組織を円滑に動かすために管理者が考えることのひとつに、「権限委譲」があります。部下ができること、やるべきことは積極的に権限を委譲し、自分がやるべきことに専念するとともに、部下の成長を促します。
言葉で書くと簡単ですが、これが結構難しいのです。これまで見てきた人の中で、うまくできている人とそうでない人がいました。
仕事の内容に不安があるほど、自分でやってしまう
昔あるとき、部下が作った資料を確認しなければいけないときに、心理的に困ったことがありました。自分の経験や知識が不足しているせいかもしれませんが、資料をみても何が正しいのか自信がなくなってしまったのです。そうすると、結局自分でやってみないとわからない、と自分で調べ直したり、考えなおしたり、時には自分で資料を作ったりしていました。壮大な無駄です。
しかし、あるとき、「その資料が何を目的に作られているものなのか」をよく理解しないで確認しているので、「こんなこと書いて大丈夫だろうか。このグラフの書き方で伝わるかな。」など、いろいろ迷いが生じているのだと気づいたのです。
それに気づいてからは、作業を思い切って任せられるようになりました。細かい点を考えるのではなく、ビジネスとして達成させなければいけないところをちゃんと考えて、そこを外さないようにチームを動かしていけば良いのだと、と。
つまりは自分にとってわからないことが多すぎて、「自信」がなかったのです。そういう不安が、権限移譲を阻害します。
最後は上司の「勇気」が現場を変える
いろいろ理屈はあるのですが、最後は「任せる勇気」なのだと思います。どちらかというと、組織がどういう大きさであっても、それを管理する立場にある人は、「組織を効率的に動かし、成果を生み出しやすい環境をつくる」役目があります。
プロセスやルールを設計し、現場の「雰囲気」を作り、最後はミスをしても許し、リカバリーする覚悟を持つ。そういう勇気が、組織を変えていくのだと思っています。
上司も部下も幸せになる 「権限委譲」の実践法 : プレジデント(プレジデント社)