地方におけるデータセンター事情について

今日は日本におけるデータセンター事情について、書きます。

地方自治体によるデータセンター誘致が、加熱しているという記事を読みました。データセンター誘致が公共事業として良いのではないか、ということですね。

echo-news – 最強の公共事業とは何だろうーー再加熱するデータセンターの自治体誘致

 

首都圏集中から地方分散化へ

日本国内にあるデータセンターは、首都圏に集中しており、その数字は50%とか70%などと言われています。しかし、東日本大震災によって、電力不足や稼働停止などの影響を受けた結果から、首都圏に集中したデータセンターを、地方に分散させようという流れが生まれました。

 

国もデータセンター分散化を後押し

総務省は災害対策を目的として、データセンターの地方分散を促進するための税制優遇を設けるなど、施策を講じています。

総務省|電気通信政策の推進|データセンターの地域分散化の促進

 

地方に建設することはコスト面でも優位

データセンターのコスト構造をみると、土地・建物・電力などの比率が、全体の半分程度を占めています。機器などはどこで調達してもあまり変わりませんが、土地に紐づくコストについては、地方に建設することによって、コストを削減することができます。コスト優位性は、データセンターにおいて非常に重要な競争軸のひとつです。

連載/データセンターの電力効率、コスト効率を上げるには(2):新しいかたちのデータセンターを日本中に分散配置しよう (1/2) – スマートジャパン

 

地方におけるデータセンター建設の例

実際に、北海道や島根、青森などの地方でデータセンターが建設される事例があります。

クラウド ビフォア・アフター:郊外型データセンターの今とこれから – ITmedia エンタープライズ

これらを見ていると、単純な誘致だけではなく、地方の特性として自然エネルギーの活用やスマートタウン事業など、自治体の政策と関連した取り組みになっています。さくらインターネットが北海道石狩市に建設したデータセンターの例は、単純に誘致して建設するのではなく、企業の戦略と自治体の施策が合致している点が、非常に興味深かったです。

ASCII.jp:“箱”だけ作るから地方データセンターは失敗する|まもなく2周年!北の大地に石狩データセンターあり

 

本当に地方分散化は進んでいるか

データセンター事業としてみると、成長しています。国内のデータセンター総床面積はCAGR4.3%という堅調な伸びです。これは、増大するデータ処理量への対応、複雑化した機器管理コストの低減や機器の拡張性に関するニーズが高いことが要因です。

データセンター市場調査2013:相次ぐ新設で拡大 首都圏・地方別では課題も |ビジネス+IT

データセンター全体としては増えているのですが、ロケーションでみるとやはり首都圏が伸びており、地方は微増の状況になっています。

クラウドコンピューティングサービスは、低価格を強みとするため、建設コストや運営コストの低い地方のデータセンターが適している。さらに震災以降、企業の事業継続に対する意識が高まり、首都圏のセンターから距離のある地方のデータセンターをバックアップセンターとして活用するユーザー企業が増えていくと期待されていた。  こうした背景から、近年、クラウドコンピューティングの本格的な普及を見込み、地方にデータセンターを建設するIT事業者が増加していたが、長引く景気の低迷の影響による企業のIT投資予算の縮小により、期待されていたよりもクラウドコンピューティングサービスや事業継続サービスの普及が進まなかったことから、地方のデータセンターへの需要拡大を見込みづらくなってきており、IT 事業者による地方のデータセンターへの投資は、今後は微増にとどまると予測している。

相次ぐ新設、今後もデータセンターへの投資は堅調に拡大~矢野経済研調査

実際、IT投資におけるBCPへの予算は1%以下であり、BCP対策を行うにあたってもコストを優先的に考えるという調査結果があります。

年々増加するBCP関連ツールの導入と運用、企業の災害対策の最新状況は - TechTargetジャパン 経営とIT

 

また、先ほどの記事から引用すると、

中でもIT事業者による首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)のデータセンターへの投資は今後も堅調に増加するいう。大口ユーザーである大手企業が、緊急時に自社の情報システム部員が駆け付けることができる首都圏の立地を求める傾向は今後も変わらないと見込めることがその理由。  一方、地方(その他道府県)のデータセンターへの投資は、微増の推移に留まるという。それは、地方立地の特性を活かせると言われていたクラウドコンピューティングサービスと事業継続サービスが当初の期待ほど普及しておらず、ユーザー企業からの地方に立地するデータセンターへの需要拡大を見込みづらくなってきていることがある、としている。

データセンター市場調査2013:相次ぐ新設で拡大 首都圏・地方別では課題も |ビジネス+IT

となっています。

まとめると、以下になります。

  • IT投資、特に災害対策への投資は低調で、地方へシステムやデータを分散させる意欲が低下
  • クラウドコンピューティングなどまるごとアウトソースするのではなく、自社で保守できる体制を残す傾向が根強い

クラウドコンピューティングが加速していないため、自社で駆けつけて管理する体制を構築する必要があり、さらにIT投資全体やBCPへの関心もやや落ち着いてきているので、地方へのデータセンターの進出がいまいちという状況なのでしょう。

 

今後はデータセンターの分散化は進むか

では、今後データセンターの地方分散化は進んでいくのでしょうか。まず、クラウドコンピューティング自体は、市場が確実に拡大していますし、今後も成長が期待されます。

年々増加するBCP関連ツールの導入と運用、企業の災害対策の最新状況は - TechTargetジャパン 経営とIT

気になるのは、内訳をみるとプライベートクラウドの割合が多くなっていることです。さらに、こちらの記事をみるとオンプレミス型への期待が大きく、地方に分散させるホスティングはあまり高くないです。

国内プライベートクラウド市場予測を発表

とはいえ、データの分散などバックアップサイトとしてのニーズは堅調に続くでしょうし、クラウドコンピューティング自体は成長していくので、地方にもデータセンターは増えていくのでしょう。

ただ、そのときはスマートタウンなど、地の利や自治体の政策と合わせて拠点を作るアプローチが良いですし、その結果としてIT技術者など人が集まってくるんじゃないでしょうか。

SNSとマーケティングの関係を理解したい人は必読。「ウェブはグループで進化する」

新年最初の読書は、「ウェブはグループで進化する」でした。読んでみて思ったことは、「マーケティングを考える上では必読だな」ということでした。

2012年と少しタイムリーではない本でしたが、当時話題になっただけあって、SNSの潮流をどう捉えるかがよくわかる内容です。

著者はGoogle+をてがけ、GoogleからFacebookへ移籍した人で、一旦書いた本がGoogleから出版差止めになったという、曰くつきです。

マーケティングで考えた場合に、いろいろ目新しいエッセンスが満載でした。

 

インフルエンサーではなく、ネットワークの構造に注目する

よくネットマーケティングでは「インフルエンサー」を見つけて、そこに情報を流してもらうというアプローチが言われます。僕はこれ自体は間違っているとは思いませんが、それよりも重視すべきは「ネットワーク構造」だとこの本では述べられています。

理屈はシンプルで、以下のようなことです。

  • 元々、人は強い絆(親しい人)から強い影響を受ける
  • 人は小さいグループを複数形成する

つまり、幅広く強大な影響を与えるインフルエンサーというのは実際は少ないので、たくさんの「普通の人」が形成している小さなグループやグループ間に、どうやって情報を流すかに着目しようということです。

そうすることで、親しい人から受け取った情報は、信頼され、購買などの判断に強い影響を与えるというわけです。だから、自分が流す情報に関心を持ってくれる人たちを見つけて、そこに情報が流れるよう、メッセージを発信することが、マーケティングにとって重要になります。

 

SNSを有効なマーケティングツールにするためには、プランの作成と実行後のフィードバックが重要

TwitterやFacebookがマーケティングに有効だ、などと言われ、取り組んでいる企業もたくさんいますが、どれほど有効に働いているかよくわからないケースを見かけます。

この本では、グループと情報の流れに着目し、トライ&エラーでどれだけ反応が得られるかを検証することが重要と書かれています。同じようなことは「USERS」という本にも書かれていましたが、それだけSNSを運用するというのは、非常に手間がかかるものだということです。

これからの企業に必要なフィードバックループのやり方 | Synapse Diary

SNSは実社会の人間関係をオンラインへ投影したものであり、SNSの隆盛はあったとしても、SNSというサービス自体は今後も継続的に使われるし、もっと発展していくでしょう。それを考えると、現時点でSNSをマーケティングツールとして使いこなすことができれば、今後の企業の優位性を築くことができます。

この本には、どのように取り組んだら良いかのアプローチも丁寧に書かれているので、もう一度読み返して、実践してみようと思います。

 

それ以外にも、認知心理学やパーミッション・マーケティングとのつながりも述べられていて、いろいろな知識がつながっていくようで、楽しく読める一冊でした。

参考:心理と行動の関係が理解できる「ファスト&スロー」 | Synapse Diary

SlideShareの埋め込みコードをモバイル対応させる

今日はクリスマスだし、さくっとしたネタで。

ホームページでSlideShareのスライドを貼り付けて、スマートフォンからも見られるようにする方法を。メモ書きです。

 

SlideShareの埋め込みコードでは、スマートフォンから見られない

SlideShareでは、Embedで埋め込みコードを作ることができます。これを貼り付ければブログやホームページにスライドを掲載することができるわけです。

ただ、これFlashでできているので、iPhoneなどでは見れません。残念。

 

SlideShareにはモバイル用の埋め込みコードが存在する

諦めていたのですが、SlideShareにはどうやらモバイル用のページが存在します。そこでは、Flashを使わない表示に変換されているようです。

SlideshareのスライドをFlashなしで閲覧する小技 | マイナビニュース

で、このモバイル向けページで埋め込みコードを発行すると、Flashを使わない形式でブログやホームページにスライドを掲載することができます。具体的には以下のステップです。

  1. SlideShareのURLのユーザー名の前に「/mobile/」を挿入してアクセス
  2. 表示されたページの「Embed」から埋め込みコードを取得(Wordpress向けのショートコードではありません)

 

というわけで、SlideShareを使ってスライドをブログなどに貼り付ける人は、ご参考に。モバイルファーストの時代ですしね。

楽天でんわをインストールしたら、携帯通信会社の今後を考えさせられた

先日、「楽天でんわ」が発表されて、「とりあえずデメリットなし」ということだったのでインストールしてみました。

楽天でんわ -番号そのままで通話料半額- 1.0.1(無料)
カテゴリ: ユーティリティ
販売元: Fusion Communications Corp. – Fusion Communications Corp.(サイズ: 4.5 MB)
全てのバージョンの評価: (149件の評価)

「楽天でんわ」は、昔の固定電話にあった「マイライン」と同じく、宛先の電話番号に固定の番号を付与することで安くなる、というモデルです。IP電話ではありません。

楽天でんわ: 電話アプリ
[browser-shot url=”http://denwa.rakuten.co.jp/” width=”600″ height=”450″]

これは、携帯通信会社の中抜きになります。それ以外にも、SkypeやLINE、050plusなどのIP電話もあります。こうやってみると、携帯電話の通話料として支払っている割合って、どんどん減っているのでは?と思いました。ドコモ・KDDI・ソフトバンクなど携帯通信会社の売上ってどうなってるんだろう?

 

携帯通信会社はどこで儲けてるのか

携帯通信会社では、業績指標のひとつとしてARPUというのがあります。月間の1ユーザーから獲得する単価のことですね。ドコモの業績発表からARPUを見てみると、音声ARPUが減ってきて、パケットやその他コンテンツ等で補填しています。

docomo

引用:ドコモ早わかり講座 : 事業の状況 | 企業情報 | NTTドコモ

 

「スマートフォンが普及すれば、データ通信が増えるから、単価増だ!」ということで、スマートフォンへの買い替えと、それに伴うネットワークトラフィックの増加懸念をWi-Fiで補完したり、次世代ネットワークを整備しよう、という動きが加速されてきましたが、それもひとつのヤマを迎えている気がします。ソフトバンクの決算資料がわかりやすいですが、携帯電話に支払う料金は4000円台半ばで収斂しているようです。

参考:ソフトバンクの決算説明資料(PDF)

 

ガラケーがスマートフォンに置き換わっていくというトレンドは確実なものの、もっと広げよう・もっと単価を上げよう、となると「ガラケーでいいじゃん」という人たちが留まってしまう、競争に負けてしまうという状況のように見えます。

 

つまり、ざっくり言うと、「携帯通話料で儲けよう」というフェーズから、インターネット通信が普及してくると「データ通信料で儲けよう」という流れがiモードからスマートフォンまできていたわけですが、それも頭打ちの様相を呈してきている感じです。

そこで重要になってくるのは、音声でもデータ通信でもない収益源の確保です。

 

新しい収益源の構築

新しい収益源は、例えばドコモのdマーケットであり、KDDIのスマートパスだと思います。携帯電話を開いたときに、通信会社が設置したポータルサイトがある。これは大きな優位性であり、売上増を期待することができます。

ただ、ここは競争が激烈です。iPhoneにもAndroidにもそれぞれアプリやコンテンツのマーケットがあります。AmazonはKindleでAndroidをラッピングして自分たちのマーケットを作ってしまいました。さらに、LINEも「LINE MALL」の立ち上げを行っています。

LINEがショッピングサイト スマホ向け、個人出店も:朝日新聞デジタル

つまり、スマートフォンになったことで、通信キャリアのポータルサイトを通る必要はなくなってしまうわけです。

 

ドコモもこの流れを受けて、dマーケットはドコモキャリアでなくても登録できるように開放しています。携帯の契約数が飽和してきていることと関係しているとも思いますが。

NTTドコモの冬春戦略に見る“総iPhone時代”を勝ち抜くための武器とは – docomo IDのキャリアフリー化は今後大きな武器に 日経トレンディネット

今後は、スマートフォンからアプリや音楽・映画などのコンテンツ類、あるいは物販などのショッピングをしようと思ったときに、いかに多くのアクセスを集められるマーケットを作るかにかかっています。

 

まとめ

というわけで、携帯通信会社はこれまで事業モデルはどんどん変化してきており、携帯電話の通信費用で稼ぐモデルはほぼ終わりに近い状態です。今後はコンテンツ事業など新しい収益源を確立する時期にきています。

個人的には、インターネット企業として事業を展開していて、Yahooを持っているソフトバンクに一利ありそうですが、YahooもPCからスマートフォンへの転換によって、ポータルとしての機能を盤石なものにできているわけではないです。さらに、携帯キャリア以外にもいろんな企業が群雄割拠しているので、実際どうなるかは今後注目です。

スマホで日記書くのがこんなに気持ち良いものとは思わなかった

有料アプリはあまり簡単に買わない方ですが、珍しく300円で日記アプリを買いました。Grid Diaryというやつです。

Grid Diary – 最もシンプルに日記を始める方法! 1.1.10(¥300)
カテゴリ: ライフスタイル, 仕事効率化
販売元: Sumi Interactive – Xiamen Sumi Network Technology Co., Ltd.(サイズ: 21.7 MB)
全てのバージョンの評価: (145件の評価)

買ってみてしばらく経っていますが、これは買ってよかったなと思いました。

手っ取り早く操作方法を知りたい方は、こちらの記事が良いかと。

日記を「書く」んじゃない、「答える」んだ。質問日記『Grid Diary』は、やってみる価値あり | TABROID(タブロイド)

 

いつでも簡単に書ける、という手軽さが良い

僕にとって日記というのは、自分の日々の生活が、自分が思い描いているような目標に従った行動ができているか、自分の感情を客観的にみた場合にどうなっているか、をチェックするために使っています。

なので、つらつら長く書く必要はありませんし、ノートを開いて書く、とかPCの前に座って書く、となるとちょっと手間に感じてしまいます。その点、スマートフォンであればいつでも身の回りにありますし、気づいたときにさっとメモする感じで一日の行動を振り返ることができます。

そういう点では、スマートフォンというのは偉大です。いつでも人の近くにいて、すぐに触れる環境というのは、スマートフォンの最大の利点だと思っています。

 

アプリが質問してくれるから、自分に発見が生まれる

Grid Diaryには予め質問が用意されています。日記を書いている間に、自分に疑問やいろんな思いがめぐり、「明日これやらなきゃ」とか、様々なアイデアや発想が想起されるのが良いです。質問というのは意外な威力があって、質問されて初めて気づくこと、思うことがたくさんあります。

質問もいろんな種類がありますし、自分で設定することもできます。このあたりを参考に考えるのも良いのではないかと。

大抵のことは解決する→質問力をブーストする100のクエスチョン 読書猿Classic: between / beyond readers

 

というわけで、日記をやろうと思いつつ、続かないとか踏み出せない人にとっては良いアプリだと思います。来年こそは、と思う人はどうぞ。

今日はこのへんで。

冬休みの読書にどうぞ。今年読んでよかった本5冊

もう今年も終わろうとしています。この1年で読んだ本のうち、個人的に良かったというかおすすめできる本を挙げておきます。読んでいない方は、冬休みの読書にどうぞ。

 

ゼロ

自己啓発モノとしては、今年No.1だと思います。それぐらい、ポジティブオーラ満載でした。ホリエモンが起業するまでの経験や、そこから作り出される考え方などが、とても素晴らしい。若い世代にこそ、ぜひ読んで欲しい一冊です。

とにかく働こう。ホリエモンの「ゼロ」を読むとポジティブに働きたくなる | Synapse Diary

俺のイタリアン、俺のフレンチ

ブックオフ創業者が目指す、新しい形のレストラン。「仕組みで勝って人で圧勝する」など、経営に対する哲学が素晴らしくて、読んでいて刺激されっぱなしでした。経営に関心がある方はぜひどうぞ。

俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方 | Synapse Diary

ビッグデータの正体

今年はITトレンド系の本をあまり読まなかったですが、個人的にはこの本がNo.1です。ビッグデータやオープンデータなど、今年もバズワードが順調に飛び交いましたが、ビッグデータの要旨はこの本を読めば、ほとんどの論点を理解することができるでしょう。

このブログでは、この本に関連して、3本ぐらい記事を書きました。

ビッグデータは「原因」ではなく「関係」を導き出す | Synapse Diary
ビッグデータで勝つのはどのような企業か? | Synapse Diary
ビッグデータの資産価値をどう評価するか? | Synapse Diary

USERS 顧客主義の終焉と企業の命運を左右する7つの戦略

インターネットを企業戦略に組み込む場合において、非常に参考になる一冊です。顧客だけでなく、幅広く企業と関わる人たちとコミュニケーションする方法、インターネットで効果的にプロモーションする方法などが詳細に書かれています。

この本に関連して、このブログでは以下の記事を書きました。

これからの企業に必要なフィードバックループのやり方 | Synapse Diary

素人の顧客の意見は聞くな

Webマーケティングに目覚めた一冊です。中小企業でECサイト運営している方などは、ぜひ読むと良いでしょう。ユーザー目線で考えて表現するとはどういうことか、SNSを含めたマーケティング戦略をどう考えるべきかなど、参考になるネタ満載です。

企業とSNSの付き合い方を考える「素人の顧客の意見を聞くな」 | Synapse Diary

 

今年は、Kindleをはじめ電子書籍でたくさん読書した一年でした。電子書籍のおかげで、読書量もすごい増えています。年末年始に入る前に本を数冊まとめ買いすることもなくなりました。

あーすべての本が電子化されないかなー。

今日はこのへんで。

小説「ラストワンマイル」が物流業界の現状を描いていて驚いた

ラストワンマイルという小説を読みました。そこまで意図して読み始めたわけではありませんでしたが、ちょうど今、ECサイトや物流に対する関心が個人的に高くなっており、非常にタイムリーなビジネス小説でした。

この小説を読むと、実際に今起こっているEC市場の競争がよくわかります。Yahooショッピングがなぜ出店料を無料にしたのか。これからの競争のポイントがどこに置かれるのか。

 

重要なのは「ポータル・決済・物流」

少し前に「大前研一 日本の論点」という本を読んだのですが、そこでは今後のECプラットフォームには次の点が必要だと書かれていました。

私は次世代のカギを握るネット時代の三種の神器は、「ポータル」「決済」「物流」だと考えている。そして、この3つの分野をしっかり握っているのがアメリカの強みだ。

ただ、それ以上詳細な説明がなく、僕としてはピンと来てなかったんですよね。それが、この小説を読みながら、やっとわかりました。わかってみるとなんてことないんですが、「人がネット上で買い物をする上で必ず行われる行為」なので重要なんだってことですね。

 

商品(情報)の信頼性をどう確立するか

「ポータル」というのは、まさに入口のことで、消費者から選ばれる「入口」を作れるかどうかが重要になります。そのためには、プラットフォームやプラットフォーム上で掲載される情報に、いかに信頼性を高めるかが重要になってきます。

Amazonや楽天などのECサイトは、これまでここに多大な労力を払ってきており、納得性が高く豊富な情報を提供することや、購買者のレビューを掲載することで、信頼性を高めてきています。他にも、大手ではありませんが、その筋の信頼できる人がすすめる商品を取り扱ったり、完全にセルフサービスで完結するのではなくチャットなどを組み合わせてサービスを提供するタイプのECサイトも登場してきています。

AmazonだけがECじゃない。米で始まったEC新時代 – 湯川鶴章メルマガ ITの次に見える未来 – BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

「ラストワンマイル」でも、これが論点のひとつになっており、小説の中では別の解決策が提示されています。

 

物流は戦争状態

決済や物流などは、買い物に必要な機能であり、有力なプラットフォームを形成する企業は、垂直統合してきています。それは、他社に重要な部分を握られるのが嫌だ、というところと、購買の入口から出口までを一気に完結させることで、マージンを最小化しようということでしょう。

Amazonがドローン(無人飛行機)で荷物を配送する構想を発表していましたが、その理由もうなずけます。

アマゾンも開発、「ドローン便」は離陸するか(動画) « WIRED.jp

また日本でみると、Yahooショッピングは物流面でAmazonや楽天に遅れを取っていましたが、アスクルと業務提携して物流に注力してきています。

アマゾン、楽天に殴り込み ヤフー、通販物流参入の本気|inside Enterprise|ダイヤモンド・オンライン

 

一方で、最近だとAmazonの配送請負業者から佐川急便が撤退し、ヤマトに一本化されています。

クロネコの悲鳴、ヤマトに豊作貧乏のジレンマ  :日本経済新聞

ECの発展で物流も増えているのですが、各ECサービス業者が物流を垂直統合してきており、物流業者は苦しくなっている感じです。まさにこういう事態の問題提起が、「ラストワンマイル」が描かれているので、数年前に描かれたことが、実際に起こっているということなのだと思います。

 

このあたりは、O2Oやオムニチャネルなどとも関連して非常に面白い分野なのですが、ひとまず興味がある方は「ラストワンマイル」を読むと良いでしょう。

今日はこのへんで。

これからの企業に必要なフィードバックループのやり方

「USERS」という本を読みました。原著のタイトルは「USERS, NOT CUSTOMERS」です。「顧客」にフォーカスする時代は古い、ということです。

この本では「ユーザー」を以下のように定義しています。

この本におけるユーザーとは、顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、その他影響力を持った人々(インフルエンサー)のことである。要するに、デジタル・メディアとテクノロジーを通して企業と交流する人々を指す。

これらユーザーと企業の関わり方について、ネットを中心とした取り組みと、それを実現するための内部組織の作り方など、幅広く説明されています。端的に言って、これからのネット活用を考える人には必読です。ホームページを看板代わりに掲げるだけなんてのはとっくに終わっていますし、TwitterやFacebookが登場してきても、コミュニティ運営をうまく行える企業は限定的です。

 

いろいろこの本から気付きがありましたが、今日書きたいのは「フィードバックループの重要性」です。

フィードバックループとは、何か実行した結果を測定し、評価・学習することで、次の行動に活かすことを指します。

この「USERS」では、アクセス解析やSNSなどのコミュニティ運営の重要さが述べられています。なぜこれらが重要なのかといえば、企業が市場やユーザーからフィードバックを得られる貴重な情報源だからです。

 

例えば、アクセス解析の重要性に関しては、以下のように書かれています。

トップ企業は、どのように人々が自社のデジタル・フットプリントを利用するのかを探るため、定期的にデータを解析し、それに応じて繰り返しユーザビリティを改善し、ユーザー・データの変化を見て、また最初からやり直す。これを「フィードバック・ループ」と呼ぶ。彼らは、自社のデジタル・フットプリントのユーザビリティを継続的に強化するためにフィードバック・ループを用い、究極的には組織全体のパフォーマンスを改善する。

インターネットやスマートフォンなどの発展によって、コミュニケーションに関するコストはどんどん低下しており、企業に対してもスムーズなコミュニケーションを求めています。なので、ユーザビリティというのが非常に重要になってきているわけです。

企業は、ユーザーのニーズやユーザビリティの問題点を、アクセス解析から得て、改善を続ける必要があります。

 

コミュニティ運営について言えば、Facebookページなどが注目されています。確かに新しいコミュニケーション方法であり、ブランドの形成ツールだと思います。企業にとっても、旧来のマーケティングとは違うアプローチで、フィードバックのための情報源を獲得できるようになっているわけです。

 

これらの情報を収集し、企業へのフィードバックに活かす必要があるわけです。これらの情報蓄積が、企業の資産になります。難しいな、と思うのは、これらのアクセス解析やコミュニティ運営について、外注が難しい点です。アクセス解析自体は外注しても良いかもしれませんが、それを組織へのフィードバックに組み込むためには、組織の実状を深く理解しておかないと、なかなか深い効果は出づらいかもしれません。逆に、そうじゃない有効なアプローチを設計できれば、ひとつの有用なビジネスになる気もします。

コミュニティ運営もそうですね。ノウハウと呼ばれるものがあるようでなく、外注やコンサルが活躍しづらいフィールドになっていると思います。あと、金銭価値で評価しづらいという点もネックでしょうか。となると、本来は自社で内製する必要があるのですが、大企業ならともかく、中小企業になると限界もありそうです。

 

いかにネットの各種ツールから情報を取得し、企業のフィードバックに取り込んでいくか、というのは今後の企業にとって重要だと思うのですが、それをどう実現するかについては、まだまだ課題がありそうだな、と思う今日このごろです。

これからの企業に求められるのは、透明性の高い情報とコミュニケーションです。

今日はこのへんで。

Webサイトやブログの一部を引っ越す場合の必要な対応

昨日、ブログの「サッカー」カテゴリーを別ブログに移行したとお伝えしました。移行した先のブログはこちらです。

Synapse Football

その際に、SEOを考慮した移行方法を調べましたので、今日はそれを書き留めておこうと思います。

 

移行する際は、重複コンテンツに気をつける

サイトやブログを運営する人にとって、異なるURLで同じコンテンツを提供することについては、避けなければいけません。理由は明確で、検索などでページを見る人を惑わせるからです。

重複コンテンツとは、同一コンテンツが複数のURLに存在する状態を指す。検索エンジンは重複したコンテンツは基本的に登録を行うことはない。もし同じコンテンツを重複してインデックスしていくと、ある検索クエリに対する検索結果として同一内容を持つ異なるURLを複数表示することになり、検索利用者の検索体験の質低下を招くからだ。

同じコンテンツの公開に注意:SEO「重複コンテンツ」問題::SEM R (#SEMR)

というわけで、移行元と移行先で同じコンテンツを掲載したまま放置しておくのは良くありません。一方で、検索エンジンで検索すると今(移行前)の記事がヒットするので、アクセス数を維持しようと思うと「古い記事は残しておいた方が良いのでは?」という考えもよぎります。

 

移行する場合は「リダイレクト」を使う

そんなときは、移行元のURLから移行先のURLへ自動で転送する「リダイレクト」を使いましょう。ユーザーが移行元のURLにアクセスしてきても、自動で新しい場所へ移動することができます。

Googleも公式に推奨しています。 301 リダイレクト – ウェブマスター ツール ヘルプ

 

(ここからは、技術論に興味が無い方はスキップしてください。)

細かいですが、リダイレクトには2種類あります。「恒久的な移動」と「一時的な移動」です。ユーザーにとってはどちらも自動で転送されることに変わりはありませんが、検索エンジンからすると異なります。

リダイレクトはHTTPステータスコードを埋め込むことで実現しますが、リダイレクト用のHTTPステータスコードは301と302の2種類があります。301が「恒久的な移動」で、302が「一時的な移動」です。

301の場合は、検索エンジンのクローラーが認識すると、古いURLをインデックスから削除し、新しいURLをインデックスに加えます。302の場合は、古いURLのインデックスを維持します。この違いがあるので、リダイレクトの設定方法については注意する必要があります。

リダイレクトはSEOには諸刃の剣――301/302のサイトを活かす使い方・殺す使い方 | Web担当者Forum

今回の場合は、新しいURLへ完全移行するので、301で各ブログの記事をリダイレクト設定しました。

 

WordPressならプラグイン「Redirection」を使う

WordPressを使っている方なら、プラグインの「Redirection」を使いましょう。各記事のURLを元にリダイレクト先を指定することができます。使い方は、以下の記事が詳しいです。

Redirection – 301リダイレクトを管理するWordPressプラグイン | ネタワン

このプラグインの優れているところは、リダイレクトの設定が簡単なことと、リダイレクトされた履歴として回数や最終日付を確認することができる点です。

 

「リダイレクトを設定したら、いつ移行元の記事を削除すればいいの?」と疑問を持ちましたが、答えとしては「明確な期限はないし、消さない方が無難」ということのようです。基本的には、検索エンジンのクローラーがクロールしたら、新しいURLが認識されるので古い方が不要になるはずですが、その期間もまばらで、クロールされるまでに数ヶ月要する場合もあるようです。

僕としては、しばらく観察して、リダイレクトの形跡がなくなったと認められるまではリダイレクト設定は残しておこうと思います。

今日はこのへんで。

 

自分のブログの育て方

「「Chikirinの日記」の育て方」を読みました。ブログを書いている方には、おすすめです。

 

ブログに対する考え方や、多くの人から注目されるブログメディアに至るまでの経緯などが詳細に綴られており、ブログを書く立場として読むと、様々なことが参考になりました。

 

自分のメディアを育て、ブランド化する

本書の中で、「Chikirinの日記」が多くのアクセスを得るようになった頃に、ブログを分けたと書いてあります。それは、「Chikirinの日記」というサイトの価値を向上させるために行ったのです。

一部引用すると、こう書いてあります。

自分のサイトを育てることは、将来何か新しいことをやるためのインフラを整備し、維持しておくようなものです。ライターを目指すのでも収益化を目指すのでもなく、「Chikirinの日記」という場所の運営者として、その場所の価値をできるだけ上げていくこと、それを目標として設定したことは、ちきりん活動の指針の大方を規定する、重要な決断だったと思います。

何を目的とするかによると思うのですが、どんな場合であれ、メディアを育てるためには「ジャンルを絞り込む」のが良いとされています。「Chikirinの日記」も、社会的なネタ以外を取り扱わなくなり、別のブログで書くようにした、ということです。(今は合計4つになっているようです。)

 

僕はこれを読んで、「自分のメディアを育てる」っていうのは、具体的にこういうことなんだなって思いました。どちらかというと、このブログでも自分の興味があることを書いてきました。膨大なアクセスがあるわけじゃありませんが、無駄に記事数だけはあるので、それなりのアクセス数が日々あります。ただ、もっと自分のメッセージを先鋭化し、メディアとして価値を高めていこうと思えば、書く内容は精査した方が良いのですね。

 

サッカーブログをこのブログから独立させました

というわけで、このブログはこれまで多かったIT系を中心にした記事を書く場として再定義するとともに、あまりにもジャンルが違うサッカー系の記事は、別のブログで書くことにしました。

Synapse Football

今後は、こちらでサッカーのマネジメント系の記事を書いていこうと思います。また、Twitterアカウントも新設しました。サッカー系の記事のシェアなどは、こちらで行っていきます。

synapse-football (synapsefootball)さんはTwitterを使っています

 

管理するメディアを増やすのは、手間が増えるので躊躇していたのですが、「「Chikirinの日記」の育て方」を読んで、踏ん切りというか勢いがつきました。ブログ書いてる人は、一度読んでみると良いですよ。