なぜIT業界が「稼げない業界」になってしまっているのか

経産省がIT業界の人材に関する報告書を発表しており、非常に興味深い内容になっていました。

特にそれがTogetterにまとめられ、「IT業界は本当ダメだな」という感想が多く寄せられており、なんとも言いようがない状況であることがわかります。

「情報システム産業では、2000年代後半から協力会社を中心として労働環境の悪化が相次ぎ受託開発ビジネスの限界に直面。丸投げ委託、多重下請けと人月ビジネスの横行等により、業界全体の魅力が低下した」という経済産業省の産業構造審議会の公式見解について – Togetterまとめ

確かにITゼネコンとかIT土方という言葉が生まれており、あまり環境が良くないと言われています。なんでこう言う状況になってしまったのでしょうか?

幾つかポイントがあると思うのですが、個人的に考えられる要素を並べておこうと思います。

 

IT業界を取り巻く負のサイクル

そのうちの一つは、日本の経営者におけるIT活用に対する興味のポイントです。経産省の資料に示されているのですが、日本の経営者は、極論をいえば「費用削減の手段」としてしかITを見ておらず、それが新しい付加価値を生み出す、収益を生み出すということの比重が小さいというのは、随分前から言われている話です。

IT1

で、業務合理化の手段としてITが活用されることになると、組織上にある傾向が生じてきます。それは、「業務の効率化=システムの導入が終了すると、IT人材は組織に不要になる」ということです。

それは、同じく経産省の資料に示されています。

IT2

ユーザ企業では、大規模なシステム投資は行うものの、あるプロジェクトが完了すると、システム系の業務がなくなるため、システム子会社など分社化するか、もともと外部から雇うなど、自社からIT人材はどんどんいなくなるのです。

また、「守りのIT」というのはどちらかというとチャレンジングな要素が技術的にも少ない傾向にあり、高い技術力が差別化になりづらい点も影響しているのではないかと推測します。

まとめると、以下のサイクルが発生しているのではないか、というのが僕の仮説です。

  • IT人材は一時的にはいるが、用が済んだら子会社化するなどして、社内にいなくなる
  • 社内にIT人材がいなくなった結果、次に必要になったときにはITベンダーに頼る比重が大きくなる
  • また、ユーザー企業が「枯れた技術」を好むため、ITベンダーの技術力はそれほど差別化要素にならない
  • ITベンダーがクライアントに対して引き受けなければいけない領域が広くなるため、差別化要素が低い技術領域をアウトソーシングする

 

でも、今後はこういう状況は変わってくるかな?

ただ、今後はメインビジネスの中にITが組み込まれることになるケースが増えていくんだろうと思っています。

例えば日本交通の社長だった川鍋さんは、2015年に社長から会長に退き、代わりというかJapanTaxiという情報サービス会社の社長に就任しています。

JapanTaxi株式会社(旧:日交データサービス)

UberなどIT技術の破壊力に危機感を抱き、このIT領域に非常に力を入れています。そのあたりは、以下の講演を見ると、よりわかると思います。

さらに、インダストリー4.0などITを使ったサービス化を実現する動きが製造業にみられています。コマツのコムトラックスが代表例としてよく挙げられますが、そういう動きも今後はもっと活発化していくのでしょう。

守りのITから攻めのITへ。そういう時代はもう来るんだと思っていますが、それがもっと盛り上がらないと、IT土方は量産され続けるんじゃないでしょうか。

今、これ読んでます。

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