大企業と中小企業で、どの程度求人倍率が違うかご存知でしょうか。正解は、大企業が0.5倍に対して、中小企業は3.3倍です。
リクルートワークスの発表によると、2012卒の大卒有効求人倍率は、1,000〜4,999人以上の大手企業で0.74倍・5,000人以上の大企業0.49倍に対して、300人未満の中小企業で3.35倍と圧倒的な差があります。1,000人以上の大手企業の中でも就職人気ランキングのトップ100などの企業はもっと低い求人倍率になっているでしょう。
また、新卒者がどの程度企業に定着したか、を示した指標をみると、事業規模が小さい企業ほど、定着率が低いのがわかります。
(出所:「直近10年間で正社員として採用した新卒者が、現在まで働いている割合」(平成21年度中小企業白書))
つまり、中小企業は採用時点でも大きなミスマッチが生じてますし、入社してからも定着していないのが現状だ、というのがわかります。
不幸なマッチングの正体
どうしてこういう構造になるんでしょうか。いろいろ要因はあると思いますが、僕はひとつの観点を提示したいと思います。
中小企業の社長や採用担当者と話をすると、こういうことを聞いたりします。
「うちの会社は小さいし、大企業などに比べると採用できる学生のレベルが低い。エントリーや面接で良いな、と思って選んだ学生がいたとしても、最終的には断られてしまう。そうなると、次の学生を採用しようとして、また断られる。そして、企業が「妥協して」選んだ学生が残ることになります。
そうなると、どうでしょう。入社しても「妥協して選んだ学生」だから、教育もどこか諦めが入ってしまい、一人前に育たなくなってしまう。
一方で、就職を間近に控える学生と話をすると、
「たくさん企業の面接を受けて、たくさん不採用になった。いくつか諦めて、残った企業に決めた」
といいます。すると、せっかく入社しても企業に対しても愛着がわかないし、仕事にもやりがいは出てこない。惰性で仕事をするか、とっとと見切りをつけて辞めてしまいます。
つまり、お互いが「妥協して決めた」という感情だけが残ってしまいますよね。その結果として、不幸なマッチングになってしまうんじゃないでしょうか。
経営者はひとつの解決策を提示することができる
「HARD THINGS」という本を読むと、上記を解決するひとつの答えが書いてあります。
社員一人ひとりの「自分はなぜこの会社で働くことを選んだのか?」という根本的な疑問に答えを与えるのがストーリーの役割だ。社員なら「この会社で働くべき理由」、顧客なら「この製品を買うべき理由」、投資家なら「この会社に投資すべき理由」に答えられなくてはならない。さらには世界の人々に対して「われわれの会社が存在することで世界がより良い場所になる理由」を語れなくてはならない。こうしたストーリーを明確な言葉で語ることが、社員、顧客、投資家、パートナー企業、メディアに対して自社の行動のコンテキストを与えることになる。明確なストーリーを与えることを怠る企業からは、こういう不満が出やすい。
つまり、「なぜこの会社で働くことが素晴らしいのか?」ということに対して、答えを与える必要があるということです。そうなれば、それに共感する社員が残ります。
アメリカにある靴のネット通販で有名なザッポスは、自社の理念やカルチャーを強化することで、本当に会社が好きな人が働ける環境を作りました。
参考:ザッポス伝説
それと同じように、「この会社で働くべき理由」を提示できれば、働いている人も迷わずに働き続けられるんじゃないでしょうか。ストーリーを語りましょう。
今日はこのへんで。