どんどんお金の価値が変わっていると言われていますが、テクノロジーの進化や人々の価値観の変化によって、ついにこれまでの資本主義社会から経済のルールが大きく変化するんじゃないかと感じます。
それらのお金の変化を、経済の観点から整理したのが本書「お金2.0」です。
著者はメタップスの創業者であり社長です。前の著作もとても面白かったので、今回も大変期待して読みました。
経済のアップデートという大きなテーマが整理されています。シェアリングエコノミーが台頭し、仮想通貨も登場する中で、これまでの経済構造はどう変化するのでしょうか。
お金では表現できない価値の存在感が増している
現代は資本主義が前提に成り立っている部分が大きいですが、資本=お金では表現できない価値の存在感が増してきています。
実際、アメリカでは無形固定資産の割合が増えていて、時価総額の4分の3にも上るそうです。
それは、現在台頭しているネット系企業を見ても明らかです。
ご存知の通り、先進国ではものが溢れていますから製造業は下火です。代わりにものを扱わないサービス業が中心になり、さらにITなどオンラインのみで完結する事業にシフトしつつあります。
この産業のシフトの中で、ものや土地を前提に作られた現代の財務諸表では、企業や事業の価値を正しく評価できなくなりつつあります。もちろん無形資産として反映させることもできますが、それはほんの一部です。例えば、Webサービスをやっている会社にとっては、最大の資産は自社のサービスを使ってくれているユーザーですし、そこで得られた購買行動データも 重要価値です。しかしこういったものは現在の財務諸表には一切反映されません。
もちろん有力なネット企業は収益を上げていることで評価されている点もあるのですが、GoogleやAmazonは膨大な顧客基盤やデータがあり、それを活かすことができる技術が競争の源泉になっています。
今の市場経済や財務諸表の仕組みでは表現できないということ自体が、新しい時代を予感させます。
価値を重視していく経済
では今後どういう経済にシフトしていくんでしょうか。
本書では、価値主義にシフトして行くと言っています。ざっくり言ってしまえば、個人や組織、ひいては社会にとって有用性が認められる事が重視されると言うことです。
これは個人的に非常に納得感が高いです。
今巷を騒がせているようないろんなスキャンダルは、一部の権力者が自分の便益を最大化する構造になっており、集団や社会にとっては不利益になっているケースが見られます。
これらは、資本主義の負の側面とも捉えることができますが、これまではそれらについてはある程度周囲が忍耐によって許容される部分がありました。しかし今は、情報の透明化や権力の低下によって、社会全体の価値そのものが重視されるようになっていると感じられます。
こうなると、組織の中で成り上がったり権力を重視するのではなく、本当の価値を求めて自分の力をつけていく必要があります。また組織も、どのような存在のためにビジネスを行うのかをちゃんと定義し内外に知らしめることが重要になっています。
グーグルやフェイスブックのような企業が多くの優秀な人を惹きつけられ るのは、彼らが最高レベルの給与と福利厚生とブランドを持つというだけで なく、そこで働く人たちに人生の意義や目的を提供していることが大きな要 因だと私は思っています。
企業は、社会にどのような価値を提供するために存在しているのかを、しっかり定義しておかないと人を惹きつけることが難しくなる時代が到来しています。
これまでの歴史をみれば、資本主義は経済を大きく発展させ、たくさんの人が豊かになりました。しかし、どんな仕組みにも弊害もあります。
資本主義は様々な面でから成熟してきており、負の側面も目立ってきています。これからは、テクノロジーを中心に新しいシステムへ移行するのではないでしょうか。
そのような変化が今後訪れるとして、自分はどうするんだろうなと思いながら読んでました。企業や個人に過度に依存したり、お金を追求するのではなくて、自分が社会にどうインパクトを与えられるかを考えて、選択していく必要があるんだなと感じています。
あと、横並びではダメで、個性を出していかないといけないですね。もう画一的な人材で組織力を発揮する時代でもありません。それは本書でも、先日読んだホリエモンの本でも同じことが書いてありました。
最近は同質的な人間が協力して集団の力を発揮するのではなく、人と違うことを考えて状況を打開できるイノベーティブな人間が世界中で求められています。イノベーティブなことを考え実行できる人材は貴重な資源なので、世界中で奪い合ってるのです。
引用元:【書評】すべての教育は「洗脳」である~21世紀の脱・学校論~ | Synapse Diary企業や個人も新しい経済に合わせて、対応を変えていかなきゃいけないなと思った一冊でした。とても明快でわかりやすい本なので、ぜひおすすめです。