「採用学」を読んでこれまでとこれからの人材採用を考える

HR TechやPeople Analyticsへの関心が強まっていて、先日もこういう記事を書きましたが、

HRテックやピープルアナリティクスを勉強するための本をいくつかご紹介

今回は、特に人材採用について理解を深めるために、こちらの本を読みました。

 

何かの本でこれが薦められていたので読んでみたのですが、正解でした。組織における人材採用について理解を深めるのにも良いですし、また採用をどうデータに基づいた活動に変えていくのか、ということを理解するにも、非常に良い一冊だと思います。

採用活動にパラダイムシフトが起こっているのでは

本書で語られているのは、今の採用市場はパターンが形成されており、成熟化する中でアンチパターンが生まれてきている、ということです。

リクナビやマイナビに代表される就活サイトが台頭し、マッチングの入り口が集約されていくとともに、エントリーシート→グループディスカッション→面接2回ぐらいという、テンプレートのような採用活動がどの企業でも採用されている、という実態があります。

そういう採用パターンが形成されてくると、対策も高度化してきて、エントリーシートの書き方、面接での受け答えなどで、「正解」らしきものをちゃんと学生側も習得するようになります。そうなると、「本当に企業が求める人材は誰か?」ということがわかりづらくなってしまいますよね。

根本的な問題は、「多くの企業が採用をパターン化してしまっている」というところにあります。本書では、はっきりこう述べられていますね。

まず一つ目は、就職情報サイトが日本の採用・就職のスタンダードとして定着した結果、企業の内部から、採用力の一部が失われていったということだ。

しかし、本書ではそういう状況から脱却するように、新しい採用方法を実施する企業の例も豊富に紹介されています。改めて、「自社に合った採用とは何だろう?」ということを考えるきっかけになるでしょう。

就職情報サイトが採用ツールとして普及・定着し、それを使うことが多くの企業にとって当たり前になってきたいま、それを使うこと自体はもはや、人材獲得競争上の優位をもたらさなくなりつつある。そのことに、一部の情報感度の高い求職者は気づき始めているから、今後、一部の求職者については就職情報サイトを 使わずに 就職活動を行う傾向が強まっていくだろう。

数年前からそうだとは感じていますが、このような採用パターンからの脱却、パラダイムシフトが起こってきているのが現在なのだと思います。

就職試験でよく語られる「コミュニケーション能力」ってなんだ?

よく採用の場面で語られる「コミュニケーション能力」というのは、一体どういうものでしょう?

本書の中では、それについても深く探求されています。僕の理解でいえば、日本企業は「評価基準が曖昧」であり、「その曖昧な基準をどの企業も採用している」という構造が存在しているということです。

日本のガラパゴス的な採用は、同じような評価基準により、同じような「優秀さ」をめぐるきわめて同質化した競争になっている。

代表的なものが「コミュニケーション能力」というものであり、本来的にはいろんな「コミュニケーション」の在り方があるし、それによって評価ポイントは異なるはずなのですが、それをひとつの「コミュニケーション能力」という言葉で、いろんな人が各自イメージした曖昧な「コミュニケーション能力」を評価するようになってしまっている、ということです。

しかし面白いのは、あるコンサルタントの考察として、人の能力には「変わりやすい能力と変わりにくい能力」があるといったものが紹介されています。そして、「変わりやすい能力」のひとつにコミュニケーション能力があるのです。あくまで個人の見解にはなりますが、確かにコミュニケーションは、程度の差こそあれ、誰でも場数を踏めばある程度は話したり説明できるようになります。

そうなると、今はうまく話すことができなくても、入社して教育すれば良いということになります。であれば、入社時点ではその点を実は重視しなくても良いのでは?という仮説も出てきます。

さらに、面接官によって自由に質問して評価するより、画一的な評価基準で面接評価した方が、入社後のパフォーマンスと面接時の評価に相関関係が出るという研究結果も紹介されています。このような「構造化面接」の方が、科学的でばらつきを抑えられて、検証もしやすいというメリットがあるということでしょう(もちろん、素晴らしい面接官が直感で見抜いた方が評価精度が高いということもあるでしょうが)。

就職情報サイトを中心とした採用活動は成熟してきてしまっており、新しい動きが出てきています。その中で、科学的なアプローチや新しいアイデアによって、採用活動を工夫する企業や手法が登場してきているのが現在です。面白いですよねー。採用する側も採用される側も、新しい動きが求められている、ということですね。

 

ちなみに、こちらの記事は、本書の事例として登場する三幸製菓で人事をやられていた方の講演記事です。こちらも具体的な事例が語られていて、非常に参考になります。

「御社が求めている人材は、もう社内にいますよ」 モザイクワーク・杉浦二郎氏が語る、採用活動の再定義 – ログミー[o_O]

こちらは、People Analyticsに関して具体的に書かれていて、理解が深まったのでご紹介しておきます。

あなたは会社の美意識を理解しているか– 採用×People Analytics – – marumaru – Medium