こういう、新しいフレームワークは結構好きです。
スマートフォンなどのモバイルが隆盛な中で、「フックモデル」というモデルを提唱し、人々にいかに習慣的に使われるサービスを作り上げるかを分析したものです。
フックモデルとは、ユーザーの抱える問題を、習慣化された行動で解決するという体験をモデル化したものである。
なんとなくタイトルがチャラいですが、心理学的アプローチが組み込まれており、内容自体はストレートなものになっています。ただ、結構ライトなモデルなので本自体はさっくり読めます。
いかにして人の習慣は出来上がるのか
自分のことを振り返ってみてもそうなのですが、iPhoneは日々常習的に使っていますし、一日で数えきれないぐらい見ていると思います。また、iPhoneの中には複数のアプリが入っており、いくつかは日常的に使っており、すっかり自分の生活パターンの中に入り込んでいるものがあります。
つまり、そうやって人が日常的に使ってしまうサービスというのを、どうやって作り上げていくのかを解明したのがこのフックモデルなのです。
フックモデル自体は、トリガー・アクション・リワード・インベストメントの4段階に分けて整理されており、人が情報に気づき、行動し、何らかの報酬を受け取るなどの一連の流れを示しています。注目すべきは「インベストメント」のところで、人は自分が時間や労力を投資したものについては、愛着がわき、正当化する傾向にあることを踏まえて設けられているものです。
例えば、FacebookやTwitterなどのソーシャルサービスも、自分が投稿したり閲覧するのに時間を投資しています。そうなると、自分がサービス全体を正当化し好感を常態化させていくのです。IKEAモデルと紹介されていたのも面白い表現だなって思いました(自分で組み立てた方が、買った家具を特別に感じるという意味)。
また、人が行動に結びつける上で必要な要素を、「B=MAT」という数式で表現されていたのも、非常に記憶に残る面白い整理だなって思いました。Behavior(行動)は、Motivation(動機)とAbiliry(能力)とTrigger(トリガー)の全てが掛け合わさって実現する、ということを示しています。なので、動機を高める、行動しやすいようにする(能力を高める)、トリガーを適切に設ける、といったサービス設計が重要になってくることがわかります。
「リーンスタートアップ」との関係
本書は、フックモデルを説明するだけでなく、「どのようにしたらフックモデルを作り上げられるか」という構築までのアプローチも示しています。そこで踏襲されているのがリーンスタートアップです。
リーンスタートアップについては、こちらを参考にどうぞ。
不確実性の高い現代で、リーンスタートアップをなぜ学ぶべきか | Synapse Diary
簡単にいえば、リーンスタートアップのように「構築ー計測ー学習」のループを回し、サービスの精度を向上させていきます。それが「習慣テスト」と呼んでいるものです。
不確実性が高い現代で、リーンスタートアップは非常に有効なアプローチだと思っています。それはこのフックモデルでも変わりません。
スマートフォンは、「歩きスマホ」や「運転中のスマートフォン利用」など、生活に支障が出るほど常習性が高いデバイスになっています。それだけ、人を惹き付ける要素が大きいということです。この本で登場してくる事例は、何も全てが目新しいものばかりではありません。聖書アプリは聖書を単純に電子化したところから始まりましたし、Instagramも言うなれば写真を撮って共有するというシンプルなものです。ただ、そこに人々の課題や習慣と結びつくと、新しい常習性を生み出すことが可能になるのです。そういう可能性を持っているのが、スマートフォンとそれにまつわるサービスだと思います。
新しいサービスを設計する、という人であれば、この本を読んでフックモデルを理解しておくのは必然でしょう。