キュレーションの時代

最近話題になっているね。面白かった。結論を述べるまでの論考がスムーズで、かつ具体的なので、納得性が高い。こういう本を良書と言うのだろう。情報が伝達するためには、コンテンツのみでなく伝達手段と組み合わさることが重要で、そのどちらも欠けてはいけない。そして、コンテンツが豊富な現在では、その伝達手段が問われている。

コンサル業においても、いろいろ情報が取得しやすくなってるせいか、クライアントも知識が多くなってきて、専門的な情報の有無だけではコンサルタントとして勝負するのは難しくなっている。

システムひとつをつくるにしても、どんどん新しい技術が登場し、アプローチに迷ってしまう。「もう少し待てば、また新しい技術が出てくるのでは」という漠然とした先伸ばしもあったりで、ひとつひとつの物事に対して判断することが難しくなってきているようにも思える。

そういうときに、今ある情報の切り口を提供して、「どういう考え方をすべきか」を示唆することを、コンサルタントに求められている。いろんな情報が、「単なる情報」だけでは届かなくなっていて、情報に意味を持たせることが求められている。

名古屋発どえりゃあ革命!

これを読んで、河村名古屋市長がどのような方向性を目指しているのか、何となくわかった気がしたのでメモ。

減税=小さな政府

なぜ減税か。ポピュリズムという批判もあるが、減税の根底にあるのは「小さな政府」。

お金というのはひとつの制約事項であるが、逆にこれが潤沢にあると制約は外れていく。そして、組織というのは大きくなればなるほど、コスト圧縮の制約は働きにくくなる。これは行政機関に限った話ではない。

コストを削減するためにどうするかといえば、トップが旗を振って制約をかけたり、予算制度でキャップを設けて制約を作ることで、末端までコスト圧縮の力が働くようにするのが通常だ。あとはその力が強いか弱いかだけ。

名古屋市政では減税の財源を行革などから捻出しようという計算のようだが、これもコストのキャップがあってこそ改革が本格的に実行に移される、という作用を考慮したものだ。シュンペーターの「不況なくして経済発展なし」ではないけれど、制約があってこそイノベーションが生まれる。その考えが根底にあるように思える。

権力の分散・縮小化

より住民に密着した自治を達成するため、国・県から基礎自治体へ、そこからさらに住民側へ権力を分散しようとしている。基礎自治体よりも小さい自治単位として委員会をつくり、そこで住民自治を行うようにして、住民自治の受け皿をつくったのが象徴的だ。

大きい組織では動きが硬直しやすく、細かいレベルでの決定ができなくなり、非効率になる。その流れを受けて地方分権が叫ばれているのだけれど、名古屋市のような人口200万人レベルになると、基礎自治体という単位では細かい自治が難しいのかもしれない。もっと行政区を細かくして、裁量を委ねていく。このあたりは大阪都構想とも思想が似ている。

それにしても、これだけ注目される人も珍しい。やり方に是非はあるとしても、注目され対立軸が生まれるのは政治にとって良いことだと思っている。対立軸を設け、その点を争うことで違いが明確になるし、投票する側も自分が望むのは何か、を具体的にイメージし、選択することができるようになる。

首長は議会から不信任案が出されて可決されない限り解散できないことや、減税すると起債が禁止されるなどの制度は、これを読んで初めて知った。こういう実態は、やはり多くの人が知らないものだ。大村愛知県知事との対談内容や、市議会との対立から辞職に至るまでのエピソードも含め、住民自治を再考するとともに、ひとつの読み物としても面白かった。

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河村 たかし

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ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉である

大学の頃からだらだらとブログを書き続けているが、なんで続いているのかは自分でもよくわからん。ただ、この本のことを思い出すと、ブログを書くときの気分が軽くなる。惰性で更新してもいいじゃないか。余り中身がないことを書いたっていいじゃないか。たまには間違ったことも書いちゃったりするけれど、ごめんなさい。それでも知的な生活を送るためには、何かをアウトプットすること、そしてそれを継続することが重要だと、今なら思える。

ここまで続けてきて思うのは、本当に何かを続けるという行為は難しいものだということ。禁煙、ダイエット、運動、etc…

世の中の人が苦労しているのがよくわかるけれど、意思ひとつで継続できれば苦労はしない。逆に、なぜか続けられることもある。そういう、自然と継続できるものこそが、自分にとって適している行為であって、理由なんぞ考えず粛々と続けることが重要だ。そういうことに出会えるだけでも幸せなんだと思う。

そんなことを思いながら、今日も適当に文章を書いてアップする。何もアウトプットしないよりはましだと言い聞かせながら。

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いしたに まさき

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行政機関の情報提供はHTML/CSVで

LASDECが、自治体の情報発信をPDFやOffice形式ではなく、HTMLやCSVで行うよう呼びかけている。

自治体の情報発信、PDF/ExcelよりHTML/CSVで 地方自治情報センターが呼びかけ – ITmedia News

これは非常に良い方針だ。PDFやOfficeはPCでは作業しやすいが、複数ファイル間の集計や分析などでは、とてもじゃないが使えない。しかし、CSVなら規則的にカンマで区切られているだけなので、ルールさえわかれば、システムで自動収集などが可能になる。

例えば、各自治体で人口統計などを定期的に公表しているが、このフォーマットや項目などはバラバラであり、大抵はExcel形式である。複数の自治体の人口統計を分析しようと思うと、ある年度のファイルをダウンロードして、ファイル開いて、データ項目をそろえて、みたいなことを必要な分だけ繰り返す。そして、違う自治体でも同じことをやろうと思うと、データ項目が違う・・・・。

CSVなら、各自治体でもしルールが違っても、まず機械が自動で読み込むことが可能になる。そして、ルールに従ってデータをそろえ、分析することも可能になるだろう。

図書館情報学では、「機械可読目録(MARC)」というものがある。書誌情報や関連情報を機械で読める形式で表現し通信するための規格だ。

こういうコンピュータ同士で通信し、コンピュータで処理されることを前提とすることで、情報は飛躍的に流通する。各ソーシャルサービスがAPIを提供しているのも同じ原理だ。そういう意味で、行政機関ももっと情報流通されることを前提とした提供をして欲しい。

アメリカなどはオープンガバメント政策で、行政情報をXML・CSV・XLSなど二次加工しやすいような情報提供が行われているのだし、日本でももっと推進することはできるはずだ。

スマートグリッドを推進しよう

福島の原発問題から、スマートグリッドの潮流が生まれつつある気がしている。日本の電力網はすでにスマートだから、という理由で導入する機運がいまいちなかったのだが、皮肉にもという感じではある。
さてさて、スマートグリッドが本当に今後のエネルギー政策の解であるかを考えてみる。スマートグリッドは結構広い概念で、電力網のみでなく熱源なども対象に含まれる。また、電力会社のみではなく、一般家庭や他産業分野も含まれるようになる。では、スマートグリッドで何ができるのか。
 

柔軟な料金設定によるピーク抑制

電力の問題は蓄積できないことであり、消費量のピークへ対応することが難しいということだ。一番の問題は、このピーク抑制することになる。これへの対応として、家庭にスマートメーターなど電力消費量と料金を可視化する装置を設置し、高い料金になった場合に需要者が消費を控えるよう、経済合理的な行動をとることが期待されている。
ここでは、これまでの電力網にIT通信を付加し、一方通行だったり電力会社にしか見えなかった情報を、双方向通信でかつ需要者にも見えるようにすることが必要になる。
 

蓄電装置の普及による電力消費の平準化

現状は充分な蓄電の仕組みがないわけだが、研究は進んでおり、蓄電池普及の兆しはある。特に、家庭用蓄電池や電気自動車など家庭での蓄電の仕組みが注目されるだろう。
家庭用の蓄電池があれば、料金が安い時間帯に電力を蓄積し、電気を消費する時間帯に蓄電池から電力を取り出すことが可能になる。この辺りのコントロールも、ITシステムで可能になる。
 

小口電力の安定的な電力網への流入

電力会社以外にも、家庭での発電だったり事業者が発電装置を持ってたり、探してみれば電力は各地に分散している。これらの電力を電力網に取り込もうとすると、周波数や電圧の制御が必要になる。これを、制御システムの構築と料金制度の整備で、柔軟に電力網に取り込めるようにする。

僕はスマートグリッドのポイントはこの3つだと思う。
ただ、スマートグリッドを達成するにはまだハードルが多い。特に、蓄電の部分は普及にあと数年は要するのではないかと勝手に予想する。というわけで、できることから始めるとすれば、ぜひ次の2つを導入して欲しい。
 

スマートメーター設置による消費電力の「見える化」を

日本の電力網はスマートだと言われているけれど、それはあくまで「電力会社側から見た場合」だ。ユーザは自分の消費電力をリアルタイムでは見ることができない。スマートメーターはそれを変えてくれる。「見える化」をすることで、電力そのものを抑制する動機が生まれる。
 

電気料金の柔軟の料金体系の実現を

スマートメーターを設置するだけでなく、全体の電気消費量に合わせた柔軟な料金体系が実現することで、ピーク抑制の期待が生まれる。料金が許認可制のままでも構わないが、その範囲で柔軟な料金体系を設定できるように変えて欲しい。

あとは、スマートグリッドと直接関係はないけど、サマータイムもぜひ導入して欲しいね。夏場は一年で最も電力が消費されるから。

スマートグリッド学 戦略・技術・方法論
林 泰弘 岡本 浩 林 秀樹 濱坂 隆 伊奈 友子 坂本 紀代美
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蓄エネルギー・システムは消えゆく給水塔の運命をたどるか – 日経エレクトロニクス – Tech-On!
今こそ日本にスマートグリッドを 計画停電では前進なし :日本経済新聞

Twitter APIでRSS取得するときのtitleとdescriptionについて

誰得なんだ、というメモ。

Twitter APIでRSSを取得するときの、titleとdescriptionの違いについて。

RSSリーダーで読んでるときは、titleとdescriptionが同じだったので全く同じだと思ってた。けど、実際に中身をみると、微妙に違うようだ。

title

RT @gifu__news: センバツ:16校が甲子園練習 東北は練習試合でも汗流す - 毎日新聞 http://bit.ly/dPEvW3 #newsJP #gifu

description

RT @gifu__news: センバツ:16校が甲子園練習 東北は練習試合でも汗流す - 毎日新聞 http://bit.ly/dPEvW3 #newsJP #gifu

このようにdescriptionには、既にユーザやハッシュタグにHTMLタグが仕込まれている。だから、RSSから取得したデータを利用する場合は、使い分けると良いよ。

震災から学ぶ行政ICTの今後(その2)

その1はこちらから。

アセットマネジメントの高度化

今回の震災でも、ライフラインが容赦なく破壊され、被災者の生活が困窮するばかりか、輸送もままならない状態と思われる。

 

ライフラインのうち、道路や上下水道、公共施設は行政分野の管轄になる。これらは高度成長期に整備が進められ、最近がちょうど一斉に交換時期を迎えている。しかし公共事業に関する予算は年々下がっており、地方自治体はどうやって少ない予算で維持管理を行うかが数年前から課題になっている。

 

そこで国交省は、「公共事業コスト構造改善プログラム」のひとつとして、アセットマネジメントの高度化を推進している。

『国土交通省公共事業コスト構造改善プログラム』の策定について

 

アセットマネジメントは、公共インフラのデータを可視化・一元化するとともに、設計情報や素材情報などを元に高精度な劣化予測を行い、効果的な維持・補修を行うものである。

 

地震に対する備えであるとともに、政府予算の抑制にも有効である。ぜひアセットマネジメントの高度化を推進して欲しい。

 

スマート・グリッドの推進

福島原発は、ひとまず悪い状況からは少しずつ脱しつつあるとみて良いのだろうか。しかし、原発推進によるエネルギー政策は転換を余儀なくされるだろう。

 

ひとつの対応策がスマート・グリッドだ。電力の需給を細かく正確に把握することはもちろんのこと、家庭電力などの小規模発電電力を品質を低下せずに送電網に供給することも含まれる。これによって、効果的な電力の需給が行われるとともに、風力発電などの電力供給も活発化する。

 

また、電気自動車など蓄電池の活用によって、予備電源の確保や夜間電力の活用による消費平準化も期待できる。

 

今は横浜市などいくつかの都市で実証実験が行われている。エネルギー供給への対策として、各自治体にはぜひスマート・グリッドを推進して欲しい。特に大都市圏は、都市の持続性の観点から、検討が急務だろう。

 

月刊「環境ビジネス」2009年10月号
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ITシステムは東日本だけでなくいろんなところで止まっている

東京電力の圏域では計画停電が行われている。その直前、データセンター各社は停電の影響はないと発表したようだ。

計画停電:主要SIer、データセンターに影響なし – ZDNet Japan

予備電源の準備や燃料の優先的な享受など契約面での対応など各社の事前対応の結果もあるが、都心が計画停電の対象から外れたこともひとつの理由に挙げられていることが、個人的には興味深い。今後のデータセンターの立地条件に、「政治上電源供給を止めづらい」という理由も含まれるようになるのだろうか。ともかく、万一のときのエネルギー確保は、今後はもっとユーザ側も課題意識として刷り込まれることになるだろう。

そして、南三陸町では戸籍情報が津波の影響で消失してしまったらしい。これは、今後の行政のデータ保全の在り方を問うことになるだろう。ネット上では「クラウド化しておけば」という指摘も既に出ているし、それが対策のひとつであることは間違いない。そして、戸籍以外も含め、クラウド化やネットワークによる複数地域での共有もあるが、バックアップテープの複数地保管がてっとり早いだろう。東北と四国の自治体が相互にバックアップテープを保管する、というような共同作業なんてどうだろうか。

南三陸町の戸籍データ消失、法務局保存分も水没 : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

ちなみに、岐阜県の情報システムにも一部影響が出てきている。県議会の会議録検索システムが東京に設置しているため、東京電力の計画停電の影響でシステムが停止する場合がある、ということらしい。

岐阜県 : 会議録検索システムの停止について

先日、クラウド化で自分の地域にシステムを置かないこともひとつのリスクヘッジと書いたけれど、こういう逆パターンもありうるんだな、やはり。

自治体クラウドも、今やろうとしているモデルはプライベートクラウドで一カ所にデータを集中させる方式。本当に重要なシステムについては、地域的に連動しないような離れた場所にハードウェアを複数配置して分散処理する、というところまで踏み込む必要があるのだろうか。

震災から学ぶ行政ICTの今後

震災から数日が経過し、いろんな情報が出てきている。個人的には遠くの場所にいて、嘘のような情報を目の当たりにして、本当かどうか今もよくわからないような気持ちでいる。しかし、人の優しさや日本人の真面目さ・規律の良さを再確認することもあるし、自然の恐ろしさも感じる。

たくさんの教訓が生まれてきていると思うが、その中から、今後の行政におけるICTの動向を推察してみる。

ソーシャルサービスの取込みの促進

今回の被災では、電話が通じなくなる事態が多く発生し、その一方でTwitterやFacebookなどのソーシャルサービスが稼働しており、コミュニケーションツールとしての強さを発揮した。

テレビ局によるUstreamへの同時配信や、Google Personal Finderなどの早期リリースは、ICTが社会インフラとして重要な位置を担っていることを再認識した。

これまでも、行政分野はソーシャルサービスを活用し、市民とコミュニケートする方法を探ってきたが、今回の状況から一層その役割は見直されることになるだろう。

公式アカウントの取得に始まり、緊急時の情報伝達手段にソーシャルサービスが加えられ、そのための利用マニュアルやインフラ整備も行われるかもしれない。

クラウド化を含めたシステム構成の見直し

被災したところでは、完全にシステムも停止してしまったところもあるのかもしれない。復旧どころかサーバごと流されたとかもあるのだろうか。

そうなると、被災したときのシステムの在り方を再考する必要が出てくる。庁内のマシンルームでは耐震性が微妙だから、ちゃんとデータセンターに置きましょうとか。

クラウド化も、改めてその意義を見直されることになるだろう。自治体などの公的機関の情報は、被災時などには特に重要性が増す一方で、トラフィックが集中し、通常時の負荷では処理できなくなる恐れがある。どうやら、今回の震災でもそのような事象はあったようだ。そして、早速クラウドサービスとして提供する企業が出てきている。

時事ドットコム:震災情報サイトつながりやすく=自治体などにクラウド無償提供-各社

IIJ、東北3県の自治体Webサイトにミラーサイトを提供:ニュース

基幹系システムが全てクラウドされる「自治体クラウド」まではいかなくても、広報系・Web系など費用対効果が出しやすいシステムについては、クラウド化した方が安全では?という見方も生まれるのかもしれない。

地震に強い地域・建物にデータセンターを置けば、自分の地域が被災しても、日本の別のデータセンターが処理を継続できたりする。そういう安全面も重要視されることになるだろう。

BCP(業務継続計画)の策定促進

中央省庁はBCPの策定が進んでいるが、自治体はあまり芳しくないようだ。2008年時点の調査で、都道府県で3団体(6.4%)、市町村で41団体(2.3%)。

http://www.dir.co.jp/souken/consulting/report/strategy/rsk-mng/09022601rsk-mng.pdf

けれど、今回のを機にBCPの策定が促進するかもしれない。BCPの策定によって、業務の重要度の分類や、継続するための対応マニュアルの整備が行われることになる。

被災などの緊急事態には、公共機関の役割が重要になることは再認識された。情報の発信源として、他の地域からの救援の窓口として、いろんな機能を果たしている。その中で、公共機関がいかに重要業務を継続するか、BCPの策定によって計画して欲しい。

少しでも多くの人が助かりますように。ただそれを祈るばかりです。