成功者の告白

 

成功者の告白 (講談社プラスアルファ文庫)
神田 昌典
講談社
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ストーリー仕立てで、コンサルタントが書きそうな内容が多く含まれているが、起業を考える人や組織を運営する人には参考になるだろう。

ある組織で、バタバタ人が病気になったり、出勤しなくなる時期があった。そのときは、組織になじめない、実力がない、という理由付けをして片付けていた。

けれど、本当はそうではないかもしれない。立て続けに人が病気になったり、プロジェクトを抜けてくのは「異常な状態」である、という認識を持ち、組織に何か問題が起こっていると捉えるべきなのだ。

組織にバランスを欠いているとき、家族で父親と母親のバランスが失われているとき、社員や子どもが病気になったりする。これが、警告のサインだったのだ。つい最近も、自分が忙しくて心の余裕がなくなったタイミングで、図ったかのように子どもが熱を出した。

心理学的な領域なので論理的な証明は難しいだろうけど、これらの内容は確からしいと思える感覚がある。自己啓発の内容が濃いものは最近読む気がしないのだけど、これは結構読みやすくてよかった。

情報システムのクラウド化を進めるための最初の一歩

地震によって戸籍情報が消失されてしまったや、公共機関のWebサイトで迅速な情報提供をする手段として、改めてクラウドサービスの有用性が注目されている。が、企業でも行政でも、クラウド化の浸透スピードはなかなか上がらない場合が多い。技術的な理由もあるけれど、まず最初に引っかかるのは「ガバナンス」の問題だ。これを考える上では、これまでの情報システムと組織の関係の変遷をみてみるとわかりやすい。

導入初期

コンピュータの最初は、大型のコンピュータを何台か購入し、そこにいろんな業務処理を詰め込むタイプだった。これは、「情報システム課」みたいなのが調達や管理などを一手に担い、ユーザはただ利用するのみだった。

パソコンの出現とオープン化

パソコンが出現すると、ユーザが処理できる部分が増えてくる。すると、システム側とユーザ側で処理する部分を分けよう、という考えが生まれる。いわゆる、クライアントーサーバ型が出てくる。

そして、大型コンピュータに専用ソフトで固めるメインフレーム的な利用ではなく、OracleやWeblogicなど、ハードウェアに依存しないソフトウェアの利用が普及する。これによって、大型コンピュータではなく、システムの用途や特性ごとにハードウェアを分けられるようになった。

こうなると、これまで「情報システム課」みたいなところが一手に担っていた調達や管理などを、少しずつ業務を行う各課に移していくようになる。業務を行う各課が、各自でシステムを調達・管理せよとなる。

クラウド化による再統合の流れ

クラウド化は、ハードウェアやソフトウェアを統合・集約する効果も含まれている。しかし、各課に散らばってしまった予算や調達の権限がハードルとなり、「このシステムとこのシステムのハードウェアを統合しよう」ということが難しくなる。

全体の情報資産を一元的に可視化することができなくなり、乱立した情報システムをそれぞれが構築し、運用する。そして、各課がそれぞれの都合に合わせて、システムを再構築したりハードウェアを入れ替えたりする。こうなると、統合などの最適化は進まなくなる。

ITガバナンスの強化

というわけで、クラウド化を進めるための最初の一歩は、組織に散らばったITに関する権限の再集約です。もう一度、散らばってしまった権限をCIOなどの役職もしくはそれに付随する組織に集めること。けれど、政治と同じで既得権益を剥がすというのは、大なり小なり抵抗が生じるのが組織というもの。そういう部分で、大きなうねりを生み出せず、てこずっているところも多いのでは。

さて、最近目にした静岡大学のクラウド導入は、ITガバナンスを取り戻した例としてとても良いと思う。

静岡大学が情報システムをクラウド化 Amazon EC2も活用 – ITmedia エンタープライズ

各研究室などで行っていた調達をやめ、「情報基盤センター」に権限を集約した。ただ、仮想化が実現されるので各研究室もアプリケーションだけは独自調達して、仮想環境上で構築できる。こうすることで、権限の集約と各自の自由度のバランスをとっている。

静岡大学は、これによって1年あたり6億円ぐらいのITコスト削減を実現するそうだ。そして、緊急連絡など災害系のシステムは国内に災害が遭った場合を想定して海外のクラウドを利用、財務・人事など外部に流出するのに適さないものはプライベートクラウドを構築、それ以外は安い国産サービスを利用、という使い分けも分かりやすい。

 

 

情報システムのクラウド化を進めるためには、まずは組織におけるIT権限の集権を。

各種サービスのRSSでの取得方法いろいろ

RSSリーダーは既に重要な情報の取得手段になってるんだけど、最近はソーシャル系にも情報が増えていて、そこから効果的に取得できないもんかと考えていたら、いろいろRSSで取れることを知ったので、そのまとめ。

Googleニュース

一番最後のキーワードを好きな言葉に指定。ちなみにoutputのところを変えれば、Atomでもとれる。ちなみに、numオプションで取得する記事の数を指定することも可能。

http://news.google.com/news?hl=ja&ned=us&ie=UTF-8&oe=UTF-8&output=rss&q=[キーワード]

参考:Googleニュース日本語版のAtom/RSSフィード – daily gimite

 

Googleブログ検索

Googleニュースとほぼ同じ。

http://blogsearch.google.co.jp/blogsearch_feeds?hl=ja&lr=lang_ja&ie=utf-8&num=10&output=rss&q=[キーワード]

 

Twitter

一番最後のキーワードを好きな言葉に指定。キーワードの前に「%23」を付ければタグ指定も可能。あと、+filter:linksを最後につけると、リンクが含まれているツイートだけ抽出することも可能。

http://search.twitter.com/search.rss?q=[キーワード]

参考:Twitter 検索API メモ – 超自己満足プログラミング

 

YouTube

これも取得可能。キーワードのところを好きな言葉に。上が検索で、下はタグ指定。

http://gdata.youtube.com/feeds/api/videos?orderby=updated&vq=[キーワード]

feed://www.youtube.com/rss/tag/[キーワード].rss

参考:POLAR BEAR BLOG: YouTube のRSSフィードリスト

 

Flickr

Flickrの場合は、タグ指定のみ。このジェネレータからRSSを作る。

Flickr RSS Feed Generator
Flickr RSS Feed Generator

 

参考:FlickrのRSSをタグ検索結果から作成できる「Flickr RSS Feed Generator」 – WEBマーケティング ブログ

 

おまけ:Ustream

録画済みに動画なら、RSSで取得できるらしい。ただ、ユーザ指定だけど。

http://www.ustream.tv/[ユーザID]-videos.rss

参考:Ustreamの録画済み動画をRSS購読する方法 | Web scratch

 

ここらへんを、自分が興味あるキーワードとかタグでRSSリーダーに登録しとけば、ソーシャルからも情報取れる。

「はやぶさ」式思考術

 

「はやぶさ」式思考法 日本を復活させる24の提言
川口淳一郎
飛鳥新社
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少し前にメディアの話題をさらった「はやぶさ」。そのプロジェクトマネージャーの思考ポイントを列挙。大切なポイントを多く語っていて、技術者でありリーダーである、というそのバランスには脱帽。

リスクをとることの大切さと、安定化装置としての組織の役割

宇宙事業というのは基本的に挑戦の連続なのだから、リスクを恐れていては仕事にならないだろう。企業でも個人でも、失敗を恐れ、挑戦をしないことはいずれ衰退を招く。だから、致命的にならない範囲で必ずリスクをとらなければならない。

けれど、組織が失敗を続けたり、安定した状態が続くと、リスクテイクする空気が薄れていく。これはどうしても仕方がない。この空気を変えて、意図的な変化を起こし、組織内でリスクをとること、新しいことに挑戦していくことが非常に重要だ。

そして、部下が多少無理をしても、本当にやばいときは上司が止めてくれるような、安定化装置が組織内に組み込まれていることも非常に大切だ。組織的に何か事を起こすときに審査プロセスを通す、などの組織的な仕組みも考えられるし、日頃の作業内容を把握し、培った知識と経験を基に上司が直接制御する場合もあるだろう。少なからず、そういうチェックする仕組みが、挑戦者の存在と同じだけ大切だと思っている。

それにしても、読んでいて宇宙に想いを馳せて気分が高揚するし、宇宙旅行に行きたくなるし、気持ち良い一冊だった。

インプット依存症候群から抜けだそう

情報化社会で、常にPCの前で作業をしていたり、スマートフォンを手にしたりすると、ついつい検索して情報に頼りがちになる。だけど、それだけじゃだめだよなーと思う自戒の記事。

わずかに付加する「新しさ」に価値がある

情報化社会における付加価値とは、新しい視点を生み出すこと。真似るだけでは結局受け取る側として目新しさがないわけだし、差別化が難しい。羽生善治も言っている通り、情報化社会のおかげで「過去の情報」が蓄積され、誰からもアクセスされることで、いろんな人の知識向上に寄与している。しかし、そこにもどこかで壁がくる。

だから、2段階で考えないといけないと思うわけですよ。学んで知識レベルを上げることが1段階め。その知識から新しい観点や考え方を付加するのが2段階め。こんな比率のイメージ。

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自分の中に知識をストックして、知識量を増やし、人より早く最低ラインにたどり着くのも大事。そして、そこから自分の新しい要素を付与する。人ひとりが考えることなんて、過去の積み上げから考えれば大した内容でもないし、大した量でもない。だから少しで良い。少しで良いけれど、新しい何かを付与する。

脳内バランスを保つ努力をする

インプットとアウトプットはバランスが大事だ(どちらかといえばアウトプットに比重を置くべきだと思うけど)。インプットを行い続けると、いつの間にか情報を消費して、新しいアイデアを生み出せない自分が出来上がっている気がする。学ぶことが目的化してしまっていたり。

そういうときは、少しインプットから離れてみる。もしくは、全く違う情報に触れてみる。そうすると、自分で考える「隙間」みたいなのが出てくるので、インプット依存症候群から抜け出せる気がする。

定期的にそんなことを思い出しながら、日々を過ごしている。

ITロードマップ2011で占う今後のIT業界

ITロードマップ2011年版
野村総合研究所技術調査部
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野村総研が毎年出しているITロードマップ。今後のIT周りの動向を占う一冊。個人的に気になったところを。

個人が企業のIT技術を超えはじめている

昔は、企業が大型投資で先端ITインフラを導入して、その波及効果として個人向けが進んできた気がするけれど、今はすっかり逆転している。個人向けのWebサービスだったり、スマートフォンやiPadみたいなモバイル機器を、企業より先に個人が手にしてしまっている。そして、それが企業などに影響を与えるようになっている。

これで何が起こるかといえば、個人が企業や行政機関に求めるサービスレベルがおのずと上がってしまうということなんだと思う。情報が欲しいときにもらえない、問合せしたのにすぐに返事してもらえない、マニュアル対応しかなくてつまらない、etc.

今後も新しい技術やサービスがどんどん出てくると思うのだけれど、この立場はもう変わらない気がしている。情報の非対称性がどんどんなくなり、個人の方が強者になっていく。そういう認識を持つことが重要だと思うし、その中でどうやって情報やサービスを提供していくかの工夫が求められるんだろう。

記録することが有効なものには何でもIT技術が入り込む

スマート・グリッドがここ数年ずっと盛り上がってきている。日本でも数カ所で実証実験中だ。ここで思ったのは、IT技術というのは、データを記録して、分析するのに非常に適している、ということであり、業種・業界に限らずそういう内容には、今後もどんどん入り込んでいくんだろうな、ということだ。

スマート・グリッドは、電力会社と個人の電力供給・消費を記録することで、効果的な電力のやりとりを実現するものだが、今後は水道なんかにも波及するかもしれない。

また、電気と関連して自動車分野にもITは深く入り込み始めている。実際、Googleは自動運転自動車の研究開発を進めている。

Google秘密の自動走行プリウス車団:すでに14万マイルを走破

数年前から言われている冷蔵庫の消費期限管理も、ICタグの小型化・低コスト化が進めば、一般レベルの普及まで実現するのかもしれない。

それにしても、こういう体系立った本を読むのは頭が整理されて良い。スマートフォンの普及で、今度は電源供給が問題になっていること(遠隔で充電する技術があるなんて初めて知った!)や、電子政府の進展も国力に影響するんだろうな、とかいろいろ想像も働いた。

選挙で有名人が当選する2つの理由

愛知・名古屋のトリプル選挙の結果が出た後なので、後だしジャンケンっぽいけれど。その前から書き溜めてたネタを吐き出すだけなので、ご勘弁を。(当選した人どうこうという主旨ではありませんよ。ネタです。)

民衆は、正しく選挙で人を選べているだろうか。最近思うのは、やはりメディアに左右されている部分がまだ多いのではないだろうか。例えば、候補者が出た途端、「ああ、この人が勝つわ」と予想というか確信してしまう。これには、大きく2つの理由があると思う。

ハロー効果

人は、ある人の一部分をその人の全体であると勘違いしてしまう。一部分で良いところがあると、その人が何に関しても良い人だと思い込んでしまうのだ。これをハロー効果という。

例えば、立候補者が好意的にメディアに登場すると、選挙民はその人が良いと思ってしまう。となると、政策の中身というか全体構成はあまり気にせず、心地よいことを叫んでいる人が勝ってしまう可能性もある。

無知のリスク

メディアへの露出量の違いから、候補者に対して獲得している情報量が相対的に異なると、人は情報が多い方を選ぶ。これは、知らないこと自体がリスクであり、より知っている(と思っている)方を選ぶ方が心理的に安心するからだ。

というわけで、ハロー効果と情報量不足による不安から、知名度が高い方が勝つという方程式が導かれてしまう。

必要なのは対立軸の明確化

これを覆すためには、選挙民が正しく政策を理解することにある。これをサポートするのがマニフェストだったはずだが、最近のマニフェストも、心地よい響きが文書化されただけで、選択に影響を与えていないのではなかろうか。

必要なのは、「正しい」対立軸をはっきりさせることだろう。例えば、「減税」と「増税」では対立軸にはならない。どちらか選べといわれたら、「減税」を選ぶに決まっているからだ。「減税」の先にあるのが企業誘致による景気浮揚なのか、地域主権の象徴なのか、公務員改革なのか。よくわからない。

ある対立軸を中心に、それぞれが主張することで差異がわかり、判断できるのであって、会話にならないようなバラバラの主張をされると、結局は上記の理由から有名人が勝ってしまう。候補者が叫ぶ争点は、選挙民にとって正しい選択をできない場合もあるということだ。そういうときこそ、対立軸を設定し直すという意味で、メディアの役割は大きいはず。

企業のピラミッド構造から組織の特性を考えてみる

組織というのはある程度の規模になると、大抵はピラミッド構造になる。これは、組織には難易度が異なる作業や判断があること、複数人の作業内容を束ねて組織としての状況を把握する必要があることなどが理由になる。

ただ、ピラミッド構造を前提とした場合でも、少しパターンがあるのではないかと思ったので、考えてみる。ポイントは、人がどのように代謝されるのかという点です。

基礎編

スタンダード

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日本の大企業によくある。ピラミッド構造が正しく保たれる。高位になると、子会社への出向など比較的平和な方法によって、適切に人を組織から排除する仕組みができている。

全体的に圧縮

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外資系とかリクルートのようなイメージ。ピラミッド構造が全体的に潰れた感じになっている。全体の年齢構成が若く、仕事量も多く早い成長も求められる。独立志向が強いため、定年を待たずに自ら出ていくか、もしくは実力で弾きだされる。

均等割

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公務員が典型パターン。定年まで勤め上げるので、高位になると差がついてきて、組織内でダブついてくる。全体でみれば、若い年代が不当な賃金になっている可能性がある。もしくは、ジェダイのような一子相伝のパターンもこれにあたるかも。

こう考えると、日本の大企業とか公務員以外で雇われる人は、どこかで企業を出ないといけない気がするなあ。仕事をする上では、そういうことも考えないといけないね。

応用編

重心を失ったピラミッド

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適切な代謝が利かなくて、上が膨らんでしまったパターン。どこかで破綻するので、その場合ははみ出したところがスリム化される。

もうピラミッドじゃなくて良いや

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現在の組織を守るために、新規採用を止めるパターン。自分たちをスリム化せずにこういう選択をする組織は、保守的な傾向があるのかもしれない。

こう考えると、大きな組織でも適切なバランスを欠くとどこかで破綻することがわかる。特に、定年になる40年ぐらいなんて、企業の寿命としては怪しくなってきている。これまでの大企業も破綻してしまうし、ビジネスの変化スピードも早くなっているのだろう。となると、どこかで今の組織を出ることを前提に、キャリアを描かないと後々で急に解雇と言われて、違う会社では使えない人になっているのかもしれない。こう捉えると、企業の言いなりになるのはおかしいと思えるよね。

ゆるく考えていこう

ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法
ちきりん
イースト・プレス
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Chikirinの日記は愛読しているけれど、改めて書籍で読むと、また感心させられてしまう。これまでの社会構造が通用しなくなっている現状で、思考を変える必要があることを説いている。

この本を読めば、自分にとっての幸せな生活とは何か、ということを再定義したくなるだろう。少し見方を変えるだけで、日々の生活の息苦しさから少し解放される。そういう視点を教えてくれる本だ。お金を稼ぐことだけが幸せではないし、大企業に入ることが幸せな人生につながるわけでもない。高度成長期のセオリーを未だに踏襲している世界では、いつまでも抜け出せない。

逆に、高学歴に偏重して日本の大企業に対する門戸が狭くなっているのならば、それはチャンスと考えるべきだ。日本以外の海外では市場が急拡大している国がたくさんある。そういう市場で勝負できるよう自分をポジショニングすることも発想のひとつになる。その場合は、日本の学歴なんて大した意味がないのかもしれない。新卒の内定率下降に嘆くぐらいなら、中小企業とか外国企業に視野を含めるのも手段だ。

身の丈を知ること。無理で無駄な上昇志向に惑わされないこと。暑苦しい自己啓発本を読むよりは、この本で世の中の仕組みを知る方が、生きるのがずっと楽になるよ。

集合知の力、衆愚の罠

集合知の力、衆愚の罠――人と組織にとって最もすばらしいことは何か
アラン ブリスキン シェリル エリクソン ジョン オット トム キャラナン
英治出版
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集団で議論をしていると、こんなに人が寄り集まっても間違った判断をするのかと驚きもするし、逆に複数人が集まることで個人では出ないアイデア、行動が生まれる。この違いは一体何か。それを知りたくて、興味を持って読んだ。途中から内容が、精神の世界にとんでしまったため、理系の僕としてはよくわからなくなった部部分が多く決して読みやすい本とは言えないが、衆愚のパターンとして書かれていた内容は、示唆に富んでいた。

衆愚が発生するパターンは次の2つだと述べられている。

・分断

・偽りの統合

これは、人は小さな集団として捉えて凝集性を高めると、自ら間違いを見いだせなくなり、誤った判断をしやすい。逆に、広く捉えようとしても、その中に偽りの感情が混じると、異論があっても表面化しないため、間違った論理が導かれやすい、ということだ。

つまり、集団の凝集性が高すぎてもだめだし、低すぎてもだめだということを示している。なぜだめになるのか。それは、人それぞれの差異を集団が受け入れられなくなるからだ。

集合知の発生がもっとも確実となるのは、集団の構成員が安心感と問題意識の両方を持って、自分の中の再考のもの、そして集団の中で、また集団にとっての再考のものを見つけようとするときだ。

部下の意見を認められないリーダーは、偽りの統合か分断を招きやすい。結果的にどちらも一緒だ。組織内に自浄能力が働かなくなる。ここで書かれているように、意見を言いやすい環境と、問題意識の両方を高めることだ。どちらが欠けても、充実した集合知は得られない。

差異を認める安心感をつくる

安心感とは、言い換えれば様々な人の意見が受け入れられる状況のことだ。発言したことが受け入れられるのは、その人の承認欲求を満たすことにもつながる。否定されるかもしれない、と怯えていたら誰も意見なんて言わないものだ。

否定するときも、真摯に、かつ丁寧にその理由を説明することが重要だ。部下が自分よりアホで、意見がとても受け入れられる内容ではない、と思っている人は、次の言葉を覚えておくと良い。

集団内にあるであろう差異こそが、新たな可能性の源となる。

問題意識はどうやったら浸透するか

集団の定義と問題意識は結構密接な関係があると思う。自分たちが属している集団の範囲や、内容をどう捉えるか。そして、自分たちが関係している人たちがどういうグループなのか、ということだ。その関係性の中で何を考えるべきかがみえてくる。

そして、未来をみせること。どういう考えをもって未来に向けて取り組むべきかを示せることができれば、正しい問題認識を持って対応を考えることができる。意識というのはそういうところからできてくると思うのだ。

短期思考で、人のモチベーションを下げてしまう仕組みを平気で取り入れている企業もある。けれど、ちゃんと集団の力を活かすためには、安心感と問題認識を高める工夫と努力が、これからの組織には求められる。