【書評】科学的管理法

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有賀 裕子

ダイヤモンド社 2009-11-28
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タイトルはなんかいかついけど。結構示唆に富んだ内容だった。どんな規模であっても、管理する立場にある人なら、読んでおいて損はないと思う。結構耳が痛いこともある。

「細かいことは現場の人間任せ」ではいけない

よくやるよね。自分もやったりしている。でも、科学的管理法の立場からすると、これはNG。それは、「現場の人間の作業がベストである」とは言えないから。確かに。で、科学的管理法では、マネージャーが実際に作業内容や休憩のインターバルまで組み立てて、それを作業者に教え込ませるのが良いとしている。
つまり、管理する側の立場の人間が、作業内容を細かく把握していないと、現場の人間に効率的に作業を進めてもらうことはできない、ということだ。これは極論のように思えるが、一理あると思う。やはり、業務内容に精通している管理者は強い。
さて、叩き上げでない管理者の場合、どういう風にこれを解消するべきか。それは、二つあると思われる。ひとつは、純粋に現場を理解すること。もうひとつは、部下が考えるロジックを検証すること。結果を報告してくる部下に、どういうロジックをもってその結論に至ったかを説明してもらい、そのロジックを検証することで、間違った方向に作業が進んでいないかチェックすることができる。これは、「吉越式会議」で述べられていたこと。

作業を定量的に計測する

やはり少し年代が古い本なので、比較的単純作業を対象としていることが難点であるが、現場の作業を科学的に分析することは重要だと思われる。ホワイトカラーと言われるデスクワークであっても、これはある程度は可能な気がする。
管理者の立場にたってわかるのは、現場の人間の経験と勘による見積りが、いかに事実と合っていないか、ということ。これは悪気があってというわけではなく、人間の限界のような気がする。やはり、科学的に事実を見つめ、効率的な作業の進め方を常に追及することが必要なのだ。
これを読んで、自分のチームでは、日報を毎日書いてもらっているので、それを一覧化し、タスクに要している時間を分析しようと思った。MSPなどのタスク管理ツールを使っている場合は、それでも良いと思うけど。定量的に把握することは難しいことではあるけれども、PTS法とか、製造業などで発達した作業計測法もある。こういうのを参考に、IT業界も生産性を現場で検証する努力が必要だろう。

作業に適した人材を選ぶ

結構シビアだが、本質的な事実を突いていると思う。作業に適している人間といない人間では、本当に生産性が異なる。倍なんかじゃきかないんじゃないか。やはり、適材適所という言葉があるとおり、いかに作業や問題に対して、適切な人材をはめ込むか、ということは、管理者として常に考えるべき問題なのだろう。

インセンティブは行動の直後に与えるのが最も効果的

人参をぶらさげられた馬ではないけれど、インセンティブは行動の直後が効果的だ、と言っている。自社株を与えたりしても、人間は長期的な利益には鈍感になる傾向にある。確かにそうなんだろうな。本書の中では、毎日ちゃんと作業を達成したら、その日に報奨の賃金を与える、と言っている。
なので、褒める・報酬を与える、などのインセンティブは、その行動の直後が効果的。犬の躾みたいで変だけど。でも、これは参考になると思う。何でも鉄は熱いうちに打て、だ。
表紙もタイトルもいかつい感じだけど、文章は結構読みやすい。復刻されただけあって、有用な本だった。

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