上司から部下への権限委譲は勇気。それでみんなが幸せになる

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組織を円滑に動かすために管理者が考えることのひとつに、「権限委譲」があります。部下ができること、やるべきことは積極的に権限を委譲し、自分がやるべきことに専念するとともに、部下の成長を促します。

言葉で書くと簡単ですが、これが結構難しいのです。これまで見てきた人の中で、うまくできている人とそうでない人がいました。

 

仕事の内容に不安があるほど、自分でやってしまう

昔あるとき、部下が作った資料を確認しなければいけないときに、心理的に困ったことがありました。自分の経験や知識が不足しているせいかもしれませんが、資料をみても何が正しいのか自信がなくなってしまったのです。そうすると、結局自分でやってみないとわからない、と自分で調べ直したり、考えなおしたり、時には自分で資料を作ったりしていました。壮大な無駄です。

しかし、あるとき、「その資料が何を目的に作られているものなのか」をよく理解しないで確認しているので、「こんなこと書いて大丈夫だろうか。このグラフの書き方で伝わるかな。」など、いろいろ迷いが生じているのだと気づいたのです。

それに気づいてからは、作業を思い切って任せられるようになりました。細かい点を考えるのではなく、ビジネスとして達成させなければいけないところをちゃんと考えて、そこを外さないようにチームを動かしていけば良いのだと、と。

つまりは自分にとってわからないことが多すぎて、「自信」がなかったのです。そういう不安が、権限移譲を阻害します。

 

最後は上司の「勇気」が現場を変える

いろいろ理屈はあるのですが、最後は「任せる勇気」なのだと思います。どちらかというと、組織がどういう大きさであっても、それを管理する立場にある人は、「組織を効率的に動かし、成果を生み出しやすい環境をつくる」役目があります。

プロセスやルールを設計し、現場の「雰囲気」を作り、最後はミスをしても許し、リカバリーする覚悟を持つ。そういう勇気が、組織を変えていくのだと思っています。

 

上司も部下も幸せになる 「権限委譲」の実践法 : プレジデント(プレジデント社)

仕事を円滑に進めるために「責任範囲」を理解する

 

経営者やリーダーは孤独。苦しみや悩みをどう解決するか

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この本は、苦しいときの、経営の教科書として。

例えば、この本にはリストラについて書いてあります。別の本として「ヤバい経営学」では、リストラは組織を活性化させることにつながらないため、やらない方が良いと書いてあります。確かにそのとおりでしょう。ただ、やらずに済むならやらないと思うんですよ。そういう場合じゃないときだからこそ、リストラに踏み切らないといけないわけで。

この本では、以下のように指摘しています。

コンサルタントが書く経営書のほとんどは、成功した企業の平時の経営スタイルの研究を基にしていることに注意しなければならない。

組織が苦しいときに、経営者やリーダーはどう考え、どう振る舞うかを、具体的に教えてくれます。

 

著者であるベン・ホロウィッツは、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストとして有名な一人です。が、そこに至るまでにベンチャーを経営し、いくつもの苦難を乗り越えています。本書は、その経験とそこから導かれる示唆で構成されています。ベン・ホロウィッツの詳細はこのTech Crunchの記事が参考になります。

書評:ベン・ホロウィッツの『HARD THINGS 』―「戦時の組織のリーダー」の必読書 | TechCrunch Japan

実際の経験から導かれる内容だけあって、読めば読むほど味がある文章になっています。

 

経営書全般でみれば、主に組織管理のジャンルに分類されるんじゃないかと思います。組織をどう意識統一するか、評価をどう設計し、社内政治とどう立ち向かうか。苦しい外部環境と戦いつつ、組織をどう作り上げていくか、その中で経営者としてどう振る舞うかが事細かに描かれています。

経営者の成功談などは多く存在しますが、苦難とそれに伴う指南が書かれた本は、あまりないんじゃないでしょうか。

 

たくさんしびれる言葉があるのですが、これが一番好きです。

困難だが正しい決断をするたびに、人は少しずつ勇気を得る。逆に安易な間違った決断をするたびに、人は少しずつ臆病になっていく。それがCEOの決断なら、勇気ある企業と臆病な企業の差となる。

経営者は孤独だとよく言われますが、本当そうだと思います。その苦しみは、自分ひとりだけではなく、経営者やリーダーみんなが抱える共通の悩みだってことです。

忙しいけど結果が出ないあなたにおくる「エッセンシャル思考」

○○思考という本はたくさんありますが、このエッセンシャル思考はどちらかというと自己啓発寄りです。

自己啓発の大著「7つの習慣」とかAppleの思考を述べた「Think Simple」に通じるものがあるかな、と思いました。

 

現在は選択肢多すぎる。本当に大事なものにエネルギーを注ぎ込もう。

一言で言ってしまえば、そういうことです。ただ、これを実現するのは意外に難しい。その難しさをどう乗り越えるかが、本書には書かれています。

 

自分にとって本当に重要なことが何なのかがわからない

例えば、ワークライフバランスという言葉があります。働き始めたとき、この言葉が正直ピンときませんでした。仕事を精一杯頑張って、必要であれば休日も働いて、早く一人前の社会人になろうと思っていた時期でした。

でも、その後結婚して家族ができたときに、「あれ?猛烈に働くのは良いけど、家族との時間がないのになんで結婚したんだっけ?」ってふと思ったんですよね。自分にとって仕事ももちろん大切だけど、家族との時間も大切じゃないか。そのバランスを取ること=ワークライフバランスなんだって気づいた瞬間があったんですよ。

これは家族の例ですが、自分にとって何を大事にするか、何を優先するかが明確であれば、判断に迷うことは少なくなります。それが意外とできてないことが、エッセンシャル思考を実践する難しさのひとつにあります。

管理職は、優先順位を明確にして、チームがどこにエネルギーを注ぎ込むのかを定めなければいけません。「これとこれが同時にきたら、こっちを優先する」って決めるのが管理職です。そのためには、「なぜこっちを優先するのか?」がちゃんと自分の中に定まっていないといけないのです。

 

全てはトレードオフの関係にある。何かを選べば何かを捨てなければならない。

だんだん仕事が増えていったり、家族ができたから、自分の時間に対してトレードオフを強く意識するようになりました。だって時間がないし。何かをやろうと思ったら、何かを諦めないといけない。というか、たくさん有りすぎるので、優先順位を決めてやらないと重要なものがいつまでたっても片付かない。

自分で全てコントロールできれば良いのですが、例えば自分以外の誰かと関わる用事になると、途端に難しくなります。断ろうにも日程を変更しようにも相手の都合があるし。そういうときは、ちゃんと事前に断るなど、期待値を下げておく必要があります。

いろんな経営者の本を読むと、飲み会には行かない、あるいは一次会で帰るって書いてる人が結構いました。勉強に集中したい時期は、付き合いの飲み会は一次会で帰っていました。人との関係も大事にしたいですが、二次会・三次会までいくと、勉強の時間を確保できなくなるので。そうやってどこかで折り合いを付けないといけないと思いますし、いろんなこともちゃんと自分で理由をつけてはっきり断っていくと、周りの人も別に何も言わないもんだな、と実感しました。

 

大切なことをもっと長期的に考えて、いろんな判断を研ぎすませたいな、と思った一冊でした。

「批判をするなら対案を出せ」の本当の意味

さて今日は、最近書いていなかった組織論の話です。

簡単に言うと、「批判をするなら対案を出せ」というのが、どういう意味があるのかということを考えてみたいと思うのです。このあたりをうまく考えられていない事例がたくさんあったので、自分の考えをまとめておこうと思った次第です。

 

「批判をするなら対案を出せ」は正しいのか

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これを書こうと思ったのは、選挙もちょっと関係があるのですが、「あの政策はダメ」「この数字は現実的ではない」という批判が飛び交いますよね。それって、どうなんでしょうって思うことが多いのです。僕には。

で、僕の中でまず前提にあるのはこれです。

  • 批判だけして良いのは、対等な関係にない人だけ
  • 対等に問題を共有する人は、対案を出して抱えている問題の解決にコミットしなければいけない

組織でいえば、部下は批判だけしても良い場面があると思っています。対等ではないですし、経験が不足している場合もあるでしょう。もちろん対案出してもらう方がとっても良いのですが。

一方で、同じぐらいの責任を負っている人同士の議論であれば、批判だけではダメです。対案を出して、「自分ならこうする」というものがないと、問題の解消に至らないからです。

 

批判だけする人は、自分の責任を理解できていない

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批判だけする人に対しては、僕はそう解釈します。だから、組織に批判だけする人がいた場合、「ああ、この人は組織が抱えている問題を解消しよう、という責任を理解できてないんだな」と思ってみています。

だから、結局「自分の責任はどこにあるのか」を理解できていることが重要になるんですよね。

参考:仕事を円滑に進めるために「責任範囲」を理解する

自分の保身を考える人は責任範囲を小さくしがちですし、いろいろ言いたい人は他人の責任範囲にも口を出します。だから、組織がこじれることがあるわけですが。それぞれが適切に責任範囲を理解し、コミュニケーションができていれば、仕事もスムーズに進むんじゃないでしょうか。

 

こないだ知人と、「失敗を部下のせいにして、保身する人がいるが、それは自分の責任を理解していないからだ」という話になりました。管理責任というのは時に曖昧になって、都合良く解釈される場合もあります。普段から意識しましょう。

あと、「対案を出せ」っていうのも人を選んで言った方が良いですよ。

 

 

全然話が変わり、最近「プラマン」というプラスチック製万年筆を買いました。太字気味なのはちょっと気になりますが、書き味はちょっと癖になりそうです。書きやすいサインペンと考えれば、良いかもなと思いました。昔からある人気商品みたいですね。

ナレッジマネジメントを加速させる「場」のつくり方

最近、オックスフォード大学から「あと10年で消える職業」というのが発表され、注目を集めていました。

オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」702業種を徹底調査してわかった  | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]

コンピューターの進展によって、これまで人間が担っていた作業が機械に代わられてしまうというのが主旨になっています。そういう中で、人間はアイデアを創造し、付加価値を付けて仕事をしていかなければいけません。そして、そのために情報を素早く共有し、創造的なアイデアを事業に転換していくための組織はどう作るべきか、というのは新しい組織の課題になっています。

そんな中で、「知識経営のすすめ」という本の中で、ナレッジマネジメントの代表的なSECIモデルに従って、組織に知識を浸透させていくための「場」をつくる具体的な内容が書かれていました。

SECIモデルは、こんな感じです。

SECI

この各フェーズに応じた「場」の特徴を、ひとつずつ紹介していこうと思います。

 

「共同化」の場

「共同化」とは、誰かの暗黙知が別の誰かの暗黙知として伝達されることを指します。そのためには、明確な形ではなく、いろんな会話や情報の触れ方から、様々な情報を受け取れるような「場」が必要になります。

「知識経営のすすめ」では、以下の通り書かれています。

創発場顧客との接触の場、あるいは社内でのトップの歩き回り、休憩室や喫煙室での雑談、あるいは、アフターファイブのパーティなどが、そうした機能を果たす場合もあるでしょう。それは経験、思いなどの暗黙知を共有する場です。

昔から、「タバコ部屋で仕事は決まる」と言われることがあり、僕はタバコを吸いませんが、一時期真剣にいろんな人と雑談することを理由にスモーカーになろうか考えていました。それぐらい、雑談から生み出される意見交換、アイデアの創出は重要なわけです。

また、ヒューレット・パッカードは、経営者の歩き回りなどオープンなコミュニケーションを生み出す企業文化を作り出しました。これは、「MBWA(マネジメント・バイ・ウォーキング・アラウンド)」と呼ばれています。

参考:日本HP HPの歩み-1940年代

知識の共同化を促進するためには、このようなフラットで気軽なコミュニケーションを実現するための「場」を作ることが求められます。

 

「表出化」の場

「表出化」とは、暗黙知から形式知へ転換するフェーズです。そのためには、各自が持っている暗黙知が柔軟な形で発想され、表現される場が重要になります。

「知識経営のすすめ」では、以下の通り書かれています。

対話場積極的なプロジェクト・チームの「場」です。概念創造の場です。各自が暗黙知を対話をつうじて言語化・概念化していくための場です。また、対話場には、きちんとしたミッションがなければなりません。ここでいう対話は、お喋り、あるいは逆に、理詰めのディベートではなく、建設的対話、ディスカッションです。

ここで重要なのは、言語化・概念化です。それこそが機械ではなく人間ならではの強みです。そのためには、アイデアを生み出しやすい環境を作り出すのが有効です。雑談ではなく、でもかしこまった会議でもない。その中間のような、フラットに意見を出し合える場です。

ブレインストーミング、ワールドカフェなど、生産的かつ創造的にアイデアを生み出せる会議方法があります。

 

「連結化」の場

「連結化」は、形式知が整理され、組み合わされるフェーズです。そのためには、各自が持っている形式知を集約できる場が必要になります。

「知識経営のすすめ」では、以下の通り書かれています。

典型的にはサイバー・スペース、ヴァーチャル・スペース(仮想空間)上の場、たとえばイントラネットやグループウェアですが、そこで形式知を相互に移転、共有、編集、構築する機能が重要なエッセンスになります。

具体的に、ICTを使うことが指されています。確かにイントラネットやグループウェアなど、ICT技術や形式知となった情報を整理、蓄積しているのに向いていると思います。

ひとつ付け加えるのであれば、最近は社内SNSが活発になっており、新しいコミュニケーションや情報共有の動きが生まれています。Yammerなどのチャットツールを活用することで、よりフランクに情報を共有したり、ネット上で議論することも可能です。「○○さん、お疲れ様です」からはじまる決まり文句を省略したり、スレッドに気軽に書き込む、という行為によって、情報を共有するハードルはぐんと下がっていると思います。

 

「内面化」の場

「内面化」は、形式知を暗黙知へ転換するフェーズです。形となった知識を、本当の意味で人に理解してもらい、新たな知識習得を促すことが重要になります。

「知識経営のすすめ」では、以下の通り書かれています。

実践場たとえば学習の場、あるいは最近重視されてきた企業大学(コーポレート・ユニバーシティ)のような研修のための場といった制度的なものが含まれます。また、ビデオ会議室やプレゼンテーションルームといった物理的な場もあれば、ネットワーク教室のように物理的・仮想的の混合した場もあるでしょう。

形式知を改めて研修しなければいけないのは、文脈を含めて理解してもらう必要があるからだと思っています。知識は断片的にみれば「情報」ですが、その背景や業務における位置付けなどの「文脈」を理解すると、本当の意味で使える知識になっていきます。そういうのを伝えるのに、文章や画像などの情報だけでは限界があり、人が伝えるのがいまだに有効だからだと思っています。

ただ、上記にも書いてある通り、ビデオ会議、ネットワーク会議など、人が伝達するにしても効率的に行えるICT技術は実用レベルになっています。東進衛星予備校のビジネスモデルなんかもまさに、少数のスーパー教師が効率的に多数の生徒に知識を伝達する仕組みを構築していてすごいな、と感心します。

 

4つのパターンごとに必要な「場」を整理してきました。目的に応じて、情報が集まり伝達するスポットをつくることは、ナレッジマネジメントを推進するリーダーに求められます。僕がこれを整理した理由は、実際の組織の中で、これらに該当するような場がどの程度作られているのかを考えてみたかったからです。個人的には、新しいヒントが見えました。

 

非正規雇用比率が高い業界ほど生産性が低いという現実

前回のJINSの記事を書いているときに調べていて面白いと思ったのですが、ちょっと違うネタなので記事を分けて、書こうと思います。

 

非正規雇用が多い業界ほど、生産性が低い?

非正規雇用というのは、右肩上がりで上昇してきていて、2014年では37.9%が非正規雇用の従業員だそうです。

で、JINSに関する記事を書いていたときに、「小売業や飲食業は非正規雇用が多いイメージがあるけど、そういう統計データあるのかな」と思って調べてみたら、ちゃんとありました。厚労省の資料に。

それで、業界別のデータだけでなく、それと生産性との関係がグラフで示されていたんですね。それが以下です。

業界別の非正規雇用率と生産性の関係

引用:第4回 日本の「稼ぐ力」創出研究会 雇用システム改革 事務局説明資料(PDF)

恐らく、BtoC系のビジネスモデルでは、季節変動が大きく発生してしまうため、非正規雇用による柔軟な労働形態が合理的になっているんだと推測します。

ただ、労働条件が正規と非正規で異なることがあり、それが生産性に違うを生んでいるということなんでしょうかね。

 

それが正しいとすると、ユニクロやスタバなど様々な企業が正社員化、雇用の多様化を行っています。それが、やはり自らの生産性向上に寄与すると判断しているのだと思われます。

 

労働市場改革が必要だと随分前から言われていますが、もっと多様な条件で働けるようになると、様々な人が労働市場に参画できるようになるし、全体で生産性も上がるんじゃないでしょうかね。

現代人はIQが向上しているが、政治力が衰えている

なぜ時代を経て、人々のIQが向上しているのか。非常に興味深いTED Talkでした。

 

要約すると、次のような感じになると思います。

  • 人々は論理的で抽象的概念を高めてきた。
  • 一方で、情緒などを必要とする政治力は衰えている。
  • これらを改めるに、歴史を勉強しよう。

動画の内容は、最近読んだ「自分でつくるセーフティネット: 生存戦略としてのIT入門」と共通する点があります。

安心を得るために読む。自分でつくるセーフティネット: 生存戦略としてのIT入門

本書では「情」の世界が弱くなっているんじゃないか、というところから論旨が展開されていきます。

 

というわけで、過去から学びましょうということですね。

歴史を学習し、政治を考えていくことは重要だと思います。歴史書をもっと読もうかな、と思いました。とりあえず、司馬遼太郎から。

 

知識創造を生み出すために社内のコミュニケーションを見直す

今日は、ナレッジマネジメントに関連したコミュニケーションの話です。今、一橋ビジネスレビューでナレッジマネジメントの特集号を読んでいます。

 

少し古いものなのですが、知識経営の大家・野中郁次郎さんをはじめ、知識経営に関する複数の論文が掲載されており、ナレッジマネジメントを考える上では刺激的な特集になっています。

 

イノベーションを生み出すためのコミュニケーション

野中さんの名著「知識創造企業 」では、「ミドル・アップダウン」という組織の考え方が提唱されました。これは、中間管理層が、上級管理者のビジョンを現場に適用できるよう「変換」するとともに、現場を巻き込んで業務を遂行していく、という意味であり、中間管理職が組織のハブとなって知識創造を起こしていくことを説明しています。

そして、中間層をハブとしつつ、「集賢知」を形成する必要がある、とこの特集に掲載されている論文で野中さんは説いています。何やら難しい言葉になっていますが、大雑把に「集合知」を読み替えても良いと思います。厳密には違いますけど。

で、その「集賢知」を形成するために必要なことも書かれているのですが、その中に「社内ソーシャル・メディアの活用」が書かれていました。一部を引用すると、

社内ソーシャル・メディアは、発 信者情報を明らかにしながらハンドルネームを使うことで、内容の信頼性を確保しつつ、発信への抵抗を少なくできる。また、発信された情報や知識を蓄積・データ化し、検索機能によって再利用が容易にでき、情報や知識 の共有、フィードバックや転送によりコミュニティが形 成されるという特長を持っている。

ということで、社内SNSの優位性が描かれています。SNSはコミュニケーションのハードルを低下させること、時間軸でコミュニケーションを追うことで人に対する信頼性が増すなど、ポジティブな効果が存在します(もちろん万能ではありませんが)。そういうものを作り出すことで、アイデア・知恵を引き出し、組織の中で交流することで、イノベーションを生み出すきっかけになることに注目しているのだと思います。

 

メールはもう古いコミュニケーションツールになっている

もう随分前からではありますが、「メールは古い」という言われてきています。SNSが台頭したり、メッセンジャーが流行するなど、ツールがたくさん登場してきており、コミュニケーションの方法が多様化しているのが理由です。

メールで「○○様、お疲れ様です」と始まる文章は、堅苦しさ・面倒臭さを生み出しています。メッセンジャーなどのように、気軽にダイレクトにコミュニケーションを行える方法が登場すれば、メールに置き換わるのも当然といえます。

実際社内SNSとして、Yammerをはじめとして様々なサービスが登場してきています。

IT担当者必見!『社内SNS』サービス まとめ – NAVER まとめ

また最近では、Slackなどコミュニケーションとデータ管理を統合したようなサービスも勢いを見せており、組織におけるコミュニケーション、そしてそこから発露するイノベーションについては、まだまだ成長の余地がありそうです。

SkypeやYammerよりも使いやすい!チーム向けコミュニケーションツール、Slackが超便利! — Medium

元Flickrの共同創業者がつくる社内コミュニケーションツールのSlack、4200万ドルを調達【ピックアップ】 – THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)

 

組織のコミュニケーションを「設計する」という発想

個人的には、組織の大小にかかわらず、「コミュニケーションを設計する」ことが重要だと思っています。どうやって情報を流すか。打合せ、メール、個別で口頭などいろいろ手段はあります。また、誰から誰へ流すのかという点も重要です。いろいろ発言しやすい「場」を形成する、ということも行います。

上述の通り、社内SNSや新しいコミュニケーションツールは、これまでにはないスムーズで効果的なコミュニケーションを生み出す可能性があります。自分たちの状況に応じて、適切なコミュニケーションツールを選択し、「組織のコミュニケーションを設計する」ことが、創造的な知識を作り出すために重要です。

おそらく、直近の課題は「組織内におけるリテラシーのばらつき」だと思います。Slackなどのツールを使いこなせる人がどれだけいるのか、というと結構疑問です。

ただ、セキュリティなどに配慮すれば、LINEやFacebookやそれに似たような、多くの人に馴染みのあるツールを利用して活性化させることも可能です。今後は、そういう視点で組織やそのコミュニケーションを形成していくことが、知識を創造できる強い組織としての優位性を獲得するでしょう。

 

 

 

この記事に興味を持たれた方には、こちらの記事を次に読まれるのがおすすめです。

https://synapse-diary.com/?p=3716

データ・ドリブンな組織をつくろう

最近、個人的な関心領域として「データ・ドリブン」があります。

不確実な時代では、まずは試し、その結果を素早く検証して改善していく経営が求められます。それを体系的に整理したのが「リーン・スタートアップ」です。

不確実性の高い現代で、リーンスタートアップをなぜ学ぶべきか

また、スマートフォンが爆発的に普及したことで、ITサービスが習慣的に使われるようになっています。それを利用して、ユーザーのデータを収集・分析し、よく使われるサービスにしていくフレームワークも生まれています。

習慣的に使うほど「ハマる」サービスの作り方

 

データ・ドリブンな組織が違いを生み出していく

例えばアマゾンは、自社のWebサイトで常に膨大な数のテストを実施していると言われています。様々なテストを行い、その結果を評価し、より良い結果を生むようにしています。Amazonで買い物していると気づきますが、しょっちゅうレイアウトやユーザーインターフェースが変わっていますよね。

つくづくアマゾンは本屋ではなくIT企業なんだと痛感しますが、こうやって常に膨大な数のテストを行い、素早く改善していれば、そりゃ作りっぱなしになっているようなWebサイトに比べれば強くなりますよね。

実際にそういう組織をつくり上げるためには、ある程度技術的な理解が必要になりますし、常にテストし改善するための人材確保と体制づくりが重要になります。A/Bテストでも、テストを設計し、実現方法を検討し、得られたデータを分析するスキルが必要です。また、経験や勘も重要ですが、データに基づいた判断を尊重することが、組織の考え方として根付いていることも「データ・ドリブン」」の条件になります。

そうやって考えると、自分の日々の作業や判断が、意外にデータに基づいて行われていない、あるいはもっとデータを活用できるはずなのに眠らせている状況に気づきます。

 

データ・ドリブンな企業はデータ収集も広げている

Amazonは、昔から自社の商品だけでなく「マーケットプレイス」で他社や個人も出品できるようにしています。これは、自社プラットフォームに自社以外の商品の購買データが集まってきます。それを分析し、新たな戦略に使っています。また、最近ではモバイル決済にも進出しましたが、これも中小企業などリアル販売のデータを収集し、活用することが目的に含まれています。

Googleはホテル検索やショップ認定などを行い、通常の検索だけでなく、決済データも取得できるようにしています。

Googleがホテル検索を提供する理由は?
Google認定ショップがECサイトの救世主になるのか

これらの企業は、自社以外にも積極的にデータを収集できる領域を広げ、自社サービスを拡大したり改善することを狙っているわけです。

そうやって考えると、データを活用できる企業は、どんどんデータ領域を広げています。そうなると、データを活用できない企業との差は開いていく一方でしょう。

 

ということで、僕はデータを活用し、経営に活かしていける組織こそ、今後必要なスキルだと思っています。ぜひデータ・ドリブンでいきましょう。

データ・ドリブンな組織を創るためのヒントは、この本に書かれています。

リーダーは組織に「安心」を作らなければいけない

最近、TEDを見ることを日課にしているのですが、久々にとても良いプレゼンを見ることができました。

なぜ優れたリーダーの元では安心を感じられるのか

 

人々に安心を与えるリーダーは組織を活性化させる

人々は、自分の身に安心が形成されると、他者と協力し、創造的に、意欲的に物事に取組むようになります。確かにそうですよね。自分の身に危険が迫っているとわかっていた場合、保身などの方にエネルギーを注力しますし、時には他者を裏切ったりもするかもしれません。

僕らが毎日食料を探したり育てたりしなくて良いのも、近所のスーパーで食料を買えるし、レストランでいつでも食事ができると思っているからです。なので、自分の仕事に集中することができます。

つまり、組織で仕事に集中させたいなら、部下の人たちが組織の運営上余計なことを心配しないよう、安心を与えてあげる必要があるのです。

 

上司と部下が対立したときに、部下に寄り添い、守ることができるか

安心を与えるリーダー、というと難しく感じるかもしれませんが、動画を見ながらあまり重く捉えるのではなく、「基本的に、部下を守るように思考し、行動すれば良いのだ」と感じました。

組織を運営するにあたっては、上司と部下で利害や意見が対立するときがあります。そのときにも、利己的な権力を振りかざすことなく、部下を守るためにはどうすれば良いか、それが組織全体の利害と対立しているのであれば、それをどう取り除くかを考えれば良いと思うのです。

 

こうやって大事なことを、簡潔に示してくれるプレゼンがあるので、TEDっていいなって思いますね。

 

ちなみに、この動画も大好きです。