東洋経済新報社
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野村総研が毎年出しているITロードマップ。今後のIT周りの動向を占う一冊。個人的に気になったところを。
個人が企業のIT技術を超えはじめている
昔は、企業が大型投資で先端ITインフラを導入して、その波及効果として個人向けが進んできた気がするけれど、今はすっかり逆転している。個人向けのWebサービスだったり、スマートフォンやiPadみたいなモバイル機器を、企業より先に個人が手にしてしまっている。そして、それが企業などに影響を与えるようになっている。
これで何が起こるかといえば、個人が企業や行政機関に求めるサービスレベルがおのずと上がってしまうということなんだと思う。情報が欲しいときにもらえない、問合せしたのにすぐに返事してもらえない、マニュアル対応しかなくてつまらない、etc.
今後も新しい技術やサービスがどんどん出てくると思うのだけれど、この立場はもう変わらない気がしている。情報の非対称性がどんどんなくなり、個人の方が強者になっていく。そういう認識を持つことが重要だと思うし、その中でどうやって情報やサービスを提供していくかの工夫が求められるんだろう。
記録することが有効なものには何でもIT技術が入り込む
スマート・グリッドがここ数年ずっと盛り上がってきている。日本でも数カ所で実証実験中だ。ここで思ったのは、IT技術というのは、データを記録して、分析するのに非常に適している、ということであり、業種・業界に限らずそういう内容には、今後もどんどん入り込んでいくんだろうな、ということだ。
スマート・グリッドは、電力会社と個人の電力供給・消費を記録することで、効果的な電力のやりとりを実現するものだが、今後は水道なんかにも波及するかもしれない。
また、電気と関連して自動車分野にもITは深く入り込み始めている。実際、Googleは自動運転自動車の研究開発を進めている。
Google秘密の自動走行プリウス車団:すでに14万マイルを走破
数年前から言われている冷蔵庫の消費期限管理も、ICタグの小型化・低コスト化が進めば、一般レベルの普及まで実現するのかもしれない。
それにしても、こういう体系立った本を読むのは頭が整理されて良い。スマートフォンの普及で、今度は電源供給が問題になっていること(遠隔で充電する技術があるなんて初めて知った!)や、電子政府の進展も国力に影響するんだろうな、とかいろいろ想像も働いた。