今、経済界で話題沸騰のトマ・ピケティの「21世紀の資本論」。以前から名前は知っているものの、ちゃんと理解していませんでした。何がそんなに注目を集めているか、週刊東洋経済の特集を読んで確認しました。
このままでは不平等の格差は拡大していく?
ピケティの主張が注目されているのは、資本主義社会では格差が拡大していくという点です。それはイコール、中間層の消滅です。
以前から大前研一さんも中間層は崩壊していると説いていますので、その主張自体はあまり目新しいものではないのですが、注目されているのは過去300年という長期間でのデータに基づいた実証をしており、その結果から資本主義社会の仕組みそのものに、格差を拡大させる仕組みがあると説いている点です。
経済的には、「資本収益率が経済成長率より常に高い」ということを示しています。簡単に言えば、資産に投資して得られる収益の方が、経済成長による恩恵より大きいので、働くより資産へ投資した方が効率よく儲けられる、ということです。
未来予測は完璧ではない
話題になっていることで、賛否両論が渦巻いています。
【オピニオン】「21世紀の資本論」ピケティ氏は急進的なのか – WSJ
話題の「21世紀の資本論」、重大な欠陥も :日本経済新聞
ピケティ『21世紀の資本論』はなぜ論争を呼んでいるのか(2/6) | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉:日経BPオールジャンルまとめ読みサイト
ピケティの本は、過去の統計データからひとつの事実を紐解きました。が、それが未来でも同じように起こるとは限らない、というのがいろんな専門家の意見のようです。例えば、資本収益率が経済成長率より過去が高かったからと言って、未来もずっと高いとは限らない、というようなことです。
また、ピケティは政策提言も行っていますが、そこでは税率の引き上げを指しています。しかし、税率を引き上げたら資本収益率も経済成長率も低下してしまうのではないか、という意見もあります。
とはいえ、格差が拡大しているのも事実
日本だけみても、相対貧困率は上昇しています。確かに格差が拡大しているデータがあります。
アメリカで「21世紀の資本論」が注目されているのも、格差が大きな問題として捉えられているからでしょう。
個人的なポイントは、
- グローバル化による労働コストの均質化(=先進国の単純労働者の賃金低下)
- 人口減少による社会保障のゆがみ(高齢者に配分される)
- 日本企業の雇用確保(=株主配分の減少による投資の低下)
3番目の点に関しては、雇用確保とのバランスは微妙な問題だなって思ってます。過去にそういう記事も書きました。
ただ、格差が拡大していくと社会が不安定化し、閉鎖的な政策が支持されたり、憎悪の対象が生み出されたします。なので、経済的なバランスを取るというのは非常に重要だと思っています。
さて、ピケティの議論は今後どこに向かうんでしょうか。翻訳版は秋に発売予定だそうです。
今日はこのへんで。