今の就職活動は、昔と何が変わったのか

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就職活動が解禁されました。今回から経団連との協定で解禁が3月になっており、いつもより選考期間が短い「短期決戦」と言われています。

二〇一六年春に卒業を予定する大学三年生らを対象とした主要企業の会社説明会が三月一日に解禁され、就職活動が本格化する。経団連の方針変更で今回から解禁が三カ月遅れた短期決戦となるため、学生、企業とも工夫を迫られている。

短期就活戦線スタート 初の3月解禁:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

なにやら大変そうなのですが、具体的に昔と今では何が変わったのでしょう。

最近読んだちきりんの本が、それをうまく説明してくれていました。

 

現在は「社会の市場化」が進んでいる

この本の根底にあるのは、「社会の市場化が進んでいるよ!」ってことです。

「社会の市場化」——この言葉は、過去10年間に起こった日本社会の変化と、次の10年間に起こるであろう変化の両方を、最も的確に捉えることのできる言葉です。

どういうことかというと、インターネットによって情報交換のコストが劇的に低下したことで、需要と供給のマッチング効率が飛躍的に向上しました。それによって、インターネット上でマッチングが行われるようになったのです。就職活動もまさにその最たる例になります。

株取引なども同じですが、市場化が進むと情報がオープンな場所に出されて、その「場」で取引が行われていきます。就職活動の場合、「リクナビ」や「マイナビ」に企業の情報がオープンに掲載され、そこでどんな学生でもエントリーできる仕組みが構築されました。

 

マーケットができたことで、勝つためのルールが変わってきている

市場化されることが良かったのか、悪かったのかといえば、それは正直わかりません。ただ、全体としては良い方向なのだと思います。それはつまり、こういうことです。

地方に生まれた人や、有力な先輩や親戚のいない家庭に生まれた人の得られるチャンスは、飛躍的に大きくなったのです。市場は弱者に厳しいとよくいわれますが、むしろ反対に、持たざる者に大きな可能性を与えるのが、市場の特徴なのです。

誰にでも平等な「機会」が与えられるので、その機会がそもそもなかった人や機会をうまく使える人にとってはプラスに働くことになるでしょう。

 

例えば昔であれば、大学で推薦をもらって就職を決めるとか、人のつながりや地縁で決めるなど「少数の選択肢から選ぶ」ことになっていたので、今は「無数の選択肢から選ぶ」ことになっているわけです。そうなると、「お祈りメール」もたくさん受け取るし、自分で「どこの業界、企業を選ぶのか」というマーケティング的思考がとても重要になっているわけです。でないと、自分のお金も時間も無限にあるわけではないので、自分の限られたリソースを打率が高い領域に打ち込んでいく必要があります。

そうなると、こういう発想も出てきます。これは、今回の「短期決戦」だけでなく、そもそも選択肢が無数に増えていることが背景にあるからです。

短期決戦に備え、エントリーシートの作成代行を業者へ依頼する学生も増えている。 「M&Nコンサルティング」(さいたま市)では、代行を一万九千八百円(八百字以内、税別)で引き受けているが、今年はすでに約三十人から申し込みがあった。例年を上回るペースで、二月以降は問い合わせも急増しているという。中谷充宏代表(47)は「採用期間が短くなったことで、面接回数が減る中、失敗しながら修正していくという従来の就活は難しくなっているのでは」と指摘する。

短期就活戦線スタート 初の3月解禁:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

 

また、自分を埋もれさせないためのPR努力が必要になっています。なので、こういう発想になっているわけですね。

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市場化されているので、逆に企業を選ぶ側にしてしまおう、ということです。

 

就職の成功パターンがなくなっている

もうひとつ、本書では面白い記載がありました。

特に合格率の低い難関資格を要する職業ほど、「高給で安定している」と考えられていたのです。 でもこれからは、お上が国家資格で保証してくれる職業ではなく、市場で強く求められる職業こそが、いい職業です。昔は政府が「すべての都道府県に国立大学をつくる!」と決めれば、大学の先生という職業の数(ポスト数)が、それに合わせて増えました。しかし市場の力が大きくなった現在では、政府の思い通りに需要や供給をコントロールすることはできません。地方大学をいくらつくっても、地方の若者が都会の大学に進学することを選ぶなら、地方大学で教職員のポストが増えるなんてことは起こらないのです。 市場化する社会では、政府が認定した資格を無思考に目指すのではなく、その資格を必要とする職業がおかれた市場の状況について、正しく理解するためのマーケット感覚が不可欠です。

大きな企業に就職する、あるいは難関資格と呼ばれているものを取得する。そういう、ある種「成功パターン」みたいなのが通用しなくなっています。行政がコントロールする領域が小さくなり、市場の変化が早くなっているからです。

そういう意味でも、社会の実態を知り、今のルールを知り、戦っていく素養が就職活動に求められているのです。

 

こうやってみると、大きく就活市場のルールが変わっているのがわかります。大人の経験談は、あまり通用しないかもしれませんね。学生は大人の古い体験談を聞くより、こういう本を読んでマーケット感覚を磨いた方が、楽しい社会人になれるかもしれません。

ソフトバンクのPepperは初回生産が1分で完売。注目される理由はなにか?

ソフトバンクの「Pepper」が初回生産として300台発売され、即時完売になったそうです。

ロボット「Pepper」の初回生産分、1分で完売 抽選販売に – ITmedia ニュース

 

「販売するだけで原価割れ」と言われているPepper。今回は300台だけですが、いろんな意味で今後ロボット領域をリードしていくことになるのだと見ています。

 

パソコン→スマートフォン→ロボット?

人の多くが保有する機器として、これまでパソコンやスマートフォンがありました。それぞれで覇権を握れるかが、会社の生命線に関わってきます。パソコンであれば、MicrosoftやIntelが躍進しました。スマートフォンではAppleとAndroidがシェアの9割以上を握っています。

そして、次のプラットフォーム争奪はロボットと言われています。特に特定の作業を人の代わりに行うような従来の産業用ロボットではなく、学習能力が高く、人とコミュニケーションできるロボットです。それは、ビッグデータ・機械学習・人口知能という、情報技術の進展がこの領域に迫っているからであり、新しいニーズを掘り起こすだろうと期待されているからです。

 

ソフトバンクは早い段階で、Pepperをオープンプラットフォームにすることを発表していました。SDKやAPIを開放し、いろんな開発者がPepperを通じて様々な機能やサービスを提供できるようにしているのです。(今回の販売も開発者向けでした。)

Pepper(ペッパー)のクリエーターになろう! | 特集 | ロボット | ソフトバンク

 

実際のAPIの利用例も登場しています。

PepperのAPIを使って年齢認識 – Qiita

 

プラットフォーム戦略は、先行者優位になります。ソフトバンクは、Pepperでこのロボット分野でプラットフォームを握ることを目的にしています。

 

ロボット自らが考え、コミュニケーションする

人工知能の領域の進展は最近凄まじいものがあります。単純に何かを識別したり判定するだけでなく、「ディープラーニング」という、機械が膨大な情報量から「概念」を抽出することにも成功しています。

【連載企画】今世界で注目を集める「ディープラーニング」とはなにか | O2O イノベーションラボ

少し前に、Googleが膨大な画像から「猫」という抽象的な概念を学習できたというニュースも話題になりました。

この人工頭脳は、ひとたびインターネットに接続して、YouTubeからランダムに選ばれた無数の画像を山のように供給されると、非常に特殊なことを行い始めた(少なくともコンピューターにとっては)。自動学習のプロセスを通して、猫を認識することを学習したのだ。人工頭脳の父であるアラン・チューリングの生誕から100年にして、機械も独習ができることを証明した。

猫を認識できるGoogleの巨大頭脳 « WIRED.jp

 

これまでは概念など抽象化が必要な作業は、人間しかできないのでは、と言われていたのです。そういう以前の認識が変わってきている状況が今なのです。

そして、それらの技術を使えば、人間と同じように考え、コミュニケーションを行えることになるのです。GoogleやFacebookも人工知能領域で研究所を創設したり、ベンチャー企業を買収して、積極的に投資しています。

最近もGoogleが、日本人からすると冗談みたいな名前の人工知能を開発したとニュースになってますね。

Google Deepmind、人工知能『DQN』を開発。レトロゲームを自力で学習、人間に勝利 – Engadget Japanese

 

ソフトバンクの「Pepper」とIBMの「Watson」が組み合わさる

Pepperが発表されたとき、IBMの「Watson」との提携も同時に発表されました。Watsonといえば、昔アメリカのクイズ番組で人間に勝利して有名になった、人工知能の代名詞のようなものです。

IBM自体は、ハードウェアや半導体のコモディティ化で、サービスやデータ分析など高度なレイヤーにシフトしてきています。そして、最近はWatsonを商用化し展開することに力を入れているのです。

ソフトバンクとIBMは、Pepperの展開に合わせてWatsonを日本語対応するようです。

SoftBankとIBMが協力してWatsonに日本語を教える…その全サービスとAPIを日本語化へ – TechCrunch

 

Watsonは、シェフに料理のレシピを提案したり、銀行のコールセンターで最適な回答を見つけるなど、膨大な情報から文脈や過去の経験などを踏まえて分析する場面で利用されようとしています。

料理レシピ、銀行コールセンターにも活用…IBM、人工知能「ワトソン」のすごさ(1/2ページ) – 産経ニュース

 

Pepperもネットワーク接続で日々の会話などはクラウド管理されるようですので、そこで分析し、コミュニケーションを学習していくのでしょう。

 

 

ソフトバンクがロボット事業に進出、と聞いたときは「本当か?」と思ったのを覚えています。が、時代の流れは間違いなくロボットと人工知能に訪れようとしています。そこで覇権を握れるかは今後の動向次第だと思いますが、現時点で世界的にリードしているのは間違いないでしょう。

ソフトバンクの戦略にはいつも驚かされます。

 

初めての万年筆なら3000円以下で買えるパイロットのコクーンがおすすめ

最近、万年筆デビューしました。いろいろ事前に調べて悩みましたが、最終的にはパイロットのコクーンにしました。

決め手は、見た目と価格です。笑

万年筆というと1万円以上するものがざらにありますが、いきなり最初に買うにはハードルが高いですし、そもそも100円ボールペンがありふれる中で、1万円とか100倍以上しますからねえ。

 

ただ、最近は比較的購入しやすい万年筆が出てきています。同じパイロットのカクノとか、

日本初の本格的な子ども向け万年筆 50万本突破の大ヒット│NEWSポストセブン

Amazonの万年筆でランキングトップなのは、LAMYですね。

 

で、実際にコクーンを使ってみた感想を。

 

万年筆で書くのが楽しくなりましたよ

ボールペンとは違う書き味。疲れない。

ボールペンよりちゃんと握らなくても書ける感覚が、個人的にはとても良いです。疲れないですね。筆圧が昔からあまり強くない方なので、万年筆と相性が良いのかもしれません。

 

インクを変えられるのが楽しい。

万年筆の場合、自分でインクの色を自由に選べるのが特徴のひとつです。そして、パイロットの万年筆インクに「色雫(iroshizuku)」というシリーズがあります。実際に色見本帳が以下にあります。

色彩雫(いろしずく)見本帖 | 特集記事一覧 | PILOT LIBRARY | PILOT

単純な「黒・赤・青」じゃなくて、微妙な色合いを選ぶことができるんですよ。そうやって自分が好きな色を選んで、書く。そういう行為が書くことを楽しくしてくんですよね。

 

「書く」という行為の価値は上がっているのでは?

ここでひとつ面白いのは、文房具市場ってこれまでずっと縮小してきましたが、最近は少し復調してきてるんですよ。

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(文具・事務用品市場に関する調査結果 2014 – 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所より作成)

これは、企業が使う事務用品は縮小傾向にあり、個人向け文房具の高価格傾向が牽引しているようです。パソコンも普及していますし、もうあまり会社などでまとめて文房具を買う、という習慣が消えている一方で、個人用のペンやノートは高機能・高付加価値なものが注目されています。

ほら、モレスキンとかもちょっと前から流行っているじゃないですか。

ペンで書くというのは、ほとんど正式な文書というよりは、自分用のメモがほとんどです。なので、とてもパーソナルな行為になっているっていうことと、文書作成はWordでやるとかで「書く」という行為自体が希少化してるっていうのは考えられるんじゃないでしょうか。

 

というわけで、新しい「書く」という体験をしたい方は、一度万年筆をお試しあれ。

あと、インクを買うときにはコンバーターもお忘れなく。

【Twitter分析】「地方創生」がどう話題になっているかを調べる

統計フリーツールのRを使って、Twitterを分析していますが、前回の「ピケティ」に続き、今回は「地方創生」にしました。

【Twitter分析】「ピケティ」がどう話題になっているかを調べる

 

Twitterのつぶやきに「地方創生」というキーワードを含むものを9000件ほど取得しました。時系列で件数を表すと、次のようなヒストグラムになります。一日あたりの件数は結構多くて、1000~1500件程度です。

tweet

これをRMeCabを使って形態素解析して、名詞を抽出、ネットワーク分析にかけます。それで出たのが以下の図です。(N-gramは3の結果を表示してます。)

net3

「東洋」「経済」がキーワードにならんでいるのは、このシリーズが話題になっているからだと思います。

地方創生のリアル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

特にこの記事ですかね。

特産品で地方創生ができるという「幻想」 | 地方創生のリアル | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

 

「2月7日」「自民党」というキーワードがありますね。知らなかったのですが、このツイートがその正体かと。

 

 

なるほどなー統一地方選も近いですしね。

 

今日はこのへんで。

【Twitter分析】「ピケティ」がどう話題になっているかを調べる

先日、統計フリーツールのRを使って、Twitterを分析してみました。

Twitterの分析が地方政策の立案やマーケティングに活用できるか試してみた

地名をキーワードにしたTwitterを抽出して分析したんですが、今回は別の流行ワードでやってみようかな、と。

選んだのは「ピケティ」です。もう流行り過ぎってぐらいですよね。僕は雑誌のピケティ特集を読んだりとか、パリ白熱教室を観たぐらいで、「21世紀の資本論」は読んでませんが。

話題の経済書「21世紀の資本論」は、格差拡大への警鐘である

 

さて、今回はTwitterのつぶやきに「ピケティ」というキーワードを含むものを6000件ほど取得しました。時系列で件数を表すと、次のようなヒストグラムになります。一日あたりの件数は結構多くて、1500~2000件程度。なので、ほぼ3日分ぐらいの計算です。

hist

 

で、これをRMeCabを使って形態素解析して、名詞を抽出、ネットワーク分析にかけます。それで出たのが以下の図です。(N-gramは3の結果を表示してます。)

ピケティ

「アベノミクス」や「民主党」という言葉が、「便乗」や「批判」というキーワードと並んでいます。このあたりは、やはりピケティが分析した結果、主張した内容が、今の日本社会や政策にどう影響するかを照らしあわせ、賛同・批判に関する様々な記事が出ているからでしょう。

 

「ピケティ アベノミクス」で検索して目についたものでも、こういうのが上の方にあがってきます。

ピケティが指摘するアベノミクスの弱点 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

ピケティでアベノミクス批判する残念な人々 | インフレが日本を救う | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

 

また、「鈴木」「寛」というキーワードも見えますね。どうやら、この記事が話題になっているようです。

ピケティの言う「教育で格差は縮まらない」は本当か|鈴木寛「混沌社会を生き抜くためのインテリジェンス」|ダイヤモンド・オンライン

 

Twitter上で、キーワードを中心に何がどういう文脈で語られているか、ということに関しては、ある程度推測できているように見えます。ただ、もう少し分析に関する情報が欲しいところですね。

今日はこのへんで。

企業の地方移転は進むか。地方に本社がある大企業を調べてみた。

「地方創生」というキーワードを多く聞くようになっていますが、企業が東京に集まり過ぎて、地方で雇用が生まれないという話があります。

そこで、国では地方に移転した企業には税制を優遇しようという方向になっているようです。

東京圏にある本社機能、地方移転で優遇税制-法人税などを軽減、来年度実行へ:日刊工業新聞

 

そもそも地方にはどれぐらい大きな企業がいるんでしょうか。この資料によると、上場企業の半分は東京に本社があり、上位5都県(東京都、大阪府、愛知県、神奈川県、兵庫県)を含めると、4分の3を占めるそうです。

企業本社の地方分散による地域・企業の競争力強化(三重県知事)(PDF)

 

地方に本社がある企業を実際に調べてみた

多くが東京などの都市圏に本社があるというので、実際に調べてみます。あと、そんな中で地方に本社を置いている企業というのがどういうものなのか知りたくなりました。

上場企業全部を調べるのは大変なので、日経225で上位5都県以外に本社がある企業を調べてみました。日経225の本社情報は日経平均 日経平均225採用銘柄一覧から引用しています。

 

実際にピックアップされた企業は15社でした。225社中の15社なので、6%ぐらいですね。

地図でみるとこんな感じです。東北のあたりにはいないんですね。

225

以下が一覧です。

企業名住所創業年
キッコーマン(株)千葉県野田市1661年
京セラ(株)京都市伏見区1959年
京成電鉄(株)千葉県市川市1909年
(株)GS・ユアサコーポレーション京都市南区1917年
(株)静岡銀行静岡市葵区1943年
(株)SCREENホールディングス京都市上京区1868年
宝ホールディングス(株)京都市下京区1842年
TOTO(株)福岡県北九州市小倉北区1917年
日本電気硝子(株)滋賀県大津市1949年
(株)ファーストリテイリング山口県山口市1946年
ファナック(株)山梨県南都留郡忍野村1972年
(株)ふくおかフィナンシャルグループ福岡市中央区大手門2007年
マツダ(株)広島県安芸郡府中町1920年
(株)安川電機福岡県北九州市八幡西区1915年
ヤマハ(株)浜松市中区1897年

創業の場所や地域に根ざしている企業が多いようです。想像通りといえばそうなんですが。

あと調べてみて気づいたのは、本社登録は地方になっていても、本社機能はそこにない可能性があるってことですね。ファーストリテイリングはWikipediaに、本社機能は東京にあると書かれていたりしますし、マツダも日本の本社が東京・大阪・広島の3つになっています。

 

地方に移転する場合は、具体的な地の利が必要

コマツが石川県に本社機能の一部を移転しました。

本社機能の移転 地方への効果は – NHK 特集まるごと
北國・富山新聞ホームページ – 北陸の経済ニュース

 

コマツが本社機能を移転したのには、以下の理由があると推測されます。

  • 優秀な女性社員の離職率低下

記事には、北陸の方が社内女性の子どもが多いという数字が挙げられています。育てやすい環境がある、ということでしょうかね。

コマツの社内調査では、既婚女性の子どもの数は、東京が平均0.7人なのに対し、北陸は3倍近い1.9人に上っています。

本社機能の移転 地方への効果は – NHK 特集まるごと

  • 金沢港からの建設機械輸出

もうひとつの記事には、金沢港の存在が利点であることが述べられています。

金沢港からの建設機械輸出については、地元の食品機械や工作機械メーカーなどと共同で出荷する「合い積み輸送」が順調だと説明し、今後も同港を積極的に活用する意向を示した。大橋社長は粟津工場(小松市)の管理部長時代に金沢港の利用推進に力を入れた経緯があり、「当時の取り組みが今実っている」とも述べた。

北國・富山新聞ホームページ – 北陸の経済ニュース

 

こういう事業環境が重なって、地方移転につながっているようです。

 

いろいろ調べましたが、都市にある企業の地方移転は進むんでしょうかね。

今日はこのへんで。

「家事」は今後大きく変わっていく領域になる

最近、家事に関して興味深い記事が多く出ています。そして、この市場に大きな変化が訪れようとしてるんじゃないでしょうか。

 

スマートハウスはどこまで家事を楽にしてくれるか

最近、「スマートハウス」という領域が少しずつ拡大されています。以前、これが今後ITトレンドになるよって記事を書きました。

スマートハウスはいろんな企業にとってビジネスチャンスになる

 

要はIoT(Internet of Things)の延長として、家に取り付けたセンサーやロボットとスマホやPCなどが連動して、これまで人がやっていた作業をもっと効率的に、快適に行おうという流れです。

AppleやGoogleがこの領域には結構熱心で、ベンチャーを買ったりして本格的な市場展開を狙っているような動きがあります。

今のところ、実用的で普及期を迎えているのが「ロボット掃除機」でしょうかね。これまで縮小してきた掃除機市場が、ロボット掃除機によって増加に転じたというレポートもあります。

2018年には90万台市場に:ロボット掃除機、シェアの7割超を「ルンバ」が占める – Business Media 誠

 

そして、僕もつい先日ロボット掃除機を買いました。これです。

とても安いものですし、あまり賢い機能がついてるわけではありませんが、勝手に掃除してくれて、終わってみてみるとホコリがたくさん入っています。自分は何もしなくても掃除してくれる気楽さ、そして掃除以外の作業に時間を充てられる有意義さを、ロボット掃除機は与えてくれます。

ということで、スマートハウスの流れは今後も進んでいくと思います。その中で、従来からやってる家事の負担を、どれぐらい緩和してくれる解決策が出てくるのか、楽しみです。

 

家事のアウトソーシングはどこまで受け入れられるか

もうひとつは、家事のアウトソーシングが進みそうだ、ということです。以下の記事が少し前に話題になりましたが、

子ありの共働きで月2万円で家事全部アウトソースは難しい。ではいくらだったらできるのか?検証してみた。 | brand new Style な人生日記

 

家事をアウトソーシングする、という行為が、気軽にいろんな人が実施できるようになってきてるんじゃないでしょうか。いろんな家事代行サービスが登場してきてるようです。ちょっと前は、リクルート発でこういうサービスが生まれていました。

リクルート発!お手軽家事支援サービス「casial」 | Techable(テッカブル)

 

最近このあたりが拡大している背景として、ITと結びついてマッチングコストを下げている点が挙げられます。

宅配クリーニングサービスの「リネット」も、フロントはWebサイトでマッチングコストを下げ、全国のクリーニング工場の品質を管理することで、低コスト・高品質を実現しています。

ネット宅配クリーニング「リネット」がYJキャピタルから4億円を調達 – THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

今後は、どの程度コストを下げつつ、品質管理できるか、サービスエリアを拡大できるかがポイントになると思います。あと、「家」というプライバシーゾーンに人が入るという行為、「家事は女性がやるもの」という社会的イメージに、どの程度変化をもたらせられるかもポイントかな、と。

 

女性の家事時間を減らすことが経済発展につながる

OECDの調査によると、日本人男性の一日の家事に費やす時間は1時間程度で、女性と6倍もの開きがあるそうです。ちなみに、OECDの中では韓国に次いで2番目の短さですね。

housekeeping

 

(OECD「Balancing paid work, unpaid work and leisure – OECD」よりグラフ作成)

 

男性が家事を負担するということもそうですし、上で述べたような、全体として家事を効率的に、楽にしていくということは、女性が社会に参画しやすくなることにもつながります。このあたりのマインドの変化も考えるべきでしょう。

 

最後に好きな記事を貼っておきます。恐らく重要なのは、男性側のマインドと行動の変化ですよ。

 

 

今日はこのへんで。

Twitterの分析が地方政策の立案やマーケティングに活用できるか試してみた

データ分析に関心を持っている今日このごろですが、Rを使ってTwitterの情報からキーワードを抽出して、ネットワーク図を書いてみました。地域名をキーワードにしたとき、どういう内容がTwitterで話題になっているのか、パッと可視化することができるかなと思いまして。

 

地域名を含んだつぶやきを分析してみた

以下が、2/11から2/16までの期間で、「岐阜市」をキーワードに抽出して分析した結果です(厳密には、N-gram4でネットワーク分析してます)。およそ4,000件ぐらいになりました。

gifu

名詞だけが抽出されていますが、なんとなくどういうキーワードが話題になっているのか、わかりますね。道路の通行止め、子猫の里親募集などが話題になっていることがわかります。ラブホの名前も入ってるようですね。

このあたり、つぶやいた人がどれぐらい信頼性が高い人なのか、定型文をつぶやいてるボットみたいなものなのかで、重要性を判断できると面白そうな気がします。

 

ただなんというんでしょう。あんまり話題がないなって正直思ってしまったんですが、どうなんでしょう。Twitterなどソーシャルメディアの情報を分析して、マーケティングや地方政策に活かそう、みたいな話を聞くんですが、

他の都市も見てみようと思います。

nagoya

名古屋市は内容すらよくわかりませんでした。笑

 

今回の分析結果だけでなんとも言えないとも思うので、もう少し定点観測してみても良いかもと思っていますが、Twitterユーザーの傾向としては、次のような分析結果があります。

相関ランキングを見ると基準地価:商業地や基準地価:住宅地、基準地価:工業地などとの正の相関が非常に強い。Twitterユーザー数は地価とほぼ正比例していて、地価が高いほどユーザーが多いという結果を表している。

Twitterユーザー数 [ 2013年第一位 東京都 ]|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]

 

つまり、Twitterについていえば、都市型のソーシャルメディアであり、地方都市など人口が減っている地域については、マーケティングや地方政策には活用しづらいんじゃないか、という印象です。

あとは、もっと対象件数を数十万件規模まで増やしたり、地域ではなく企業名や商品名などでマーケティングに活用するなどは、アリかもしれないですね。

今日はこのへんで。

「日本の論点 2015~16」を読んで今後の日本社会を考えよう

久々に、大前研一さんの「日本の論点 2015~16」を読みました。

様々なネタが書かれているのですが、定量的なデータも織り交ぜながら、主に政治・経済について言及しており、頭の整理として非常に刺激に富んでいます。

 

日本経済最大の問題は累積赤字の解消

本書では、日本経済の最大の問題は累積赤字をどう解消するか、であると述べられています。

日本の債務残高対GDP比は200%を超えており、先進国の中でもダントツになっています。

債務残高の国際比較(対GDP比)

(債務残高の国際比較(対GDP比) : 財務省よりグラフ作成)

債務残高が膨らんだ理由については、Wikipediaに端的に書かれています。

1980年代後半のバブル経済の頃は好況により税収が多く、日本の国庫は潤っており、国債の発行額もそれほど多くはなかった。しかし、バブル経済が崩壊して税収が減少すると、それにともなって歳入が減少した。併せて、景気浮揚を目的にした財政出動が何度も行われた結果、国債を大量発行するようになり、発行残高は急激に増加していった。

日本国債 – Wikiwand

これだけの債務が発生に至った理由、そして今でも解消に向かっていない懸念が本書では指摘されています。

 

中央集権体制から道州制への転換

本書では、中央集権体制から道州制へ転換することが、各地域の競争性を高め、財政再建への道も出てくると述べられています。

道州制といえば、これまでも何度も議論が出ては消えてきている議論です。今の自民党政権もなかなか難しそうですね。

経団連:道州制実現に向けた緊急提言 (2013-03-14)

なぜ自民党は道州制法案を出せないのか

本書では統治機構としてドイツとの対比が描かれています。ドイツが戦後分権体制になり、今もそれを維持していることを初めて知りました。少し引用します。

ドイツの州は独自の州憲法や州議会などを有する地方「政府」なのだ。州のトップに「州首相」がいて、外部大臣や財務大臣もいる。州は財政的にも中央(連邦政府)から独立し、自己責任で財政運営しなければならないと基本法で規定されている。旧東ドイツ地域などの貧しい州との財政格差を補うために、連邦政府から州へ交付される時限立法的な交付金や州間で援助する調整交付金の制度もあるが、基本原則は州の経済的独立だ。

同じ要旨をここで読めます。

敗戦国日本とドイツ 中央集権と地方分権に分かれたのはなぜ | マイナビニュース

統治機構が、こうまで財政や経済などの運営に影響を与えるものか、という事実と洞察に驚きながら読みました。

全く同じというわけではありませんが、統治機構が変わるという点では、もうすぐ大阪都の住民投票があります。統治機構を変えるというのはなかなか簡単ではないと思いますが、今後どう進むか興味深いですね。

 

それ以外でも本書は示唆が多いです。論点が整理されているので読みやすいですし。あと、こういう動画も公開されていて、これらも面白い内容になっています。無料で見れるとか、良い時代ですね。

 

大学もマーケティングが必要な時代

近畿大学が志願者数で全国一位になっていたって、知ってました?あの近大マグロの大学です。

近畿大学が志願者一位になった理由は何なのか?を書いた本がこの「なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか」です。

大学は今もこれからも競争が激化する市場

人口減少が現実的な課題になってきていますが、大学も同じです。18歳人口は減少してきていて、これまでは進学率の上昇で大学生はずっと増えてきましたが、ここ最近は打ち止め感があります。

本書ではこういう記載がありますが、

2009年を底にしていったん安定した18歳人口は、2018年から減少に転じ、2031年までに実に33万人も減少すると予測されている。大学関係者の間で深刻な事態として考えられている「2018年問題」だ。

グラフで見てみるとこんな感じです。

18歳人口、入学定数、入学者数の推移

※時間軸がばらついているので、注意してください。 (文部科学省「大学の入学定員・入学者数等の推移」P.18より作成)

若者の総数が減り、進学率など大きな増加要因も見込めない状況では、市場全体が伸びるのは難しそうです。留学生など別のチャネルを構築することも考えられますが、全体としては学校経営は競争が激化し、寡占化(ブランド力がある強い学校がますます勝つ)になっていく状況が予想されます。

そのような状況の中で、関西圏の大学の中で決してランクが高いわけではない近大には、相当な危機意識があったと思われます。

 

「偏差値」という硬直的な物差しにどう立ち向かうか

大学の生き残りを考えるとき、「偏差値」によるランク付けというのは大きな脅威です。顧客である学生が選ぶ基準が明確になってしまうので、偏差値が高い大学と比べられると負けます。そこから何が言えるかといえば、志願し、受験してくれても、より偏差値が高い大学に合格した学生は、そちらを選ぶということです。

つまり、志望順位が高くなる大学は合格辞退はあまりありませんが、志望順位が低いと合格辞退がたくさんでるので、枠の学生を確保するためにはより多くの学生に受験してもらう必要があります。打率が低くなるということですね。

そう考えると、志願者を多く集めて、そのひとたちに学校を選んでもらい、学校生活でモチベーションを上げてもらう必要があります。それが本書ではこう表現されています。

「たくさんの志願者に集まってもらうことは、学生の意欲を向上させ、入試の倍率も上がり、徐々にではあっても偏差値を上げていくことに必ずつながっていきます。偏差値がすべてではないことは繰り返し述べてきた基本的な見解ですが、世の中の現状がそれを一つの尺度としている以上、無視するわけにはいきません。東大がどんな教育や研究をしていて、どんな優秀な教師がいるのか。就職支援システムはどうなっているのか知らないのに東大はすごいということなっています。それは、偏差値が一番高くて入試が一番難しいからでしょう。

硬直的な大学の偏差値という評価軸に打ち勝つためには、新たな魅力を提示したり、広報戦略を洗練させていくことで、ブランドイメージを変えていくことが必要になります。

 

「近大マグロ」はマーケティング的成功例

一番驚いたのは、「近大マグロ」が話題になったのは、マグロの完全養殖が成功してからだいぶ後でした。2002年に成功し、広報で一度取り上げられていましたが、その後話題になることはなかったのです。しかし、2007年頃から新しい広報担当者が「近大マグロ」の広報的価値を見直し、宣伝をかけていった結果、今のような認知度を獲得したのです。

Googleトレンドで「近大マグロ」をみても、検索が多くなっているのは最近です。

また、近大はコメンテーターブックを発行しています。これも、大学教授がどういう専門分野を持っており、メディアからの取材に答えられるかをいつでもメディア関係者に理解してもらえるための取り組みだそうです。

そうやって大学の認知度を高める仕組みを設けています。

 

大学というのは、ひとつの硬直的な市場で、今後の展開はとても難しくなります。積極的に投資をして、魅力と規模を追求できる大学が生き残っていくのでしょう。(近大も学部や施設を拡大させています。)

企業でも、硬直的になってしまっている自社のイメージをどう変えていくか、を考えてみるのは重要なんじゃないでしょうか。

あー近大マグロ、食べにいきたい。