英治出版
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集団で議論をしていると、こんなに人が寄り集まっても間違った判断をするのかと驚きもするし、逆に複数人が集まることで個人では出ないアイデア、行動が生まれる。この違いは一体何か。それを知りたくて、興味を持って読んだ。途中から内容が、精神の世界にとんでしまったため、理系の僕としてはよくわからなくなった部部分が多く決して読みやすい本とは言えないが、衆愚のパターンとして書かれていた内容は、示唆に富んでいた。
衆愚が発生するパターンは次の2つだと述べられている。
・分断
・偽りの統合
これは、人は小さな集団として捉えて凝集性を高めると、自ら間違いを見いだせなくなり、誤った判断をしやすい。逆に、広く捉えようとしても、その中に偽りの感情が混じると、異論があっても表面化しないため、間違った論理が導かれやすい、ということだ。
つまり、集団の凝集性が高すぎてもだめだし、低すぎてもだめだということを示している。なぜだめになるのか。それは、人それぞれの差異を集団が受け入れられなくなるからだ。
集合知の発生がもっとも確実となるのは、集団の構成員が安心感と問題意識の両方を持って、自分の中の再考のもの、そして集団の中で、また集団にとっての再考のものを見つけようとするときだ。
部下の意見を認められないリーダーは、偽りの統合か分断を招きやすい。結果的にどちらも一緒だ。組織内に自浄能力が働かなくなる。ここで書かれているように、意見を言いやすい環境と、問題意識の両方を高めることだ。どちらが欠けても、充実した集合知は得られない。
差異を認める安心感をつくる
安心感とは、言い換えれば様々な人の意見が受け入れられる状況のことだ。発言したことが受け入れられるのは、その人の承認欲求を満たすことにもつながる。否定されるかもしれない、と怯えていたら誰も意見なんて言わないものだ。
否定するときも、真摯に、かつ丁寧にその理由を説明することが重要だ。部下が自分よりアホで、意見がとても受け入れられる内容ではない、と思っている人は、次の言葉を覚えておくと良い。
集団内にあるであろう差異こそが、新たな可能性の源となる。
問題意識はどうやったら浸透するか
集団の定義と問題意識は結構密接な関係があると思う。自分たちが属している集団の範囲や、内容をどう捉えるか。そして、自分たちが関係している人たちがどういうグループなのか、ということだ。その関係性の中で何を考えるべきかがみえてくる。
そして、未来をみせること。どういう考えをもって未来に向けて取り組むべきかを示せることができれば、正しい問題認識を持って対応を考えることができる。意識というのはそういうところからできてくると思うのだ。
短期思考で、人のモチベーションを下げてしまう仕組みを平気で取り入れている企業もある。けれど、ちゃんと集団の力を活かすためには、安心感と問題認識を高める工夫と努力が、これからの組織には求められる。