リーダーは組織に「安心」を作らなければいけない

最近、TEDを見ることを日課にしているのですが、久々にとても良いプレゼンを見ることができました。

なぜ優れたリーダーの元では安心を感じられるのか

 

人々に安心を与えるリーダーは組織を活性化させる

人々は、自分の身に安心が形成されると、他者と協力し、創造的に、意欲的に物事に取組むようになります。確かにそうですよね。自分の身に危険が迫っているとわかっていた場合、保身などの方にエネルギーを注力しますし、時には他者を裏切ったりもするかもしれません。

僕らが毎日食料を探したり育てたりしなくて良いのも、近所のスーパーで食料を買えるし、レストランでいつでも食事ができると思っているからです。なので、自分の仕事に集中することができます。

つまり、組織で仕事に集中させたいなら、部下の人たちが組織の運営上余計なことを心配しないよう、安心を与えてあげる必要があるのです。

 

上司と部下が対立したときに、部下に寄り添い、守ることができるか

安心を与えるリーダー、というと難しく感じるかもしれませんが、動画を見ながらあまり重く捉えるのではなく、「基本的に、部下を守るように思考し、行動すれば良いのだ」と感じました。

組織を運営するにあたっては、上司と部下で利害や意見が対立するときがあります。そのときにも、利己的な権力を振りかざすことなく、部下を守るためにはどうすれば良いか、それが組織全体の利害と対立しているのであれば、それをどう取り除くかを考えれば良いと思うのです。

 

こうやって大事なことを、簡潔に示してくれるプレゼンがあるので、TEDっていいなって思いますね。

 

ちなみに、この動画も大好きです。

創造的なアイデアを生み出す組織をつくるためには

日本が世界に誇る経営学者、野中郁次郎さんの「知識創造企業」を読みました。野中さんといえば、第二次対戦の日本軍を分析した「失敗の本質」が有名ですね。

 

「知識創造企業」は、先に英語で出版され、その後日本語で出版されたものです。「知識経営」という考え方を中心に、知識をマネジメントし、創造するためにどう組織を形成すれば良いかが、実例とともに詳細に分析されています。

 

 

知識を生み出せる組織を作るにはどうしたら良いか

知識経営といえば、暗黙知と形式知が、個人や組織をどう流れていくかを表したSECIモデルが有名です。最初にこのモデルを知ったのは「リクルートのナレッジマネジメント」という本でしたが、知ったときの衝撃といったらありませんでした。

 

そこから刺激を受けて書いたのが、「IT産業が労働集約型から知識集約型に転換するために必要なこと」という記事で、未だにこのブログでアクセスが多いです。

そんなSECIモデルですが、注目されるべきは知識を「形式知」と「暗黙知」に分けて、それぞれの知をどう育てていくかを整理していることです。欧米では「知識=形式知」という考え方が中心でしたが、暗黙知を強みとする日本企業の隆盛から、暗黙知を含めた知識のマネジメントが必要という結論になっているわけです。

SECI

そして、本書ではSECIモデルを実現するための組織構造についてもどうあるべきかが述べられています。そのためには、官僚型の組織とタスクフォース型の組織をハイブリッドにすることが有効と分析されています。形式知を共有したり、それを学習するのは官僚型が向いていますが、暗黙知を共有したり、それを形式知に変換するには官僚型のような定型的な業務の中では生み出しづらいのです。

このあたりの組織設計や設けるべきルールについて、シャープの実例などが細かく描かれており、具体的なイメージを抱きやすくなっています。

 

知識を経営に活かしたいと思う企業には、有益なエッセンスがたくさん含まれている

本書の中に、たくさん有益なエッセンスが含まれていました。

  • 知識創造に必要な3つの特徴

知識創造の三つの特徴を示唆している。第一に、表現しがたいものを表現するために、比喩や象徴が多用される。第二に、知識を広めるためには、個人の知が他人にも共有されなければならない。第三に、新しい知識は曖昧さと冗長性のただなかで生まれる。

  • 暗黙知を移転させるためには、社員のあいだに「共通基盤」を創る必要がある

ここで言及しておきたいもう一つの組織的条件は、冗長性である。西洋のマネジャーは、不必要な重複や無駄という意味合いを持つ冗長性(redundancy)という言葉を好ましく思わないだろう。しかし、冗長性を持つ組織を作ることは、知識創造プロセスのマネジメントにとって非常に重要である。なぜならそれは、頻繁な対話とコミュニケーションを促進するからである。冗長性は、社員のあいだに「認識上の共通基盤」を創り、暗黙知の移転を助けるのである。組織成員は情報を重複共有してこそ、お互いが四苦八苦しながら表現しようとしていることをわかり合える。この情報共有という冗長性によって、新しい形式知が組織全体に広まり、一人ひとりのものになるのである。

  • 暗黙知を形式知に変換する方法

どうすれば暗黙知を形式知に効果的、効率的に変換できるのだろうか? その答えは、メタファー、アナロジー、モデルの順次使用である。

 

他にもたくさんあります。どうやって自分の組織に活かそうか、読みながらいろいろアイデアが生まれるでしょう。

 

経営論的には、外部環境より内部環境にフォーカスされた理論

「経営戦略全史」を読めばわかりますが、ナレッジ・マネジメントはどちらかといえば組織の内面に注目した理論です。外部の環境変化などに対する要素はあまり含まれていません。

経営戦略を学び直して、本当の意味で理解するための「経営戦略全史」 | Synapse Diary

なので、先ほどシャープが実例として取り上げられていると書きましたが、現在のシャープの苦戦状況をみると複雑な気持ちになります。経営というのは、何かに優れているだけでも十分ではないんだなと改めて思うわけです。

そのほかにも、テイラーから始まる科学的管理法は、経営者・管理者に責任と権限を集中させることになり、知識の創造を組織一体で行う流れとは異なったという欧米的経営手法と日本の経営手法の対比に関する分析は、「なるほど」と気付かされる示唆でした。

 

どんな企業であれ、組織の中で知識をどう生み出していくか、どう展開し事業に活かしていくか、という点では課題を抱えていると思います。本書は、それを解消するヒントになるでしょう。

組織という組織は、遅かれ早かれ、すべて知識を創りはじめる。しかし、大多数の組織ではいまだに運だけにたよっていい加減に知識が創られており、そのプロセスを予測することができない。その知識創造のプロセスをシステマティックに管理するのが、知識創造企業の特徴なのである。

 

 

この記事に興味を持たれた方には、こちらの記事を次に読まれるのがおすすめです。

https://synapse-diary.com/?p=3516

R言語で文字列の類似度を計算する

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ビッグデータによる解析で注目されているのは、文字列解析です。

数値解析はこれまでも行われてきましたが、非定型で定量化されていない文字列のデータをどう解析するかは大きな課題でした。しかし、いろいろ解析手法が編み出されてきており、かつIT技術の進歩によって膨大なデータを取り扱えるようになっていることから、現実的に使える分析になっています。

これまでR言語による分析をはじめたと書いてきましたが、今回は具体的な文字列解析に関する内容を書いておこうと思います。

 

文字列の類似度を定量化する

2つの文字列を比較して、どの程度類似しているかを定量化します。いろいろ手法はあると思っていますが、とりあえず使いやすそうなのは「レーベンシュタイン距離」です。

レーベンシュタイン距離(レーベンシュタインきょり)あるいは編集距離(へんしゅうきょり)は、情報理論において、二つの文字列がどの程度異なっているかを示す数値である。具体的には、文字の挿入や削除、置換によって、一つの文字列を別の文字列に変形するのに必要な手順の最小回数として与えられる。

レーベンシュタイン距離 – Wikipedia

R言語の場合、「MiscPsycho」というパッケージにレーベンシュタイン距離を計算できる関数が用意されています。R言語ってこういうパッケージで簡単に用途を広げられるのが素晴らしいですよね。

aとbの文字列の類似度を計算する場合
library(MiscPsycho)
string(a,b)

 

文字列の全てではなく特定のキーワードを抽出する

文字列の比較を行うにしても、全てを単純に比較するより単語を抽出した方が効果的な場合もあります。そういう場合は、名詞だけを取り出してみましょう。

R言語では、「RMeCab」というパッケージで簡単に名詞などに分解するような、形態素解析を行うことが可能です。

aの文章を形態素解析する場合
library(RMeCab)
result <- RMeCab(a) # 形態素に分解したリストが生成される
unlist(result) # リストを表示

基本的な操作は以下の資料を参考にしました。

 

OsakaR_3: R言語によるテキストマイニング入門 from Yuichiro Kobayashi

 

ちなみに、Macの環境でRMeCabのインストールがうまくいかなかったので、以下のリンクを参考に実施しました。

RMeCab – RとLinuxと…

 

これで、文字列の類似度を比較することもできるし、形態素解析を組み合わせて、比較の精度を向上させることだってできます。しかも、パッケージを2つインストールするだけで、R言語上ですぐに実行できるのだから、本当に良い世の中になったものです。勉強するための資料もインターネット上にたくさん存在しているし。利用しないともったいない。

今度は、株価分析もやろうかなーと思っていますよ。

データ分析したい人は、とりあえずR言語を使ってみよう

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前回の記事で、データアナリティクスを実際にやるためにR言語を学習し始めたと書きました。

「ヤバい予測学」を読んで「R」を学んだら、データアナリティクスの可能性を肌で感じた | Synapse Diary

引き続き、R言語を触っています。やってみて思ったことは、「実際に触っていると、分析の切り口が思い浮かぶ」「やりながら分析方法が改善されていく」ということです。

最初は、「何となくこういうことを分析したい」というところから始まったのですが、少しずつプログラムを組んでいくと、「ここをこうすれば、具体的な分析結果までいけるのでは?」と思いついたり、作ってる途中で「ここを変えれば、もっと良い分析ができるのでは?」と閃いたりします。

 

意思決定に影響を与えるデータ分析を行うために

会社を変える分析の力」では、データサイエンティストに求められる条件は、「どんな分析をするか構想する力」であり、その結果として組織の意思決定に影響を与える必要があると書かれていました。

データ分析が注目されていますが、一番高いハードルが、「結局分析して何の役に立つのか?」という点に応えるための、一連の流れを創りだすことにあります。そのためには、分析ノウハウも当然必要ですが、業務に結びつけるイメージも同時に持つ必要があります。

 

人のタイプにもよると思いますが、個人的にはやはり分析ツールや方法を実際に知らないと、意思決定に結びつけるまでイメージするのは難しいと思います。そして、R言語を弄ぶことで、漠然と描いていた、データ分析から意思決定までの流れが少しずつ具体的にイメージできることを体感しました。

 

データ分析には限界がある

また、R言語を触ってみるとデータ分析には当然ながら限界があることもわかります。ある程度、人手でカバーしたり、完璧をもとめず有用な分析結果を取り出すよう、「割り切る」部分も求められるわけです。

そういうことも含めて、データから良い分析結果を取り出すまでのフローを設計することが、データサイ分析の現場では求められます。

今回、文字列の類似度を計算したり、クラスター分析したりしてみましたが、文字列の類似度も完璧に機械化できるわけではなく、人間の感覚とは違います。また、クラスター分析だっていろんな手法があり、自分がイメージするように綺麗にクラスターとして分けてくれるわけではありません。こういう壁にぶつかるとイライラしてきますが、一定の限界を受け入れなければいけないわけです。

それと同時に、クラスター分析にいろんな手法があり、それを改善する方法もいろんな人が研究してるんだなーと感心もしました。奥が深い、統計分析の世界。。。。

 

まだR言語の書籍買わず、ネットで調べただけですが、フリーツールで、膨大な情報があるというのは、本当にありがたい時代だなって実感します。

Slideshareあたりで参考にした資料を貼っておきます。とりあえずこれらを読めば、いろいろ分析に着手できますよ。

 

 

 

 

 

「ヤバい予測学」を読んで「R」を学んだら、データアナリティクスの可能性を肌で感じた

ビッグデータやデータアナリティクスという言葉が、すっかりバズワードになっている気がしますが、実用的なネタはそれほど多くなかったり、まだ実際の業務で当たり前に使うってレベルではありません。むしろ、これからもっと実用的なレベルになっていくんだと思います。

 

「ヤバい予測学」を読むとデータ分析したくなる

 

「ヤバい予測学」を読んだのですが、予測に必要なアナリティクスのアプローチや実例を、丁寧に順を追って説明してくれます。シンプルな予測モデルの作成にはじまり、複合的な予測モデルの組み合わせによる精度向上、人工知能の実態なども具体的な分析のイメージを与えてくれます。

合わせて述べられる豊富な実例は、自分の業務などにどう活かせるかを考えながら読ませてくれるので、すごい刺激を受けます。

組織的にどうやってデータアナリティクスを導入していくか、という点では「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦」が面白いですが、具体的なデータ予測の中身を学ぶのであれば、「ヤバい予測学」の方が良いです。

 

分析したくなって「R言語」の学習をはじめた

「ヤバい予測学」を読んで、たまらなく分析してみたくなったので、統計解析ソフト「R言語」をインストールして、勉強してみることにしました。

The Comprehensive R Archive Network
[browser-shot url=”http://cran.r-project.org/” width=”600″ height=”450″]

少し触ってみてわかりましたが、基本的な統計分析ができるようになっていますし、数千行にもおよぶデータ群を読み込ませても、ヒストグラムなども簡単に解析できます。複雑な計算でも、スクリプトを書けばできますし、構文もそんな難しくありません。ただ、データモデルはちょっと独特な感じがしますね。

 

いろいろ試行錯誤しながら、文字列の類似度を評価して、クラスター分析してみました。文字列の類似度を計算するメソッドが用意されていることにも、驚きを覚えました。コマンドひとつで実施できるわけですから。

文字列の類似度を測る(1) レーベンシュタイン距離|Colorless Green Ideas

それ以外にも、全然業務に関係ないけど、株価予測とか企業の倒産確率とか面白そうだなーと思ってます。

R言語を用いた自己回帰モデルによる株価予測を試してみた – Yuta.Kikuchiの日記
Rで学ぶ『構造型モデル de 倒産確率推定』

 

知識として理解することも重要だけど、実際に自分で触ってみると「実感」としての理解が進みますよね、やっぱり。データアナリティクスは、改めていろんな可能性が広がってるなって思いました。

しばらく分析ネタに飢えていると思うので、良い分析ネタがあれば、誰か教えてください。

快適に文章を書くためにアウトライナー「WorkFlowy」を使う

少し前から、このブログを書くのに「WorkFlowy」というアウトライナーを使っています。

WorkFlowy – Organize your brain.
[browser-shot url=”https://workflowy.com/” width=”600″ height=”450″]

アウトライナーというのは、その名の通りアウトラインを整理するためのツールです。箇条書きが基本になっていて、インデントによって親子関係を表現したり、順番をドラッグ&ドロップで入れ替えることができます。そんなに凝った機能はなく比較的シンプルがツールです。

今回の記事も最初はアウトライナーに落としてから書きました。(比べればわかりますが、あんまりアウトライナー通りに書いてあるわけじゃありません。。。。)

workflowy

ただ、アウトライナーで書いてみてみると、いろいろメリットがあるのです。

 

文章を構造的に整理することで、様々なメリットがある

これまで、アウトライナーは使っていませんでしたが、何となく項目立てを予め決めて書いたりしていました。しかし、アウトライナーを使うと、文章を書くのが楽しくなりました。

 

書きたいメッセージが明確になる

いつも、書こうと思うメッセージが自分の中にはあるはずなんですが、なかなか文章にしていくのは難しいものです。

しかし、アウトライナーを使って構造を整理して俯瞰すると、「いやー結局何が言いたいのかわからないな」ってことに早めに気づくことができます。書いた後で読み返したときにそうなると、結構心理的負担が大きいのですが、早い段階で思えるのは心理的にプラスです。

 

書く気にならないときも、アウトラインを整理すると筆が進む

何となく筆が進まないときっていうのもあるのですが、「とりあえずアウトラインだけでも書いてみるか」って気になります。あと、アウトライナーでひとつのトピックを表示すると、それ以外画面には表示されないので、集中力が増す感じにもなります。

アウトラインを整理することのメリットは、読書猿でも書いていますね。確かに筆が進む実感があります。

書けない時にあなたを助けるアウトライナー・ストーミング 読書猿Classic: between / beyond readers

 

Web、iPhone、Androidなどマルチプラットフォーム対応が良い

以前取り上げたTodoistもそうですが、こういういろんな場面で使うツールはマルチプラットフォームだとストレスなく使うことができます。

タスク管理ツールはToDoistで決まりで良いんじゃないかと | Synapse Diary

アウトライナーって、あまり目新しい機能でもないわけですが、UIやサービス設計を工夫することで、新しい価値を生み出せるという良い例だと思います。

 

空いた時間もiPhoneでアウトラインを整理

これまで、文章を書くときはPCでキーボードに向きわないと無理だったんですが、アウトラインだけならiPhoneでできるようになりました。これは結構大きいですね。実質的に考える時間が増えることになるので。

あと、ネタ帳的な使い方もできます。

 

というわけで、文章を書く人はぜひお試しを。個人的にはもうしばらく使ってみようかなって思うほど、文章を書くのが快適になりました。Evernoteに標準装備とかしてくれれば良いのになーと思うけど。

ちなみに、以下のリンクからWorkFlowyに登録されると、無料アカウントでは250項目に制限されているのが、500項目まで増えます。ついでに、僕も250項目増えます。

WorkFlowy – Organize your brain.

スターバックスが大学生の学費を負担する理由

アメリカのスターバックスが、大学生の学費を負担する制度を発表し話題になってます。なんでこういう制度を設けるに至ったのかを考察したいと思います。

スターバックスが発表した制度としては、学費の2年分を負担するのが基本のようです。

スタバ、従業員の大学授業料肩代わり 就業義務なし「向学心支援は最高の投資だ」 秋から  – MSN産経ニュース
超太っ腹! 米スターバックスが「従業員のために大学の学費を肩代わりするプロジェクト」を発表 | ロケットニュース24

 

アメリカの学費は高騰している

上記の記事にも書いてありましたが、今回の制度にはアメリカの大学の学費が高騰しているのが背景にあります。で、なんで高騰しているのかといえば、官僚主義によって管理者の給与をはじめ、運用コストが上昇していることが原因です。

アメリカ暮らしのファイナンシャル・プラニング Smart&Responsible » アメリカ大学 学費高騰のミステリーの裏には・・・

そして、起業ブームと合わさって大学の価値そのものに議論が呈されていたり、カナダへ流出するような状況も生まれています。

学費高騰が続くアメリカ名門大学に意外な「敵」が! コンサルティング会社が設立をもくろむ新たなビジネススクール  | 田村耕太郎「知のグローバル競争 最前線から」 | 現代ビジネス [講談社]

学費の高騰も影響して、大学生そのものがアメリカからいなくなるんじゃないかという感じです。

 

スターバックスのオペレーションは学生アルバイトが前提

これも前述の記事に書いてありましたが、スターバックスの全従業員(アルバイト含む)13.5万人のうち7割が大学生か就学希望者とのことです。つまり、大学生のアルバイトがオペレーションの前提になっているので、安定的に労働力として確保する必要があります。

特にスターバックスの場合は、接客サービスにも力を入れていますし、教育にも熱心です。なので、せっかく教育した人にすぐ辞められるのは得策じゃありません。

 

スターバックスの経営へのインパクトは?

前述の記事によると、一人の学生に対してスターバックスが負担するのは3万ドル程度のようです。

大学で一単位取得にかかる費用は約500ドル(約5万)と高額で、スタバ従業員が2年分の学費を負担してもらえれば、約3万ドル(約300万円)を節約できるのである。

超太っ腹! 米スターバックスが「従業員のために大学の学費を肩代わりするプロジェクト」を発表 | ロケットニュース24

仮に5000人対象になったとすると、1.5億ドルぐらいになります。

一方で、2013年の決算報告書を見ると、売上は149億ドル、利益は24億ドルです。

Starbucks Fiscal 2013 Annual Report – FINAL.PDF(PDF)

なので、5000人対象の場合は6%ぐらいの利益が吹っ飛ぶぐらいの規模感ですね。それでも学生を安定的に確保したり、企業全体のイメージアップに寄与するのであれば、宣伝効果としても良いのかもしれないなあと。アピール上手だなって思いました。

 

ちなみに、日本でも大学の学費は上昇していますね。急上昇という感じではないので、すぐにスターバックスが同じ制度を日本で展開するってことにはならないと思いますが、大学の価値ってなんだろうなーっていろんな人が思うときは来るのかもしれません。

国立大学授業料|年次統計

 

劇的に変化し衰退していく業界で奮闘する「漫画貧乏」

「ブラックジャックによろしく」の作者である佐藤秀峰氏の「漫画貧乏」を読みました。正直、電子版が無料になっていたことが、読もうと思ったきっかけであります。

 

「ブラックジャックによろしく」の電子版が無料で公開されたとき、「新しい時代が来たなー」と感じました。大ヒット漫画が無料で誰でも入手できるのですから。この本は、それに至るまでの、著者の格闘の記録です。

 

衰退する外部環境と、閉塞的な内部環境

漫画を含む出版業界というのは、全体として大きな変化が生じています。そもそもが出版不況と言われており、本というコンテンツが消費される割合が減っています。エンターテイメント全体がインターネットの台頭によって消費スタイルが変わってきているのです。

そして、インターネット業界からの参入によってAmazonという新しいプラットフォームが覇権を握り、読者が本を入手する方法も大きく様変わりしました。電子書籍やオンデマンドプリントが実用レベルに達するなど、どんどん読書のスタイルも多様化しています。

 

そういう状況の中で、漫画業界というのは外部環境の変化についていけてないのではないか、と本を読んで感じました。これまでの漫画業界は、週刊誌をはじめとする漫画雑誌への掲載を広告と捉え、単行本によって収益を生み出すモデルです。そのためには、雑誌が有益な広告媒体でなければいけません。しかし、雑誌は廃刊が続いており、広告媒体としての役割を低下させているのは否めません。

実際に統計でみると、コミック単行本の売上はほぼ横ばいですが、コミック誌は右肩下がりで低下しています。

日本の出版統計|全国出版協会・出版科学研究所

それでも漫画の製作サイドとしては、安くて不透明な原稿料、漫画家の徒弟制度など、旧来のビジネスモデルを大きく超えるようにはなっていないのです。外部環境が大きく変わる中で、内部環境が変われない状況です。このままでは、業界全体が衰退していきます。

その中を、著者は危機感を募らせ、少しずつ状況を変えていこうと試みます。

 

混沌とした状況から何が生まれるか

経営というものは、良いときは従業員やステークホルダーもあまり文句を言いません。しかし、ひとたび状況が暗転すると、お金を含めたいろんな人の欲望が「ダークサイド」として噴出します。賃金を上げろとか、容赦ないコストカットとか、そういうネタが続々と出てくるわけです。やはり、自分の身を守る必要が出てきますから。そうなる前、なった後に解決を図っていくのが経営者であるわけです。

しかし、外部環境の変化についていくのは結構大変です。特に出版のように長く続く業態の場合は、変化への抵抗力が育成されていないかもしれません。

 

それでも、今後はもっと新しい取り組みが登場すると思います。「ブラックジャックによろしく」の電子版無料開放は、広告効果としては大きなものをもたらし、有料書籍の購買にもつながりました。1.5億円以上の効果があったようです。

「ブラックジャックによろしく」二次利用フリー化1年後報告

他にも業態として、電子媒体だけを専門とする出版社みたいなのがあっても良い気がしますし、出版社の編集機能を別の形で実現する方法は生まれてくると思っています。今後、いろいろ変わっていくんじゃないかな、と。

ひとまず、本書の著者のように、自ら行動することで外部環境の変化に適応し、新しい価値を創出できるきっかけをつかむことができるのではないかと思う次第です。

地銀業界全体を動かす1枚のペーパーの威力

週刊ダイヤモンドが銀行特集でした。特に地銀の動きが大きくなっていますね。

 

内容は雑誌で確認してもらうとして、人口減少を迎える地方における地銀の多くが、利益を出せなくなるという危機感があります。そうなる前に手を打っていかなければいけません。

これ読んで思ったのは、地域を限定されるドメスティックな職種は、外部環境の変化にとても弱いということです。その地域に勢いがなくなると、急速にしぼんでしまいます。地銀はまさにそういう状況なのだと思います。

それはさておき、今回の地銀の動きは、ある1枚のペーパーから始まっていると言われています。

昨年12月、金融庁は地銀各行の頭取に、「金融機関の将来にわたる収益構造の分析について」という1枚のペーパーを配った。縦軸に各地銀が基盤を置く地域の将来の市場規模の縮小度合いを、横軸に現状の収益性を取ったグラフに、それぞれの地銀の位置が点でプロットされたものである。  通称、森ペーパー──。理論派といわれる森検査局長の肝いりで作られたこのペーパーは、地銀の行く末を案じ、再編を含めた生き残り策について、本気で議論していこうという金融庁の意思を雄弁に語っていた。

過去最高益の裏で金融庁が目論む「地銀再編プロジェクト」の全貌|今週の週刊ダイヤモンド ここが見どころ|ダイヤモンド・オンライン

週刊ダイヤモンドには、このペーパーの内容も具体的に書かれていました。「この1枚を見ただけで地銀の現状と課題がわかる」という意味で、すごい破壊力だったのだと思います。

 

また、昔あるコンサルタントに、「顧客である経営者に会って、ある紙を1枚見せたら、すぐに自分の会社の課題を理解して、翌日には行動していた」という話を聞いたことがあります。

 

何が言いたいのかといえば、的確に問題を捉えていれば、1枚のペーパーでも大きく物事を動かすほどの説得力を持たせることができる、ということです。そういう破壊力あるペーパーを作るためには、たくさん調べ、考えなければいけません。紙を作る部分というのは、労力のうち本当ちょっとでしかないのです。そういうペーパーを作れる人が、今後はもっと必要とされていくのでしょう。

短くても、本質を突き、そして人に端的に説明できる人が。

【書評】年収は「住むところ」で決まる

イケハヤさんが東京から高知に移住する、というのが話題になっていますが、この本はまさに「どこに住むのが良いか」に大きな示唆を与えてくれる一冊です。

 

本を読んで、ここ数年思っていたモヤモヤが氷解する思いでした。これから働く場所を決める大学生なんかは読んだ方がいいです。本当に。

 

イノベーション産業は多くの雇用を生んでいる

GoogleやFacebookなどのIT系の企業は、儲かっているが雇用はあまり生んでいないと言われています。Googleは5万人、Appleは6万人ぐらい、Facebookは5000人ぐらい。トヨタは30万人以上。

Facebook、2012年の従業員一人当たりの収益は110万ドルに相当 | ブログヘラルド
キャッシュ残高8兆円のアップルに何を学ぶ|大西良雄ニュースの背後を読む|ビジネス&キャリア|ヨミモノ|QuonNet

つまり、時価総額は高いのに従業員数が少ないので、一部の人にしかイノベーションの効果を享受できていない、っていうことですね。

でも、それに対して本書では反論されています。それは「乗数効果」がポイントです。企業単体で見ると確かに製造業などと比べて雇用数が少ないです。が、企業がある都市にあるいろんな産業に、経済効果が働くと述べています。イノベーション企業の従業員は高い賃金を得るので、その人たちが生活に必要なお金を使うことで、経済効果が波及するってことです。そして、その効果がとても大きいと述べられています。

雇用の乗数効果はほとんどの産業で見られるが、それが最も際立っているのがイノベーション産業だ。その効果は製造業の三倍にも達する。

 

都市に人材が集まることでイノベーションが生まれる

そして、イノベーション企業は一箇所に集まる傾向にあることも重要なポイントです。ICTが進化して、コミュニケーションコストがタダみたいに低くなり、情報の伝達速度が著しく速くなりました。それでも、人が直接集まるとイノベーションが生まれやすくなる、ということがわかっています。

なぜ直接集まった方がイノベーションが生まれやすいかは、本書の中でいろいろな理由が述べられています。僕なりに解釈すれば、やはり電話やメール、SNSなどコミュニケーションは多様化しましたが、それが故に、直接対面で会うことによるアイデアの創出効果が、相対的に高くなったのだと思っています。

地理的制約から自由になると思われたインターネットは、確かにそういう面がある一方で、対面で人が交わる価値を大きく向上させたのです。

 

働く場所を選ぶことの重要さ

で、本書のタイトルに帰着するのですが、

  • イノベーションは人材が集約した都市で生まれやすい
  • イノベーションを創発する企業があると、都市に乗数効果が生まれる
  • 同じ職業であっても、賃金は都市によって変わる

ということです。ブルーワーカー的な職業であっても、都市によって賃金が変わるのです。そうなると、どこで働くかが重要になってきます

というわけで、何を職業にするかも重要だけど、働く場所についても考えよう!

 

逆に地方都市の立場で考えれば、どうやったらそういう都市づくりができるのかのヒントにもなります。本書でも、行政がどういう施策を行うべきか、ということも検討されています。いろいろ面白いです。

ちなみに本書を読んでいて、コワーキングスペースってやっぱり重要なイノベーションハブになるのかな、と興味が深まりました。コワーキングスペースは岐阜にもあるみたい。

岐阜初コワーキングスペース – 人とつながる、未来とつながる。~BeansCoworkingSpace~
岐阜県岐阜市のコワーキングスペース 【UtsukeLabo】 -うつけラボ-