大学もマーケティングが必要な時代

近畿大学が志願者数で全国一位になっていたって、知ってました?あの近大マグロの大学です。

近畿大学が志願者一位になった理由は何なのか?を書いた本がこの「なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか」です。

大学は今もこれからも競争が激化する市場

人口減少が現実的な課題になってきていますが、大学も同じです。18歳人口は減少してきていて、これまでは進学率の上昇で大学生はずっと増えてきましたが、ここ最近は打ち止め感があります。

本書ではこういう記載がありますが、

2009年を底にしていったん安定した18歳人口は、2018年から減少に転じ、2031年までに実に33万人も減少すると予測されている。大学関係者の間で深刻な事態として考えられている「2018年問題」だ。

グラフで見てみるとこんな感じです。

18歳人口、入学定数、入学者数の推移

※時間軸がばらついているので、注意してください。 (文部科学省「大学の入学定員・入学者数等の推移」P.18より作成)

若者の総数が減り、進学率など大きな増加要因も見込めない状況では、市場全体が伸びるのは難しそうです。留学生など別のチャネルを構築することも考えられますが、全体としては学校経営は競争が激化し、寡占化(ブランド力がある強い学校がますます勝つ)になっていく状況が予想されます。

そのような状況の中で、関西圏の大学の中で決してランクが高いわけではない近大には、相当な危機意識があったと思われます。

 

「偏差値」という硬直的な物差しにどう立ち向かうか

大学の生き残りを考えるとき、「偏差値」によるランク付けというのは大きな脅威です。顧客である学生が選ぶ基準が明確になってしまうので、偏差値が高い大学と比べられると負けます。そこから何が言えるかといえば、志願し、受験してくれても、より偏差値が高い大学に合格した学生は、そちらを選ぶということです。

つまり、志望順位が高くなる大学は合格辞退はあまりありませんが、志望順位が低いと合格辞退がたくさんでるので、枠の学生を確保するためにはより多くの学生に受験してもらう必要があります。打率が低くなるということですね。

そう考えると、志願者を多く集めて、そのひとたちに学校を選んでもらい、学校生活でモチベーションを上げてもらう必要があります。それが本書ではこう表現されています。

「たくさんの志願者に集まってもらうことは、学生の意欲を向上させ、入試の倍率も上がり、徐々にではあっても偏差値を上げていくことに必ずつながっていきます。偏差値がすべてではないことは繰り返し述べてきた基本的な見解ですが、世の中の現状がそれを一つの尺度としている以上、無視するわけにはいきません。東大がどんな教育や研究をしていて、どんな優秀な教師がいるのか。就職支援システムはどうなっているのか知らないのに東大はすごいということなっています。それは、偏差値が一番高くて入試が一番難しいからでしょう。

硬直的な大学の偏差値という評価軸に打ち勝つためには、新たな魅力を提示したり、広報戦略を洗練させていくことで、ブランドイメージを変えていくことが必要になります。

 

「近大マグロ」はマーケティング的成功例

一番驚いたのは、「近大マグロ」が話題になったのは、マグロの完全養殖が成功してからだいぶ後でした。2002年に成功し、広報で一度取り上げられていましたが、その後話題になることはなかったのです。しかし、2007年頃から新しい広報担当者が「近大マグロ」の広報的価値を見直し、宣伝をかけていった結果、今のような認知度を獲得したのです。

Googleトレンドで「近大マグロ」をみても、検索が多くなっているのは最近です。

また、近大はコメンテーターブックを発行しています。これも、大学教授がどういう専門分野を持っており、メディアからの取材に答えられるかをいつでもメディア関係者に理解してもらえるための取り組みだそうです。

そうやって大学の認知度を高める仕組みを設けています。

 

大学というのは、ひとつの硬直的な市場で、今後の展開はとても難しくなります。積極的に投資をして、魅力と規模を追求できる大学が生き残っていくのでしょう。(近大も学部や施設を拡大させています。)

企業でも、硬直的になってしまっている自社のイメージをどう変えていくか、を考えてみるのは重要なんじゃないでしょうか。

あー近大マグロ、食べにいきたい。