すっかりブログを更新する頻度は落ちていますが、生きています。書評はこまめに書いていませんが、本も読んでいます。ということで、今日は久々に一冊紹介したい本について書きます。
先日書いた、「AI vs 教科書が読めない子供たち」でも触れられていたのですが、ベーシックインカムに対する関心が年々高まっています。
そのベーシックインカムについて、もう少し知りたくなったので、一冊読みました。
AIとベーシックインカムの関係
AIとベーシックインカムが結び付く筋書きは、僕が理解する限りでは、以下のような流れです。すごい単純化していますが。
AIが発展すると、人の仕事が奪われる
↓
代わりに新しい仕事はうまれるが、全ての人がそれらの職に対応できるわけではない
対応できたとしても、賃金が低い職が多くなる(ホワイトワーカーの職が奪われるため)
↓
失業者対策など社会安定のため、ベーシックインカムで最低限の所得を保証する
TEDでも、こちらの講演をみるとわかるのですが、AIとベーシックインカムがセットで語られています。
ベーシックインカムに関する幅広い論点を学ぶ
これだけ注目されているベーシックインカムを、わかりやすく解説してくれたのが本書です。
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失礼ながら、新書だしクイックに浅く広く分かればいいなと思って読み始めたのですが、貨幣制度の歴史や問題点について語られていたり、「最低限の保証」と「勤労意欲」との関係を政治的イデオロギーから読み解いていたりと、幅広い角度からベーシックインカムの論点が整理されていました。
特に貨幣制度については、これまでちゃんと理解したことがなく、非常に新鮮でした。中央銀行の制度がいつ頃、なぜできあがったのか。ヘリコプターマネーの目的とリスクはどのようなものか。そういう点が説明されていて、ベーシックインカムだけでなく、経済における現行制度の限界も知ることができたのは、良かったです。
ヘリコプターマネーについては、こちらの記事もわかりやすかったです。
夢の政策かばらまきか。「ヘリコプターマネー」政策、その効果とリスク | ハフポスト
AIの普及でなぜ人々は貧しくなるのか?
ベーシックインカムが議論されているのは、「今後人々の仕事はAIに奪われる」という可能性が高まっているからです。
ただ、楽観的な見方として「新しい技術は人々の雇用を奪うが、新しい仕事も作り出す。」というものもあります。僕もそういう考えが強かったのですが、「AI vs 教科書が読めない子供たち」や本書を読んで、ちょっと考えが変わってきています。本書でも、なぜAIが人を貧しくしてしまうのかが書かれています。
だが、AIを含むあらゆるITに当てはまることだが、ITが奪う雇用は、ITが増やす雇用よりも絶えず大きい。例えば、旅行サイトの構築・運営に携わる人員は、旅行代理店の人員より少ないはずだ。
AIはホワイトカラーの仕事を奪ってしまうので、一部のクリエイティブな人たちは高給な仕事を維持しますが、多くの人はブルーカラーに移ってしまう=賃金が低下するという構図です。つまり、AIはいろんな仕事を奪うのではなく、ある特定領域の仕事を奪う可能性が高く、それが賃金の「二極化」と「全体低下」を招くということです。
このような事態を防ぐための解決策として、ベーシックインカムが提唱されているわけですね。一人あたり月7万円ぐらいが目安のようですが、これによって生活も安定し、労働意欲も減退しないのであれば、試してみる価値はありそうな気がします。
ちなみに、Wikipediaの情報が豊富でした。
世界でも少しずつ試されているところがあるようです。
シカゴ、ベーシックインカムの導入実験を行うアメリカ最大の都市に | BUSINESS INSIDER JAPAN
貨幣制度や社会福祉制度、これまでの労働価値観などが変わる要素を含んでいるので、なかなか最初は「え?」という感じではあるのですが、こうやって勉強してみると、これからは社会構造全体が変わっていくと思うし、その中で有力な手段になるように思えました。
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