Think Simple

スティーブ・ジョブズが亡くなって早1年が経った。それでもAppleの時価総額は、今でも上昇し続けている。この結果は、ブランドはすぐに失墜するものではない、という考え方もできるし、Appleに根付いたカルチャーはすぐに廃れるほどのものではない、ということも言える。

著者が広告代理店出身なので、広告代理店の仕事の考え方として参考にしても良いと思うし、Appleやスティーブジョブズの裏話として読んでも楽しいと思う。iPhoneの名前が付けられる経緯も面白いし、スティーブジョブズが失敗することもあるんだという発見もある。ただ、それだけこの本を済ましてしまうのは勿体ない。

複雑なものをシンプルにするのは、とても難しい。それが実感できるのがこの本だ。たくさんのエッセンスが含まれているが、ここでは3つだけ挙げておこう。

 

無駄な選択肢は作るな

ひとつの製品に複数のパッケージ案を作ることを、スティーブジョブズが否定するエピソードが出てくる。複数案つくることはエネルギーが分散するし、時間がかかる。

僕も仕事で選択肢をよく作るし、他の人が作る選択肢もみる。だけど、本当に有効な選択肢はそんなに多くない。それでも作ってしまうのは、やはり迷いがある部分が大きいだろう。ひとつに絞り込むことは勇気が必要であり、複数の選択肢にしてしまう方がはるかに楽だから。

それでも、そうやってオプションを増やしていくことが、物事を複雑にしていく。

 

先送りするな

物事を未解決のまま残しておくと、人は先のことを考えるよりも、過去を振り返ることに多くの時間をかけてしまう。そこに複雑さが忍び込んでくるのだ。P.39

時間というのは、物事を複雑かさせる大きな要因になる。「今更このタイミングで言われても」という状況は、いろんな妥協を生んでいく。先送りしないということは、何でも今解決しておけということとイコールとは思わない。ただ、その時々で何が重要で、後回しして良いかどうかを決定することだと思う。それができず、何となく先送りすることが、後で悲劇を生む。

 

コミュニケーションは「管理」するな

きちんと気を配っていないと、正直さは計算にとって代わられ、関係ははぐくむものではなく、「管理」されるものになる。P.62

これは間違いない。クライアントと少し信頼関係がこじれると、お互いが牽制し合うようになる。疑い、計算し、保守的になる。これはほとんど良い結果を生んだ記憶がない。コミュニケーション設計は重要だと思うが、双方が育んでこそ簡潔でスムーズに仕事を進めることができる。

Apple関連の本を読むたびに、このCMをみたくなる。

このシンプルな白い装丁から繰り出される原理を噛み締めて、今日は寝る。

アメリカの自治体にOpen Dataのクラウドサービスを提供する「Socrata」

ホノルル市がOpen Data Portalを発表してた。

City Launches Open Data Portal

City Launches Open Data Portal

オープンデータ自体は、オバマ政権で登場したData.govから広がりをみせているが、少し触ってみた印象を書き留めておこう。

 

HPにアクセスすると、データセットの一覧が表示される。アクセス数も表示されている。データセットは53個ある。

City and County of Honolulu
[browser-shot url=”https://data.honolulu.gov/” width=”600″ height=”450″]

 

「City Spending」をクリックしたところ。恐らく各費目に応じた金額が一覧として表示されていると思うが、正直見づらい。ちなみに、ExportやEmbedもできる。データセットに対するDiscussionも可能。

City spending | City and County of Honolulu
[browser-shot url=”https://data.honolulu.gov/dataset/City-spending/std8-yakc” width=”600″ height=”450″]

データセットをEmbedしてみたのが以下。表示サイズを選択して、Embedコードを貼り付けるだけ。

 

データセットを元に、簡単にグラフ化もできる。以下は、FY2011の決算結果を所属ごとにグラフ化したもの。グラフの種類と、データ軸を選択すればこのようなグラフがすぐに作れる。(登録していれば、グラフを保存してEmbedすることも可能。)

Socrata

 

ちなみに、ホノルル市の人口は37万人程度。ソリューションは「Socrata」が提供しているクラウドサービスを利用している。

Socrata for Government
[browser-shot url=”http://www.socrata.com/solutions/” width=”600″ height=”450″]

 

このクラウドサービスでは、データセットの管理や分析を行うことができるし、APIの提供もカバーしている。このSocrataについて調べてみると、いろんな自治体にソリューションを提供している。

Open Dataは、犯罪データをマッピングしたり、予算状況をグラフ化したり、標準形式ができつつあるようだ。そして、Socrataのようにクラウドベースで提供することで、低コストでもいろんな自治体に導入できるようになるのかもしれない。

 

日本でも、同じようにOpen Dataのソリューションセットをクラウドで提供するサービスが登場するのだろうか。

ニューヨーク市が中小企業のためにマーケティングツールを配布

New York City Mayor Michael Bloomberg on Thursday announced the city’s first Digital Toolkit for small businesses, a new education program aimed at helping the small businesses of New York City develop their online presence and social media strategies. The program will be administered by the city’s Small Business Services department at their local education centers throughout the five boroughs.

New York City Launches Digital Toolkit for Small Businesses

 

ニューヨーク市がスモールビジネス向けのマーケティング用デジタルツールを提供。MashableとGoogle、Tumblr、Weeblyが協力している。

起業支援や中小企業向けの支援というのは、国や地方公共団体ではひとつのテーマとして取り組まれるけど、こういうIT系の複数の民間企業が持つアセットを体系化して、ツールとして提供していくというのは、公共機関こその役割なのかもなあ。

ちなみに、Mashableが知識を体系化して、TumblrとWeeblyがウェブテンプレートの提供、Googleが検索エンジンに対するSEO対策を提供するんだとか。

 

ニューヨーク市では、それ以外にもビジネスアイデアの創出とか資金計画など、いろんな支援メニューを用意している。ウェブサイトもわかりやすいデザインだなあ。

NYC Business Solutions – Helping New York City Businesses Start, Operate, and Expand
[scshot url=”http://www.nyc.gov/html/sbs/nycbiz/html/home/home.shtml”]

アメリカの公共機関HPランキングにみるトレンド

アメリカの公共機関のHPランキングが発表されてましたよ。

2012 Best of the Web Award Winners Announced

2012 Best of the Web Award Winners Announced

いくつか特徴を感じたので、メモ書き程度にさっくりと。

CIOによる取り組み

記事を読めばわかるけど、CIOによるコメントが出てくる。日本の地方公共団体ではみられない。CIOであれば、HPによるアクセシビリティや情報の透明性の確保などは重要な取り組みになる。

わかりやすいカテゴライズによる情報検索の容易性を追求

トップページはカテゴリーで分類して、できるだけ情報量を少なくしているのはトレンドかな。これについても、アクセス結果を分析して、カテゴリーを研究したり、サイトデザインを工夫したりした結果。

検索、地図へのマッピング、ソーシャルサービス、モバイルなど複数のチャネルを用意

アクセシビリティや情報の透明性を高めるために、情報提供の仕方に多様性を持たせているのもトレンド。いろんな情報を地図にマッピングしてみたり、ソーシャルサービスでインタラクティブにやり取りしたり。

あと、モバイルへの取り組みも大きい。明らかにPCよりモバイルでのWebアクセス数は伸びているので、市民のアクセシビリティを向上させるには、モバイルへの取り組みは欠かせない。これはFacebookのような民間でも同じ。

Twitter、Facebook、Flickr、YouTubeなどソーシャルサービスを活用

ソーシャルサービスを利用して、市民とエンゲージすることを重視するトレンドは広がっている。LouisvilleがSocial Media Centerとして、Twitter、Facebook、RSS、YouTubeなど各種ソーシャルメディアに接続しやすい状況を作っている。市長や各種サービスによって、どのソーシャルメディアが提供されているか、一目瞭然。

[scshot url=”http://www.louisvilleky.gov/socialmediacenter“]
Social Media Center – www.louisvilleky.gov – LouisvilleKy.gov

もう当然という感じになってるね。Pinterestで自治体の写真を集めてギャラリーにしているところもあるし。利用の仕方はいろいろある。

[scshot url=”http://pinterest.com/cityoftylertx/”]
City of Tyler Texas Government (cityoftylertx) on Pinterest

 

 

というわけで、Top3のサイトは以下です。興味がある人は、直接みてみるといいよ。

[scshot url=”http://www.louisvilleky.gov/”]
Louisville Metro Government Official Website – Louisville, Kentucky (USA) – www.louisvilleky.gov – LouisvilleKy.gov

[scshot url=”http://www.orangecountyfl.net/”]
Home | Orange County Gov FL (official)

[scshot url=”http://www.alabama.gov/portal/index.jsp”]
alabama.gov: The Official Website of the State of Alabama

「できる管理者」のタスクのお願いの仕方

チームなりなんなり、集団を管理するようになると、誰かにタスクをお願いする場面が出てくる。タスクを割り振るって、考えてみると結構難しくない?

ということで、効果的なタスクの割り振り方を考えてみた。

「とりあえず自分でやるか」になっていないか?

仕事ができる人の中で、誰かに仕事を任せることが苦手、という人がいる。これは、初めて管理者になったときに顕在化する。管理者でないときは仕事ができるので重宝されるが、管理者になっても同じやり方をしてしまうので、チーム全体でタスクが最適化されない、チームメンバーが成長しない、自分が忙しくてメンバーを管理できていない、などいろいろ問題が生じてくる。

こういう場合は、思考の優先順位を「チーム全体の最適化」にシフトする必要がある。得意な人に得意そうなタスクを回すこと。いろんな人の作業負荷を平準化すること。管理者にはそういう交通整理が求められる。

 

ちゃんとメンバーの現状を把握しているか?

タスクをお願いするからには、メンバーの状況は把握しておかないといけない。すごい忙しくて仕事が回らない人にお願いしても、いつまでもタスクが消化されないかもしれない。あるいは、「もっと暇な奴がいるんだから、そっちにお願いしてくれよ」と反発を喰らうかもしれない。

まずはだいたいのメンバーの状況を把握しておく必要があるし、もしそのときになって知らないのであれば、確認すべきだ。最低限のマナーとして。

「あなたでないとダメ」な理由は?

タスクをお願いする人に対して、「あなたでないとダメ」な理由が必要だ。何となく目についたぐらいでノリでお願いすることもあるけれど、理想からいえばその点はちゃんと考え抜いて依頼したい。

これはお願いされる側の納得感も高まるし、モチベーションを上げることにもつながるだろう。

タスクの優先順位が説明できるか?

お願いするときは、依頼するタスクの優先順位も明確にしておく必要がある。それは、「今○○のタスクで忙しいから、その仕事後回しでいいですか?」と聞かれたときに困るからだ。そのときに、「今はこっちの方が早く終わらせないといけないから、こちらを優先で。今お願いしている○○のタスクは、別の人に回しておくわ。」みたい返答をしないといけない。それをするためには、ちゃんと全体のタスクの中で、これがどの程度緊急で重要かを理解していないといけないのだ。

つまり、メンバーが今抱えているタスクの中に新しいタスクを押しこむんだから、玉突きが起こったりスケジュール調整が必要になるのは当然のことだ。いろいろ柔軟に、各種タスクの優先順位を見極めて、新しいタスクをスムーズに押し込んでいく必要がある。

 

あとは、相手に気遣いしすぎると、時に人に対して鬼になれない、ということもあるかもなあ。高等テクニックだけど、ここらへんを無自覚でできてる人もいるよね。時々暴発もするけど。

ソーシャルインフルエンス

最近は勉強のための読書が多かったから、純粋な興味で読んだ本は久しぶり。この本は、マーケティング理論との重なりの中で読むと、とても刺激的だった。ソーシャルメディアの台頭はマーケティング手法を変えたと言われていたけれど、事例を見る限りはマイナスへ働くこともあるし、労力を投じても効果が見えてなさそうな取り組みもあった。そういう点を理論的に整理を試みたのがこの本。

既存のマーケティング理論との違いはどこにあるのか?

最初に整理しておく必要があるのは、この本でいっているソーシャルメディアによるPRし、手法というのは、MBAでも登場するフレームワーク4Pのうち「Promotion」の部分にあたる。
N’s spirit プロモーション戦略とは

それを踏まえた上で、ソーシャルメディアは既存のプロモーションと何が違うのかを考えてみたい。これまではパブリシティやマスメディアを利用した、一方通行かつ画一的な情報の伝達が行われた。口コミが強力なツールであることは知られているが、非効率であるために手段としては採用されてこなかった。

 

そして、ソーシャルメディアが新しい情報伝達手段として加わった。これは、情報の流れが変わったし、人々の購買動機の与え方が変わったのだ。

さらに情報量が爆発的に増えているので、マスでメッセージを発信しても届きにくくなっている。

日本の情報流通量は2001年から2009年の8年間で2倍になり、僕らが消費できている情報は全体のわずか0.004%に過ぎないとされる。P.40

ソーシャルメディアの登場で何が変わったのか?

ソーシャルメディアは、マーケティングの観点から最初は「消費者がつくるコンテンツ」と捉えられた。これはブログが普及し、パーソナルなメディアが誕生したという見方をされたのだろう。その後、TwitterやFacebookなどタイムリーで短いメディアが登場すると、「エンゲージメント」という考え方にシフトしてくる。

著者の表現でいえば、ソーシャルサービスは「公園のような場所」であるため、一方的に空気を読まずに広告や宣伝を垂れ流されることを嫌う傾向にある。つまりは、こういうことだ。

ソーシャルメディアという場所は、短期的なプロモーションを行う場としてよりも、消費者や顧客と中長期的につながることによって、感情的・情緒的関係性を高めることに強みを発揮するという考え方に大きく戦略転換がなされたのである。P.82

自治体ではこの理論をどう活用するか?

ついでといってはなんだけど、自治体などの公共機関でプロモーション理論を取り入れるなら、どういう方法が考えられるだろうか。僕としては、「ラダー・オブ・エンゲージメント」の考え方が面白かった。

消費者に対して、少しずつ接触する機会を設け、徐々に知識や理解を深められるようにサービス設計すること。このサイトの説明が、概念的にわかりやすい。最初は情報に触れてもらって、直接接触して、共同作業して・・・・という感じで少しずつ階段を昇っていけるようにする。

What is the community engagement ‘ladder of participation’? : North Yorkshire County Council

 

昔「感性のマーケティング」を読んだときに、スターバックスが消費者を「育てていく」という考え方を知って、それがすごい記憶に残っている。つまり、いろんなレベルの人にリーチできるチャネルを用意しておくことと、消費者に少しずつステップを登ってもらうようにすることが重要なのだ。

ソーシャルサービスやモバイルの発展は、コミュニケーションコストを劇的に下げている。Facebookがない時代では、誰かから「いいね!」というリアクションをもらうことにも一苦労だったわけで。

 

 

この一冊で、最近のプロモーションに関する動向はわかりやすく整理されているし、未だによくわからない「Facebookページ作ってブランディングしましょう」的な宣伝に説得力が乏しいことがよくわかるだろうと思う。

任天堂の売上高が4年で3分の1になっていてびっくりした

GREEとDeNAの業績を見たので、ついでに任天堂もみようと思ったら、結構な売上の下がり具合でびっくりした。

最近の任天堂はWiiのヒットも懐かしく、結構調子悪いようなことは聞いていただけど、ここまで落ち込んでいるとは。2011年度は赤字になっている。2008年には2兆円突破という絶好調っぷりだったのに。ただ、それまでの売上が5,000億円ぐらいだったので元に戻ったという考え方もあるけど。

任天堂 売上高2兆円突破を記念し、数字を色々集めてみました – 中小企業診断士 和田伸午のおもしろビジネス放談

ゲーム業界のトレンドは?

ゲーム業界のトレンドは、オンラインとモバイルに移行しているわけで、ゲーム専用機をプラットフォームとするメーカーは、このトレンドに乗り遅れて、数字に表れているという感じ。つまり、既存のゲーム機を主体としてプラットフォームを作るアプローチは、時代遅れになってしまった感がある。

誰もが持つモバイルやPCに移行した、という見方が優勢なのだろうと思う。それは、ZyngaやGREE、DeNAがすごい勢いで台頭していることからも推測できる。

かつての任天堂はなぜ強かったのか?

任天堂は、MBAのケーススタディで取り扱った。ファミコン時代の任天堂はまさに無双状態。戦略フレームワークで分析しても、抜け目なさすぎる。ファミコンというハードウェアを廉価で発売し、そこで魅力的なコンテンツを自作しつつ、ゲーム開発会社を自社に有利な条件で巻き込んでいく。さらには、年間の発売ゲーム本数も抑制することで、品質を重視するとともに市場の需要すらもコントロールする。

同じようなプラットフォーム戦略は、AppleやGREE、DeNAに引き継がれている。さらに任天堂は、DSやWiiによってゲーム市場を拡大させる。勉強や健康など日常生活の要素を取り込むことで、ライトユーザにまで幅を広げた。

ちなみに、任天堂には「枯れた技術の水平思考」という言葉がある。これは安定した技術を活用することで、廉価にビジネスを展開することを目指している。逆にいえば、先端の技術を取り込んで勝負する企業ではないんだよね。ゲーム機でもあまりグラフィックなどのスペックでは勝負せず、ユーザ体験に重視している。

任天堂、横井軍平氏の哲学「枯れた技術の水平思考」を考える。eラーニングや福祉分野等々にも考え方の応用ができる!やはり任天堂とApple社は考え方が近い。:『スマートIT』術:ITmedia オルタナティブ・ブログ

今後の任天堂はどうなる?

ここからは個人的な予想としては、どれだけソーシャルでモバイルが進んだとしても、任天堂の得意分野は「楽しいユーザ体験を生み出す」ところであり、ゲームの複雑性を下げるソーシャルやモバイルの方向性には進む感じがしない。なので、他社を追随するような方向性には進まないんじゃないかと思う。

Wiiは本当に革命だったのだと思うけれど、その成果がわずか数年で消えてしまうほどビジネスというのはシビアだ。それでも、任天堂はもう一度何かを巻き起こすだろうか。

ソーシャルゲーム市場はどこまで拡大するのか

GREEの業績をみたので、やっぱりついでにDeNAもみておくかって感じです。

こうしてみると、最初はDeNAの方が大きかったけど、2011年にはGREEはほぼ同じぐらいの売上高まで迫っている。ちなみに、財務諸表の構成も両社でそっくり。流動比率は高く、利益剰余金も高い。売上高営業利益率も高い。まあ、同じ業態なんだということが改めてわかるね、ということだけど。

 

売上高の成長率ではやや下がってきている両者で、DeNAはコンプガチャの影響をあまり受けていない、GREEは影響を受けていて売上低下予測が発生しているのはどういうことなんだろ。

朝日新聞デジタル:コンプガチャ全廃で収益明暗 DeNAは↑、グリー↓ – 経済

この記事を読む限り、DeNAはコンプガチャで出遅れた分、今回の規制の煽りを受けずに済んだということか。

GREEとDeNAのコスト構造の特徴

それぞれのコスト構造を確認してみる。以下は、売上高と営業利益の推移をグラフにプロットして、線形近似したもの。

GREE

DeNA

なんというか、両方とも本当に同じ傾向を示しているんだな。近似曲線の傾き(収益性)も同じだし、切片(固定費)もほぼゼロ。本当恐ろしい数字だなと思う。

 

で、これを踏まえると、ニュースで言われていることもわかってくる。とりあえず市場の期待としては「この成長スピードを維持できるの?」ということだと思うわけです。

一方で、国内のソーシャルゲーム市場がどこまで伸びるのか、というとそろそろ限界なんじゃないの?という話もあるわけで。

この記事の数字をそのまま使ってしまいますが、市場規模はコンソールゲーム(いわゆるプレステとかWii)が5000億円ぐらいの市場で、ソーシャルゲームは3000億円を超えたぐらい。

国内の各ゲーム市場規模を比較してみる(2012年版)|逆転裁判合同ブログ1号店

もちろん、ゲーム市場とソーシャルゲーム市場がそのまま同程度になると決めつけられないし、ソーシャルゲームは携帯をプラットフォームにしているので、ゲームをする対象や機会を増やしていると考えると、伸びそうな気もする。けど、そんな既存のゲーム市場と規模感が変わるほど市場があるのか?というのはやはり疑問が残るところ。

ソーシャルゲーム企業の海外進出

ということで、国内のパイが近いうちに飽和になるだろうから、ニュースでさかんに「海外展開」といわれる理由がわかってくる。

DeNA&GREEの海外展開についてまとめてみた【田中翔太】 : TechWave

ただ、GREEはすぐに結果が得られるような状況にはないようだ。

グリー田中良和社長「海外でいい手応えが得られたことは大きな収穫。」←虚勢?アメリカでは「ドリランド」も「釣りスタ」もランク外 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

 

ちなみに、最近IPOで話題になったアメリカのソーシャルゲーム企業ZyngaとGREE・DeNAとの売上・利益の違いについて書かれたTechCrunchの記事が面白かった。Zyngaは獲得ユーザ数ではGREEと桁1つ違うほど多いのに、売上も利益率も低い。これは主戦場がPCかモバイルかの違いだそうだ。

巨大ゲーム企業Zyngaが日本のGREEなどより極端に低利益なのはなぜ?このままでいいの?

 

個人的には、どこで新しい事業モデルをつくっていくんだろうということに興味有りです。

まあ、成長期なんで両社とも財務バランスなんてあまり重要じゃないよね。利益率高いし、潤沢なキャッシュ持ってるし。どちらかというと、収益の成長エンジンが止まることが最も怖い。

まとめ

  • DeNAもGREEも同じぐらい業績を上げている
  • ソーシャルゲーム市場はそんなに早くない時期に飽和になるリスク
  • 両社とも海外展開は始まったところであり、結果が出るのはこれから

人が成長を実感するのはどういうときか

社会人になって、最初の数年の間で自分が成長したと実感したのはどういうときだろうか。僕は「直属の上司の背中が見えた」ときである。

最初のうちは、当然のことながらほとんど何もできない。一挙手一投足教えてもらえないと動けないほど、使えない状態である。そういうときは、必死に教えてもらったことをひとつずつ吸収していくしかない。このとき、上司というのは「遠い存在」になるし、自分がその上司のポジションに成り代わることを具体的に想像するのは難しい。

 

しばらくすると、徐々にいろんな状況が見えてくるし、自分で工夫する余地もできてくる。すると、具体的に上司と自分のギャップもわかってくる。

物事に対してどういう考え方をするのか。なぜ自分より早く作業を進められるのか。どのようにクライアントとコミュニケーションを図るのか。

そういう点がわかってくると、改めて「遠い存在」であることを実感したりする。ただ、ここで具体的にギャップを認識することで、自分の行動を改善することができるようになる。

 

そして、もう少し頑張って仕事をしていると、やがて「背中が見える」瞬間がやってくる。自分がもう少し努力すれば、届きそうな感覚。この瞬間を感じられると、自分の努力は間違っていないんだと思えるし、自分の感覚が「遠い存在」から「届きそうな存在」に変わっていることそのものが、成長の実感になる。

 

つまりここで重要なのは、「上司と部下の距離感」ということになる。ある程度年数が近いと、このギャップを埋めるスピードも早くなるので、成長実感を早く得られることになる。距離感が遠いと「まだまだ遠い」の連続になってあまり実感が得られなくなる。

 

 

なんでこんなことを不意に書こうと思ったかといえば、最近の自分が少しそういう感覚を忘れつつあるからだ。でもこれは当然のことなのかもしれない、とも思っている。

それは、

  • 年数が経てば注意する人はどんどん少なくなる
  • キャリアが多様化してきて、スキルを直線上で評価しづらくなる

という点が関係しているようにも思う。つまり、自分で成長のベクトルを見つけて、自分でギャップを埋めていくようにしなければいけないということだ。モチベーションの源泉は外的要因に求めるのではなく、内的要因に作り上げていくものだということを、この本を読み返して思い出した。

モチベーションを思うまま高める法 | Synapse Diary

というわけで、もし組織設計をしたり人事権がある方は、上司と部下の距離間について考えてみてください。

GREEが今期も業績を大幅に向上

GREEって6月決算なんですね。というわけで、最新の業績が発表されたようです。

グリー、売上高・利益とも2.5倍超に 今期は成長鈍化へ – ITmedia ニュース

グリー、売上高・利益とも2.5倍超に 今期は成長鈍化へ – ITmedia ニュース

 

早速、過去3期と今期、そして来期の業績予想も記事にのっていたので、軽く数字に起こしてみた。

財務諸表(GREE)

 

過去3期は財務諸表が取れたけど、最新のものはまだ財務諸表がなかったので、売上高だけ。それにしても、本当倍々ゲームのように売上が上がっている。勢いがある産業であり、企業であることがよくわかるよね。

そして、ネット産業の特徴もよく現れている。売上高営業利益率は約50%ですよ。少しずつ下がってきてる感じはあるけどね。それに固定資産や固定負債の少なさと、利益剰余金の多さ。流動比率は180%近くあるし、自己資本比率も60%。すごい財務諸表だな。

 

来期は勢いが少し小さくなるとなっているけど、今後どうなるのか。キャッシュフローを見る限りは、営業CFでがっちり稼いで、同じぐらい投資CFに突っ込んでいるので、投資活動は盛んなようで。とはいえ、浮き沈みが激しい業界ではあるので、今後どういう風に数字が作られていくのか、楽しみ。