「日本の論点 2015~16」を読んで今後の日本社会を考えよう

久々に、大前研一さんの「日本の論点 2015~16」を読みました。

様々なネタが書かれているのですが、定量的なデータも織り交ぜながら、主に政治・経済について言及しており、頭の整理として非常に刺激に富んでいます。

 

日本経済最大の問題は累積赤字の解消

本書では、日本経済の最大の問題は累積赤字をどう解消するか、であると述べられています。

日本の債務残高対GDP比は200%を超えており、先進国の中でもダントツになっています。

債務残高の国際比較(対GDP比)

(債務残高の国際比較(対GDP比) : 財務省よりグラフ作成)

債務残高が膨らんだ理由については、Wikipediaに端的に書かれています。

1980年代後半のバブル経済の頃は好況により税収が多く、日本の国庫は潤っており、国債の発行額もそれほど多くはなかった。しかし、バブル経済が崩壊して税収が減少すると、それにともなって歳入が減少した。併せて、景気浮揚を目的にした財政出動が何度も行われた結果、国債を大量発行するようになり、発行残高は急激に増加していった。

日本国債 – Wikiwand

これだけの債務が発生に至った理由、そして今でも解消に向かっていない懸念が本書では指摘されています。

 

中央集権体制から道州制への転換

本書では、中央集権体制から道州制へ転換することが、各地域の競争性を高め、財政再建への道も出てくると述べられています。

道州制といえば、これまでも何度も議論が出ては消えてきている議論です。今の自民党政権もなかなか難しそうですね。

経団連:道州制実現に向けた緊急提言 (2013-03-14)

なぜ自民党は道州制法案を出せないのか

本書では統治機構としてドイツとの対比が描かれています。ドイツが戦後分権体制になり、今もそれを維持していることを初めて知りました。少し引用します。

ドイツの州は独自の州憲法や州議会などを有する地方「政府」なのだ。州のトップに「州首相」がいて、外部大臣や財務大臣もいる。州は財政的にも中央(連邦政府)から独立し、自己責任で財政運営しなければならないと基本法で規定されている。旧東ドイツ地域などの貧しい州との財政格差を補うために、連邦政府から州へ交付される時限立法的な交付金や州間で援助する調整交付金の制度もあるが、基本原則は州の経済的独立だ。

同じ要旨をここで読めます。

敗戦国日本とドイツ 中央集権と地方分権に分かれたのはなぜ | マイナビニュース

統治機構が、こうまで財政や経済などの運営に影響を与えるものか、という事実と洞察に驚きながら読みました。

全く同じというわけではありませんが、統治機構が変わるという点では、もうすぐ大阪都の住民投票があります。統治機構を変えるというのはなかなか簡単ではないと思いますが、今後どう進むか興味深いですね。

 

それ以外でも本書は示唆が多いです。論点が整理されているので読みやすいですし。あと、こういう動画も公開されていて、これらも面白い内容になっています。無料で見れるとか、良い時代ですね。