ソフトバンクのPepperは初回生産が1分で完売。注目される理由はなにか?

ソフトバンクの「Pepper」が初回生産として300台発売され、即時完売になったそうです。

ロボット「Pepper」の初回生産分、1分で完売 抽選販売に – ITmedia ニュース

 

「販売するだけで原価割れ」と言われているPepper。今回は300台だけですが、いろんな意味で今後ロボット領域をリードしていくことになるのだと見ています。

 

パソコン→スマートフォン→ロボット?

人の多くが保有する機器として、これまでパソコンやスマートフォンがありました。それぞれで覇権を握れるかが、会社の生命線に関わってきます。パソコンであれば、MicrosoftやIntelが躍進しました。スマートフォンではAppleとAndroidがシェアの9割以上を握っています。

そして、次のプラットフォーム争奪はロボットと言われています。特に特定の作業を人の代わりに行うような従来の産業用ロボットではなく、学習能力が高く、人とコミュニケーションできるロボットです。それは、ビッグデータ・機械学習・人口知能という、情報技術の進展がこの領域に迫っているからであり、新しいニーズを掘り起こすだろうと期待されているからです。

 

ソフトバンクは早い段階で、Pepperをオープンプラットフォームにすることを発表していました。SDKやAPIを開放し、いろんな開発者がPepperを通じて様々な機能やサービスを提供できるようにしているのです。(今回の販売も開発者向けでした。)

Pepper(ペッパー)のクリエーターになろう! | 特集 | ロボット | ソフトバンク

 

実際のAPIの利用例も登場しています。

PepperのAPIを使って年齢認識 – Qiita

 

プラットフォーム戦略は、先行者優位になります。ソフトバンクは、Pepperでこのロボット分野でプラットフォームを握ることを目的にしています。

 

ロボット自らが考え、コミュニケーションする

人工知能の領域の進展は最近凄まじいものがあります。単純に何かを識別したり判定するだけでなく、「ディープラーニング」という、機械が膨大な情報量から「概念」を抽出することにも成功しています。

【連載企画】今世界で注目を集める「ディープラーニング」とはなにか | O2O イノベーションラボ

少し前に、Googleが膨大な画像から「猫」という抽象的な概念を学習できたというニュースも話題になりました。

この人工頭脳は、ひとたびインターネットに接続して、YouTubeからランダムに選ばれた無数の画像を山のように供給されると、非常に特殊なことを行い始めた(少なくともコンピューターにとっては)。自動学習のプロセスを通して、猫を認識することを学習したのだ。人工頭脳の父であるアラン・チューリングの生誕から100年にして、機械も独習ができることを証明した。

猫を認識できるGoogleの巨大頭脳 « WIRED.jp

 

これまでは概念など抽象化が必要な作業は、人間しかできないのでは、と言われていたのです。そういう以前の認識が変わってきている状況が今なのです。

そして、それらの技術を使えば、人間と同じように考え、コミュニケーションを行えることになるのです。GoogleやFacebookも人工知能領域で研究所を創設したり、ベンチャー企業を買収して、積極的に投資しています。

最近もGoogleが、日本人からすると冗談みたいな名前の人工知能を開発したとニュースになってますね。

Google Deepmind、人工知能『DQN』を開発。レトロゲームを自力で学習、人間に勝利 – Engadget Japanese

 

ソフトバンクの「Pepper」とIBMの「Watson」が組み合わさる

Pepperが発表されたとき、IBMの「Watson」との提携も同時に発表されました。Watsonといえば、昔アメリカのクイズ番組で人間に勝利して有名になった、人工知能の代名詞のようなものです。

IBM自体は、ハードウェアや半導体のコモディティ化で、サービスやデータ分析など高度なレイヤーにシフトしてきています。そして、最近はWatsonを商用化し展開することに力を入れているのです。

ソフトバンクとIBMは、Pepperの展開に合わせてWatsonを日本語対応するようです。

SoftBankとIBMが協力してWatsonに日本語を教える…その全サービスとAPIを日本語化へ – TechCrunch

 

Watsonは、シェフに料理のレシピを提案したり、銀行のコールセンターで最適な回答を見つけるなど、膨大な情報から文脈や過去の経験などを踏まえて分析する場面で利用されようとしています。

料理レシピ、銀行コールセンターにも活用…IBM、人工知能「ワトソン」のすごさ(1/2ページ) – 産経ニュース

 

Pepperもネットワーク接続で日々の会話などはクラウド管理されるようですので、そこで分析し、コミュニケーションを学習していくのでしょう。

 

 

ソフトバンクがロボット事業に進出、と聞いたときは「本当か?」と思ったのを覚えています。が、時代の流れは間違いなくロボットと人工知能に訪れようとしています。そこで覇権を握れるかは今後の動向次第だと思いますが、現時点で世界的にリードしているのは間違いないでしょう。

ソフトバンクの戦略にはいつも驚かされます。