経営戦略を学び直して、本当の意味で理解するための「経営戦略全史」

MBAで経営戦略を勉強しました。そこでは、たくさん戦略の考え方や分析ツールが登場します。それぞれが一長一短あり、場合によって使い分けることが求められます。なんとなく、どういう場面でどう使うべきか、迷うときもあるんですよね。

また、分析ツールを誤用しているケースもあります。その場合、期待した効果を得ることはできませんし、変な結論を導き出してしまいます。せっかく学んだのに、意味ないよねって思うわけです。

 

そして、経営戦略や分析ツールの位置づけを理解し、正しい使い方を身につける上で、この「経営戦略全史」というのは非常に面白い一冊です。このような本は、あるようでありませんでした。

 

20世紀初めのテイラーの「科学的管理法」からはじまる、経営戦略のおよそ100年におよぶ歴史が見事に一冊にまとめられています。自分の中でバラバラだったパズルのピースが、ひとつにまとまっていくようでした。

 

思想やフレームワークの成り立ちがわかる

3Cとか4Pとか、数え上げればきりがないほどたくさんフレームワークはあるのですが、それぞれに生まれた時代背景というのが当然あるわけです。そこを理解することで、「○○戦略」の意味であったり、フレームワークの本当の理解が進むのです。

実際僕は、「組織は戦略に従う」という言葉がどうやって登場したのかもこの本で知ったし、SWOT分析の位置づけ、使い方についても本当の意味では理解できていなかったことがわかりましたよ。

「わかったつもり」になっていることが、たくさんあることを気づかせてくれました。

 

現在に求められる経営戦略とは

やはり経営戦略はどれも万能ではないし、時代の移り変わりによって新しい考え方が生まれています。現代の特徴としては、

  • 外的環境の変化が激しい
  • ITによって計測・分析のハードルが下がっている

という点が挙げられるでしょう。そうなると、現状を「正しく測定」し、それに応じて仕組みを変えていくということが求められていきます。これはテイラーが工場の作業を科学的に測定し、仕組みを作り上げたのと根底としては同じです。

最近読んだ「リーン・スタートアップ」が本書の最後のあたりに紹介されていました。スモールで立ち上げ、状況を計測し、成長させていく考え方が現代にはフィットしていると改めて認識しました。

不確実性の高い現代で、リーンスタートアップをなぜ学ぶべきか | Synapse Diary

 

そして、外部環境に適用するために重要なのは、最後は組織です。ここに帰結するんだなって思わせてくれました。実践するのはとても難しいのですが。

ヒトや組織も同じです。自らの内部構造(ケイパビリティ)を変え続ける力を持つもののみが、生き残れるのです。

でも、結局生き残るためには、自らを環境に適用させていかなかればいけません。組織を変え続けられるかは、今後も普遍的に求められる経営の重要な要素でしょう。

 

以前、経営学を歴史からとらえた竹中平蔵さんの本を読んで、とてもわかりやすくて興奮したのを覚えていますが、その感覚を思い出しました。

経済古典は役に立つ | Synapse Diary

 

この本は、教科書的に読み返すことになりそうです。

Gunosyのメール配信を購読するのをやめました

つい先日、Gunosyの購読を辞めました。2012年から2年ぐらい、ずっとメールで読んでました。

やめた理由は「他の情報源と重複する」からです。

 

Gunosyのメール配信は情報収集ツールとして有効か

まあ、人それぞれといえばそこまでなのですが。僕は以下のツールで普段情報収集してます。

  • RSS(Feedly) ➡ いろいろブログなどを登録してます。
  • メルマガ ➡ 気になるものを3つぐらい。
  • スマホ ➡ NewsPicks, Antenna, LINE News

これらのニュースソースを消費すると、Gunosyが配信される内容は重複してしまうんですよね。最初は結構違う記事が配信されてきたので面白かったのですが、だんだん重複感が増してきてあまり記事をクリックしなくなってしまいました。

結局、Gunosyはセレンディピティを与えるものではなく、「情報取得を効率化するツール」なのだと思っています。なので、それなりに多めの情報を取得する人にとっては、あまり向いていないのかもしれません。

 

その原因としては、メール配信の場合は25記事しか配信されないということです。25記事だと、ユーザーの動向を拾いきれないと思うんですね。人はきっとGunosy以外のニュースソースにもたくさん触れているはずなので。その点がアルゴリズムを利用したメール配信に限界を感じたところでした。

 

Gunosyはスマホ中心に舵を切った

以前もGunosyのiPhoneアプリを使っていましたが、ほとんど面白くなくて使うのやめてしまいました。しかし、今回メール配信をやめたことをきっかけに、もう一度スマホアプリを見てみたところ、やっぱり戦略を変えていたんです、Gunosyは。

スマホでいろんな情報を閲覧できるようにして、Gunosy上で行動してくれる量を増やし、消費量を増やしてもらうとともに、情報収集によるリコメンデーションの精度を上げられるようにしました。

 

3分で旬のニュースをまとめ読み。グノシー 〜今日のニュースや話題のニュースが無料で読める〜 4.0.8(無料)
カテゴリ: ニュース, 仕事効率化
販売元: Gunosy Inc. – Gunosy Inc.(サイズ: 18.2 MB)
全てのバージョンの評価: (5,182件の評価)
iPhone/iPadの両方に対応

 

最近、GunosyがウルトラマンのCMを打ち出し、アイコンも変えたりしてます。また、KDDIも出資して、今後のau端末にプリインストールされるのでは?という話も出ています。

よく比較対象にあるスマートニュースは300万ダウンロードぐらいで、Gunosyは180万ダウンロードぐらいなので、ここらでバーンと投資して広く利用されるようにする、という戦略はわかります。

GunosyというスマホアプリがテレビCMを流す理由 ‐ 川合雅寛

要は、個別最適するアルゴリズムに注目したアーリーアダプターではなく、マジョリティに使ってもらうにはどうすれば良いか、と考えた結果のマーケティング施策なのだと。

 

というわけで、Gunosyのメール配信は停止し、スマホアプリで使い続けてみようと思います。これによって、iPhoneで使ってるニュースアプリはどれか使うのやめるかなー。

 

それにしても、Gunosyという組織は面白いですね。数字を重視するという姿勢は、リーン・スタートアップの考え方とも合致していると思います。今後の展開が楽しみですね。

メジャー化に舵を切ったGunosyの今後とは

経営を教科書で学ぶことの重要性

ゴールデンウィークが明けましたね。いろいろ「ゴールデンウィーク明けに対応する」って申し送っていたタスクを山のように片付けないといけない状況です。頑張らないと。

ゴールデンウィーク中は読書がはかどりました。で、その中に「星野リゾートの教科書」という本があったのですが、これがこれまでの僕の読書スタイルを変えないといけないな、と思わせる一冊でした。

 

簡単にいえば、ビジネス本を教科書として丁寧になぞり、正直に遂行することで経営を成功に導く、という考え方です。

 

都合の良い情報だけを選んでいないか

ビジネス本だけに言えることではないのですが、何かを知りたいと思って本を読んでも、数百ページある本の全てを一回読んだだけで吸収するというのは難しいものです。

これまでは、一冊の本の中からできるだけ多くのエッセンスを拾いたいという気持ちはあるものの、読み返すほどのことはなく、一度読んで心に残るものを集めて実行することをくり返してきました。飽きっぽい性格ということもあり、二度読むなんてことはほとんどしなかったわけです。それでも、「少しでもエッセンスを吸収できれば良いや」って割り切ってる部分もありました。

ただ、本当にそれで良いのだろうかってこの本は思わせるんですよね。本当に理解したと言えるほど、その本を読んだのかと。

 

セオリーを学ぶ重要さ

結局、経営理論をしっかり自分の中で理解し、行動に落とし込むためには、どこまで深く読めるかが重要になってくるわけです。そのためには、少なくとも自分は一回で理解するには足りないんだと思いました。自分の行動を戦略的に組み立てて、他人を説得できるほどに腹に落とすことが必要だと。

昔から「守破離」という言葉がありますが、やはり最初は「型」を知り、それを忠実に繰り返していくことは、どんな場面でも当てはまることなんだなって思った次第です。

経営学って、なんというか理論がたくさんあるのですが、あまり「学習する対象」になっていない気がするんですよね。MBAに行かないと経営者になれないわけではないですし。ただ、経営学はこれまでの歴史の積み重ねが行われていますし、実際に使える場面が多いことはこの本を読むとよくわかります。

 

というわけで、教科書となる本を探し、繰り返し読みましょう。

不確実性の高い現代で、リーンスタートアップをなぜ学ぶべきか

新しい事業を生み出すということは、非常に難しいものだと痛感する毎日です。限られたリソースと不確かな状況の中で事業を育てていくことは、空を掴む感じに近いな、と思うこともあります。

そんな迷いの中で、「リーン・スタートアップ」という本に出会いました。

 

おおよその考え方自体は知っているつもりでした。「ミニマムな製品を発表し、顧客のフィードバックを受けて、改善していく」という感じで。なので、最初はあまり一冊の本として読む気がしていませんでした。しかし、実際に深く理解しようと思ったときに、ちゃんと勉強しないといけないな、と思ったのです。

 

仮説をつくり、計測できる環境を整える

「リーン・スタートアップ」では、仮説を定めることから始まります。「顧客は○○という欲求があるから、このサービスを欲するはずだ」というようなものです。

─「成功とは機能を提供することではありません。成功とは、顧客の問題をどうしたら解決できるのか学ぶことです。

要は、「闇雲にやるな」ということです。それはコンサルでも「仮説思考」みたいな言葉があるように、最初に方向性を明確に定めておかないと効率が悪く、煮詰まったときに停滞してしまうからです。

 

そして、最小限の製品を発表するのですが、重要なのは「計測できる仕組みを構築しておく」ことです。 でないと、フィードバックループを回すことができません。具体的な計測・分析のアプローチとして、コホート分析や成長エンジンの考え方は非常に面白く、示唆に富んでいました。

コホート分析については、本より以下の記事の方がわかりやすいと思います。

コホート分析とは – Hive Color

なので、サービスを開始する前に、「どうやって計測するか」を考えておくことが重要になるのです。

 

不確実性が高い時代の事業のつくりかた

読んでいて思うのは、このリーン・スタートアップって、別にスタートアップに限定しなくても、適用できるところは多いよな、ということです。

不確実性はどんどん増していて、先を読むことが難しい時代です。IT関係でも技術革新が早く、「数年先を見通すのは難しいよね」という話がよく出ます。そういう状況の中では、スモールスタートがリスクが小さく始めやすいものです。そして、実績を作っていって、少しずつチューニングしながら育てていきます。

本書の中で、「バッチサイズを小さくする」という考え方が出てきます。基本的にリーン・スタートアップはトヨタ生産方式から転用されたものですが、まとめて大量生産するより1つずつ作る方が効率が良い、という実証にもとづきます。

同じ作業をくり返したほうが効率的に思える理由として、もうひとつ、くり返すほど作業に習熟するはずという思い込みがある。しかしこのようなプロセス指向の作業では、全体的なパフォーマンスに比べて部分のパフォーマンスは影響が小さい

もちろん状況によりけりだとは思うのですが、習熟による影響より、システム全体の問題の方が影響が大きいのだと思います。そしてシステムが成熟してくれば、経験による習熟の影響を考慮する必要があるのでしょう。

ここで言いたいのは、計測しやすい環境を構築し、事業を小さい形でリリースして、フィードバック→改善をくり返していけることが、不確実性の高い状況を乗り越える有効な手段だということです。

 

「でも、ある程度投資できないと事業として成立できないものも多いじゃん!」と思うかもしれませんが、それをITが変えていて、小さい事業体で運営できるようになっているのです。その一例がクラウドサービスであったり、クラウドソーシングだったりします。また、コミュニケーションコストそのものも低下していますし、最近だとセンサーなどの計測関係も発展しています。

このあたりは「ITビジネスの原理」が参考になるんじゃないでしょうか。
経営を志す人なら読むべき。「ITビジネスの原理」 | Synapse Diary

というわけで、新しい事業でも、新しいマーケティングでも、日々の中の新しい取り組みでも、リーンスタートアップの考え方は活用できるはずです。

Googleがホテル検索を提供する理由は?

stokpic / Pixabay

Googleはホテル予約を、統一的なインターフェースで展開を開始してました。

Google Hotel Finder
[browser-shot url=”https://www.google.co.jp/hotels/#search;si=e31b0bcc;av=l” width=”600″ height=”450″]

随分前から提供されていたようですが、正直知りませんでした。

米グーグルはホテルの宿泊予約に関連した機能の拡充に取り組んでいる。重要な広告主の機嫌を損ねる危険を冒す大胆な動きだ。  グーグルはサイトで表示するホテルの情報に画像やレビューを追加して、米プライスライン・グループや米トリップアドバイザーなどの旅行情報サイトに近づけようとしている。グーグルは旅行情報サイトのように、宿泊料を直接表示する「ホテル料金広告」の売り込みを積極化させている。

グーグル、ホテル予約事業を強化 (ウォール・ストリート・ジャーナル) – Yahoo!ニュース

このサービスのポイントは2つあると思っています。

 

Googleの中抜きを防ぐ

これは昨日の認定ショッププログラムと同じ理由です。「どこか宿泊ホテルを探したい」と思うときに、Googleが使われない、もっといえば最初に「想起されない」とGoogleとしては良くない状況です。

それを防ぐためには、Googleが宿泊地を検索し予約するまでのプロセスをよりリッチでスムーズに実現する必要があります。

Googleならではとして、地図検索との融合によって特定のポイントから○分という条件で検索することがスムーズに行えたり、過去の料金推移などもわかります。また、金額などの情報も収集できますので、Googleとしては願ったりかなったりです。

 

クリックあたりの単価を上昇させる

冒頭の記事でも、もっと普及すればクリック単価は上昇するだろうと書いてあります。それはその通りだと思います。

試しに今Googleで「横浜 ホテル」と検索してみると、るるぶ、楽天トラベル、JTBなどの旅行予約サイトの広告が表示されます。それでは、Googleとしてはユーザーの要求に対してまだ遠いんですよね。広告をクリックしたとすると、そこから旅行予約サイトに飛んで、情報を閲覧して比較することになります。

これがGoogleホテル検索では、Google内で検索・比較ができるようになります。予約サイトは予約と決済だけを担うことになります。であれば、Googleに対してより対価を払う流れになるのもうなずけます。Googleが担う領域が増えますので。

ただ、印象としてはまだ情報が限られているようにも見え、日本では利用者が少ない気がしました。しかし、今後は東京オリンピックがありますし、海外からの利用を考えると、JTBや楽天トラベルよりはるかにGoogleの方が使いやすいんじゃないかという気がしてます。今後の動向が楽しみです。

 

Googleはよりニーズに直接的に応えるようになっていく

昨日書いた認定ショッププログラムといい、Googleは最近よりユーザーのニーズに直接的に応える仕組みを生み出していますね。Googleウォレットをはじめたりデジタル仮想通貨のベンチャーに投資したりしているので、決裁基盤にも進出していくんでしょう。

Googleは「検索」というユーザーの要求を、うまくマッチングすることを得意としています。マッチング領域は今後も拡大していくと思いますし、領域と業態によっては、Googleというルールチェンジャーの影響を受けるかもしれません。

参考:
Google ホテルファインダーの料金グラフがなにげに便利 | グローバルスポット
Google Hotel Finder が結構進化している – 最新のSEO対策ならSEO JUMP

Google認定ショップがECサイトの救世主になるのか

Googleが「認定ショップ」というプログラムをはじめてます。

Google 認定ショップ

[aside type=”warning”] Google認証ショップというプログラムはすでに終わっており、代わりとしてGoogleカスタマーレビューが提供されています。
Google 認定ショップ プログラムに代わり、Google カスタマー レビューの提供を開始 – Google 広告主コミュニティ [/aside]

Google認定ショップに登録すると、注文件数や注文におけるトラブルの発生・解決、出荷の期日や注文から出荷までの平均日数が表示され、顧客が安心して購入できるようになります。また、Googleによる無料の購入補償が含まれていることも特徴です。

日本でもパイロット版ということで、いくつかのECサイトが認定ショップになっています。

以下のサイトにアクセスすると、右下に認定ショップのマークが出てくるのがわかります。

ECカレント | 家電・パソコン 通販 ECカレントの通販サイト
イーベスト | 家電 ベスト電器グループの通販サイト
ABCマート通販 – 靴(スニーカー、シューズ等)の総合通販 ABC-MART.net
ニキビケア・吹き出物予防のプロアクティブ【通販・販売公式サイト】
ユナイテッドアローズ公式通販 -UNITED ARROWS LTD.-

 

Google認定ショップの特徴

みればわかりますが、既存のECサイトに認証マークを設ける形です。登録自体は無料ですが、配送などの実績をショップの評価に使いますので、これらに関するデータをGoogleに送ることが条件になります。

審査を希望する通販サイトは、配送実績データや顧客対応データをグーグルに提供。あわせて、購買履歴データをグーグルが自動取得するプログラムをサイトに埋め込む必要がある。グーグルはサイトが提供した実績データと自動取得した購買履歴データを突き合わせて、通販サイトの自己申告に偽りがないか検証する。

グーグルがECの“認定ショップ”プログラムを開始 最大10万円まで損害を補償 | Web担当者Forum

恐らくGoogleの狙いとしては、次の2つなんじゃないかと思います。

  • 購買データの取得
  • ECの活性化による広告価値の向上

ECサイトとしては、既存のサイトを大きく変更したり、別のプラットフォームに乗り入れる必要はありませんので、Amazonや楽天などの既存のショッピングモール型は脅威になるでしょう。これまでも、自社ECサイトとショッピングモールのページでは二重登録になり、SEO上も管理上も煩わしくなっていました。

Googleとしては非常に良いアプローチを考えたものだと思います。

 

購買データを獲得することが最大の狙い

Amazonや楽天の最大の強みは、購買データを持っていることです。それによって、リコメンドやマーケティングに活用することができます。Googleとしては、このあたりをどうにかして獲得できないか模索していたんだと思います。なぜなら、購買行動においてユーザーが直接Googleで検索してくれなくなっているからです。

買い物をするのに、検索エンジンではなくAmazonからスタートするというのは大きな変化です。これはどのようなことを意味していると考えるべきなのでしょうか。検索エンジンよりもAmazonで検索した方が自分の目的が達成されると考える消費者が増えているということです。商品を検索するのにおいて、各種検索エンジンよりもAmazonの方が優れていると評価されているのです。

AmazonとGoogleが購買履歴を使った広告ビジネスで競合 | マイ・ストアニュース

確かに何かを買おうと思えば、入手できそうで信頼できるECサイトにまず訪問し、そこから検索ボックスで検索します。そうなると、Googleは完全にスキップされた状態になってしまい、Googleのビジネスモデルの根幹である「検索したいユーザーをマッチングする」というプロセスが崩れてしまいます。

認定ショップを導入することで、Googleで例えば商品名を検索すると、検索結果にECサイトが並び、そこから購買行動に移すことができるようになります。また、購買データを取得し分析することで、検索ワードや検索行動とECサイトへの誘導のマッチング精度の向上も期待できるでしょう。Googleとしてはそのあたりが狙いなんじゃないかと思います。

 

大手は分散型、中小はモール型

今後の業界に対する予想としては、ECサイトを独立して維持・運営できる大手企業は、Googleのような分散型を好むでしょう。モール型にわざわざ登録するメリットがないですし、Googleなどの検索エンジンやソーシャルからどうやって自社ECサイトへ誘導するかが目的となります。

中小はモール型の方が手軽で便利そうです。サイト構築の手間もある程度省けますし。サポートも手厚いと思うので。

まだGoogle認定ショップはこれから普及が試みられるのだと思いますが、モール型か広告か、という選択肢に限られていた大手ECサイトには、魅力的な選択肢が増えるんじゃないでしょうか。

 

参考:
「Google認定ショップ」プログラムの真の狙いは、購買履歴データ取得? _ ネットショップ CS情報局

コストコが生み出す新しい顧客体験

以前から気になっていましたが、常滑市にあるコストコにいってきました。衝撃的でしたね。すごい人気であることが言われていましたが、その理由がわかった気がします。

 

全てが規格外

いろんな商品が並んでいるんですが、基本的に普段のスーパーでは絶対みないサイズばかりでした。インスタントカレーなら1セット10パック入りとか。キューピーマヨネーズも見たこと無いサイズだったな。。。

まとめ買いを前提とすることで、非常に安く商品を提供できるということです。あまり買い物する気はなかったのですが、いざ見てみると「あれも必要」「これも安い」という感じで、結構買ってしまいました。

品揃えを見ると、海外製品と日本製品がミックスされている感じでした。また、コストコはプライベートブランドも提供していて、「KIRKLAND」ブランドの商品も多く並んでいました。

プライベートブランド || Costco Japan

 

新しい顧客体験の創造

ビジネススクールでアメリカの小売業の代表であるウォルマートが題材として取り扱われたことがありました。ウォルマートがなぜ成功したのか、という差別化の要因を探っていくことがメインだったのですが、最後にウォルマートが多角化戦略を取っていく理由が象徴的でした。

ウォルマートはサムズクラブなど、いろんな業態に多角化しています。

サムズクラブ(Sam’s Club)

ウォルマートが多角化する理由はひとつだけではないのですが、記憶に残っているのは「同じ業態では飽きられる」という事実です。同じ業態のままでは、新しい顧客体験を創造できなくなるのです。

 

コストコの顧客体験

実際コストコでは、子どもが2人並んで座れる巨大なカートを押して、高く積み上げられた商品棚を見ながら買い物をしていきます。通路は広めではあるのですが、カートが巨大なので至る所で「渋滞」が発生していました。

そして、普段は見ないような規格外の商品を見るのも楽しいものでした。NAVERまとめにもこれだけ情報が掲載されています。(イオンでも検索してみましたが、数が全然違いました。)

コストコ – NAVER まとめ

レジの先にはフードコーナーがあり、安く食事やドリンクを楽しむこともできます。気分は、ちょっとしたアミューズメントです。こういうのは、普段のスーパーでは体験することができません。

 

様々な業種に、新しい顧客体験が必要です。業態を新しくすることもひとつのアプローチですし、オムニチャネルのようにオンライン/オフラインのシームレスなサービス提供も、新しい顧客体験です。カスタマーエクスペリエンスを常に新しく創造していく、というのは非常に重要なんだなということを改めて認識しました。

MSはなぜ無償でWindowsを提供するのか

マイクロソフトが、9インチより小さいのデバイスに対して、Windows OSを無償で提供すると発表しました。

マイクロソフト捨て身の反撃 ウィンドウズ一部無償化  :日本経済新聞

また、つい先日はOffice for iPadが無償で提供されましたしね。MSの中で急速に方針転換が図られている印象があります。

MS、「Office for iPad」発表~「Office Mobile」の個人利用は無料に -INTERNET Watch

今日は、マイクロソフトがなぜWindowsやOfficeを無償化するのか。マイクロソフトの置かれている環境や微ビジネスモデルから考えてみたいと思います。

 

世界的にPCからスマートフォン・タブレットへシフト

PCは出荷台数が年々減少しており、2015年にはタブレットに抜かれると予想されています。スマーフォンもどんどん普及しており、台数でいえばPCの比じゃありません。

タブレット年間出荷台数、2015年までにPCを上回る–IDCが予測 – CNET Japan

つまり、世界的にインターネットへの接続機器はPCからスマートフォン・タブレットへ移行しています。その中で、マイクロソフトはAppleやGoogleに出遅れる形になりました。Windowsの落ち込み振りは、このグラフをみれば一目瞭然です。

Microsoft’s Biggest Problem In One Chart – Business Insider

 

ソフトウェア・ライセンスで稼ぐビジネスモデルの弱体化

マイクロソフトの収益構造は、ソフトウェア・ライセンスがメインです。WindowsやOfficeですね。特にビジネス向けが強いです。これが、スマートフォン・タブレットへの移行に伴い、他社からビジネスモデルを弱体化させられています。

Appleはハード・ソフトを完全に垂直統合することで、OSの無料アップデートなどを提供しても利益が出る構造になっています。GoogleはAndroid OSから検索などで生み出される広告収益が基盤になっています。3社の収益構造を比較した記事をみると、そのあたりが顕著に表れていて面白いです。

ハイテク業界を支配するアップル、グーグル、マイクロソフト–収益源で見る各社の違い – ZDNet Japan

つまり、Apple、GoogleともOSを無償にしても懐が傷みにくい構造になっているんですね。そこがマイクロソフトの弱点として表れています。

 

今後どうなるか

マイクロソフトのWordやExcelなどのOffice製品の強みはまだ継続されています。ただ、このあたりもAppleはiWorkを無償で提供したり、GoogleもDocsサービスなどを強化しており、せっせと囲い込みを各者画策している状況です。AppleのプラットフォームであるOffice for iPadが無償で提供されたのも、そういう流れを受けての判断だと思います。

マイクロソフトとしては、PCにおけるOffice製品の強み(ライセンス収入)をいかに確保しつつ、それ以外の囲い込みを防ぐかが当面のポイントじゃないでしょうか。

それ以外にも、Bingのシェア拡大などを狙っているようですが、このあたりは正直未知数かな、と。

ASCII.jp:米マイクロソフトのBingはグーグルの脅威となるか

 

一般ユーザーとしては、Windowsを搭載した格安のタブレットなどが発売されて、入手しやすくなるでしょう。ビジネス向けでは、Officeとの親和性を重視して、Windows搭載のスマートフォンやタブレットが勢いを増すかもしれません。

また、iPhoneやAndroidなど、いろんなプラットフォームでOfficeが利用しやすい状況が出来ていきます。AppleやGoogleも頑張ってはいますが、Officeに関してはまだ盤石な状況がしばらく続きそうです。無料でOSを提供しハードウェアは他社が作る、というモデルとしてはAndroidの方とぶつかりそうなので、スマートフォンやタブレットの使い勝手で、AndroidとWindowsとどちらが選ばれるかが勝負のポイントになるんじゃないでしょうか。

 

アップルとアマゾンの競合に対する戦略の違い

再度「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」から。本の中で興味深い箇所がありました。それが、アップルとアマゾンの競合に対する戦略の違いです。

本書の中で、ジェフ・ベゾスは「スティーブ・ジョブズの失敗」をくり返したくないと述べています。

アマゾンはコスト構造が優れており、利益率が低い世界で生き残る力を持っているとベゾスは信じている。そのような市場は相対的な利益率を引き下げる恐れがあり、IBMやマイクロソフト、グーグルなどの企業は参入に二の足を踏むはずだ。このころ、レッグ・メイソン・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者でアマゾンの大株主でもあるビル・ミラーからAWSの収益予想を尋ねられたとき、ベゾスは、長期的には収益が上げられるようになるが、「スティーブ・ジョブズの失敗」をくり返したくないと回答した。iPhoneをびっくりするほど利益があがる価格にして、競争相手をスマートフォン市場に引き寄せた愚は避けたいというわけだ。

これを読んで、アマゾンの戦略や強みをどこに置くかが非常に良くわかりました。

 

競合他社を排除する「参入障壁」をいかに築くか

確かにアップルは、iPod、iPhone、iPadと商品を出すたびに、新しい市場を開拓してきました。そしてそれは、多くの競合他社の参入も行われる結果となりました。

ジェフ・ベゾスは、競合他社を排除するためには「高い参入障壁が必要」と考えたのでしょう。そして、それがコスト構造であり、低い利益率だということです。最初から低い料金で利益を低くすることで、他社が参入することを敬遠し、市場はアマゾンだけになる。そして時間とともに、利益が出るようになっていくというわけです。

アップルの場合は、デザイン性やMacなどとの親和性によって差別化していたわけですが、それでも無料Androidとそれを利用した低価格メーカーが台頭してきました。アップルも非常に儲かっているので、どちらが正しいとは言いづらい部分ではありますが、デザインだけでは強固な参入障壁にはならなかったと言えるのかもしれません。

 

どうやって競合企業に勝っていくか

最初アマゾンは本の販売からスタートしました。そのときは、実店舗を持つチェーン店などが競合になったわけですが、そこにはネットの低価格さと同時に、資本がある大手チェーンは実店舗との競合や個人客への配送体制の未整備など、ジレンマに陥っている状況を追い風に、躍進していきました。

そして、その後は徹底的に低コストを重視し、コスト競争力によって競合を排除していきます。同じものであれば、競合より安く販売することで弱体化させる。そうやって、まずは競合を排除して、自社が儲けられる状況を作っているのがアマゾンです。

経営戦略上、競合との戦いというのは非常に重要です。どうやって競合と戦うのか、という点で、ベゾスの考え方は非常に参考になります。

 

アマゾンの戦略はイメージが悪い?

ただ、アマゾンは敵が多く、あまり良い印象を持たれていないかもしれません。方やアップルは非常に良い印象を抱く人が多い気がします。取引先への厳しい交渉や、高度な税金対策など、反感を抱かれるようなことは両社共通してやっていることです。

本書の中で、ベゾスは「良い会社と見られるには」ということを分析しているくだりがあります。

愛想がよくて頼りになるだけでは、あるいは、顧客を中心に考えるだけでは不十分だ。重要なのは、創意工夫をするところだと見られること、征服者ではなく探検者として見られること。

コストリーダーシップ戦略をとる企業というのは、それなりにバッシングも受けやすいのかもしれません。コストを低くするということは、取引先を絞り、競合を潰し、市場全体が広がらないイメージがあるからでしょう。

本書を読むとアマゾンが十分に「探検者」であると思いますが、今後どういうイメージになっていくんでしょうか。

「イノベーションのジレンマ」を克服したアマゾン

「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」を読みました。いろいろ知っているエピソードもありましたが、アマゾンがこれまでどうやって発展してきたのかがよくわかる、とても刺激的な一冊でした。「ベゾス、恐ろしや」というのが全体的な印象です。

ベゾスの愛読書は「イノベーションのジレンマ」

ベゾスの愛読書のひとつが「イノベーションのジレンマ」であることは有名な話です。アマゾンの成長の過程をみると、イノベーションのジレンマを解消していることがわかります。それがKindleであり、電子書籍サービスです。

ベゾスが電子書籍サービスを始めたのは、アップルの音楽の成功を見て、「次は本だ」と考えたからです。

ベゾスは、新たなデジタル時代に書店としてアマゾンが栄えていくためには、アップルが音楽事業を牛耳ったのと同じように、自社で電子書籍事業を展開しなければならないという結論に達する。その数年後、スタンフォード大学経営大学院における講演で、ディエゴ・ピアチェンティーが次のように語っている。「他人に食われるくらいなら、自分で自分を食ったほうがずっとマシなわけです。コダックのようにはなりたくありませんからね」

ここで、ベゾスは新しい部門の責任書を据えて、既存事業を叩き潰すつもりで電子書籍事業を展開するよう指示します。そして、アップルと同じように自社でハードウェアであるKindleを開発して販売するようになるのです。

アップルが音楽で成功したようにアマゾンが書籍で成功するためには、洗練されたハードウェアから使いやすいデジタル書店まで用意して顧客の体験をすべて管理する必要があると、ベゾスは皆の反対を一蹴する。

時代に先行して進むためには、自分たちを否定しなければいけない瞬間があります。そして、それを乗り越えて事業を展開できてこそ、初めて「イノベーションのジレンマ」を克服することができるのです。実際、競合であり大手であるバーンズ&ノーブルは、アマゾンの台頭からネット販売にも手を出しますが、既存事業を優先するばかりに資源の投入を中途半端にしてしまいます。その後のバーンズ&ノーブルは、結局アマゾンの優位を覆すことができないままになります。

チェーン展開しているバーンズ&ノーブルがオンライン事業を本気で進めるのは難しいはずだとベゾスは読んでいたし、この読みは正しかった。ごく一部にすぎないオンライン事業で損失を出すのはいやだと考えたリッジオ兄弟は、優秀な社員の投入をためらった。利益率の高いリアル書店での販売が低下する恐れがあるからだ。流通の仕組みも問題だった。バーンス&ノーブルの流通はリアル書店に最適化されており、一定の配送先に大量の本を届けるものだ。その状態から個人宛の小口配送を始めたため、問題ばかりが発生して大変なことになってしまった。一方、アマゾンにとっては、個人宛の小口配送が当然だった。

ベゾスは、長期的なビジョンを見据えて既存事業を否定して、新しい方向へ目一杯舵を切ることができる優れた経営者であることがわかります。本当すごいな。

 

矛盾を抱えながら成長する

それ以外でも面白い特徴があります。アマゾンは最初、本屋と同じように「場所を貸して手数料を得る」という本屋と同じモデルでスタートしました。その後、いろんな製品を手がけていく中で、自分たちで配送や仕入れを行うことで利ざやを増やしていきます。

それとは反して、マーケットプレイスでいろんな人がアマゾンというプラットフォームに出品できるようにもしていきます。これは一見、自社の販売と競合を増やしている行為です。しかし、そのような一見相矛盾する状況も、アマゾンの優位を築くことになります。

アマゾンはサードパーティの動きをしっかり監視しており、売れ行きのいい商品があると自分たちも販売を始めることが多い。手数料を払いながら人気商品探索の手伝いをしているようなもので、アマゾンマーケットプレイスを使う小売業者たちは一番凶暴なライバルを助けていると言える。

アマゾンは、マーケットプレイスで儲かる分野は自分たちで始めてしまうということです。情報とプラットフォームを握る強者の戦略ですね。このように、自社ビジネスの中に矛盾を抱えていますが、それすらも自分たちの強みにしてしまう点が非常にアマゾンの優位性があるのです。

利用される企業としては、たまったものではないですが。

 

アマゾンの戦略は非常にシンプル

本書の中では「弾み車を回す」という表現が何回も登場します。これは、自分の会社を強くするための一貫したサイクルのことを指します。

これはアマゾンの弾み車ー良循環ーを回してくれるものだ。顧客がたくさん買ってくれればアマゾンの販売量が増え、配送コストも下げられるしベンダーとの交渉もやりやすくなる。

これは、家電量販店やウォルマートなど小売業に通じる戦略です。スケールメリットによって会社を強くしていくという方法です。そういう観点でみると、アマゾンの戦略は非常に一貫性があります。自社に一時的に不利益になることがあったとしても、「顧客を増やす」という点で一貫しているのです。電子書籍の方が確実にニーズがあると思えば、そちらに注力しますし、マーケットプレイスは顧客の選択肢を増やす行為です。

ただ、アマゾンが強烈なのは品揃えなどの水平統合を進めていき、時にはAWSなどコンピュータリソースを販売する大きな事業も創出しています。さらに、自社で配送センターを持ち、販売し、出版事業も持つように、垂直にも統合していきます。その推進力とベゾスのビジョン、偶然を活かしていく力が非常に高いと思うわけです。

 

こうみていくと、アマゾンの経営戦略に関しては興味が尽きません。ただ言えることは、「弾み車」は一貫しており、そのために「イノベーションのジレンマ」を克服するための打ち手を様々打っているということです。

本書はアマゾンの負の側面も捉えています。競合が弱るまで赤字の値引きを行い、ディスカウントされた価格でライバルを買収したり、出版社にアマゾン上で検索できなくさせて脅すことで値引きを勝ち取ったりしています。そういうドライな側面も含めて、とても面白いです。アマゾン。