経済学というのは、今の経済社会をどう捉えたら良いか、様々なヒントをくれます。さらに、最近は心理経済学や行動経済学と言われるような、GDPなどの経済指標だけではない、幅広い研究が進んでいます。
最近読んだ「幸せとお金の経済学」も、まさに「経済発展だけでは人は幸せにならないのではないか」という問いからアプローチした一冊です。
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中間層の崩壊による幸福感の欠如
戦後の世界の経済発展は目まぐるしく、多くの先進国では経済発展とともに人々の幸福が増していきました。しかし、1980年代ごろから経済発展と幸福感にはリンクしなくなってきています。
その1つの要因が、中間層の崩壊です。それによって経済格差が大きくなり、多くの人々が相対的な幸福感を感じづらくなっていると言われています。日本でも、相対的な貧困率は上昇しており、格差拡大傾向にあります。
その幸福感を感じづらい要因として、裕福な層への妬みではなく、経済格差が引き起こす消費活動への影響が要因だと書かれており、それが地位財・非地位財という捉え方で整理されています。これが本書のキーになるところです。
地位財と非地位財
人には、絶対的な指標によって幸福感を感じる部分と、相対的な指標によって幸福感を感じる部分の両方があるようです。
それを、この本では経済学上の観点として、地位財と非地位財という観点で捉えています。
●地位財=他人との比較優位によってはじめて価値の生まれるもの。(例:所得、社会的地位、車、家など)
●非地位財=他人が何を持っているかどうかとは関係なく、それ自体に価値があり喜びを得ることができるもの、(例:休暇、愛情、健康、自由、自主性、社会への帰属意識、良質な環境など)
これが非常に目から鱗をでして、このような観点を知っておけば、自分がどこにお金を投じれば幸福感を感じやすく、かつそれが長く持続するのかを考えることができるでしょう。
簡単に言えば、相対的な幸福を感じるための「地位財」ではなく、できるだけ非地位財に投資するよう心がけることが、幸福感が長く持続する秘訣になります。
本書では、広い家で長時間通勤と、狭い家で短時間通勤の比較が出てきます。家の広さというのは地位財で、通勤時間(=ストレス・健康)は非地位財なのですが、これも通勤時間を重視するのが良いわけです。
そういえば林先生も、テレビで長時間通勤の弊害を語っていましたね。
林修先生が長時間通勤がもたらす弊害を指摘 「ストレスで失うもの大きい」 – ライブドアニュース
とはいえ、個人の力だけで地位財・非地位財を区別して、うまく投資できるわけではありません。経済格差は、否が応でも中間層に必要な消費を増大させて、貧困を招きます。
本書の後半では、どのように経済格差を小さくする社会にするかが書かれています。これも、経済学の観点から興味深いものがあります。
自分の消費行動を見つめ直してみると、できるだけ非地位財につながるものを選択するようにしてみたいですね。特に非地位財は他人から見えづらい価値観で形成されており、周りからは理解されない可能性が高いです。しかし、自分の価値観に従って選べるようにしたいものですね。
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