【書評】気仙沼ニッティング物語:いいものを編む会社

地方で事業を行う上で、どういう要点が必要なのかという点に興味を持っています。そこで、以前から知っていた「気仙沼ニッティング」のことをもっと知りたくなって、この本を読みました。

[amazon_link asins=’4103320125′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’03f48367-129a-4010-8483-dac4285e1de5′]

 

気仙沼ニッティングとは

気仙沼ニッティングとは、気仙沼に本拠地を置く、手編みセーターを販売する会社です。

気仙沼ニッティング
気仙沼ニッティング

震災の後に、ほぼ日のプロジェクトとして始まり、法人化しました。

気仙沼ニッティングは、気仙沼を拠点とし、 お客さまに手編みの商品をお届けする会社です。 2012年6月にほぼ日刊イトイ新聞で 震災支援のプロジェクトとして始まり、 2013年6月に株式会社として独立しました。

気仙沼ニッティング – 気仙沼ニッティングが目指すこと

 

立ち上げ時期の内容についても、ほぼ日のウェブサイトに掲載されています。

ほぼ日刊イトイ新聞 – いいものを編む会社。ー気仙沼ニッティング物語

優れたデザインと、手編みならではの味わいが特徴で、価格もなかなかに高級になっています。

本書はその創業ストーリーであります。

 

戦略ストーリーができている

最近「ストーリーの競争戦略」を読み返しているせいではありますが、この気仙沼に行ってイングも非常に戦略としても1人を感じるんですよね。

気仙沼で手編みニットを作る理由、価格、商品ラインナップ、販売やマーケティングの手法。それらひとつひとつが密接に絡まっていて、1つのストーリーを構築しているように感じてなりません。

たとえば気仙沼ニッティングの商品は、一般的なセーターから考えれば非常に高額ですが、それをこのような理由で述べています。

「とりあえず気仙沼の人たちがすぐ簡単に編めそうな商品をつくって、手ごろな価格で出してみて、売れるか売れないか見てみよう」という姿勢だったら、きっといつまでたっても気仙沼ニッティングの商品の品質は上がらなかったことでしょう。それに、きっと売れなかったとも思います。「気仙沼の人たちがすぐ簡単に編めそうな商品」というのは、「日本中の人たちが誰でもすぐ自分で編めるもの」でもあるからです。

長期的に続いていく競争性を確保するためには、差別化が大きい点を作るのはとても重要なことです。

僕も最初は「10万円以上もする手編みのニットって、誰が買うの?」と思っていましたが、顧客層や購買理由はこの本を読めば「なんとなく」わかります。この「なんとなく」というのが重要です。それこそは、ひとつひとつで構成されているストーリーの一部だけを見ても、本当のところは外部からはよくわからないからです。ただ、ヒントはあります。

手編みのうれしさってなんでしょう。これは、後々ずっと考えていくことになる課題です。たとえば手編みには、ひとつひとつの編み目に空気がふくまれるためふっくらしてあたたかい、といった機能的な利点もあります。長持ちする。着る人の身体になじみやすい。どれもよい点なのですが、手編みの一番のうれしさというのはやはり、「だれかが自分のために編んでくれた」ということそのものです。オーダーメイドなら、その豊かさを、たっぷり感じることができます。自分のために、いまカーディガンを編んでくれている人がいる。その豊かさをしっかり感じてもらえるようにしたいと考えました。

これを読むと、製品に付随するものとして、それ以上の「何か」を購買者に与えているんじゃないかという気がしてきます。

また顧客層に関しても、都市部が多いわけではないと書かれています。その内容は本書を読んで欲しいのですが、想定した顧客以外のところから幅広くニーズを獲得できているのも、この「ストーリー」を構成する重要なパーツになっていると思います。

 

本書の最後のあたりでは、ネット販売を中止にするならもっとウェブサイトの力を入れて拡大するべきだと言うアドバイスをもらい、このように記述しています。

たしかにそうすれば1~2年は売上が急増するかもしれません。しかし100年続く事業には育てられないでしょう。それは、気仙沼ニッティングがこれまで丹念に仕事をすることでお客さんから得てきた信頼を、短い時間で使い切るような話だからです。信頼は、築くのには時間がかかりますが、なくなるときはあっという間です。経営を捉える時間軸の長さによって、いまやるべきだと考えることは変わるのでしょう。

 

最初、気仙沼ニッティングのウェブサイトを見たときは、モバイル対応もされていないし、SimilarWebで見た時もそれほどアクセスがあるようでないようなので、ほんとにこれでネット販売してるのかなっていう素朴な疑問を持ちました。しかし、きっとこの会社ならではの優先順や成長スピードがあり、確実に信用を積み重ねながら経営されているのでしょう。

 

ということで、良い企業にはストーリーがあるんだな、と再確認した一冊でした。いつか気仙沼ニッティングで注文してみたいな、と思いました。

[amazon_link asins=’4103320125′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’03f48367-129a-4010-8483-dac4285e1de5′]

 

【書評】戦略読書日記

時々本を読んでいると、本質をえぐり出すような言葉に出会い、ドキっとすることがあります。そういう本に出会うと嬉しいですよね。

今回読んだ「戦略読書日記」は、「ストーリーとしての競争戦略」で有名な楠木建さんが書いた、いろんなジャンルの本を戦略という観点から読み解いた1冊です。

[amazon_link asins=’4480435913′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’407128e5-5824-4461-9c74-c065800ff16e’]

 

色々目から鱗的な表現がちりばめられているのですが、一番印象的だったのは、ファーストリテイリングの柳井社長を例に、「経営者の能力」について触れたところでした。

戦略ストーリーを構築する経営者の能力は、どれだけ大きな幅で、どれだけ高頻度で、どれだけ速いスピードで具体と抽象を行き来できるかで決まる

「具体と抽象を行き来する」と言う表現は、コンサルティングでもよく言われています。どちらか一方だけではダメで、具体的な状況からコンセプトまで抽象化した内容を消化し、それをさらにまた具体的な施策に落とし込む。その往来の振り幅が大きい人が、経営者としては優秀だとこの本では述べられています。

確かに、抽象的で中身がない(=コンサルタントに対してよくある批判)もありますし、具体的だけど組織全体には使えない(=作業者から管理者に脱皮できないパターン)というケースもあります。

叩き上げで管理者になるためには、物事の抽象度を上げて捉える訓練が必要だと思います。そのために、経営理論やマネジメント手法を学ぶのは有効な手段のひとつだと思います。そして、その最たる例であるMBAは、抽象論を主に扱うところです。フレームワークなどは良い例ですね。それをケーススタディなどで、具体性をバランスよく養うということもやっているのですが。

MBAに関心ある人向け。ケース教育の利点を理解しよう

ということで、どういうことを意識して仕事に取り組むべきかといえば、具体性と抽象性の両方を意識し、自分がどちらかに偏っていないかを常に考えて行動することなんじゃないかな、と思う次第です。

この「戦略読書日記」は、ジャンルで捉えると難しいですが、経営戦略をいろんな観点から読み解く本だと思うので、経営戦略に関心がある方には面白いです。他にもいろいろ発見があって刺激を受けました。

 

全然話は違いますが、この本はKindle Unlimitedで読みました。こういう本を、読み放題の中で読めるってのは、良い発見でした。マンガが撤退したり、講談社が講義したりといろいろあるKindle Unlimitedですが、今のところ非常に有益なので続けてます。ありがとう。

Kindle Unlimitedが変える読書体験

[amazon_link asins=’4480435913′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’407128e5-5824-4461-9c74-c065800ff16e’]

 

ニュースアプリと地方新聞の行く末

スマートニュースもYahooニュースも、LINEニュースも、地方ニュースに対象を広げてきているんですね。

スマートニュースも、

スマートニュース株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役:鈴木健/浜本階生)は本日、当社が提供するスマートフォン・タブレット向けニュース閲覧アプリ「SmartNews(スマートニュース)」において、地方紙11紙のチャンネルをオープンいたしました。

SmartNews、地方紙11紙のチャンネルを同時にオープン|スマートニュース株式会社のプレスリリース

LINEニュースも、

LINE(ライン)は17日、全国紙やテレビ局が参加しているニュース配信事業に、新たに17のブロック紙・地方紙が加わると発表した。配信は22日からで、参加する媒体は60に広がる。

上毛新聞ニュース:【全国ニュース】LINE地方ニュース配信 17紙が参加、22日から

そして、Yahoo!ニュースはテレビCMで地方ニュースが見られることをアピールしています。

この辺の戦略が似通ってくる時というのは、大きなトレンドが発生していると思うので、ニュースアプリでどういう状況なのか笑貯めて考えてみたいと思います。

 

地方新聞の衰退

地方新聞は衰退しているし、発行部数も低下しています。

新聞
日本の新聞業界にネットの嵐—止まらぬ部数減 | nippon.comを元に作成)

発行部数が全体で低下している一方で、日経電子版やニュースアプリが増えているので、ネットやスマホにシフトしなければいけないのは当然の流れなのですが、そこまで投資に踏み切れるほど経営資源もないのかもしれないですね。

というわけで、歯止めがきかない部数減少に対して、新しい収益源を探しているのが地方新聞の現状なのだと思います。

 

ニュースアプリの新たなニュースソース

ニュースアプリがどんどん台頭してきています。確かに、自分で使ってみても、リアルタイムで様々なニュースを読める点で、とても便利です。

そのニュースアプリは、「ニュースソースを確保し、キュレーションなどを駆使してユーザーに役立つ情報を提供する」というところがビジネスモデルの根幹になります。そのような中で、様々なニュースソースを獲得してきているんだと思いますが、それもある程度飽和してきていて、まだ未開拓だったニュースソースとして、地方新聞が注目されてるんじゃないか、と。

ローカルニュースはニーズがあります。住んでいる地域のニュースは、みんな興味ありますよね。そのニュースソースとして、地方新聞をニュースアプリは取り込んでいってるのです。

 

地方紙の将来

今、各アプリがしのぎを削って、ニュースプラットフォームを確立しようとしています。日経新聞など自社でプラットフォームを作っているところもありますが、自社で魅力的なサービスを作れなければ、他社のプラットフォームに配信することがメインになるでしょう。

今後、地方紙がどうなるかと考えてみると、今台頭してきているニュースアプリなどに、配信していくことがメインになっていくんじゃないでしょうか。これまでは自社で新聞を発行していましたが、紙のニーズが低下し、ネットやスマホにチャネルが移っているからです。

ただ、そうなると自社の収益源が減ってしまうことになるので、取材したりニュースを造る力が失われてしまうかもしれません。そうなると、ローカルニュースが消えてしまうことにもなってしまいます。

あと、今フリーペーパーというのがありますね。それが地元情報を獲得する一つの手段になっているのですが、それも飽和気味な気がします。数年前に記事を書きましたが、状況は変わってないですね。ブームが過ぎて、安定しているといえばしているのですが。

ローカルフリーペーパーの生きる道 | Synapse Diary

ということで、ニュースアプリというプラットフォームでローカルニュースが取り扱われるのは良い傾向だと思うのですが、あとは本当に役にたつ情報を発掘し提供していけるビジネスモデルが必要なのではないでしょうか。

映画「陽はまた昇る」でプラットフォーム戦略を学ぶ

Amazonプライムで映画をどんどん見ていますが、最近「陽はまた昇る」を見ました。

[amazon_link asins=’B012S15ZA8′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’1bf702e9-72d2-409f-a029-6e137af8558f’]

 

これは家庭用のホームビデオが丁度普及しようとしている時で、ソニーのベータマックスとビクターのVHSが開発・発売され、「家庭用ビデオの統一規格」という覇権争いを繰り広げた時の様子が映画化されていたものです。

今やITではいろんな場面で見られるようになったプラットフォームの覇権争いですが、古くからある有名なプラットフォーム競争の事例はこの「ベータマックス vs VHS」ですね。

最終的には、知っての通りVHSが勝利するわけですが、最初有利だったはずのソニーのベータマックスに対して、様々な努力によって優勢を勝ち取るVHSのストーリーが、胸を熱くさせます。リーダーがかっこいいんですよねーーー。

 

VHSが結果的に勝利したことは、プラットフォーム競争で勝利する要因として、今でも普遍的に通じるものがあります。WikipediaにVHSが勝利した要因がまとめられていますが、

ビデオ戦争 – Wikipedia

プラットフォームを形成するためには、様々なステークホルダーの満足度を高めないといけないことがわかります。

  • コンテンツ製作者
  • エンドユーザー
  • 流通業者

これらをバランス良くできると、プラットフォームとしての形成を有利に進められるということですね。

上記のWikipediaを見ると、それ以外の規格でもずっと競争は繰り返されてきて、これを読むだけでも非常に面白くて読み応えがありました。笑

 

それにしても、映画の中での登場人物がタバコめっちゃ吸ってるんですよね。時代ですね。

Amazonプライムは、おすすめです。無料で映画見放題なのですから。

プラットフォームが長期的に繁栄するために必要なこと

なぜIT業界が「稼げない業界」になってしまっているのか

経産省がIT業界の人材に関する報告書を発表しており、非常に興味深い内容になっていました。

特にそれがTogetterにまとめられ、「IT業界は本当ダメだな」という感想が多く寄せられており、なんとも言いようがない状況であることがわかります。

「情報システム産業では、2000年代後半から協力会社を中心として労働環境の悪化が相次ぎ受託開発ビジネスの限界に直面。丸投げ委託、多重下請けと人月ビジネスの横行等により、業界全体の魅力が低下した」という経済産業省の産業構造審議会の公式見解について – Togetterまとめ

確かにITゼネコンとかIT土方という言葉が生まれており、あまり環境が良くないと言われています。なんでこう言う状況になってしまったのでしょうか?

幾つかポイントがあると思うのですが、個人的に考えられる要素を並べておこうと思います。

 

IT業界を取り巻く負のサイクル

そのうちの一つは、日本の経営者におけるIT活用に対する興味のポイントです。経産省の資料に示されているのですが、日本の経営者は、極論をいえば「費用削減の手段」としてしかITを見ておらず、それが新しい付加価値を生み出す、収益を生み出すということの比重が小さいというのは、随分前から言われている話です。

IT1

で、業務合理化の手段としてITが活用されることになると、組織上にある傾向が生じてきます。それは、「業務の効率化=システムの導入が終了すると、IT人材は組織に不要になる」ということです。

それは、同じく経産省の資料に示されています。

IT2

ユーザ企業では、大規模なシステム投資は行うものの、あるプロジェクトが完了すると、システム系の業務がなくなるため、システム子会社など分社化するか、もともと外部から雇うなど、自社からIT人材はどんどんいなくなるのです。

また、「守りのIT」というのはどちらかというとチャレンジングな要素が技術的にも少ない傾向にあり、高い技術力が差別化になりづらい点も影響しているのではないかと推測します。

まとめると、以下のサイクルが発生しているのではないか、というのが僕の仮説です。

  • IT人材は一時的にはいるが、用が済んだら子会社化するなどして、社内にいなくなる
  • 社内にIT人材がいなくなった結果、次に必要になったときにはITベンダーに頼る比重が大きくなる
  • また、ユーザー企業が「枯れた技術」を好むため、ITベンダーの技術力はそれほど差別化要素にならない
  • ITベンダーがクライアントに対して引き受けなければいけない領域が広くなるため、差別化要素が低い技術領域をアウトソーシングする

 

でも、今後はこういう状況は変わってくるかな?

ただ、今後はメインビジネスの中にITが組み込まれることになるケースが増えていくんだろうと思っています。

例えば日本交通の社長だった川鍋さんは、2015年に社長から会長に退き、代わりというかJapanTaxiという情報サービス会社の社長に就任しています。

JapanTaxi株式会社(旧:日交データサービス)

UberなどIT技術の破壊力に危機感を抱き、このIT領域に非常に力を入れています。そのあたりは、以下の講演を見ると、よりわかると思います。

さらに、インダストリー4.0などITを使ったサービス化を実現する動きが製造業にみられています。コマツのコムトラックスが代表例としてよく挙げられますが、そういう動きも今後はもっと活発化していくのでしょう。

守りのITから攻めのITへ。そういう時代はもう来るんだと思っていますが、それがもっと盛り上がらないと、IT土方は量産され続けるんじゃないでしょうか。

今、これ読んでます。

[amazon_link asins=’4492762213′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’959ac4aa-56a3-48a5-9400-c15de0710178′]

 

【書評】なぜ今ローソンが「とにかく面白い」のか?

ビッグデータ分析、健康志向、他業種侵食。様々なことがダイナミックに行われているのがコンビニ業界です。以前、ファミリーマートがサークルKサンクスを買収すると発表されたときに、こんな記事を書きました。

ファミリーマートとユニーが合併。今後のコンビニ業界は楽しくなるはず

記事のポイントとしては、次の2点になります。

  • 日本におけるコンビニは飽和している
  • 総合スーパーが小売のフォーマットとして苦戦している

今後、コンビニがどういう方向に向かうのかをその後も考えていたのですが、この本を読んで、さらに「ああ、コンビニって今後もすごいことになるかも」と思いました。

[amazon_link asins=’4860637844′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’1ffddbd4-6f3d-411b-8372-1075229b3b19′]

 

コンビニは消費トレンドの先端

ローソンが取り組んでいる流れというのは、まさに消費トレンドの先端だと思っています。だから、コンビニというビジネスモデルはずっと成長してきているし、他業種にも侵食しているのです。

 

健康志向

どんどん世の中全体が健康志向になっていますよね。コーラはずいぶん前からダイエットコーラを発売していますし、インスタントコーヒーでもカフェラテのノンシュガーとか増えてますよね。

だが、明らかに健康志向、減塩志向には向かっているという。 「実際、日本人がお醤油をあまり使わなくなってきているんです。お醤油の消費量は、大きく下がっています。これは、醤油メーカーさんも認識されています。そのかわり、麺つゆのようなおつゆが売れています。

 

野菜などの生鮮食品を取り扱ったり、ローソンだと低糖質・低カロリーのブランパンを発売したりと、健康志向に対応した商品がどんどん登場してきています。今後もそれは続くでしょうし、消費者がそれを望む限り、コンビニは適応した新商品がどんどん増えていくでしょう。

 

ローカライズ化

以前からあるもう一つの流れが、ローカライズ化です。地域の名産や、あまり知られていない食品をフォーカスしたメニューを投入することが増えています。

もうひとつ、ローソンらしい商品としてご紹介しておきたいのが、地域の名産品や食材を使ったシリーズだ。 「ローソンはもう何十年も前から、各地域に商品部を置いて、商品開発をしています。全国発売する商品の他に、地域限定商品も開発しています。ここからつながりが広がって、多くの自治体と包括協定を結んでいます」 その結果として生まれたアイディアが、地産地消、地産外消の商品だった。例えば、すべて国産食材で作ったお弁当。「郷土のうまい!」のお弁当シリーズ。『桜島どりのごっそ弁当』『紀州ええ塩梅ごっつぉさん弁当』などが人気を博した。

 

これまではトレンドの発信拠点として全国チェーンが画一的な品揃えをしてきましたが、ニーズが多様化し、コンビニ市場が成熟期を迎える中で、地域ごとのニーズをきめ細かく拾うこと、そして、地域の眠った資源を全国展開することの両面から、ローカライズ化が進められてきました。

そのためには、より一層商品開発やマーケティングの力が必要になります。コンビニという巨大組織だからこそ、ローカライズ化と全国チェーン展開を両立できるのだろうと思います。

 

プラットフォーム化

ローソンは、「介護ローソン」という介護事業者がフランチャイズオーナーを務める店舗が埼玉県にあります。

「介護ローソン1号店」を見学してきた:介護:日経デジタルヘルス

 

これは、介護相談窓口が併設されているのですが、コンビニの中にそれを設ける理由が、本書の中でこう示されています。

「介護事業者さんによっては、オフィスビルの二階や三階に事務所を持っているところもあるようです。しかし、そうなると、オフィス街に、わざわざ介護の相談に出向かないといけないわけですね。もしローソンで相談できるなら、日常的な買い物の中でつながることができる。コミュニケーションの場をたくさん作れるということです」

つまり、日常的に通う場所であり、コミュニケーションしやすいところとして、コンビニが使われているわけです。これは、コンビニがあらゆる物事の拠点であり、プラットフォームとして、今後もいろんな事業を飲み込んでいく可能性があることを示しています。

 

ローソンチケットも、すごい拡大してるんですよね。

もうひとつ、グループ戦略として注目したいのは、すでにローソンチケットがプレイガイドでトップクラスになっているなど、エンターテインメントの事業が広がりを見せていることだ。 「ご近所のお店にとって、大きな武器となります。エンタメのサービスが充実しているということは、差別化につながりブランドとしても強くなります。この分野をM&Aでさらに強化していくことも重要になってくると考えています」

 

ローソンは、セブンに遅れながら銀行業務に参入するというニュースが流れていましたし、コンビニ自体は今後も町のプラットフォームとして、拡大していくのでしょう。どういう分野を飲み込んでいくかが、注目ですね。

コンビニエンスストア2位のローソンは銀行業に参入する方針を固めた。 金融庁から銀行免許を取得した上で、2016年夏にも三菱東京UFJ銀行と共同出資し、新銀行を設立する方向だ。コンビニ業界首位のセブン―イレブン・ジャパンを中心に運営するセブン銀行や、流通大手イオンが展開するイオン銀行を追撃する。

ローソン、銀行業参入へ…三菱UFJと共同で (読売新聞) – Yahoo!ニュース

 

 

ということで、コンビニは今後もしばらく革新的なビジネスモデルとして、小売やそれ以外も業種を席巻し続けていくでしょう。面白いですね。

[amazon_link asins=’4860637844′ template=’Original’ store=’tob-22′ marketplace=’JP’ link_id=’e772872e-b050-43c6-8a38-da2fa66d6354′]

 

Amazonプライムの凄さを説明します

最近のAmazonの破壊力はすごいですね。AmazonプライムビデオとfireTVの発表は、Amazonの凄さを再認識しました。

特にAmazonプライムのサービス拡充がすごいです。いろんな施策を講じて、Amazonプライムの会員数を増やそうとしているのがわかります。

現在のプライム会員の特典はいくつかあります。

Amazon.co.jp: Amazon Prime

ざっと挙げると、こんな感じです。

  • 配送無料&お急ぎ便
  • Kindleオーナーライブラリー(毎月無料で1冊貸し出し)
  • 先行タイムセール
  • プライムビデオ

なんで年会費5000円で、こんなにサービスを受けられるのでしょうか?不思議に思いませんか?

プライム会員になると、Amazon以外から購入しなくなる

Amazonがプライム会員を増やそうとするのは、とても単純な理由です。

アマゾンの創業からの歴史を描いた「ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者」に、プライム会員について、こう書いてあります。

当時のアマゾン社内に詳しい人物によると、プライムの会員になると買う金額が平均で倍になったという。

すごくないですか?プライム会員は平均購入額が倍になるんです。

ちなみに、この記載はまだアメリカでプライム会員を始めた頃のようで、Kindleオーナーズライブラリーやプライムビデオなど、今ほどいろんなサービスが充実していなかった頃です。

同書では、ベゾスの発言としてこう書かれています。

「79ドルというお金が欲しかったわけではありません。ほかで買い物をしなくなるように人々の意識を変えることが目的だったのです。」

配送料が無料で、すぐに配送してくれるなら、購買体験が快適になります。そうやって、Amazon以外から購入する気をなくすことが、プライム会員の目的なのです。

プラットフォームとしての魅力が増していく

Amazonは、売り手と買い手を結ぶプラットフォームでもあります。その中で、フルフィルメントという、出品、在庫管理、配送を代行するサービスもあるのです。

Amazon.co.jp ヘルプ: Amazonフルフィルメントセンターの紹介

先ほどのベゾスの本によると、プライム会員が増えることで、Amazonのフルフィルメントセンターを使う出品者が増える、と書かれています。

たくさんのカテゴリーからたくさんの商品を買うプライム会員が増えると、商品をアマゾンに置き、フルフィルメントセンターから配送してもらおうと考える売り手が増える。この形ならプライムの2日配送が使えるからだ。

プライム会員が増える
→配送への要求が高くなる
→フルフィルメントセンターを構築
→出品者がフルフィルメントセンターを利用
→ユーザーが迅速な配送サービスを受けることができる

という好循環が生まれています。プライム会員というのが、Amazonというプラットフォーム全体の価値を高めるものとして、戦略上とても重要になっています。

ちなみに、同じようにプラットフォームを運営している楽天は、物流改革を行おうとしてきた経緯があり、自前で行うことを諦め、つい最近ヤマトと提携しました。

News & Trend – 楽天、独自物流構想の果てのヤマト提携:ITpro

無料サービスの増加による囲い込み

Amazonプライムは、どんどん新しい特典が増えています。日本で最近追加されたプライムビデオについても、競合に対する強力な差別化になるでしょう。

またも「ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者
」から紹介します。

無料とした理由を、ベゾスは、DVDの販売が落ちている状況で、年会費79ドルのプライムを支え、さらには補強するために必要だからと社内に説明していた。だが、プライム・インスタント・ビデオにはほかの役割もあった。ネットフリックスが月額5ドルから8ドルで提供しているものをアマゾンは追加特典として提供しているわけで、大きなライバルに圧力をかけ、エブリシング・ストアの重要なセクションを奪われないように守る効果が期待できる。

結局、プライム会員という枠の中で様々な特典を付けていくことが、ネットフリックスなどの個別サービスに対抗になっています。こうやって様々なジャンルをプライムでカバーしていくことで、ユーザー離れを防いでいく戦略になっています。

 

個人的には、最近Kindle Fire端末も購入し、ますますAmazonでの買い物、読書、映画の鑑賞が快適になっています。どっぷりはめられている感じです。

Kindleの新しいFireタブレットが5000円とかコスパ高すぎ

これもユーザーの利便性を追求していくことで、どんどん囲い込んでいくという、見事な戦略です。まだプライム会員になっていない方は、こちらからどうぞ。

クレジット決済や電子マネー決済の導入メリットはあるか?

jarmoluk / Pixabay

クレジットカード決済が増えているのか、調べてみました。

 

クレジットカードって増えてるの?

クレジット協会の数字によると、発行枚数、会員契約数、クレジットカードショッピングの取引額は以下の通りになっています。

クレジットカードの発行枚数や会員契約数は、平成22年をピークに低下傾向に入っています。一方で、クレジットカードショッピングの信用供与額は増えています。

credit
統計 | クレジット関連資料 | 一般社団法人日本クレジット協会のデータを元にグラフを作成)

 

クレジットカードの発行枚数や会員契約数が減少しているのは、日本社会が平成22年をピークに人口が減少しているからだと思われます。つまりは、1人あたりのクレジットカード保有枚数は頭打ちになっているんじゃないでしょうか。

そして、恐らくネットショップ等の影響で、クレジットカードの取引額自体は増加しています。ということは、クレジットカード1枚あたりの取引額は増えている、ということになります。

 

電子マネーって増えてるの?

最近、電子マネーがどんどん増えている気がします。実態としてはどうなんでしょうか。

日銀が電子マネー決済について、統計資料を発表しています。平成24年からみても、どんどん上昇していますね。平成27年は半年分しかありませんが、このままいけば、前年度を超える数字になっています。

money_card
(単位は百万件。H27だけ6ヶ月間なのは注意。)

 

発行枚数でみると、クレジットカードとほとんど変わりませんでした。クレジットカードは右肩下がりであることを考えると、現時点では、逆転していると思われます。

credit_dmoney
(単位は万枚。)

 

いずれも、日銀の決済動向(2015年7月)のデータから作成しています。

こうみると、電子マネーは急速に普及してきていて、発行枚数でみればクレジットカードを上回る状況になっています。

 

電子マネーとクレジットカードの違い

クレジットカードと電子マネーそれぞれの動向を見てきましたが、それぞれに違いはあるんでしょうか。ビジネス上、どちらをどう気にしたらよいのか、ということですね。

決定的に違うのは、一回あたりの決済金額です。電子マネーは1000円以下が主流になっていて、それ以上は圧倒的にクレジットカードになっています。

以下は日銀の調査。2011年のものでちょっと古いですが、体感的には今も似たような傾向だと思います。

boj
最近の電子マネーの動向について(2011年)より)

 

この特性の違いは、理解しておいた方が良いでしょう。

 

まとめ

  • クレジットカードの発行枚数は頭打ち。ただし、取引額は増えている。
  • 電子マネーはすごい伸びている。発行枚数はクレジットカードに追いついている。
  • 両者で大きく違うのは、1回あたりの決済額の違い。
  • 小額の場合は電子マネー。1000円を超えるとクレジットカードが多く利用される。

決済手段を確保しておくことはとても重要です。SquareやCoinyなども普及してきていますし、タブレットがあればクレジット決済が可能になっています。また、手数料が小さい、金額の納付が翌日など、クレジットのデメリットもどんどん小さくなっているのが現状です。

小売やサービスなど、一般消費者を相手にする商売であれば、クレジットや電子マネーの決済を可能にしておくことが、消費者の満足度を高めるでしょう。

 

今日はこのへんで。

 

ヒューレット・パッカードが10%のレイオフを実施

blickpixel / Pixabay

ヒューレット・パッカードは、10%にあたる3万人 のレイオフを行うと発表しました。

Hewlett-Packard to Cut About 10 Percent of Work Force – The New York Times

 

先進国のコールセンターなどがレイオフされる

HPは、今後PC・プリンタ部門と企業向け部門で分社化される予定になっています。現在はまだ分社化されていませんが、その状態でHPの業績は以下のようになっています。売上が減少してきていますね。

HP

業績があまり芳しくないので、ダウンサイジングが必要な状況なのでしょう。レイオフの対象は主に先進国のコールセンターやサービスセンターなどで、その機能はオートメーション化されるか、インドやコスタリカに移されるようです。フラット化を地で行くような意思決定ですね。付加価値が高くない作業は、機械に変えてしまうか、単価が低いエリアに移すということですね。

なんでコスタリカ?と不思議に思いましたが、コンピュータ部品が主な輸出品になっているようです。なので、IT系の産業が集まっているんですかね。コンピュータ部品の輸出が盛んになったのは、1990年代にインテルが進出したことの影響とのことです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%AB

 

HPの企業部門はIBMと競うことになる

HPは分社化して、企業向け部門はIBMと同じようなビジネスモデルになると思われます。企業向けサーバー等を提供しつつ、コンサルティングやサービスを提供して、ハイマージンな企業に転化する狙いですね。

ちなみに、今時点でHPとIBMの業績を比較すると、こうなります。

hp-ibm-sales

hp-ibm-margin

売上高はHPの方が大きいですが、営業利益でみればIBMが勝ってます。分社化して、このあたりの数字がどうなるかは注目です。

Hewlet-Packerd Enterprise(企業向け)とHP Inc.(PC・プリンタ)のそれぞれの割合と売上高は、以下のようになっています。(2014年の決算報告書から抜粋しました。)

hp2014

ここから推測するに、Hewlet-Packerd Enterpriseの売上高は今HP全体の半分になるので、IBMと比べると、倍とは言わなくても1.5倍以上は差が生じることになります。

それにしても、結果論になるかもしれませんが、IBMは早い段階でコンシューマー向け製品を捨て、企業向けのはいマージンなサービス企業に転身しました。今HPが苦しんでる状況を見ると、IBMが次々と非コア事業として売却し、事業領域をスライドさせてきた戦略には、考えさせられるものがありますね。

 

ビジネススクールでヒューレット・パッカードのケースを学んだのですが、起業後のヒューレット・パッカードは、オープンで自由なコミュニケーションを生み出す文化を形成していました。経営者が現場を歩きまわり、コミュニケーションを図るという、当時としては先進的な取組を生み出したりしていました。それがヒューレット・パッカードの強みのひとつだったと思いますし、そういう考え方を持った企業は個人的に好きです。「ビジョナリー・カンパニー」にも取り上げられていましたしね。

なので、ヒューレット・パッカードが今後復活して欲しいな、と僕は思っています。

 

性別の境界線は限りなく曖昧に。「ジェンダーニュートラル」とは

businesswoman-454871_640

あなたが考えている「男らしさ」「女らしさ」というのは、もう古い価値観なのかもしれません。

 

バイリンガルニュースを聴いてるときに、アメリカの小売業であるターゲットが、おもちゃや子ども用品の売り場で性別の表示を撤廃する、というニュースについて話していました。

CNNでも記事になっていました。ちなみにターゲットは、アメリカの小売で業界6位ということで、それなりに大手です(参考)。

米ディスカウントストア大手のターゲットは10日までに、玩具や子ども用品売り場の「女の子のおうちセット」「男の子の寝具」といった男女別表示を段階的に廃止すると発表した。 同社に対しては子どもを持つ女性などから、女の子向け商品と男の子向け商品を区別する必要はなく、そうした区別が弊害を招く可能性もあると訴える声が強まっていた。 ターゲットはこれまで、買い物客が目当ての商品を見つけやすくする目的で売り場の性別表示を行ってきたと説明。しかし寄せられた意見に応え、玩具や日用品、娯楽品などの売り場では性別表示は不要になったと判断した。

CNN.co.jp : 米ターゲット、売り場の性別表示撤廃へ 子ども用玩具など

 

自分の中にあまりない考え方だったので、少し衝撃でした。こういう考え方を「ジェンダーニュートラル」と呼ぶそうです。

 

そして、世界ではこのジェンダーニュートラルが進んでいます。

同じ小売としては、イギリスの百貨店セルフリッジズが同じような取組を行っています。

http://www.fashionsnap.com/news/2015-01-29/selfridges-agender/

スウェーデンのおもちゃ販売会社トップ・トイでも、広告に掲載されている女の子は機関銃を持ち、男の子は人形遊びをしています。しかも、最近ではなく2012年の出来事です。

http://www.afpbb.com/articles/-/2913346

 

さらに、アメリカでは「ジェンダーニュートラル」なトイレが広まっているそうです。こちらはLGBTからのアプローチのようですけど。

http://wired.jp/2014/08/04/gender-neutral-bathroom/

 

こちらはGoogleトレンドの結果です。「gender neutral」というキーワードはどんどん上昇してきてるのがわかります。

gender_neutral

 

いずれにしても、性別という概念がこれまで以上にゆるやかな形になっていくようです。こういう流れは日本でもいずれ浸透していくんじゃないかと思われます。これまでも看護婦が看護師になったり、性別の固定的な要素というのはどんどん排除されてきています。今後はさらにそれが進み、男性・女性という性別に固定的な価値観というのは変化を求められていく気がします。

また、そのときに必ず保守的な反発というのも生まれるでしょうから、ビジネスを行う側としてはどのタイミングでそういう変化を取り入れるのか、という決断もどこかで生じるんじゃないでしょうか。

今日はこのへんで。