「お金の流れで見る戦国時代」で経済学のエッセンスと信長のすごさを知る

経済学という形で発達したのは近代以降だったので、あまりイメージがありませんでしたが、戦国時代を経済で捉える主旨の本があり、興味を持ちました。

この記事を読んで面白そうだったので読んでみたのです。

『お金の流れで見る戦国時代』って本が面白すぎたよ。|三輪のアウトプット用ブログ(目標1記事30分)|note

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戦国時代というと、合戦や権謀術数がイメージされますが、この本を読むと戦国武将はやはり国を統治するのが重要であり、その統治能力によって戦力も大きく変わったことがよくわかります。

その統治能力というのは権力闘争だけでなく、経済的なセンスが求められるんですね。

 

経済センスあふれる信長

天下統一を果たした織田信長は、経済センスあふれていたことが本書を読んでよくわかりました。

戦国時代に他の領土へ攻め込むためには、領域内の経済を活性化し税収を多く取れるようにしなければいけません。

織田信長は、経済を活性化させるために「楽市楽座」を推進したことで有名です(織田信長が初めて楽市楽座をやったわけではないようです)。これによって、経済活性化と領域の安定を果たします。楽市楽座以外にも、貿易が盛んな境を抑えることで、税収を確保します。

また当時はまだ珍しかった「常備兵」の制度を確立し、強い軍によって領土を拡大させていきました。それまでは農民が「副業として戦争」を行っていたのです。これも、経済振興によって安定的な税収があればこそ、です。

つまり信長の戦略はこういうサイクルが描けます。

見事にいろんな施策が全体に整合しています。

あと、寺社仏閣など既得権への切り込み、主要都市の押さえ込みなどなど、経済利権を確立していく様はセンスがすごいなーと改めて関心します。

貨幣問題への取り組みも、大名によって異なったようです。明との貿易、明の貨幣の減少から悪貨の流通、石高制への移行まで、まさに経済学だなって思います。詳しくはぜひ読んでみてください。

 

経済学というのは、時折直感と異なることが正しい、ということがあります。

本書の中でも武田信玄と織田信長の経済施策の対比が前半にあるのですが、関所に関する対応をみると、武田信玄は関所をたくさん立てて税収を増やそうとしてます。一方の織田信長は、関所を廃止して物流を促進して経済を活性化させることで、自分たちの領内を豊かにしていきます。

安直に考えれば関所を増やすことで短期的には収入が増えるんですが、経済全体の促進を阻害して、長期的には衰退していきます。このあたりにセンスというか理解があるかどうかでも、統治のあり方は変わったんですね。

 

世界の構造を捉える力

それ以外にも、上杉謙信がなぜ有力大名だったのに天下を取らず自分の領土から出なかったのかが、理由として面白かったです。これは経済とはちょっと違うがしれませんが。

上杉謙信は信長よりも早く京都に入っていますが、天下人にはなりませんでした。なぜでしょうか。

謙信はあくまで、室町幕府の秩序の中での出世を望んでいた。逆にいえば、「室町幕府の秩序や社会システムはすでに崩壊し、強力なパワーによる新しい秩序の建設が必要だ」ということを認識していなかった。自分が天下を押さえ、新しい国家をつくろうということには思いも及んでいないのだ。

 

これは面白い考察です。秩序が乱れ、これまでの社会システムが崩れようとしているのに、それを見誤ったのが謙信、というのです。このように、時代のなあれや構造を俯瞰してとらえることで、行動も変わってくるという示唆ですね。

また、土地に対する考え方の著者の仮説も興味深いものがあります。そこから明智光秀の謀反まで結びつけるのも、妄想を掻き立てるものがありますね。こちらも詳細は本書を読んでください。

 

信長が制覇できた理由は単純ではないですが、それにしても経済センスが見事だなーと感心しながら読みました。歴史好きには新しい角度の面白い本だと思います。

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こちらも本能寺の変を起こした明智光秀の動機や、当時の状況を考察したものです。歴史はいろんな読み解き方があるので、そういう発見を知るのが楽しいですよね。