3Dプリンターはまだキャズムを超えていない。もう少し待とう。

3Dプリンターがいろんなメディアで取り上げられていて、MAKERSブーム到来という話を目にする機会が増えた気がしましたが、個人的にはあまりピンと来ていませんでした。「すごいとは思うけど、そこまでいろんな産業構造に影響を与えるほど革新的なレベルに現状なってるんだっけ?」みたいな。

 

ただ、ちゃんと調べたことがなかったので、調べてみたところ、やはりすぐに家庭に普及したりいろんな場面で3Dプリンターが活躍する、というよりは、実用的な場面が少しずつ出てきている、というのが現状のようです。

これがわかりやすいです。

3Dプリンター騒がれ過ぎ。それで飯食ってる僕が言うんだから間違いない : ギズモード・ジャパン

平面プリンターとは違うので、ディスプレイ上の情報だけでは無理で、3D用の設計データが必要になります。つくり上げることだけでも知識と技術が必要なので、誰しもスイッチ・オンでいける、というようなことはなさそうです。

また、コストも樹脂など安くない、というところと、スケールメリットが出ないので、現状は簡単に安くはならないんでしょう。

あとは、瞬時にできるわけではなくて数時間はかかる、とか表面加工が必要、とかいろいろ制約つきです。

 

というわけで、現状と今後は、プロトタイプ作成のスピードとコストを大きく下げる、というメーカーのひとつのツールとして広がっていく感じでしょうか。

3DプリンターよりもCNCの方が現実的なソリューションだ、というこの記事も面白かったです。

3Dプリンターってもんが起こすであろう革命と現在の3Dプリンターの限界、そしてもっと知るべきCNCのチカラ – キャズムを超えろ!

 

以上です。3Dプリンターは、ガートナーの「ハイプ・サイクル」でいえば、過剰な期待をされる「流行期」が現状で、この後は「幻滅期」に入ると思っています。キャズムを超えるのは、その後です。数年後になるのかなー。

 

ヤマト運輸の経営哲学は未来をどう見ているか

ヤマトホールディングス社長による日経ビジネス連載記事を一冊にした「未来の市場を創り出す」を読みました。宅急便が誕生してから今年で37年になるそうです。事業モデルとしての寿命というか、転換期が訪れています。そういう現状を踏まえて、今後のヤマトがどういう戦略を考えているかを知りたかったんです。

 

本の全体としては、いかに市場を創りだしていくか、というテーマで語られています。

 

ヤマトのプラットフォーム戦略

ヤマトはグループ全体の営業収益の8割は宅急便を核としたデリバリー事業になっていて、新しい事業モデルの開発が必要になっています。そこで、宅急便という今や社会インフラとなったネットワークサービスをプラットフォームとして、新しいアプローチを生み出しています。

大きく2つのアプローチがあり、過疎地などの公共サービスのインフラになる。もうひとつはBtoBモデルです。いずれも論理的な裏付けがあって、これらのサービスが展開されています。細かいところは本を読んでもらえれば良いと思います。

ヤマトが置かれている現状は、自社が持つプラットフォーム資産を活用しながら、新しい社会的ニーズに応えたサービスを開発していく必要がある、というところです。それは、以下のようなアプローチで纏められていました。

  1. オンリーワンの商品を生み出す
  2. ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み出す
  3. 拡大する市場の中で圧倒的なナンバーワンになる
  4. 最終的にデファクトスタンダード(事実上の標準)となる

このアプローチを繰り返すことで、ヤマトはプラットフォームで新しい収益モデルを構築しようとしています。IT業界の方がプラットフォームの主導権争いが激しいが、IT以外でももちろん通用します。

 

今必要なのはサービス・イノベーション

第一次産業→第二次産業→第三次産業という経済的発展に伴う事業モデルの転換は、世界的なビジネストレンドとして共通のようです。先進国では第三次産業が経済に占める割合がどんどん大きくなっています。

そして、ヤマトも同じように、ネットワークの拡大や機能改善よりも、新たなニーズを掘り起こすソリューションの開発が重要になっています。(決してネットワークの拡大や機能改善が重要ではない、という意味ではありません。相対的に重要さが変わってきている、という意味です。)

顧客に近いところで、新しいニーズを発掘し、サービスによるソリューションを開発していくことが、これからのビジネスでは重要になるわけで、ヤマトはその方向性を強く意識して事業を展開しているのです。

 

サービスというものは在庫がない、顧客と共創という特徴があります。だからこそ、深く潜在的なニーズを掘り起こし、サービスをパッケージ化して売り込んでいくことが求められるのです。ヤマトは、プラットフォームとサービスイノベーションを組み合わせて、様々なソリューションを生み出していることが本を読んでわかりました。この考え方は、様々なビジネスに通用する本質的な論理です。

 

関連するビジネス書

「仕組みで買って人で圧勝する」という本書の言葉は、ヤマトの理論と共通するものがあります。ビジネスを発展させていくには、普遍的な論理があることがよくわかるはずです。

過去の書評:俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方 | Synapse Diary

 

ヴァージングループ創業者の経営哲学には、「優れたサービスを提供する」という考え方が根底にあります。サービスを提供することとは何か、を考えるにはとても良い一冊です。

過去の書評:読めば起業したくなる「ライク・ア・ヴァージン」 | Synapse Diary

 

読めば起業したくなる「ライク・ア・ヴァージン」

世界中に多様なビジネスを展開するヴァージングループ創業者の著書を読みました。様々な質問に答える形で、経営に対する考え方をうかがうことができます。

 

ヴァージン・グループは、Wikipediaを見てもわかりますが、メディア系と航空系を中心として、いろんな事業を展開しています。また、最近だとエアアジアで女装して客室乗務員を行った、としてメディアにも報道されていました。

ヴァージン会長の「女装罰ゲーム」実行、エアアジアの客室乗務員に 写真28枚 国際ニュース : AFPBB News

そんなヴァージン・グループ会長の経営に対する考え方は、非常に示唆に富むものばかりでした。

 

全体的な印象は「とてもスマートで現代的」な経営

僕はこの本を読むまでヴァージングループのことを十分に知りませんでしたが、本当にいろんな業種に進出していますし、事業展開している国も様々です。ただ、英語圏が中心なので日本ではなじみが薄いのかもしれません。

読んだ後の全体的な印象は、非常にスマートで、現代的な価値観で経営を行ってるんだな、ということでした。勝手に破天荒な先入観を持って読みましたが、全然そんなことはなかった、ということです。タイトルにある「ビジネススクールでは教えてくれない成功哲学」と書いてありますが、全くそんなことはないと思います。

 

明確な理念を持つこと、それを浸透させることの重要性を説き、新しい事業へ進出するときの事前調査やリスクヘッジを入念に行い、失敗を素直に認めて挑戦を奨励する。そういう現代のMBAでセオリーと言われるようなアプローチを実際に体現しているな、という印象でした。こういうことがさらっと書いてあります。

外からは、どう見ても尋常じではないほどリスク許容度が高い連中だと思われがちだが、ぼくらの行動には常にもう一つの原則がある。失敗への備えを怠らない、というものだ。これはあらゆる起業家が指針にすべきだろう。というより、事業に携わる人すべてに言えることだ。

経営というのは多様な事柄から成り立っているので、様々なことに対して理論や考え方があります。これらを頭で理解するのも大変ですが、それを実現している、という点で非常に希有な気がします。

 

これからのビジネス世界を考える

せっかくなので、いくつか未来的なビジネス要素が書かれていたので触れておこうと思います。

 

コミュニケーションのあり方

最初はコミュニケーションのあり方から。

だが技術の進歩にもかかわらず、ビジネスの世界は近年コミュニケーションの質がとみに低下している。それが仕事の効率化につながると勘違いしているのか、電話で話すことや、直接会って話をすることを避ける人が増えてきたためだ。

これが著者の年齢が、、、とかいうせいにすることもできますが、個人的にも少し変な感じになっている気もしています。やはり直接会って話すのが一番コミュニケーションの密度は高くなりますし、電話で声のトーンを確認したりニュアンスとして感じ合うのは重要なことだと思っています。

今後どういうコミュニケーションが形成されていくのかはわかりませんが、メールやSNSが台頭するほど、「直接会う」ということの価値が相対的に上昇するんじゃないかと思っています。

 

また、IT技術は企業と顧客のコミュニケーションを変えているとも思っています。

起業家やビジネスリーダーが成功するためには、デジタル世界をこれまでとは違うレンズで見なければならない。会社のウェブサイトやサービスや担当チームを総動員すれば、この脅威はチャンスに変わる。変化に抗う者は敗れ去るだけだ。

これは、SNSなど顧客との複数のチャネルを統合し、顧客に対して新しくシームレスな体験を提供する必要がある、ということを述べています。まさに今、様々な企業がこういう取り組みを行っているところだと思います。

 

こんな感じで、個人レベルでも企業レベルでもコミュニケーションのあり方は多様化しているとともに、人々の気持ちも変化しています。ツールはあくまでツールなので、コミュニケーションの目的とそれにあったコミュニケーション方法を考える、という部分は、多様なツールが登場している現状ではますます求められてくるのでしょう。

 

イノベーションは顧客の近くで起こる

Appleなんかが代表例ですが、ビジネスの比重はどんどん顧客に近くなっている気がしています。マーケティングでもマスからダイレクトになったりしてますし。

財務の専門家は同意しないかもしれないが、優れたカスタマーサービスは純粋なコストではなく、さまざまな意味でマーケティングへの投資ととらえるべきではないか。

なので、サービスの捉え方ももう少し見直す必要があるのかもしれません。営業やマーケティングコストとサービス提供コストがミックスされている、という考え方がベースにあれば、もう少しサービス提供に価値を見いだし、いろんなソリューションが生み出されるかもしれません。

 

多様な人材、多様な能力、多様な働き方

著者は、ワークシェアリングやフレックス労働など柔軟な働き方を奨励していました。

ワークシェアを導入することで(すなわち仕事の負担を多くの人に分配することで)社内の知識や経験が幅広く分散するようになり、また意思決定も最もふさわしい立場の人材が下すようになる。

経営においてダイバーシティが叫ばれて久しいわけですが、その重要性は今も変わっておらず、今後はもっと必要になってくるでしょう。新しいアイデアやチーム活性化のために多様な人材を確保し、多様な人材を確保するために個人の実情に合わせた多様な働き方を採用できるような制度を構築する必要があります。

つまり、

新しいアイデアの創出 ➡ 多様な人材の確保 ➡ 多様な働き方の制度構築

です。

これによって、いろんな人材がいろんな仕事をシェアするようになり、多様な能力が個人の中に、組織の中に蓄積されることになり、それが企業の強みとなってきます。

口で言うのは簡単ですが、今もいろんな企業が試行錯誤しながら、これを実現しようと試みているのだと思います。

 

というわけで、非常に楽しい一冊でした。最後に、感銘を受けた言葉を2つ引用してこの記事を締めくくりたいと思います。

優れた人材を見つけ、管理し、インスピレーションを与え、会社にとどまらせること。これは経営者にとって最も重要な課題の一つで、その成否が会社の長期的な成功と成長を大きく左右する。

 

ぼくの経営哲学は当時と変わっていない。自分の楽しめることをすれば、情熱が仲間にも伝播し、熱心で元気いっぱいのチームができる。実際、ぼくは40年以上にわたって、自分の最も大切な任務は、「おカネより仕事そのものが大切」と心から思っている優秀な人材を引きつけ、やる気を引き出すことだと考えてきた。

 

当然ながら、以前書いた通りこれはBookLiveの電子書籍で読みました。BookLiveのiPhoneアプリで読みましたが、特に違和感とかはなかったですね。Kindleと似ていました。

電子書籍ストア BookLive!

バフェットの投資哲学で企業価値の計算方法を学んだら、株投資したくなった

MBAでファイナンス理論を学習しました。正直あまり株式投資などもやったことがなかったので、個人的にはとても新鮮な内容でした。ファイナンス理論の応用として取り上げられたのが、バフェットの投資哲学でした。

バフェットに関する投資哲学というのは、いろいろ本も出されていますし、特徴はあるのですが、個人的には「一貫性を重視する」ということに尽きると思います。

株式市場というのは、「臆病者のための株入門」に書いてある通り、先が読めないギャンブルのようなものであり、予測が難しくなっています。それを人はいろんな指標やテクニックを使って予測しようと思うわけですが、バフェットは企業の特徴から「予測しやすいかどうか」を念頭に入れています。予測しやすければ、後は予測した株価と現在の株価の割合から投資有無を決めれば良いのですから。

「消費者独占企業」とか「キャッシュフローが潤沢」とかいろんなキーワードが登場しますが、これも一貫性があり、予測しやすいかを検証するための項目だと考えればわかりやすいです。

 

これらの本は、具体的に将来の株価を計算したり、財務諸表をどう読みかが書かれていて、非常に実用的です。実際にExcelなどで数字を動かしてみましたが、企業に対する見方もいろいろ変わると思います。

 

株式市場は、アベノミクスで盛り上がっています。これは、東証一部の売買高・売買代金を見ても明らかです。投資を有意義に楽しみましょう。

tosho_mini
(東証 : 売買高・売買代金より)

中古本を買うならAmazonマーケットプレイスじゃなくてブックオフオンライン

Amazonでたくさんお金を落としている自分ですが、最近ふと中古本ならブックオフオンラインで買った方が安いんじゃないか、ということに気づきました。

 

Amazonマーケットプレイスとブックオフオンラインの違い

Amazonで中古本を買う場合は、中古本の送料としてプラス250円かかります。(かからない場合もあります。)しかも、C to C取引なので送料は本ごとにかかります。ここがデメリットなんですね。値段が1円になっていても、実質251円で買っているわけです。

一方で、ブックオフオンラインなら1回の注文で1500円以上なら送料無料です。なので、うまく買えば送料分が圧縮できるためAmazonで買うより安く抑えることができます。

 

買ったのはこの3冊です。3冊分足して1,505円です。もちろん送料無料。

デメリットは、ビジネス書に関しては在庫が少ないことですね。まあ、中古本という時点でビジネスモデル上中古本をそろえるのは難しいので。そういう意味では、Amazonマーケットプレイスは、C to Cであることが中古本品揃えの増大に寄与している仕組みだと思います。

ただ、ブックオフも郊外型だけでは限界がきているようで、都市型・複合型の施設を増やしたり、ネット販売を増やすことでマルチチャネル化したり、新しい販売形態を模索しているようです。MBAのビジネスケースで学習しました。

というわけで、ネットプレイスとしてどちらが魅力的な市場になれるか、という今後の動向には個人的に興味がありますが、AmazonマーケットプレイスはCtoC、ブックオフオンラインはBtoCなので、その違いを顧客に対するメリットにどこまで還元できるか、がキーポイントになります。現状、どちらもメリット・デメリットがありますが、新書や本以外のネットショップを包含しているAmazonの方が分があるかな、というのが現状かと思います。

 

ブックオフオンラインの在庫を見つけやすくする

というわけで、ブックオフオンラインの欠点は在庫の有無なので、見つけるのがちょっと面倒なんですね。特に僕はAmazonの欲しいものリストで読みたい本を登録しているので、いちいちブックオフオンラインのサイトで検索するのは面倒くさいのです。

というわけで、便利なChrome拡張機能を紹介しておきます。

 

Amazookoff

アマゾンとブックオフの両方のページで、双方の価格と在庫を表示することができます。

Chrome ウェブストア – AmazookOff

Amazonの欲しいものリストにも表示されました。

 

電子書籍サーチ

以前紹介した電子書籍サーチですが、ブックオフオンラインの値段も合わせて調べてくれます。

電子書籍サーチ – 電子書籍と紙書籍の価格比較と検索サービス

わざわざクリックするのは面倒ですが、電子書益と合わせて調べたい人には良いと思います。

 

ブックオフがんばれー。

ICT産業のスキル・ノウハウは日本社会の発展に寄与できる

ここ最近はずっと、日本でもオープンデータが話題になっています。内閣官房でもオープンデータは議論が進んでいますし。

世界でもオープンデータは随分前から議論されたり、実際に行動につながっています。最近だと、EUがオープンデータに関する規則を整備している。

欧州議会、オープンデータに関する規則を認証 | エンタープライズ | マイナビニュース

 

さて、そのオープンデータに関連してTEDに面白いスピーチがあったので紹介しておきます。

 

GitHubとオープンデータ

興味深いなと思ったのは、GitHubの考え方とオープンデータを結びつけていることです。GitHubというのは開発者界隈以外はあまり知られていないのかもしれませんが、開発したプログラムを一元的に保管するためのサービスです。

プログラムを複数人で開発する際は、ちゃんとバージョンを管理しないとどれが最新版で、どれがバグを修正したものか、というのがぐちゃぐちゃになってしまうので、バージョン管理の仕組みが発達しています。

バージョン管理というのは、基本的には1つの正しいプログラムを管理する、という考え方に基づくのですが、GitHubというのは、これまであったバージョン管理の仕組みから考えを変えて、複数人が派生したプログラムまで追跡・管理できるようになっています。

GitHubはWebの発達、オープンソース文化の進展と関連があるのですが、それは今回の本題ではありません。

 

IT業界のノウハウが社会に還元されていく

冒頭のテーマに戻ると、この動画の主旨はGitHubと同じように、政策や法律についても履歴をたどれるようにする必要があるのでは、ということです。日本でも「Code for Japan」が始まるようですし、こういうIT系の考えが政策や行政運営に反映されてくるのかな、と思いました。

ITやWebサービスでは、きっちり考えをまとめてやるよりは、まずは最低限の形にしてから改善していく、というアプローチがあります。それ以外にも、プロジェクト管理や品質管理など、IT界隈では業務プロセスに影響を与えるような枠組みがたくさん開発され、体系として整理されてきています。こういう発展している産業の技術が、社会に波及していく形が今後はもっと加速するのかな、と期待しています。

 

日本のICT産業の投資水準は低い

一方で、ICT産業のGDP寄与率は高いものの、電子政府など国のICT評価は低く、GDP比率に対するICT投資の割合も先進国の中で最低の水準にあります。

ICTが導く日本再生の道筋|総務省(PDFファイル)

なぜ進展しないのかというと、ICT投資の効果に関する経営者の理解が低い、IT技術者の数が足りない、などいろんなことが言われていますが、とりあえず低い水準にあるのは間違いないわけです。これを打開していくことが、日本の産業発展に寄与するはずです。

 

というわけで、IT企業が努力していく以外でも、IT技術者の教育、Code for JapanなどNPO法人の取り組みなど、様々なアプローチで社会の発展が図れると良いな、という、別に結論があるわけではない記事になりましたが、個人的な願望を書いておきます。

オープンガバメントとオープンデータ

オープンガバメントとオープンデータは言葉として似ていますし、使われる場面も似ていますが、オープンガバメントに内包される形でオープンデータは存在する、と理解しています。

で、Googleトレンドで両方のキーワードを見ていると、こんな感じです。

 opengovernment

 opendata

日本の人たちはオープンデータの方に興味・関心が高いようです。実際に、中央省庁でも具体的に議論されているのはオープンデータの方ですし。

オープンガバメントが達成すべき本当の目的

地方自治職員研修の増刊として、自治体イノベーションに関する特集が記載されていました。

 

いろいろな記事が記載されているのですが、特に気になったのは「オープンガバメント」に対する考え方です。アメリカやヨーロッパを中心にしてオープンガバメントに関する動きが拡大していますが、欧米と日本では公共に対する考え方や社会に根付いている価値観が異なるので、オープンガバメントの中身だけ導入してきても難しいかもしれない、ということです。

 

違うのは「住民参加」に関する意識

欧米と日本で何が違うのかといえば、「住民参加」に関する意識です。欧米は民主主義として住民の権利を「勝ち取ってきた」という意識が根底にあり、できるだけ自分たちで政治に参加するという考え方が神道しています。

なので、FixMyStreetなど自分たちで行政運営に参画するようなサービスが登場するわけです。

一方で、日本は「行政に頼るもの」という考えの方が強く、住民の参加は「意思決定まで」という感じです。具体的に住民参加を高める、ということは住民側の「やることが増える」という結果にもつながります。それを肯定的に捉えるか否定的に捉えるか、ということではないでしょうか。

これを書きながら、少し前にあった千葉市長のTwitterでのやり取りを思い出しました。

隣の家の蜂の巣は誰が駆除すべきか? 〜千葉市長と市民の討論〜 – Togetter

ちょうど最近見たTEDの動画では、若者の政治参加が必要だと説いていました。いかに人々に政治参加の機会を作るのか、が重要な視点になってくるのでしょう。

 

 

それは、別の記事でも触れられています。

地域の行政は全て役所の役割として一方的に任せてしまうと役所に対する声の大きい人の意見だけが通ったり、受益者としての市民の権利意識が強くなりがちで、結果的に不平等であったり高コストな社会を生み出しやすいといった弊害が出てきます。これからの日本にはリタイアした人も、現役の人も、社会におけるそれぞれの立場から、声の大小ではなく、オープンデータという客観的な事実に基づいて、自分の住む地域の行政をウォッチし、意見し、参加すべきです。他の誰でもない、自分自身が参加意識を持つことが必要です。

オープンガバメントのキモは地域再生 | オープンデータとオープンガバメントを推進する Open Knowledge Foundation Japan

 

オープンガバメントは産業振興やコスト削減、透明性の向上が中心に語られることが多い気がしますが、本質的には民主主義の仕組みとしてのレベルアップを求められている気がします。

地方と都市で広がるデジタルデバイド

「インターネットは都市部と地方の格差を縮めたか – グダちゃん日報」を読みました。

都市と地方でデジタルデバイドは歴然と存在しており、経済的にも文化的にも違いを生んでいる、というものです。今更デジタルデバイドかよ?という感じもします。実際、Googleトレンドでみると明らかにデジタルデバイドは話題にならなくなっているわけで。

デジタルデバイド

 

都市と地方のデジタルデバイドは確かに存在する

まず試しに、自分のブログの訪問者の地域を調べてみたところ、全体の3分の1は東京都。。。そして、だいぶ離れて大阪、神奈川、愛知、埼玉、福岡、千葉と続きます。何となく都市部で人口が多いところからのアクセスが多くなっていました。人口比率で考えれば当然ですが。

一方で、「IT・情報・通信|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]」で見ると、明らかに都市部と呼ばれる県は各種で高い数値を示しており、地方に行くほど数値は低くなっています。

インターネットそのものは格差を縮める可能性を持っていますが、ICTを使いこなすためにはリテラシーと呼ばれる類の知識が必要です。一方で総務省の調査では、年齢の高さや所得の低さがデジタルデバイドを生んでいる、となっており、所得の高い人の方がITリテラシーを身に着けやすい状況にあると推測されます。

www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/pdf/n2020000.pdf

これが意味するところは、富めるところに富が集中する、という都市と地方の経済格差を強化している可能性がある、ということだと思います。

 

どうすればデジタルデバイドは解消されるか

スマートフォンやタブレット端末の普及は、デジタルデバイトの解消につながるのだと言われてきました。この記事で書かれているように。

タブレットPCとスマートフォンで社会はきっと変わる(大西宏) – BLOGOS(ブロゴス)

確かにスマートフォンの普及率は2013年3月時点ではまだ4割程度ですし、今後一層の普及に少し期待はしていますが、問題はもっと深くて、端末や環境だけで解消するのではない気がしています。

【知ってるつもり?】2013年3月のスマホの普及状況をちゃんと把握しよう! | スマートフォンECラボ

総務省の調査では、所得格差が原因でITリテラシーが育成されなかったり、ITの利用環境が整わないことが多いようです。となると、その点を解消する施策が必要になるのですが、全体として行政にはお金や人材の面で余裕がなくなっているところも多く、手がまわらないのかもしれません。あるいは、デジタルデバイドそのものが認識されていないのではないか、と。

マイクロソフトなどIT系の企業は、こういうデジタルデバイド解消の取組を行っていたりします。IT市場が広がることで、自分たちのビジネスチャンスも増えるので。こういう民間資本を投入する仕組みが必要になる気がしますね。

出生率アップにまでつながったMSのデジタルデバイド解消プログラム – ZDNet Japan

 

オープンデータ、オープンガバメントなど、行政機関もITを中心に開かれようとする動きがあります。市民レベルで考えたときに、どの程度ITの恩恵を受けられる人がいるのか、という視点は、再度議論として盛り上がったりしないものですかね。

臆病者のための株入門

貧乏はお金持ち」が結構良い感じだったので、同じ作者の本書を購入。Kindleで読めた、というのも大きい購買要因。

 

ちょうど今、MBAでファイナンスの勉強をしており、ファイナンスは財務諸表、市場から資金調達の考え方などを学ぶのだけれど、合わせて企業価値をどう評価するのか、という考え方も学ぶわけです。そうなると、株価と企業価値の関係にもつながるので、株式投資にも興味がわいてくるってものです。

本書の結論は「インデックスファンドに投資しろ」なのですが、その結論にたどり着くまでの説明には、いろんなエピソードや市場等に対する考え方が滔々と語られており、楽しみながら読めます。ファイナンスの知識が少しあると、面白く読めると思います。

 

個人的にはバフェット式の長期投資に魅力を感じます。インデックスファンドへの投資も良いとは思いますし、理論上効率的な勝ち方だとは思いますけど。なぜなら、最近ファイナンスの勉強のためにバフェットの本を2冊読んだので。