アベノミクスで日本はどこへ行く?

内容は、先日読んだ「アメリカの世界戦略に乗って、日本経済は大復活する!」と重なる部分が結構ある。最近経済をちゃんと勉強しようと思っているんだけど、この本も今起こっている事象を理論と合わせて説明してくれる点で、非常に理解が深まって良い感じ。これで200円とか。

アベノミクスはマーケティングの勝利

今株が上がっているのも、円安が進んでいるのも、アベノミクスのおかげとは言いづらい。

株高の原因は、去年秋からの急激な円安です。これは安倍さんのおかげじゃなくて、去年8月にECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁が、南欧諸国の国債を無制限に買って支援すると表明したのがきっかけで、9月ごろからユーロが上がり始め、続いてドルが上がり始めた。リスクを避けて円に逃避していたリスクオフの資金が、欧米に戻り始めたのが円安のきっかけです。

ただ、タイミングは非常に良かったし、マーケティング的勝利なんだろうな。「景気のキは気分のキ」といわれる通り、新しい情報が入るとそれが織り込んでマーケットは動く。それが実質的なものではなくても。

 

インフレは嬉しいことなんだろうか?

今、日本はインフレを目指していろいろ政策が行われている。本当にこれは嬉しい結果につながるんだろうか。

まず、「デフレが景気を悪くしている」というのは確かに疑問だ。デフレは結果に過ぎないし、日本は輸出大国ではなくなっているし、確実に世界は一物一価の方向に進んでいる。デフレが起こるのは必然的な流れとも言える。

興味深いのは、インフレが実質的な賃下げであること。

だから日本の労働者の賃金は高すぎるわけです。中国と差が縮まらないと競争力の差は縮まらない。だからそれをやるためには賃下げをすることが望ましいんだけど、賃下げというのは非常に難しいですから、インフレによって実質的に賃下げをする。そういうことによって雇用を増やすというのが、本当のインフレの狙いなんですね。

確かに世界中で物価が下がる一方で、名目賃金を下げるのは難しい面が伴う。そうであれば、インフレを起こすことで実質的な賃金を下げ、これにより国際競争力を強化する。理論的には確かに成り立つが、テレビのニュースなんかではこういう説明を見た覚えがないな。

本当の原因はどこにあるのか?

本の中で話はどんどん進んでいき、最後は労働市場に焦点が当てられる。これが非常に面白かった。

欧米では、産業別労組が賃上げ要求するのに対して、企業がそのコストを転嫁してインフレにし、高コストの労働者をレイオフする。その労働者が賃金の安い成長企業に転職する、という形で新興国との賃金格差が是正されてきました。

それに対して日本では、企業別労組が経営側と痛みを分かち合って賃下げする代わりに雇用を守るという形で単位労働コストを下げてきました。どっちが社会的コストが大きいかというと、欧米のほうが失業率も高くなる。日本は、少なくとも企業の中にいる社員は守られる。

つまり、日本は賃上げやベアを諦める代わりに、失業率を下げていた。ただ、マクロな目線でみれば、雇用を硬直化して、若年層や非正規雇用に転換されていたり、成長産業に人材が移動しないというデメリットも抱えている。

 

世界のトレンドは物価下落だ。そして、途上国の低賃金競争に勝っていくためには、付加価値の高い成長産業に人を配置していくための労働市場改革が必要になる。ああ、自分の頭がつながった感じ。

アベノミクスで日本はどこへ行く? (アゴラオリジナル)