今日は日本におけるデータセンター事情について、書きます。
地方自治体によるデータセンター誘致が、加熱しているという記事を読みました。データセンター誘致が公共事業として良いのではないか、ということですね。
echo-news – 最強の公共事業とは何だろうーー再加熱するデータセンターの自治体誘致
首都圏集中から地方分散化へ
日本国内にあるデータセンターは、首都圏に集中しており、その数字は50%とか70%などと言われています。しかし、東日本大震災によって、電力不足や稼働停止などの影響を受けた結果から、首都圏に集中したデータセンターを、地方に分散させようという流れが生まれました。
国もデータセンター分散化を後押し
総務省は災害対策を目的として、データセンターの地方分散を促進するための税制優遇を設けるなど、施策を講じています。
総務省|電気通信政策の推進|データセンターの地域分散化の促進
地方に建設することはコスト面でも優位
データセンターのコスト構造をみると、土地・建物・電力などの比率が、全体の半分程度を占めています。機器などはどこで調達してもあまり変わりませんが、土地に紐づくコストについては、地方に建設することによって、コストを削減することができます。コスト優位性は、データセンターにおいて非常に重要な競争軸のひとつです。
連載/データセンターの電力効率、コスト効率を上げるには(2):新しいかたちのデータセンターを日本中に分散配置しよう (1/2) – スマートジャパン
地方におけるデータセンター建設の例
実際に、北海道や島根、青森などの地方でデータセンターが建設される事例があります。
クラウド ビフォア・アフター:郊外型データセンターの今とこれから – ITmedia エンタープライズ
これらを見ていると、単純な誘致だけではなく、地方の特性として自然エネルギーの活用やスマートタウン事業など、自治体の政策と関連した取り組みになっています。さくらインターネットが北海道石狩市に建設したデータセンターの例は、単純に誘致して建設するのではなく、企業の戦略と自治体の施策が合致している点が、非常に興味深かったです。
ASCII.jp:“箱”だけ作るから地方データセンターは失敗する|まもなく2周年!北の大地に石狩データセンターあり
本当に地方分散化は進んでいるか
データセンター事業としてみると、成長しています。国内のデータセンター総床面積はCAGR4.3%という堅調な伸びです。これは、増大するデータ処理量への対応、複雑化した機器管理コストの低減や機器の拡張性に関するニーズが高いことが要因です。
データセンター市場調査2013:相次ぐ新設で拡大 首都圏・地方別では課題も |ビジネス+IT
データセンター全体としては増えているのですが、ロケーションでみるとやはり首都圏が伸びており、地方は微増の状況になっています。
クラウドコンピューティングサービスは、低価格を強みとするため、建設コストや運営コストの低い地方のデータセンターが適している。さらに震災以降、企業の事業継続に対する意識が高まり、首都圏のセンターから距離のある地方のデータセンターをバックアップセンターとして活用するユーザー企業が増えていくと期待されていた。 こうした背景から、近年、クラウドコンピューティングの本格的な普及を見込み、地方にデータセンターを建設するIT事業者が増加していたが、長引く景気の低迷の影響による企業のIT投資予算の縮小により、期待されていたよりもクラウドコンピューティングサービスや事業継続サービスの普及が進まなかったことから、地方のデータセンターへの需要拡大を見込みづらくなってきており、IT 事業者による地方のデータセンターへの投資は、今後は微増にとどまると予測している。
実際、IT投資におけるBCPへの予算は1%以下であり、BCP対策を行うにあたってもコストを優先的に考えるという調査結果があります。
年々増加するBCP関連ツールの導入と運用、企業の災害対策の最新状況は - TechTargetジャパン 経営とIT
また、先ほどの記事から引用すると、
中でもIT事業者による首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)のデータセンターへの投資は今後も堅調に増加するいう。大口ユーザーである大手企業が、緊急時に自社の情報システム部員が駆け付けることができる首都圏の立地を求める傾向は今後も変わらないと見込めることがその理由。 一方、地方(その他道府県)のデータセンターへの投資は、微増の推移に留まるという。それは、地方立地の特性を活かせると言われていたクラウドコンピューティングサービスと事業継続サービスが当初の期待ほど普及しておらず、ユーザー企業からの地方に立地するデータセンターへの需要拡大を見込みづらくなってきていることがある、としている。
となっています。
まとめると、以下になります。
- IT投資、特に災害対策への投資は低調で、地方へシステムやデータを分散させる意欲が低下
- クラウドコンピューティングなどまるごとアウトソースするのではなく、自社で保守できる体制を残す傾向が根強い
クラウドコンピューティングが加速していないため、自社で駆けつけて管理する体制を構築する必要があり、さらにIT投資全体やBCPへの関心もやや落ち着いてきているので、地方へのデータセンターの進出がいまいちという状況なのでしょう。
今後はデータセンターの分散化は進むか
では、今後データセンターの地方分散化は進んでいくのでしょうか。まず、クラウドコンピューティング自体は、市場が確実に拡大していますし、今後も成長が期待されます。
年々増加するBCP関連ツールの導入と運用、企業の災害対策の最新状況は - TechTargetジャパン 経営とIT
気になるのは、内訳をみるとプライベートクラウドの割合が多くなっていることです。さらに、こちらの記事をみるとオンプレミス型への期待が大きく、地方に分散させるホスティングはあまり高くないです。
国内プライベートクラウド市場予測を発表
とはいえ、データの分散などバックアップサイトとしてのニーズは堅調に続くでしょうし、クラウドコンピューティング自体は成長していくので、地方にもデータセンターは増えていくのでしょう。
ただ、そのときはスマートタウンなど、地の利や自治体の政策と合わせて拠点を作るアプローチが良いですし、その結果としてIT技術者など人が集まってくるんじゃないでしょうか。