楽ライフを快適にするイヤホン選びの基礎知識 | nanapi [ナナピ]

イヤホンは大音量で長時間聴き続けると難聴になることもあるらしい。カナル型は小さい音量ではっきり聴こえるのでその点では良いのかも。

専門医に聞く。急増中の「ヘッドホン難聴」を防ぐには? | キャリア | マイナビニュース

探すのに参考にしたのは、ここらへん。

コスパ最強!3000円以下で買えるイヤホンまとめ – NAVER まとめ
通勤通学が楽しみになる、今注目の高音質&オシャレイヤホン15選 – NAVER まとめ

というわけで、最終的にこれにした。

付け心地が良いし、音漏れもしない。唯一不満なのは、左右のコードの長さが違うことぐらいかな。それ以外は、金額の割に良いイヤホンを買ったと思う。

IT戦略作成に向けた7つのアイデア

IT戦略作成に向けた7つのアイデアっていうのがあったので、メモしておく。

7 Ideas for Next-Generation Strategic IT Planning

具体的なアイデアというよりは、概念的なもの。

1. Responsive and anticipatory — indicators of improved service delivery and greater citizen engagement.

2. Trustworthy — measures of transparency, privacy and security.

3. Available — government services through all channels — mobile, social, Web, physical — all supported by IT systems and networks.

4. Fast — the speed of connections via a robust broadband infrastructure that lets people live, work and interact with their government online.

5. Strong and flexible — demonstration that IT has increased government’s capacity to meet growing demand for service at less cost.

6. Affordable — demonstration that IT has been used to cut cost structures and deliver services cheaper than conventional means.

7. Catalytic and collaborative — demonstration of how technology is being used to foster collaboration across boundaries and with private and nonprofit sectors.

 

個人的に興味があるのは7かな。日本でも行政コストは削減されていて、民間リソースの活用が叫ばれている。Gov2.0でも同じ概念だけれど、民間同士の触媒的な役割や、民間と行政の協働が重要な位置を占める気がしてるんだよね。

鯖江市が最近オープンガバメントで熱い感じになっているけど、こういう民間と行政の動きが多様化してくれば良いと思うし、そのために必要な基盤となる形ってなんだろうって思う。

 

自治体がよりよりIT戦略を作るようになれば良いと思うけれど、どちらかというとこういう考えの方が最近は解決が早くなるんじゃないかと思うこの頃です。

自治体クラウドに新潮流ってなんだろう

自治体クラウドに新潮流、ということで読んだ。

記者の眼 – 自治体クラウドに新潮流、復興対策が後押し:ITpro

記者の眼 – 自治体クラウドに新潮流、復興対策が後押し:ITpro

簡単に言えば、震災で被害を受けた自治体を中心に、災害対策の一環としてシステムを移行していて、それが複数自治体による共同化ではなくて、単独だということ。

これまでの自治体クラウドでは、複数自治体が共同化することによる「割り勘効果」を享受することがメインだった。それに合わせて業務を合理化したり、法改正対応などのメンテナンスコストを下げる効用も期待されていた。

 総務省が共同化を推進してきた経緯もあって、従来の自治体クラウドは複数の市町村の参加による共同化を前提とした取り組みが一般的だった。一自治体単独でのクラウド移行は、東京都島しょ部など一部に限られていた。共同化では、参加する自治体の数が多いほど“割り勘効果”が働いて、一自治体当たりの運用コストなどを抑えられる利点があるからである。

 ただ、今回の震災復興対策では、事業経費の3分の1の補助を得られることから、多くの自治体が単独でのクラウド移行を決断したようだ。複数の市町村で共同化を進める場合は、業務プロセスの標準化やコストの分担をめぐって自治体間で調整が必要になるが、単独での移行ならそうした手間も省ける。

しかし、今回の記事では共同化による割り勘効果は含まれない。これは本当に費用対効果として十分検討されているのかな。確かに被災してデータの紛失や情報システムの長期利用不可を経験すれば、すぐにでもクラウドへ移行する方が安全という判断になるのかもしれない。だけど、これまでの「割り勘効果」をアピールする流れはどこへ行ってしまうんだろうと、ふと思った。新しい潮流というか、単純に補助金があるから単独移行でも成立してますよってことなんだろう。

それにしても、クラウドへ移行したあとはどうするんだろう。単独発注だと、またクラウドの状態でロックインされるって状況も起こりそうな気もするんだけど。

上司を上手に使うスキル

ふと自分の中でホットトピックになったので、軽くまとめておく。

ピラミッド構造を取る組織は多いと思うんだが、組織をうまく回すコツに「上司を上手に使う」っていう点があると思うんだよね。

 

上司より自分の方が現場を知っている

上司を上手に使うスキルが必要なのにはちゃんと理由がある。それは、上司と部下で情報の非対称性が存在するため。

組織はピラミッド構造だから、自分の上司は現場の全部を知っているわけじゃない。だから、現場の情報を的確に教えてくれる人間は貴重なわけです。それによって、完全とは言わないまでも情報の非対称性を埋めることができるから。そして、非対称性があるということは、部下が情報を発信しないといつまでも非対称性が解消されないことにもなる。だから、部下が上手に上司を使うスキルが必要になる。

 

スキルを発揮すれば良い組織になる

これには良い効果があって、上司と部下の間の風通しがよくなることが多い。もちろん一概には言えないけど。だけど、自主的に考えた意見を進言してくれる部下を大切にしない人とか、どうかと思うしね。ちゃんと考えて進言していけば、お互いに思っていること、考えていることを言いやすい空気ができるんじゃないかなあと思う。

あと、結果として上司にちゃんと責任をとってもらえる。そもそも自分の責任範囲を超えているから進言しているのであって、それをちゃんと考えて行動すれば、上司は上司の責任を取ってくれるだろう。

 

こういうスキルはどのポジションでも必要ではあるんだけど、きっと中間管理職になってくるとこういうスキルが顕著に求められるようになる気がするな。上司はうまく使うものだし、上司である人もそれを承知で立ち振る舞うのがかっこいいよね。

直感と論理

最近、直感の重要性を考えることが多い。何かの事象があったときに、「あれ、何かおかしい?」とか「他にこういう可能性があるのでは?」と咄嗟に気づくような、本当に直感的に「ひっかかる」という感覚だ。

なぜかといえば、そういう直感的なひっかかりが、物事を正しい方向へ導く最初であり、最も重要なトリガーであると思うからだ。

 

例えば、コンサルタントが説明するプレゼンを聞いて、それに違和感を感じる人もいれば、感じない人もいる。

違和感を感じる人は、最初それがどんなものかよくわからないけど、最初の違和感の原因をちゃんと思考して、違和感の正体を特定していく。一方で違和感を感じない人は、何となく納得して終わりになる。そうすると、もう実行するまでそのプレゼンの内容が正しいかを検証するタイミングはない。だから、直感というのは大切なのだ。物事が決まる前に違和感の正体は潰しておかないといけない。

最近は、できるだけ自分の違和感を大切にしようと思っている。もちろん、それが正しいこともあれば間違っていることもある。だけど、違和感は最初のきっかけだ。それを自分の中でスルーしてしまうと、その後検証するタイミングはもうやってこないかもしれない。こうやって直感を逃すことが、最も大きい過ちになるかもしれないと思う。

特に、自分の経験がない領域はほとんど勘が働かない。だから、何となくわからない、違和感を感じる、というところを大切にして、勉強しながら勘を磨いていく必要もあるだろう。

 

論理というのは、ある程度時間をかけて、構成していくものだと思っている。だけど、直感を組み合わせれば、論理構成する時間も短縮できていくだろう。「これは過去似たような問題に取り組んだことがある」「これはあれと似ている」というような直感が、最初に答えまでの道筋を作ってくれることがあるからだ。

つまり、論理の前に直感が来る。そして、論理を磨き、いろんな経験を積むことで、直感の幅が広がっていくと思うのだ。

 

「第1感」に書かれていたことを、今更ながら改めて思い出している。
無意識の底にあるものを引き出す

情報を削ることには価値がある

バリー・シュワルツ氏が語る、選択のパラドックスについて

 

このTEDの動画で、面白いことを語ってましたよ。

選択肢が多いことは、自由の獲得に値するものだと思われるが、現代では選択肢が豊富すぎてその弊害も発生しているんだとか。

・人は選択肢が多いと、選ぶだけでエネルギーをたくさん消費する
・選択肢が多いほど事前の期待値が高くなる
・選んだ後の満足度が低い

さっくり言えば、こんなところです。これは確かにそうだよね。

つまり情報が豊富すぎると、生きているだけでいろんな場面で選択を求められるし、ちゃんと選んだつもりでも「他の製品のほうが良かったんじゃないか」と誰かがTwitterでささやいたり、いろいろ気になって、結局満足できない。そういう疲れた生活を僕らはしているんじゃないかと。

昔、似たような話として、決断するのにエネルギーを要する、ということを書いた。

「決断」の種類と重要性について考える

 

だから、ちゃんと情報を絞らないといけない。これは自分の生活で反省することでもある。結局自分が一生で成し遂げられることなんて限られている。上司に報告するときも、ちゃんと情報を削ろう。自分が思ったことや起こった出来事を羅列するだけなら、まったく価値はない。

 

あと、選ぶ手間とか考える手間を削るっていうのもサービスの着眼点としてあるよね。最近なるほどーと思ったのは、おまかせフォトブック。

フォトブック・フォトアルバム作成なら写真を送るだけできる「おまかせ!フォトブック」

写真をちゃんと選んでレイアウトを考えるとか手間だし、誰がやったってそんなに変なことにはならないと思う。むしろ、慣れている人のほうが良いレイアウトを作れるかもしれない。っていうのをちゃんと考慮されているんだと思う。

 

Appleも製品を絞って市場に投入している。これはこれで、少ない製品ラインナップで多くのユーザにリーチさせる必要があるので、大変なことなんだけど、製品を絞り込むことでユーザ側からすると選ぶコストを下げている。WindowsPCなんて、辟易するぐらい種類あるもんね。うんざりする。

 

人が一度に取り扱える情報量には限界があるし、だからテレビや新聞の勢いは低下しているし、いろんな場面で情報をダイエットする方法が求められるんだろうなあ。

FC岐阜が運転資金不足で経営難

FC岐阜が経営ピンチなんだそうです。運転資金が1億円不足しているとか。

 県庁であった意見交換会で、FC岐阜の今西和男社長は、毎月2000万円の赤字で今季の運転資金は約1億円不足すると説明。7月にも手元資金が不足する可能性に触れ、「こういう事態を招いたのは私の不徳の致すところ」と陳謝し、資金支援を求めた。
FC岐阜に経営改善要求 県と財界、存続支援で一致 - 岐阜新聞 Web

 

FC岐阜は、県内の市町村が出資している珍しいチーム。

 県内全市町村が出資するチームは他に例がないといい、経済界は存続に力を貸すことを決断した。会合後、県商工会議所連合会の堀江博海会長(十六銀行頭取)は「問題点はある程度把握できた。今後、官民一体となって対応する」と表明。会合でも勝利の重要性を説いた田口義嘉壽県体育協会会長(セイノーホールディングス会長)は取材に「県全体のチームであることをより印象付けることも必要」とし、「これまでを白紙とするつもりで再建しなければならない」と強調した。
県と財界「再建へ覚悟示して」 FC岐阜に注文突き付け - 岐阜新聞 Web

 

なんで切羽詰まっているかと言えば、クラブライセンス制度が始まるから。2014年12月までに債務超過を解消する必要があることになっている。これはドイツサッカー協会から始まった、クラブの経営基盤をチェックするための基準。これのA基準に債務超過に関する規定があり、債務超過になっているとA基準を満たせない=Jリーグのクラブチームとして認められない、という事態になる。

Jリーグクラブライセンス制度 – Wikipedia

Jリーグクラブライセンス制度 – Wikipedia

 

さて、Jリーグのクラブ経営の状況はちゃんと公開されているのでちょっと確認してみる。

www.j-league.or.jp/aboutj/document/jclub/2010-11/pdf/club2011.pdf

www.j-league.or.jp/aboutj/document/jclub/2010-11/pdf/club2011.pdf

J2の営業収入をグラフ化したのが以下。2010年の成績だけど。トップ2チームが抜き出ている。


(単位:百万円 2010-11シーズン)

営業利益をみると、半分ぐらいは赤字です。まあ、これはJ1でも変わらないんだけど。

クラブチームの収益構造をみてみると、観客収入の比率はあまり多くないんだよね。4分の1とか。どちらかというと、広告収入とその他として移籍金なんかが多い傾向にある。ただ、これらの収入もサポーターなどから注目を集めているチームが広告スポンサーの獲得や有望な選手の獲得につながるので、やはり一番ベーシックなところとしてどうやったら観客が増えるか、ということを考えるのだろう。セレッソはそのアプローチでいまの勢いを取り戻したらしいし、若くて有望な選手を多く輩出する好循環を生み出している。

一時期経営的に成功した大分トリニータは、地元外に広告スポンサーを求めたことで、チームが勝っているときは良かったが、負け始めるとすぐにスポンサーに撤退されたりして、経営が急降下した。やはりこういうスポーツチームでは、地元でお金が還流する仕組みにしないと、長い間成立させるのは難しい。

 

海外市場からすればまだ日本人の価格は低いけど、秋冬制を導入が検討されたりして、少しずつ海外移籍へのハードルが低くなれば、Jリーグ全体の価値も認められて、移籍金やらでクラブへの資金還流も起こりやすくなるのかもなあ。
中日スポーツ:2015年に秋春制へ完全移行案 J1&J2合同実行委で提示:サッカー(CHUNICHI Web)

 

今の経営状態を見る限り、Jリーグ全体としてクラブ経営は結構難しい状況だってことでして。とりあえず、FC岐阜には頑張ってもらいたいものです。