オープンガバメントが達成すべき本当の目的

地方自治職員研修の増刊として、自治体イノベーションに関する特集が記載されていました。

 

いろいろな記事が記載されているのですが、特に気になったのは「オープンガバメント」に対する考え方です。アメリカやヨーロッパを中心にしてオープンガバメントに関する動きが拡大していますが、欧米と日本では公共に対する考え方や社会に根付いている価値観が異なるので、オープンガバメントの中身だけ導入してきても難しいかもしれない、ということです。

 

違うのは「住民参加」に関する意識

欧米と日本で何が違うのかといえば、「住民参加」に関する意識です。欧米は民主主義として住民の権利を「勝ち取ってきた」という意識が根底にあり、できるだけ自分たちで政治に参加するという考え方が神道しています。

なので、FixMyStreetなど自分たちで行政運営に参画するようなサービスが登場するわけです。

一方で、日本は「行政に頼るもの」という考えの方が強く、住民の参加は「意思決定まで」という感じです。具体的に住民参加を高める、ということは住民側の「やることが増える」という結果にもつながります。それを肯定的に捉えるか否定的に捉えるか、ということではないでしょうか。

これを書きながら、少し前にあった千葉市長のTwitterでのやり取りを思い出しました。

隣の家の蜂の巣は誰が駆除すべきか? 〜千葉市長と市民の討論〜 – Togetter

ちょうど最近見たTEDの動画では、若者の政治参加が必要だと説いていました。いかに人々に政治参加の機会を作るのか、が重要な視点になってくるのでしょう。

 

 

それは、別の記事でも触れられています。

地域の行政は全て役所の役割として一方的に任せてしまうと役所に対する声の大きい人の意見だけが通ったり、受益者としての市民の権利意識が強くなりがちで、結果的に不平等であったり高コストな社会を生み出しやすいといった弊害が出てきます。これからの日本にはリタイアした人も、現役の人も、社会におけるそれぞれの立場から、声の大小ではなく、オープンデータという客観的な事実に基づいて、自分の住む地域の行政をウォッチし、意見し、参加すべきです。他の誰でもない、自分自身が参加意識を持つことが必要です。

オープンガバメントのキモは地域再生 | オープンデータとオープンガバメントを推進する Open Knowledge Foundation Japan

 

オープンガバメントは産業振興やコスト削減、透明性の向上が中心に語られることが多い気がしますが、本質的には民主主義の仕組みとしてのレベルアップを求められている気がします。

地方と都市で広がるデジタルデバイド

「インターネットは都市部と地方の格差を縮めたか – グダちゃん日報」を読みました。

都市と地方でデジタルデバイドは歴然と存在しており、経済的にも文化的にも違いを生んでいる、というものです。今更デジタルデバイドかよ?という感じもします。実際、Googleトレンドでみると明らかにデジタルデバイドは話題にならなくなっているわけで。

デジタルデバイド

 

都市と地方のデジタルデバイドは確かに存在する

まず試しに、自分のブログの訪問者の地域を調べてみたところ、全体の3分の1は東京都。。。そして、だいぶ離れて大阪、神奈川、愛知、埼玉、福岡、千葉と続きます。何となく都市部で人口が多いところからのアクセスが多くなっていました。人口比率で考えれば当然ですが。

一方で、「IT・情報・通信|新・都道府県別統計とランキングで見る県民性 [とどラン]」で見ると、明らかに都市部と呼ばれる県は各種で高い数値を示しており、地方に行くほど数値は低くなっています。

インターネットそのものは格差を縮める可能性を持っていますが、ICTを使いこなすためにはリテラシーと呼ばれる類の知識が必要です。一方で総務省の調査では、年齢の高さや所得の低さがデジタルデバイドを生んでいる、となっており、所得の高い人の方がITリテラシーを身に着けやすい状況にあると推測されます。

www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/pdf/n2020000.pdf

これが意味するところは、富めるところに富が集中する、という都市と地方の経済格差を強化している可能性がある、ということだと思います。

 

どうすればデジタルデバイドは解消されるか

スマートフォンやタブレット端末の普及は、デジタルデバイトの解消につながるのだと言われてきました。この記事で書かれているように。

タブレットPCとスマートフォンで社会はきっと変わる(大西宏) – BLOGOS(ブロゴス)

確かにスマートフォンの普及率は2013年3月時点ではまだ4割程度ですし、今後一層の普及に少し期待はしていますが、問題はもっと深くて、端末や環境だけで解消するのではない気がしています。

【知ってるつもり?】2013年3月のスマホの普及状況をちゃんと把握しよう! | スマートフォンECラボ

総務省の調査では、所得格差が原因でITリテラシーが育成されなかったり、ITの利用環境が整わないことが多いようです。となると、その点を解消する施策が必要になるのですが、全体として行政にはお金や人材の面で余裕がなくなっているところも多く、手がまわらないのかもしれません。あるいは、デジタルデバイドそのものが認識されていないのではないか、と。

マイクロソフトなどIT系の企業は、こういうデジタルデバイド解消の取組を行っていたりします。IT市場が広がることで、自分たちのビジネスチャンスも増えるので。こういう民間資本を投入する仕組みが必要になる気がしますね。

出生率アップにまでつながったMSのデジタルデバイド解消プログラム – ZDNet Japan

 

オープンデータ、オープンガバメントなど、行政機関もITを中心に開かれようとする動きがあります。市民レベルで考えたときに、どの程度ITの恩恵を受けられる人がいるのか、という視点は、再度議論として盛り上がったりしないものですかね。

ITプロフェッショナルは社会価値イノベーションを巻き起こせ

NTTデータと野村総研の共著ということで、業界に関わる人間としては読んでおくべきだろうと思いっ購入しました。読んだ感想は、「IT業界の窮状をどう打破するのか」をとても考えさせられました。IT産業自体は成長を続けていますが、3Kに代表されるような、あまり恵まれた職業というイメージはなさそうです。

 

本書の中で登場するのですが、受託系はスマイルカーブの典型で、SEの単価がどんどん下がってしまっています。電機産業や建設業界など市場として苦戦しているところは、同じような問題を抱えていますね。

 

必要なのはビジネスモデルごとの転換

これに対しては、マインドの変換と社会制度の移行が必要なんじゃないかと思います。本書の一節を引用しますが、

日本企業が得意とする業務改革は、TPSに代表されるように現場を改善していくことだ。既存の仕組みを微調整しながら、生産性を上げていく改革手法である。その一方で、組織やビジネスモデルを大きく変えるような改革には、なかなか踏み込めない。これに対して、欧米の先進企業は経営環境が変化すると、組織やビジネスモデルを変革することを厭わない。

ということで、ビジネスモデルが陳腐化してしまっても、日本はなかなか転換できないという問題が指摘されています。これは、マインドとしてやはり定量化しやすい部分を頑張ってしまうという点もあると思います。わかりやすいですし。一方で、雇用環境が影響する部分もあるでしょう。解雇しづらい企業側の立場からすると、思い切って人を削ったり配置転換することが難しくなります。このあたりは、以前日本経済を考える際に、労働環境に問題があるのではないかと書きました。

日本の景気は賃金が決める | Synapse Diary
アベノミクスで日本はどこへ行く? | Synapse Diary

 

IT業界はどこを目指すべきか

IT業界においては、特に受託の場合はビジネスモデル的に限界があると思われます。これを打開するためのアプローチとして、アンゾフのマトリックスで考えてみます。

アンゾフのマトリックス

わかりやすいのは、エリアを広げて同じソリューションで稼ぐこと(③)。ただ、人はそんなに簡単に場所を変えることが難しい面もありますし、ソリューション自体にそれほど革新性や排他性がなければ、新しい場所にも同業他社がいるので、進出は難しいかもしれません。次に考えられるのは、既存市場の中で新しいソリューションを生み出すこと(②)。本書もここをイメージして書かれています。潜在化された顧客ニーズを捉え、解決策を提案していく形です。

また、財務上公共機関が社会的問題解決を担うことが難しくなってきている現状では、CSRの考えを発展させて、企業が社会問題解決の一旦を担うことを期待されている、ということが書かれており、とても印象的なメッセージでした。

 

ICT投資を呼び起こす解決策が必要

ICT投資は経済発展に対して寄与する可能性があるジャンルなのですが、アメリカと比べると日本はあまり伸びていません。

企業が付加価値を感じていない結果として、情報化投資は伸びなくなりました。特に日本の民間情報化投資は、ここ20年ほど伸び悩んでいるのです。1995年を基準にすると、5倍近くに増えている米国に対して、日本は2倍にも達していません。効果が表れれば「また投資をしよう」と経営者は考えるはずです。その効果を十分に実現できていないとすれば、私たちはITサービス産業の一員として責任を感じなければなりません。

ICT投資は、作業効率などの生産性を重視したバックエンド系の投資は一回りしていて、マーケティングやUI・UXなど定量的な指標では計測しづらいフロントエンドの投資が中心になっています。そういう中で、投資を呼び起こすようなソリューションが生み出せていないというのは、寂しい限りです。

 

本書の中に具体的な解決策があるわけではないですが、問題意識やアプローチについては賛同できます。

ITプロフェッショナルは社会価値イノベーションを巻き起こせ――社会価値を創造する“デザイン型人材”の時代へ

TwitterのAPI1.0終了は、Twitterの今後の戦略の布石

WordPressでWordTwitというプラグインを使っていて、ここ数日急に利用できなくなりました。原因は、TwitterのAPIで旧バージョン(1.0)の利用ができなくなったためです。

【スマホヘッドライン】Twitter API 1.0の提供が遂に終了!うまくツイッターできない人は要確認! -2013/06/12- » アンドロイド用アプリが見つかる!スマホ情報ならオクトバ

 

で、WordTwitはどうやらバージョン1.0で稼働していたので、動かなくなってしまったということでした。その後プラグインがバージョンアップしましたが、設定を引き継いでくれるわけではなく、再度設定しなおさないといけないということで、この記事を見ながら再度設定しなおした次第です。

ブログ記事投稿時にTwitterで自動ツイートする方法 – WordTwitの使い方 | WordPressのプラグイン | WP SEOブログ

 

確か、当初の予告は3月ぐらいには終了するようになっていたはずが、その後5月とアナウンスされ、それも何となく延期されていたようです。

TwitterからのRSS取得が2013年3月5日で打ち切りへ – GIGAZINE

TwitterがAPI 1.0の完全廃止日をアナウンス アップデートしてない人は急げ!

 

サードパーティ開発者は終了になっていろいろ泣いているようですが、数日経ってWordTwitのように対応を進めているようです。人間、やっぱり追い詰められないと動かない、ということでしょうかね。あるいは切り替わってみないとちゃんと動作するかわからない、というようなこともあったのかもしれません。

ちなみに、過去に自分で作ったYahoo!Pipesでも、Twitterについては取得できなくなっているようです。残念。

Twitter、はてブ、Yahoo知恵袋からキーワードを元にRSSを吐くYahoo Pipesをつくった | Synapse Diary

 

TwitterのAPI変更は、恐らく囲い込みの強化なんだと思います。サービス開始からこれまで、APIを積極的に解放することで多様なサービスを登場させ、生態系を拡大してきたTwitterですが、利用ユーザー数の拡大という成長期から、マネタイズを確立させる時期に入っており、いろんなサービスを内包したり内製する動きが強くなっているように見えます。最近、アクセス解析機能を投入したりもしてますね。

この記事にあるように、Twitterは、GoogleやFacebookと同じように、広告収入モデルです。なので、自社サービスに直接誘導する必要があります。Facebookと違って開放的な施策によって拡大してきたTwitterも転換点かな、と勝手に思っています。

Twitter Revenue to Hit $400 Million By 2013 [STUDY]

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容<

最近、めっきりネット選挙界隈が賑やか。選挙活動にインターネットが利用できるようになったということで、選挙に対する効果よりも、新しい稼ぎぶちの対象が増えた、というニュースの方が多いような気がします。気のせいでしょうか。

本書を読むと、ネット選挙で言われているような、若者の投票率向上、選挙活動費用の低減による若者の立候補数増加などが誤りというか、ずれた論点であることがわかります。

 

 

インターネットは候補者のメディア駆使能力を増幅させる

本書のテーマのひとつは、インターネットを利用した選挙活動は、これまでの公職選挙法の考え方からすると異質なものだ、ということです。

抽象的だが、日本の選挙制度を規定する公職選挙法は、資金力をはじめさまざまな差異が存在する日常の生活世界で選挙を行うのではなく、半ば人為的に、ビラの枚数にさえ制限をかけながら、均質で公平な政治環境を選挙運動期間中形成しようとする。つまり同じ条件のもとで候補者同士が競うことを企図しているのだ。各候補者が極力同じ道具を同じように用いて支持を集めるという選挙のあり方が要請されている。 他方、アメリカ型の選挙制度は総力戦の様相を呈している。ルールは最小限に、ありとあらゆる手段で競うというものである。もちろん、インターネットのような新しい技術がでてきたときにも、自由な利用が許される。そこには後に述べるように合衆国憲法にまで遡ることのできる、言論の自由を擁護する理念がある。

そして、インターネットは捉え方としてはメディアの一つであり、伝達能力や知名度などが増幅される可能性が高いと考えられます。有名な人は一層有名になり、メディアを駆使する力が高い人は一層高くなる、ということです。

 

政策に関する情報がインターネット上に増える

選挙活動にインターネットが使われるようになると何が変わるのか、といえば、政策に関する考え方や情報が増えていくことだと思うんですよね。そして、インターネット上で政策を読む人というのは、おそらく複数候補者の政策を比較する、ということも行うと思います。

すると、候補者は政策に関する比較にさらされるので、政策がより具体的で、根拠のある主張が勝っていく、ということが予想されます。また、過去の言動との整合性なども問われることになるんじゃないでしょうか。

政策を比較する、というのは考えてみると結構難しい行為で、政策軸が必ずしも一致するとは限らないので、余計混乱するかもしれません。ただ、政策に関する情報が増えて、多少なりとも比較にさらされることで、スローガン的な主張は排除されて、根拠となる情報や考え方が表明されるということは、政治にとってプラスだと思うのです。

そうやって情報が増えることで、全体として情報の非対称性は解消されるんじゃないでしょうか。ただ、それが抜本的に政治に大きなインパクトを与えるのか、といえばそれは結構疑問だったりしますが。まさに、こういうことを長期的に進めていくための布石だと思います。

ネット選挙はあくまで政策技術に過ぎない。私たちが本質的に求めているのは、政治の透明化であり、政治(家)と国民の距離の短縮、政治家の政策立案の活性化ではないか。

それ以外にも、SNSで重要なのは双方向性だが十分使いこなせているのか、という検証や、YahooやGoogleで蓄積される検索データが、「人気投票」として公職選挙法違反になってしまうのではないか、などネット選挙に関する様々な論点が提起されている。

 

個人的には、短期的に何か大きく変化を起こすものではなく、長期的に情報が増えて政策立案が活性化していくことを、期待とともに予想しています。

ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容

Google Fiberが実現する新しい世界の実例

以前Google Fiberについての記事を書きましたが、英語版のGizmodeに、Google Fiberによる取り組み例が掲載されていました。

「Google Fiber」がアメリカで拡大中。なぜGoogleがネットワーク網を整備するのか | Synapse Diary

病気で外出できなくなった少年のために、カンザスシティの屋内の小さな野球場を設置して、その小さな野球場からボールを投げると、オークランドの野球場でロボットが代わりにボールを投げる、という取り組みです。

詳細は、下記の記事を動画をみてください。

Google Fiber Helped a Sick Boy Throw a Baseball Pitch with Robots

 

今回の事例が、内容自体に普遍性があるとは思えないですが、考え方としては面白いと思います。Google Fiberによってネットワーク量が増大するということは、大量のデータをリアルタイムに伝達することができるようになると思われます。

今回の事例でも、ボールを投げた角度や押し出されたスピードなど、複雑な情報が送られているので、Google Fiberでもリアルタイム性を実現できた、ということなんですかね。本当のところはわからないですけども。

だけど、これからはPCやモバイルだけでなくて、Internet of Thingsとしていろんなものがネットワークにつながり、複雑かつ大量のデータが、即時に伝達される社会になっていくことになりそうです。

 

どちらかというと、物理的なスピードが求められる世界が、これから開拓されていくんですかね。遠隔でも正確かつリアルタイムに物を動かしたり操作したり。

「Google Fiber」がアメリカで拡大中。なぜGoogleがネットワーク網を整備するのか

[scshot url=”http://fiber.google.com/about/”]

Googleが光ファイバー網を拡大というニュースがありました。
The Google Perspective: Gigabit Internet in Local Governments

Googleは「Google Fiber」として、2年前からインターネット網の提供サービスを行っています。最初はカンザスシティで展開されており、Wikipediaによれば人口200万人ぐらいなので、「いち地方都市」ぐらいの規模感になるそうです。
1GbpsのISP事業「Google Fiber」、ユタ州第3の都市へ~全米展開が本格化か -INTERNET Watch

で、最近そのエリアを拡大し始めたので、Googleが本格的に光ファイバー網を広げていくんじゃないのか?と噂されています。

 

冒頭に紹介した記事で、なぜGoogleが光ファイバー網を整備するかの理由が書いてあるわけですが、簡単に言ってしまえば、インターネットのサービス提供には、ネット網というインフラの制限が最終的には問題になるためです。

インターネット黎明期にソフトバンクがYahoo!BBでブロードバンドを広げた結果、インターネット企業の台頭が広がったように、ネットワークインフラがインターネット上のサービスを向上させることになります。

ちなみに、Google Fiberは上下1Gbpsらしいのですが、1Gbpsってどれぐらい速いのか?というと、Wikipediaによると光ファイバー網の主流は100Mbpsとのことなので、100倍ぐらいは速いことになります。
FTTH – Wikipedia

 

これで思い出すのは、数年前に流行った「光の道」構想です。僕の浅はかな理解では、当時の総務大臣から「光の道」構想が提示され、ソフトバンクが賛同を示して宣伝していましたが、日本のIT戦略の課題はインフラではなく利活用、というアンチテーゼが登場して空転してしまった感じです。

Google Fiberも何か目立った結果を出しているわけではなく、先にインフラを整備することで、ギガビットに対応した新しいサービスを生み出せる土壌を整えたってところですかね。卵が先か、鶏が先か、ではないですが、日本でも数年後にはまたネットワークのスペック向上が議論になる気がしました。

「アスキークラウド」を読んでクラウドビジネスのトレンドを把握する

ふと本屋に立ち寄ったときに、内容に興味が湧いて衝動買いした雑誌。クラウドビジネスを軸にした特集・時事ネタをまとめていて、クラウド系は技術寄りだったり、広くビジネスの中で取り上げられることはあったけど、クラウドとビジネスを直接結びつけた雑誌は新しいんじゃないでしょうか。

詳細なぜひ公式サイトから目次を確認して欲しいのだけれど、これの何が素晴らしいかといえば、IT周りの技術とビジネスのトレンドがわかること。
ASCII.jp:アスキークラウド 最新号(4月24日発売)

 

クラウド系のサービスというのは普及のスピードとインパクトが大きいので、今後何が起こるのか想像するっていうのは非常に重要だと思います。

例えば、「アップル陰り始めたアップル神話に最強のプロダクト集団が打つ次なる一手アップル銀行誕生のシナリオ」で書かれているのは、アップルが次にNFCを軸にした電子決裁サービスを狙っているという話で、GoogleもWalletを展開しており、ここの辺りが普及してくるんじゃないかと想像されます。

あるいは、Amazonの影響を受けたコンビニや家電などの小売業の今後とか。これまでは何となく勝てていた小売業は、明確にAmazonなどのネット小売と差別化する必要が出てきていて、工夫が生まれてきています。もう戦いを避けることはできない状況なんでしょう。

また、LINEなどSNSの普及と、マーケティングとの関係とか。このあたりは本当隆盛衰退が激しく、マーケティング戦略も発展しては見直され、新しい手法やツールが登場しています。今は、複数のSNSも含めたチャネルを統合して、シームレスな顧客体験を提供することがトレンドだと言われています。

 

今回買ったのは準備号という位置づけらしく、7月から月刊化されるそうで。余り深い内容というよりは、トレンドをキャッチするという点で良い情報源になるでしょう。

Flickrのサービス内容が大きく変更されました

[browser-shot url=”http://www.flickr.com/” width=”600″ height=”450″]

今日Flickrからメールがきていて知りましたが、Flickrのサービス内容が大きくアップグレードされました。僕はProアカウントを購入してたんだけど、アカウントの種類が変わったり、サービス内容が見直されたようで、ビジネスモデルのレベルで変更があったようです。

 

アカウントの種類

これまでのFlickrはFreeとProの2種類でしたが、今回の変更で3種類になったようです。

アカウントの種類内容
Free無料。容量は1テラバイトまで。広告表示。
Ad Free年間49.99$。広告非表示。
Doublr年間499.99$。容量は2テラバイトまで。広告非表示。

Flickr: Help: Free Accounts, Upgrading and Gifts

というわけで、既にProアカウントという考えはなくなりました。

 

この変更をどう考えれば良いか?

基本的に、料金の源泉は容量ではなく、広告の表示/非表示になったということです。ちなみに、1テラバイトあると、50万枚以上の写真に相当するそうで。
Flickr: Help: Free Accounts, Upgrading and Gifts

個人からみれば、有料になる理由は減ったんじゃないかと。まだあまり広告がどう表示されるのかわかっていないですが、あまりにもうざく感じなければ、有料になる人は減るんじゃないかという気がします。

Googleも写真などのデータ管理を15GBを無料で提供していたりするので、Flickrも競争性を打ち出さなければいけない状況で、Flickrの門戸を広げるという意味では、良い変更になったんじゃないかと思います。

 

Flickrのビジネスモデル

Flickrはデータ容量を中心とした有料モデルではなく、広告収入+料金徴収モデルに変更したといえます。どちらかというと、広告の比重が大きくなるのかな。

このあたりの記事から、ハードディスクの容量が劇的に低下しているのがわかります。
HDDの価格下落の傾向を調べてみたよ (2001年~2009年) – ぱらめでぃうす

一方で、世界でみてもネット広告のシェアは広告市場で伸び続けており、約2割のシェアがある。
ネット広告、世界でシェア2割に 12年は10兆円 :日本経済新聞

あとは、広告がどの程度マッチング効果があり、広告媒体としての価値があるか、ということにかかってくると思う。

 

Yahooに買収されてからあまり変わっていないと言われていたFlickrも、ついに新しい方向に進みだしたようで。ユーザーとしては良い方向に改善して欲しいもんです。

ヤフーがどのようにFlickrをダメにしたのか? スタートアップが大企業に買収されるということ : ギズモード・ジャパン

ミッション・クリティカルシステムがクラウドに乗る時代

驚いた。ミッション・クリティカルなシステムがクラウド(AWS)に搭載されたというニュースがあった。

クラウドサービスが脚光を浴びる中、ミッション・クリティカルなシステムについては難しいだろうという意見は結構あった。僕もそう思っていた。

ノーチラス・ テクノロジーズは、西鉄ストアの本部基幹システムを Asakusa Framework/Hadoopにて開発、ミッションクリティカルなシステムを アマゾン ウェブ サ―ビス上で本稼働開始 | NAUTILUS

「オンプレミス・システムの終わり」の始まり~AWSでのミッションクリティカルシステムの稼働 – 急がば回れ、選ぶなら近道

こういう「止まったら業務に大きな影響が出る」利用頻度が高いシステムは、自前で保持することが主流だ。それは今もそうだと思う。クラウドは、技術的には進歩しているしコストも安い反面、自由度は制限されるので使いづらかったり、万一止まった場合のバックアップの仕組みをどうやって構築するのか、という検討の問題もあったりで、重要なシステムに対しては躊躇されている。

ただ、今回のケースをみるといろいろ重要な示唆が含まれていると思う。

 

優秀なエンジニアによるレバレッジを効かせた収益構造

これは環境がクラウドだからできた、というのは確かにあります。クラウドは腕のよいエンジニアをとんでもない勢いでレバレッジさせるという好例だと思いました。エンタープライズ(社会インフラ系)経験の豊富なウィザード級のインフラ・エンジニアを2年もAWSに専属で突っ込んでおけば、十分化け物にはなります。そんな感じかと。・・・これが普通になるとインフラの指示待ち人材は完全に仕事がなくなりますね・・・

「オンプレミス・システムの終わり」の始まり~AWSでのミッションクリティカルシステムの稼働 – 急がば回れ、選ぶなら近道

エンジニアの生産性は結構差が生じているのは昔から言われていることだ。やはり人がやることなので。それを吸収するためにマニュアル化したり開発標準ツールを使ったりしてるんだけど、どういう部分だけじゃなくてこういうレバレッジの考えを持つべきだと思うんだよね。

 

ビジネスモデルの差が技術力に表れる

受託開発が人月単価で計算されて、「コスト」としてみなされるのに対して、AWSのようにエンジニアがインフラ基盤を構築して高い技術力を提供することは、収益を増やすことに直結する。「SIer」というビジネスモデルは米国では少ないとか、内製化に向かっているとか、受託開発は人をコストとして定めて金額要求するので生産性向上につながらない、とかいろいろ言われてきた。

こういう業界構造として存在する部分が、技術力の差として表れているんじゃないかという気がしました。つまり、技術力はそういう「結果」であり、どういうビジネスモデルで市場で勝負しているかが先にあるんじゃなかと。AWSはインフラを「サービス化」して、パイを広げながら自社コストを抑制するモデルを創りだしたし。

 

ミッション・クリティカルなシステムがバンバン今後も移行されていく、とは思えないけど、事例は増えていくんじゃなかろうか。クラウドサービスで大規模障害でも発生しない限りは。