さてさて、スマートグリッドが本当に今後のエネルギー政策の解であるかを考えてみる。スマートグリッドは結構広い概念で、電力網のみでなく熱源なども対象に含まれる。また、電力会社のみではなく、一般家庭や他産業分野も含まれるようになる。では、スマートグリッドで何ができるのか。
柔軟な料金設定によるピーク抑制
電力の問題は蓄積できないことであり、消費量のピークへ対応することが難しいということだ。一番の問題は、このピーク抑制することになる。これへの対応として、家庭にスマートメーターなど電力消費量と料金を可視化する装置を設置し、高い料金になった場合に需要者が消費を控えるよう、経済合理的な行動をとることが期待されている。
ここでは、これまでの電力網にIT通信を付加し、一方通行だったり電力会社にしか見えなかった情報を、双方向通信でかつ需要者にも見えるようにすることが必要になる。
蓄電装置の普及による電力消費の平準化
現状は充分な蓄電の仕組みがないわけだが、研究は進んでおり、蓄電池普及の兆しはある。特に、家庭用蓄電池や電気自動車など家庭での蓄電の仕組みが注目されるだろう。
家庭用の蓄電池があれば、料金が安い時間帯に電力を蓄積し、電気を消費する時間帯に蓄電池から電力を取り出すことが可能になる。この辺りのコントロールも、ITシステムで可能になる。
小口電力の安定的な電力網への流入
電力会社以外にも、家庭での発電だったり事業者が発電装置を持ってたり、探してみれば電力は各地に分散している。これらの電力を電力網に取り込もうとすると、周波数や電圧の制御が必要になる。これを、制御システムの構築と料金制度の整備で、柔軟に電力網に取り込めるようにする。
僕はスマートグリッドのポイントはこの3つだと思う。
ただ、スマートグリッドを達成するにはまだハードルが多い。特に、蓄電の部分は普及にあと数年は要するのではないかと勝手に予想する。というわけで、できることから始めるとすれば、ぜひ次の2つを導入して欲しい。
スマートメーター設置による消費電力の「見える化」を
日本の電力網はスマートだと言われているけれど、それはあくまで「電力会社側から見た場合」だ。ユーザは自分の消費電力をリアルタイムでは見ることができない。スマートメーターはそれを変えてくれる。「見える化」をすることで、電力そのものを抑制する動機が生まれる。
電気料金の柔軟の料金体系の実現を
スマートメーターを設置するだけでなく、全体の電気消費量に合わせた柔軟な料金体系が実現することで、ピーク抑制の期待が生まれる。料金が許認可制のままでも構わないが、その範囲で柔軟な料金体系を設定できるように変えて欲しい。
あとは、スマートグリッドと直接関係はないけど、サマータイムもぜひ導入して欲しいね。夏場は一年で最も電力が消費されるから。
日本電気協会新聞部
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