【書評】マーケティングは組織革命である

USJのCMOで有名だった森岡さんの最新本を読みました。

過去にも2冊読んできました。

革新的なアイデアはどんな人でも思いつけるかもしれない。この本を読めば

【書評】確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力

 

特に「確立思考の戦略論」は、数式をモデルにしたマーケティング理論が詳細に展開されており、読んだときは衝撃を受けたものです。

で、期待をして本書を読んでみたのですが、内容としては「マーケティングというより組織の本」という印象でした。

組織運営も「社内マーケティング」として捉えなおす

簡単に言ってしまえば、組織運営を「社内マーケティング」と捉えなおしたものです。ただ、「言うは易く行うは難し」で、実経験を伴った言葉には、説得力を感じます。

企業にはいろんな阻害要因が付き物ではありますが、この本を読むと、最初はマーケティング部部長という、最後のCMOから比べると役職も低く、権限が十分でなかった著者が、様々なロジックと戦略を駆使して、社内を説得し、変えていったことがわかります。

プロ・マーケターとしてUSJに雇われた2010年、私の立場は「マーケティング部長」という部長級でした。もちろん社長の強い期待を背負って入りましたが、職務権限そのものは 10 人程度いる各部門長の中の一人にすぎませんし、部長級以上の幹部の中では格段に最年少でした。しかも、上方向には、社長、取締役、片手の人数くらいの執行役員達(直の上司だったマーケティング営業本部長をはじめ、他部門を統括する本部長達)がいましたし、横方向にも他の部長や次長が数十人もいて、マーケティング部長として本気で仕事をすれば、上下左右と多くの衝突が避けられない構造に置かれていました。会社全体を動かせるような立場ではそもそもなかったのです。

そういう前提で本書を読むと、自分が置かれている状況がどうであろうと、言い訳できなくなるんじゃないでしょうか。例えば、こんな感じです。

  • 同意してくれる人がいない →相手の立場にたってロジックを組み立てよう
  • 邪魔する人がいる →意思決定者を絞り込んで説得しよう
  • 経営資源がない →段階を踏んだ計画を立てよう

こういう考え方を知っておくと、組織の中で腐らずに頑張ろうかなと思えます。

 

組織の弊害をどう取り除くか

みなさん、組織が良い雰囲気で、結果を出していきたいと思うでしょう。

そのためには人間の本質を踏まえた上で、組織の弊害をどう取り除き、仕組や風土を作るのかも具体的に書かれています。

人間には元来自分を安全に守る本能があり、至る場面でその本能が顔を出します。それを理解した上で、コミュニケーションや制度設計を行うべきです。

例えば人事評価について、本書ではこう書かれています。

安易な方向に流れやすい個々人を、あえてちょっとだけ緊張感のある環境に置く…。自己保存のために、部下はより高い成果を出すのに必死、上司も部下に良い仕事をさせるのに必死、そういう連鎖が拡がれば会社の業績は上がります。毎年、同じようなことを繰り返しておけば許される組織では、人は楽に生きようとします。そんな組織からは、革新的なアイデアや、常により良い業績を生み出す執念は生まれてきません。人間はある程度追い詰められないと本当の力を発揮できないからです。

結果を出すためには、アイデアや自分の役割だけでなく、組織を機能させる仕組みまでコミットしなければいけない、ということです。

これを読むと、どんな役割・役職であれ、組織を動かしてビジネスをしようと思ったら、組織マネジメントについて知っておかなきゃならないと改めて思いますね。

ちなみに、読みながらすごいうなずいたのが、「組織のメンバーに対する捉え方」です。

しかし私は、 社長と平社員は役割が違うだけで対等な存在 だと考えるようにしています。「年齢差による呪い」と同様で、どちらの方が偉いとか、偉くないとか、役割の違いを優劣や上下で捉えると、お互いに対等にコミュニケーションができなくなる呪いに支配されてしまうからです。

組織は、役割が違う人が集まって構成されています。そのどれかが欠けると、組織は力を失ってしまうという意味では、「全員が対等」であるところから出発する必要があると思ってます。責任範囲も含む役割が違うだけだと。こういう考え方で組織を運営したいなっていつも思いますね。

 

最後に収録されている対談4本も読みごたえがあってよいです。もともとは雑誌の企画だったようですが。