最近、「ニコニコ哲学 川上量生の胸のうち」という本を読みました。
今やKADOKAWA・DWANGOの社長である川上さんのインタビュー記事で構成されていて、いろいろ面白い考えが披露されています。
その内容の中で、プラットフォームに関する発言が出てきて、「ああ、やっぱりそうだよな」と思ったので書いておこうと思います。
その一部がこちら。
コンテンツをつくらないプラットフォームは、最初はとりあえず、既存のプラットフォームよりも安くコンテンツが手に入る場所にするんです。そして、プラットフォーム自体の競争力を強くしようとする。オープンなプラットフォームっていうのはそうなっちゃうんですよね。みんな自由とか公平とかよくわからない倫理観でオープンを支持するけど、本当はそんなの地獄でしかないんです。
任天堂がファミコンで実現したプラットフォーム戦略
ビジネススクールに通っているときに、任天堂のケースを学びました。ファミコンやスーパーファミコンなどゲーム業界で一時代を築いた任天堂のプラットフォーム戦略の強さに驚いたものです。
任天堂は、スーパーマリオなど、プラットフォームとなるゲーム機と、そのゲーム機で動くコンテンツの両方を手がけました。それによって、プラットフォームの魅力を高めよう、という面と、コンテンツの価格を適正にしよう(値崩れを防ごう)という両方が実現されました。
だから、プラットフォームを運営するものは、プラットフォームとコンテンツの両方を手がけた方が、プラットフォーム全体が長期的に繁栄するというのが、冒頭に紹介した発言の主旨でしょう。
AppStoreやGoogle Playはプラットフォームとしてどうか
今や世界で巨大なプラットフォームとなったAppStoreやGoogle Playはどうでしょうか。AppStoreもGoogle Playも、AppleやGoogleもアプリを提供していますが、基本無料です。プラットフォーム全体の収益性はどうなっているんでしょうか。
最近のレポートによると、ダウンロード数はGoogle Playの方が多いものの、売り上げでみるとAppStoreの方がGoogle Playより70%多くなっているようで、収益性という面ではAppStoreの方が成功しています。
ニュース – [データは語る]Appleの「App Store」、売上高で「Google Play」との差広げる:ITpro
Google Play対App Store、売り上げではApp Storeが圧勝 – iPhone Mania
AppStoreについても、本書で触れられています。
僕はAppStoreはあまりよくないプラットフォームだと思っています。あれは、クリエイターがブランドをためる仕組みが、プラットフォームの中に組み込まれていないんですよね。そうすると、クリエイターは常にゼロからの競争を強いられる。
確かにAppStoreはアプリが中心に設計されており、Amazonと似たようなコンテンツの見せ方になっています。楽天などは店単位に設計されていて、店の中でどういう商品が扱っているのかがわかりやすくなっています。
これは、AppStoreやGoogle Playがグローバルでオープンなプラットフォームにしているために、開発者をある程度絞り込んだり制限することには限界があるので、仕組みとしてクリエイターを自然に認識して、ブランディングできるようにすることが必要だ、ということだと思ってます。
プラットフォームをつくるというのは、非常に有益である一方で、ちゃんと消費者もクリエイターにも配慮して、全体でメリットを生み出し続けないと長期的に繁栄しない、という運営の難しさがありますね。
最近でた、プラットフォームの歴史や特徴が語られたこの本もおすすめです。