【書評】未来に先回りする思考法

あなたは、未来を予測できるようになりたくありませんか。

最近だと、ドローンやロボット、人工知能などが注目されていますが、数年前からGoogleやFacebook、Amazonはそれらの技術に注目し、ベンチャー買収、人材獲得などの投資を行っています。なぜ、こういう企業が先行して手を打ち、先回り出来ているのでしょうか。

本書では、そういう企業はどういう風に社会を捉えているのか、そしてその結果として未来を先回り出来ていることを示しています。ITを中心に最近のトレンドが非常に幅広く、かつわかりやすく整理されており、必読といって良いでしょう。

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著者はメタップスという、アプリ分析などを手がける上場企業の創業者です。

http://www.metaps.com/ja

 

ITの進化を大きなトレンドで捉える

先に書いた通り、FacebookもGoogleもAmazonも、多少の違いはあるものの、先進的なグローバルIT企業はみんなやることが非常に似ています。注力する領域がいつも非常に似通っているのです。

それは、それぞれの企業が、未来に対して似たような将来を描いているからに他なりません。将来的に技術がどう進化し、どういう社会になっていくのかというビジョンの面で、非常に似通っているのです。

Google、Amazon、Facebookなどの巨大IT企業の創業者たちが考える未来像は驚くほど酷似しています。彼らは「いつ」それに取りかかるのかのタイミングの読み合いをしているだけです。社会・経済・技術・強み・資金などを総合的に考え、適切なタイミングで適切なアクションを起こしています。

 

そう。つまり、重要なのはそれを実現するタイミングであり、それを予測した上で投資戦略などを進めているのです。具体的な例として、iPhoneが挙げられています。

スマホやタブレットもコンセプトそのものはずっと昔からありましたし、実際に作って販売した人たちもいました。ただ、高すぎたり、重すぎたりなどの様々な理由から普及しなかっただけです。端末製造のコストが下がり、ネットの回線が十分に速くなったタイミングで登場したからこそiPhoneは成功したのであり、Appleだけに未来が見えていたわけではありません。ただ、タイミングが適切だったのです。

 

ということで、社会の変化に対するパターンは、ある程度予測できるものであり、それを理解していれば未来に対して先回りできるということになるわけです。

 

インターネットはこれからが本格的な普及期を迎える

以前読んだ、「角川インターネット講座 第三の産業革命 経済と労働の変化」でも書いてありましたが、インターネットによる劇的な進歩は、実はこれからという内容が、本書の中でも書かれています。

そして今、現在進行形でインターネットという新しいテクノロジーが社会をデザインし直しています。その誕生から20年をかけて、インターネットはようやく空気のように社会に浸透し、変化への準備が整いました。実はインターネットが私たちの生活を本格的に変えていくのはこれからだと、私は考えています。

これまでITはインターネットと合わせて爆発的に拡大してきましたが、今後はより一層「当たり前」な存在になります。それは、あらゆる領域にITやインターネットが浸透していき、あらゆる生活やビジネスに自然な形で取り込まれていくことが予想されます。

なので、今後はそれの「どの領域」にITやインターネットが入り込み、ビジネスがどう変わっていくかに注目すべき、ということです。

 

これからは社会構造自体が変わっていく

本書の中では、社会の仕組みの変化についても述べられています。特に個人的に注目したいのは次の2つです。

ひとつめは、「国家」というものの存在の変化です。グローバル企業が社会インフラ的な役割を担うようになり、これまで国家が担っていた部分(通貨の管理等)を民間が担うようになってきています。本書の中では、国家経営も投資リターンが強く求められていること、企業経営は公益と一致させることが求められていることなどが述べられています。

さらに、資本主義という経済システム以外にも、多様な経済システムが登場するという未来についても触れられています。

ただ、まだ経済システムについては、今は資本主義ほぼひとつしか選択肢はありません。しかし、時間が経てばそれもまた選択可能なものに変わっていく可能性は十分にあります。価値主義の世界は、個人の経済システムの選択の幅が、今よりもう一段階広がった社会といえるでしょう。

このように、僕らが生まれてから当たり前だと信じていた国家というのは、形は残ったとしてもその役割は今後変わっていく可能性が高い気がしています。社会システムや経済システムについても、変化していくのでしょう。

社会システムの歴史と変化については、「21世紀の自由論」がわかりやすいです。同様に、今当たり前の社会システムは、今後変わっていくだろうということが理解できます。

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もうひとつは、労働についてです。最近はロボットの普及、人工知能の発達によって人間の仕事が奪われていく、ということが言われています。「機械との競争」も少し前に注目されましたね。

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確かに、これまで身に付けたスキルが陳腐化し、自分の労働が機械や人工知能に置き換わるリスクがあります。ただ、長期的に見ればこれは時代の必然かもしれません。それは、技術の発達は人間を楽な方に導いてきた、という本質的な事実があるからです。

実は、産業革命以降、労働時間は右肩下がりに減っています。思い出してみてください。たった30年前、まだ日本は土曜日も休日ではありませんでした。 私たちは、テクノロジーと経済の進歩によって労働から解放されていっているともいえるのです。しかも、全体としての労働時間が減る一方、生活は確実に豊かになっています。

 

ということで、全体的にはポジティブな社会になっていくと信じていますが、自分のスキル形成をどの領域に設けるか、というのは常々意識しておかなければいけないでしょう。

 

以上です。本当はもっと幅広いネタに触れられているので、ぜひ興味ある方は読んでみてください。すごい刺激的な一冊です。

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