【書評】思考する営業

BCGの営業改革本。ちょっと興味を持ったけど、特に営業とか気にしなくても読める。あと、基本的なコンサルティングのパターンがほとんどなので、そこらへんを読み飽きた方はパスした方が良いかも。指標を取得し、理論的事実に基づき変革の方針を打ち出す、というパターン。

自分としては、今の仕事と当てはめて、いろいろ思うところ有りって感じ。

 

「型にはめる」ことと「裁量に委ねる」のバランス

どういう仕事でも、結構問われる。どこまで管理して、どこまで自由裁量で部下に仕事させるか。ここは、ある種上司のセンスが問われるところでもあると思っている。ポイントは、

管理しすぎてはいけない→部下の成長を阻害するから
放置しすぎてはいけない→上司の存在意義がなくなるから

の2点だと自分は常に考えている。で、この本のタイトルが「思考する営業」なんだけど、組織にはある程度「型」が必要だと述べている。型があるからこそ、そこから各自が考えを発展させ、組織が発展するのだと。そういう軸となる体制を作ることが肝要なんだろうな。

 

組織の方向性は、達成KPIと行動KPIに分けて設定

KPIを2段階に分けるってのは、考えたことなかったな。達成KPIは、多分今までよくイメージされていたKPIで、組織としてクリアしたい目標。売上●%アップ、とか、新規顧客獲得数●人、とか。いわゆる「結果」を定義する。

そして、行動KPIはその達成KPIを導くためのKPI。達成目標のためにこういう行動をしましょう、というもの。結果は、そこに至るまでに多くの外的要因も含まれた上で導かれるものだが、それを評価指標としてしまうと、自分のコントロール外の要因(不景気で売上激減など)によって、いわば個人から見れば理不尽と思われる理由で評価されてしまう。行動KPIは、そういう外的要因を排除し、各自がコントロールできる「行動」を指標とするもの。

確かに末端にとってはありがたい話だけど、こういう制度設計するのって、大変だとも思ったり。本の中では、KPIは極力シンプルにし、行動KPIは短期間で成果が測れるものが良いとしている。あと、それを継続的に組織に浸透させるためのPDCAサイクルの実施も検討する必要がある。こういう制度設計をできる人は、今後重宝されるかもね。だから、コンサルティングファームの仕事もなくならないんだと思うが。

 

変革とは、何かを犠牲にすること

組織の行動やマインドを変えていこうと頑張ってるんだけど、そのときに気をつけているのは、変革に必要だからって、何でもかんでも仕事を増やさないってこと。これは大事。何かをやろうと思うときは、何かを減らしたり止めたりしないと、現場は疲弊していまうから。

何かを加えるのと同時に、無駄な作業を洗い出して削減したり。仕事量のバランスをとれることも、変革のリーダーには必要な気がする。

NUCBの公開講座「21世紀型MBAの学び方・活かし方」に参加してきた

名古屋商科大学の公開講座「21世紀型MBAの学び方・活かし方」に参加してきた。考えさせられることがあったので、忘れないうちにまとめておこう。
 
 
MBAスキルによる管理の限界
 
MBAとは、経営のミドル層をターゲットにした、経営に関し必要な知識を体系的に学ぶことを指す。これが、主に人や組織や財務を「管理」すること」が中心となっているが、これが社会情勢にフィットしなくなっているのではないか、という問題提起が主題。これを、会社と個人に分けて考えてみる。
 
 
会社におけるMBA的考え方の限界
 
少し前によく議論に上がった話だが、株式会社に形態として株主の利益を追求すると、株主の短期利益を尊重することになり、短期利益を上げるため人員整理や資産売却等により、一時的に費用対効果を上げる傾向を示す。これが、会社の継続的発展を妨げる要因になっている。また、経営陣と従業員の所得格差も拡大し、会社が経営陣の儲けの手段になってしまうことが問題視された。
 
これを改めるために、株主が経営陣をちゃんと「管理」することが、対策として挙げられている。また「管理」になっているが、管理することに限界がきているのではないか?という問題提起。これに対する答えとして、企業は長期的利益と持続的発展を目指すべきだ、という話だった。
 
 
どうやってこれを実現するべきなのだろう。自分が考える条件は2つだ。
 
ひとつめ長期的利益、というのはどういう指標で管理されるべきなのだろう。短期の効率性だけではダメなのはわかるんだけど、持続可能性を評価するときの指標が存在しないのが、現状だと思われる。この対応策は、適切な指標を構築することなんだろうか。
 
もうひとつは、社会的に「長期的利益が重要である」というコンセンサスが醸成される必要もある気がする。どうやったって、株主は利益を追及するのだろうし、人間の思考の性質上、そんなに長期的展望を想定して投資することにも限界がある。だから、「長期的な価値が最重要だよね」という、全体の総意が必要なのではないだろうか。でないと、経営者がその価値を重要視した経営を行いにくい状況を生み出す気もする。
 
現在上場している株式会社を想定して書いているので、ある意味これは、現在の株式会社の形態に限界が来ているのかもしれないとも思う。広く資金を募り、事業により株主に利益を還元する。利益もリスクも分散することで、高いリスクテイクを可能とする合理的な会社形態だったが、これが社会にフィットしづらくなっているのかな、と。だから、上場廃止する企業も出現するのだろう。ただ、株式会社に優る合理的な会社の仕組みがないのも事実。
 
 
個人として学ぶMBA的思考の限界
 
MBAの知識体系は、先ほど書いたように主に「管理」を主体としているが、これを個人の考え方として広く当てはめようとすると、組織内でいろんな支障をきたす可能性があることがわかっている。責任範囲の明確化による内部思考・官僚主義の醸成。これによるモチベーションの低下。また、様々な事象を管理しようとする傾向から、自分の想定を超える問題への対応の限界。
 
これに対する答えとして、MBAという知識を学ぶだけでなく、MBAを学ぶ過程を通して「学習能力」を身につけることが重要だとの見解だった。
 
これは実際働いていてもうなずける。どうやっても、様々な事象を管理することには限界がある。その前提に立ったとき、新しく解決策をブレイクスルーさせる力が必要になる。それは自分個人の力だけでなく、いろんな力を引き出すことも、スキルのひとつとして重要になる。講義の中でも明確なソリューションはなかったものの、「獲得を目指すより、貢献を行う」姿勢が重要になるとの話には、確かに共感できる部分がある。
 
まずは、自分個人の能力だけでは限界がある、という前提を理解し、いろんな力を引き出しながら、問題を解決に導ける人が必要なのだと思う。
 
 
#とりあえずいろいろ勉強しよ。少しモチベーション上がった。


あわせてどうぞ。

【書評】科学的管理法

|新訳|科学的管理法|新訳|科学的管理法
有賀 裕子

ダイヤモンド社 2009-11-28
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タイトルはなんかいかついけど。結構示唆に富んだ内容だった。どんな規模であっても、管理する立場にある人なら、読んでおいて損はないと思う。結構耳が痛いこともある。

「細かいことは現場の人間任せ」ではいけない

よくやるよね。自分もやったりしている。でも、科学的管理法の立場からすると、これはNG。それは、「現場の人間の作業がベストである」とは言えないから。確かに。で、科学的管理法では、マネージャーが実際に作業内容や休憩のインターバルまで組み立てて、それを作業者に教え込ませるのが良いとしている。
つまり、管理する側の立場の人間が、作業内容を細かく把握していないと、現場の人間に効率的に作業を進めてもらうことはできない、ということだ。これは極論のように思えるが、一理あると思う。やはり、業務内容に精通している管理者は強い。
さて、叩き上げでない管理者の場合、どういう風にこれを解消するべきか。それは、二つあると思われる。ひとつは、純粋に現場を理解すること。もうひとつは、部下が考えるロジックを検証すること。結果を報告してくる部下に、どういうロジックをもってその結論に至ったかを説明してもらい、そのロジックを検証することで、間違った方向に作業が進んでいないかチェックすることができる。これは、「吉越式会議」で述べられていたこと。

作業を定量的に計測する

やはり少し年代が古い本なので、比較的単純作業を対象としていることが難点であるが、現場の作業を科学的に分析することは重要だと思われる。ホワイトカラーと言われるデスクワークであっても、これはある程度は可能な気がする。
管理者の立場にたってわかるのは、現場の人間の経験と勘による見積りが、いかに事実と合っていないか、ということ。これは悪気があってというわけではなく、人間の限界のような気がする。やはり、科学的に事実を見つめ、効率的な作業の進め方を常に追及することが必要なのだ。
これを読んで、自分のチームでは、日報を毎日書いてもらっているので、それを一覧化し、タスクに要している時間を分析しようと思った。MSPなどのタスク管理ツールを使っている場合は、それでも良いと思うけど。定量的に把握することは難しいことではあるけれども、PTS法とか、製造業などで発達した作業計測法もある。こういうのを参考に、IT業界も生産性を現場で検証する努力が必要だろう。

作業に適した人材を選ぶ

結構シビアだが、本質的な事実を突いていると思う。作業に適している人間といない人間では、本当に生産性が異なる。倍なんかじゃきかないんじゃないか。やはり、適材適所という言葉があるとおり、いかに作業や問題に対して、適切な人材をはめ込むか、ということは、管理者として常に考えるべき問題なのだろう。

インセンティブは行動の直後に与えるのが最も効果的

人参をぶらさげられた馬ではないけれど、インセンティブは行動の直後が効果的だ、と言っている。自社株を与えたりしても、人間は長期的な利益には鈍感になる傾向にある。確かにそうなんだろうな。本書の中では、毎日ちゃんと作業を達成したら、その日に報奨の賃金を与える、と言っている。
なので、褒める・報酬を与える、などのインセンティブは、その行動の直後が効果的。犬の躾みたいで変だけど。でも、これは参考になると思う。何でも鉄は熱いうちに打て、だ。
表紙もタイトルもいかつい感じだけど、文章は結構読みやすい。復刻されただけあって、有用な本だった。

【書評】吉越式会議

吉越式会議
吉越式会議

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吉越 浩一郎
講談社
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トリンプの元社長、吉越氏の最新刊。期待して読んだけど、これは良い。会議術としては、本当実践的な内容が入っていて、すぐに試してみたくなる。集団で仕事をする人は、ぜひ読んで欲しい。会議が効率的でない人や、会議なんて不要だと思っている人は、読んでおいて損はないと思う。それぐらい、有益な内容だった。

読んで気になったことを書いておく。

 

組織全体まで「横展開」されるまでが重要

吉越式会議では、社長が出席している会議であるにも関わらず、結構細かいことまで取り扱っているのだそうだ。自分としても、会議で取り扱うことは、出席者によって段階というかレベルがあると思っていたので、結構衝撃的。でも、言われてみれば納得できる。

社長であろうと誰であろうと、問題と思ったことは指摘すれば良い。指摘する、ということは組織として「できていない」からだ。そして、対策を検討する。そして、重要なのは再発防止のために「横展開」するということだ。他の組織や、他の対象を考えた場合に、同じように対策を講じるべきところがないか、検証する。

人間の作業の正確性を信用してはいけない、マニュアルが更新されているかも重要なチェック項目だと言っていた。やはりマニュアルの充実は大事なんだな。

 

上司にアイデアを求めてはいけない

これは、全てに当てはまるわけではないと思うが、ブレインストーミングやアイデア会議、上司にアイデアの相談をするのはよくない、と本書では言っている。それは、現場の事情は現場の担当者が一番知っているはずであり、そこから生まれるアイデアが最も良いはずだ、という考えに基づく。

ただし、上司や経営者は、そのアイデアの結論に至るまでの検討経緯(ロジック)が妥当であるかは検証しなければいけない。

この、担当者のアイデアそのものではなく、その思考過程を上司は検証するのだ、という切り分けは、非常にわかりやすく、取り組みやすい説明だと思う。

 

サテライトオフィス・在宅勤務の実現方法

ちょっと面白かったのが、会議を充実させることで、サテライトオフィスや在宅勤務の実現が可能になるのでは、という示唆。

現在の日本社会では、やはり女性を戦力として有効活用できていない場合が多く、女性も結婚や妊娠を機会にキャリアが途絶えてしまうことがある。これは、個人にとっても企業にとってもロスであるので、できるだけ在宅勤務や短時間勤務などの柔軟な勤務形態を実現し選択肢を増やすことで、女性にもっと働いてもらう必要があると思っている。まあ、実際は女性だけでなく男性でも家庭の事情を抱えていたり、いろいろなケースがあると思うが。

さて、なんで会議を充実させることが、サテライトオフィスや在宅勤務を実現できるかというと、以下のような論理展開である。

  • 会議によって課題やデッドラインが明確になる
  • 上司がちゃんと仕事をコントロールし、部下に適切な仕事の範囲を与えられる
  • 部下は、仕事をこなす過程において、誰かと密に相談したり誰かの仕事を急に引き受けなきゃいけない状況がなくなる
  • テレビ会議などのちょっとした接点さえあれば、あとはサテライトオフィスや在宅勤務で仕事が可能になる

結構重要な示唆だと思う。本当にこの域に達するためには、組織を相当充実させる必要があると思うが、こういう結果が得られるのならば、会議を頑張る価値もありそうだ。

 

いろいろ考えさせられた。読んでいると、試してみたくなる。
あと、自分の業種的にはITシステムの内製化の取り組みも気になった。内製化した方が組織として変革スピードが上がるし、コストについても納得性が高くなる。ただし、内製かするための人材を確保するのが、実際は結構大変ということなんだけど。

【書評】異業種競争戦略

異業種競争戦略
異業種競争戦略

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内田 和成
日本経済新聞出版社
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元BCG代表の内田和成氏の最新刊。最近いろんな業界で見られる、異業種での競争について、戦略構築を体系的にまとめた一冊。結構話題になってるみたいなので、読んでみた。

企業の競争戦略などの前提知識があまり十分でない、と思われる人は、タイムリーかつ基本的な企業の競争戦略もおさらいできそうなので、良い本だと思う。ただ正直言えば、目新しいことは少ない。

いろんな業種が時間や場所や金銭などの誓約を奪い合っていることは以前から言われていることであり、より一層それが激しくなっていくことは確かだろう。それはこの本で書いてある通りだと思う。

そして、この本で提起されている、バリューチェーンを発展させた「事業連鎖」は興味深い。しかも、業界構造を中心とするのではなく、顧客を起点として描くことが、今後はより一層重要になっていくだろう。

また、自分が攻める人になる場合と、守りに回る場合があることを、常に意識しなければいけない、という姿勢が強く求められるんだろうな。

この本を読んで、自分の会社や業界の「事業連鎖」を書いてみたくなった。自分の仕事が、いきなり違うルールで奪われる可能性があるのだろうか。そういう意味で、考えさせられる一冊だった。

【書評】自分をいかして生きる

自分をいかして生きる
西村佳哲
バジリコ
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「働き方研究家」の方の著作。働くことを考えさせられる一冊。今の自分にとっては、いろいろ考えさせられることが多かった。こういう、自己啓発というか、今の自分を見直すような本は、目新しいことがあまり多いとは言えないが、それでも定期的に読むと、新しい発見があるから不思議だ。

いろいろ目に留まった言葉を書き残しておく。

良い働き方とはなんだろうか

「いい影響」とは、その仕事に接した人間が「よりハッキリ存在するようになる」ことを指すんじゃないか。「より生きている感じになる」と言い換えてもいい。

 

働くことを通じて、「これが私です」と示せるような、そんな媒体になる仕事を求めているんじゃないか。

 

会ったこともないどこかの誰か、自分の仕事に触れる見ず知らずの誰かと、存在の交わし合いを望むこと。

自分の存在感を、潜在的に求めてるんだろうな。マズローの承認欲求だろうか。そういう、自分の存在感を追求できる仕事が、良い働き方なんだろうな。

どういう気持ちで仕事に取り組むのが良いんだろうか

「こんなもんでいいでしょ」という感覚の中で行われた仕事は、同じ感覚を人にうつす。ある人間の<あり方>が、仕事を通じて他の人にも伝播してゆく。

 

一名の人間においてはその循環もいつか終わるわけだが、迷ったり見失うことがあっても、その都度、より「生きる感じ」がする方へ動いてゆけばいいなじゃないか、と思う。

やはり惰性じゃだめだな、という気持ち。そして、自分が生き生きとできる場所を求める感覚を大事にしたいもんだ。

【書評】情報を共有し、活用する技術

最近ナレッジマネジメントの興味を持ったので。具体的な方法が書いてあって、わかりやすかった。ただ、初歩的な部分が多かったりするので、あまり前提知識がない人が読むことを薦める。
 
参考になったことは、ここにメモ。

マニュアルに書かれるべき内容

 

マニュアルに書かれるべき3つの内容
①その行為の方法
②目的・意義
③例外時・異常時の対処法

これは、言われてみれば当然なんだけど、意外に守られていないのではないか。特に②。システム運用などでは、よくマニュアルとして手順などを記載するが、「何の目的でやるのか」など書かれていないことが多い。
 
これでは、時が経ち、人が変わったときに、意味の無い作業を繰り返してしまうことにつながる。理由がわからないから、理由を考えないし、見直すこともできないからだ。だから、必ず理由は書くべき。マニュアル文書をテンプレート化して、必ず書くよう「目的」の項目を盛り込めば、そういうリスクも減らせそうだ。
 

情報の「置き場マップ」をつくる

 
これは、まあポータルみたいな概念かね。情報がどこにあるかわからない状態では使われないので、それをガイドする役目をどこかに設ける必要がある。それが情報の「置き場マップ」ということだろう。
 
Yahooは各情報を分類し、到達までの時間を早めている。こういう目次で情報を整理することは不可欠だろう。逆にGoogleデスクトップみたいに、検索で見つける方法も考えられる。分類と検索システムの両方を整備して、情報へたどり着ける状況を作るのが望ましい。
 
チームの情報などを、どういう風に整理して、たどり着いてもらうようにするかは、組織に合わせてよく考えなければならないと思う。

【書評】経営の教科書

経営の教科書―社長が押さえておくべき30の基礎科目
新 将命
ダイヤモンド社
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元ジョンソン・エンド・ジョンソン社長の本。「経営の教科書」と言うだけあって、シンプルだけど重要な原理原則を、わかりやすく書かれている。こういう経営の原則的な本って、出尽くしてる感もあるけど、淡々と書かれており、かつ数字による統計データなども挟まれており、意外にも面白く読めた。
 

経営者がコントロールできる範囲はどれぐらいか

面白い数値が紹介されていた。経営者が、自分の会社の業績に対して何がどれぐらい影響を与えているか、というアンケート結果だ。それが以下。
 
事業領域    16%
自社の強み  38%
環境     46%
 
これが何を示すか。上2つは自分でコントロールできるが、一番下の「環境」はコントロールが難しい。それぐらい、経営自体が難しい仕事であることがわかる。優秀な経営者として評価されている人も、本当に優秀なのかもしれないけど、偶然の要素もあるんだよな、きっと。
 

経営理念の強みを再認識

経営理念のない企業の経常利益額は20年間で3.6倍にしかならなかったのに対し、理念のある企業は7.8倍になっていたのである。また経常利益率も、理念のない企業の2.16%に対して理念のある企業は8.07%と実に約4倍の差を生んでいるのだ。

この数字は、説得力がある。こういう形で説明されると、本当に経営理念は会社の業績に良い効果をもたらすことがわかる。
経営理念の重要性やそのメリットに、この本は多くのページを割いている。それぐらい、経営にとって理念とは重要なものなのだと再認識する。経営のブレを少なくする「軸」の役目だったり、社員や新規採用など、人材に対するアピールにもなる。
 
ちなみに本の中では、さらに理念が形骸化されていたり、うまく使われていない場合の対処方法についても書かれている。
 

PDCサイクルの「C」がちゃんとできているか

本の中では、PDCサイクル(PDCAともいう)のうち、どれも大事なんだが組織として特に重要で、かつ忘れられがちなのが「C」だと言っている。これは、自分もそうだと思う。改善のサイクルを回すためには、定期的な振り返りが必ず必要になる。
 
そういう意味では、本書の中で書かれている方法は参考になる。この中では、4半期に1回半日ずつ、1年の終わりには1日かけて、評価と学習と反省を行うと書いている。しかも、その予定は最初から固定してしまうのだ。
 
こういうタイミングで、チームなり組織が振り返りを行うことは、ぜひ導入してみたい。あとは、その中でどういう内容を取り扱うか、ということを考えなきゃな。
 
 
それ以外にも、結構参考になることは多い。顧客を感動させる会社になるための5原則とか、経営者がどういう風にリスクテイクしていくべきかとか、人事評価に対してどう考え取り組むべきか、などなど。今後もたまにこの本を振り返り、参考にしそうだ。

リクルートのナレッジマネジメント

リクルートのナレッジマネジメント―1998~2000年の実験
リクルートナレッジマネジメントグループ
日経BP社
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情報は第4の経営資源と言われており、どの組織でも情報を集約・共有するナレッジマネジメントが叫ばれている。で、いざ実際組織でどういう風にナレッジマネジメントを導入すれば良いか、と考え、参考にならないかと読んでみた。
 
読んでみて、やはりリクルートっぽいというか。あまりテクニックというものではなく、ナレッジマネジメントを構築するまでの組織の葛藤などが中心い描かれているので、具体的なノウハウなどを期待する人は読まない方が良いと思う。
 
いくつか参考になったことをメモ。
 
 
現場の求める情報を提供するためには
 
知識というのは不思議なもので、漠然とした日々の生活では、気づかず通り過ぎることがたくさんある。「こういう情報が欲しかったんだ」「こういう点が困っているんだ」というのも、「さあ、何かあるでしょう?出してください」では、出てこないものだ。
 
リクルートでは、業務内容を熟知した人間が、集めた情報を加工し、提供する形式をとる。そうでないと、現場が求めている情報を、求めている形で提供できない、という結論になるからだ。そういう意味で、ナレッジマネジメントというのは、現場の働き方などを正確に把握する必要がある。そういう人間がナレッジマネジメントの担当になることで、現場にフィットした仕組みができあがるのだろう。
 
 
集めた知識は再度組織に浸透することを考える
 
ナレッジマネジメントは、よく「暗黙知」を「形式知」にして、それをグループウェアなどのツールで共有できるようにする、というイメージがあるが、それだけでは不十分。具体化した知識は、もう一度組織の中に浸透するような仕組みがなければならない。
 
本の中では、次の4つのステップをループして回すと言っていた。
 
共同化(暗黙知) → 表出化(現場)
   ↑             ↓
内面化(セミナー) ← 統合化(形式知)
 
現場で出てきた知識や課題は、集約され、ポータルなどのツールで統合・整理される。
その後、整理・体系化された知識を基にセミナーなどを開催し、それをさらに現場に浸透させる。
 
リクルートでは、この4つのステップが、社内の仕組みとして構築されていた。実際のナレッジ・マネジメントでは、せいぜいが形式知化するまでじゃないかと推測する。肝心なのは、後半の「内面化」「共同化」なのだろう。このステップを、どういう組織の仕組みで創り上げていくかは、大きなポイントになると思われる。
 
 
普遍的なナレッジマネジメントはない
 
本の中では度々、組織の目的や活動内容によって、最適なナレッジマネジメントの内容は異なると書いてあった。最後のあたりに書いてあったのだが、リクルートは営業を行う組織だから、リスクに対する感度が低いのだそうだ。まあ、言われてみれば確かに。
 
一方で、自分が属するIT業界などは、失敗すると自分たちも吹き飛ぶが、お客さんにも増大な損失を被らせることになる。つまり、リスクヘッジするための管理色の濃いナレッジが求められるはずだ。そういう自分たちの組織の特色や、求める知識、業務分析などを基に、ナレッジマネジメントの仕組みを構築することが肝要なんだと思う。
 
 
リクルートの勢いみたいなのが感じられる一冊。あまりテクニックとかはないけど、組織としてどう立ち上げていくか、という空気感を知る意味では良いかも。
 

パーソナル・マーケティング

本田 直之
ディスカヴァー・トゥエンティワン
売り上げランキング: 146

レバレッジシリーズの、本田直之さんの最新刊。結構痛いこと、突かれてる感じ。
会社名や名刺を使わず自己紹介してみる、とか。自分がどう見られたいか、とか。自分というパーソナル・ブランドが構築されているか、という目線で次々問いかけてくる。
今の自分の立ち位置が、どんなものかを指摘してくれる良い本。
 
実際社会人になって数年経つけれど、こういう観点って重要だよなーと思ったり。会社に所属して慣れてくると、それだけ会社の論理に染まって思考が凝り固まってくる。
社会全体から自分がどう見られているか。そういうことを常に考え続けないと、とがった人にはなれませんよ、ということでして。
 
キャリアアップという考えより、今の時代は個人のプロフィールアップを重視しろ、という言葉は響く。
実際に自分で手を動かす、というワークもあるのでじっくりやってみようかな。
 
 
あと、購入特典として、パーソナル・マーケティングに役立つ、著者がおすすめする読書リスト100ってやつがありました。とりあえずダウンロードしたので、気になった本から読んでみようとも思う。

あわせてどうぞ。