ヤマト運輸の経営哲学は未来をどう見ているか

ヤマトホールディングス社長による日経ビジネス連載記事を一冊にした「未来の市場を創り出す」を読みました。宅急便が誕生してから今年で37年になるそうです。事業モデルとしての寿命というか、転換期が訪れています。そういう現状を踏まえて、今後のヤマトがどういう戦略を考えているかを知りたかったんです。

 

本の全体としては、いかに市場を創りだしていくか、というテーマで語られています。

 

ヤマトのプラットフォーム戦略

ヤマトはグループ全体の営業収益の8割は宅急便を核としたデリバリー事業になっていて、新しい事業モデルの開発が必要になっています。そこで、宅急便という今や社会インフラとなったネットワークサービスをプラットフォームとして、新しいアプローチを生み出しています。

大きく2つのアプローチがあり、過疎地などの公共サービスのインフラになる。もうひとつはBtoBモデルです。いずれも論理的な裏付けがあって、これらのサービスが展開されています。細かいところは本を読んでもらえれば良いと思います。

ヤマトが置かれている現状は、自社が持つプラットフォーム資産を活用しながら、新しい社会的ニーズに応えたサービスを開発していく必要がある、というところです。それは、以下のようなアプローチで纏められていました。

  1. オンリーワンの商品を生み出す
  2. ライバルの参入を受け入れ、競争環境を生み出す
  3. 拡大する市場の中で圧倒的なナンバーワンになる
  4. 最終的にデファクトスタンダード(事実上の標準)となる

このアプローチを繰り返すことで、ヤマトはプラットフォームで新しい収益モデルを構築しようとしています。IT業界の方がプラットフォームの主導権争いが激しいが、IT以外でももちろん通用します。

 

今必要なのはサービス・イノベーション

第一次産業→第二次産業→第三次産業という経済的発展に伴う事業モデルの転換は、世界的なビジネストレンドとして共通のようです。先進国では第三次産業が経済に占める割合がどんどん大きくなっています。

そして、ヤマトも同じように、ネットワークの拡大や機能改善よりも、新たなニーズを掘り起こすソリューションの開発が重要になっています。(決してネットワークの拡大や機能改善が重要ではない、という意味ではありません。相対的に重要さが変わってきている、という意味です。)

顧客に近いところで、新しいニーズを発掘し、サービスによるソリューションを開発していくことが、これからのビジネスでは重要になるわけで、ヤマトはその方向性を強く意識して事業を展開しているのです。

 

サービスというものは在庫がない、顧客と共創という特徴があります。だからこそ、深く潜在的なニーズを掘り起こし、サービスをパッケージ化して売り込んでいくことが求められるのです。ヤマトは、プラットフォームとサービスイノベーションを組み合わせて、様々なソリューションを生み出していることが本を読んでわかりました。この考え方は、様々なビジネスに通用する本質的な論理です。

 

関連するビジネス書

「仕組みで買って人で圧勝する」という本書の言葉は、ヤマトの理論と共通するものがあります。ビジネスを発展させていくには、普遍的な論理があることがよくわかるはずです。

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