最近人事の領域で、タレントマネジメントというアプローチが高まっている気がしており、タレントマネジメントに興味を持ったので、この本を読みました。
タレントマネジメントは人事領域においてひとつのトレンドになっていると感じています。本書を読んで、その感覚はより高まりましたし、経営戦略におけるタレントマネジメントの位置づけ、取り組み内容を理解できました。
なぜタレントマネジメントが注目されているのか
タレントマネジメントの考え方は、人材の流動性が高いアメリカで始まりました。流動性が高いと、従業員をつなぎとめておくための仕組みが必要になります。
例えば、魅力的なキャリアプランやリーダー教育の提供などです。本人が欲している機会が提供されれば、できるだけ長く会社に在籍してくれる、というわけです。企業側からみても、人材と職務環境のミスマッチによる流出を防ぐことができます。
人材の確保が難しくなっている日本市場で、企業側も社内の人材を育成し、働きやすく能力を発揮してもらいやすい環境を整備する必要性が高まっています。
実際、タレントマネジメントシステムの導入が日本でも進んでいるようです(少し古い数字ですが)。
しかし、昨今、日本国内においてタレントマネジメントは急速に広がっている。2011年から翌2012年にかけてタレントマネジメントに用いるシステムのパッケージライセンスは、19.9%伸びている。これはあくまでシステムの話で、現実のタレントマネジメントが浸透しているかどうかとは区別して考える必要はあるのだが、多くの会社でタレントマネジメントが求められていることに間違いないと言えるであろう
また今は、だれか一人が新しいビジネスを作り上げるほど、個人が経営に与える影響力が高くなっています。
これまで培ってきたビジネス資産(技術や人材のタレント等)を用いて、別の事業へ転換することをバリュートランスフォーメーションと呼ぶ。タレントマネジメントは、人のタレントに着目し、事業価値の転換、すなわちバリュートランスフォーメーションを可能にする。
そのため、個人はタレントという観点で自分の市場価値を高めていくことが求められていますし、企業側も優秀な人材を確保することで、ビジネスを変革したいと考えているのです。
企業と個人の関係性は変化している
これまでは企業の方は強く、企業が「人を雇う」「人を管理する」という関係性がありました。しかし、最近はその関係性が変わってきており、より対等な関係に近くなっています。
タレントマネジメントでも、そのような考えに基づき、企業と個人がそれぞれ良い関係であろうとすることが根底にあります。個人のエンゲージメントを高め、企業において個人のタレントを十分に発揮できるような施策が必要になるのです。
本書の中で紹介されているヒューマンキャピタルという考え方も、まさに企業にとっては人はパーツではなく投資すべき「資産」であり、育てた人材のタレントによってリターンを得ていくものだという考え方になっています。
そういう視点を得ると、企業には中長期的な考え方が生まれてきます。
新しく人材を採用する際、これまでは、いま現在不足しているポストにふさわしい能力や実績、経験を持つかどうかという観点で評価していたのではないだろうか。タレントマネジメントに取り組めば、5年後、10年後の中長期の経営戦略の実現のためのタレントを持っているのかどうか、設計で定義されたタレントと照らし合わせて、いまは持ち合わせていなくとも、将来、育成される可能性があるのかどうかという観点で人材を見る目線が加わるだろう。
裏を返せば、企業の考え方や仕組みを見直さないと、タレントマネジメントだけ導入するのは難しいのではないか、と思う次第です。
「人材管理」から始まった人事分野の考え方は、新しいフェーズを迎えていると思います。人が採用できない、社内に有望な人材がいないと言う企業がいれば、考え方を見直し、神田戦略を再構築する時期に来ているんじゃないでしょうか。
タレントマネジメントを調べている中で、こちらの記事も非常にわかりやすかったです。
タレントマネジメントの意味とは?定義や目的、事例をまとめてご紹介 | BizHint(ビズヒント)- 事業の課題にヒントを届けるビジネスメディア