アップルとアマゾンの競合に対する戦略の違い

再度「ジェフ・ベゾス 果てなき野望」から。本の中で興味深い箇所がありました。それが、アップルとアマゾンの競合に対する戦略の違いです。

本書の中で、ジェフ・ベゾスは「スティーブ・ジョブズの失敗」をくり返したくないと述べています。

アマゾンはコスト構造が優れており、利益率が低い世界で生き残る力を持っているとベゾスは信じている。そのような市場は相対的な利益率を引き下げる恐れがあり、IBMやマイクロソフト、グーグルなどの企業は参入に二の足を踏むはずだ。このころ、レッグ・メイソン・キャピタル・マネジメントの最高投資責任者でアマゾンの大株主でもあるビル・ミラーからAWSの収益予想を尋ねられたとき、ベゾスは、長期的には収益が上げられるようになるが、「スティーブ・ジョブズの失敗」をくり返したくないと回答した。iPhoneをびっくりするほど利益があがる価格にして、競争相手をスマートフォン市場に引き寄せた愚は避けたいというわけだ。

これを読んで、アマゾンの戦略や強みをどこに置くかが非常に良くわかりました。

 

競合他社を排除する「参入障壁」をいかに築くか

確かにアップルは、iPod、iPhone、iPadと商品を出すたびに、新しい市場を開拓してきました。そしてそれは、多くの競合他社の参入も行われる結果となりました。

ジェフ・ベゾスは、競合他社を排除するためには「高い参入障壁が必要」と考えたのでしょう。そして、それがコスト構造であり、低い利益率だということです。最初から低い料金で利益を低くすることで、他社が参入することを敬遠し、市場はアマゾンだけになる。そして時間とともに、利益が出るようになっていくというわけです。

アップルの場合は、デザイン性やMacなどとの親和性によって差別化していたわけですが、それでも無料Androidとそれを利用した低価格メーカーが台頭してきました。アップルも非常に儲かっているので、どちらが正しいとは言いづらい部分ではありますが、デザインだけでは強固な参入障壁にはならなかったと言えるのかもしれません。

 

どうやって競合企業に勝っていくか

最初アマゾンは本の販売からスタートしました。そのときは、実店舗を持つチェーン店などが競合になったわけですが、そこにはネットの低価格さと同時に、資本がある大手チェーンは実店舗との競合や個人客への配送体制の未整備など、ジレンマに陥っている状況を追い風に、躍進していきました。

そして、その後は徹底的に低コストを重視し、コスト競争力によって競合を排除していきます。同じものであれば、競合より安く販売することで弱体化させる。そうやって、まずは競合を排除して、自社が儲けられる状況を作っているのがアマゾンです。

経営戦略上、競合との戦いというのは非常に重要です。どうやって競合と戦うのか、という点で、ベゾスの考え方は非常に参考になります。

 

アマゾンの戦略はイメージが悪い?

ただ、アマゾンは敵が多く、あまり良い印象を持たれていないかもしれません。方やアップルは非常に良い印象を抱く人が多い気がします。取引先への厳しい交渉や、高度な税金対策など、反感を抱かれるようなことは両社共通してやっていることです。

本書の中で、ベゾスは「良い会社と見られるには」ということを分析しているくだりがあります。

愛想がよくて頼りになるだけでは、あるいは、顧客を中心に考えるだけでは不十分だ。重要なのは、創意工夫をするところだと見られること、征服者ではなく探検者として見られること。

コストリーダーシップ戦略をとる企業というのは、それなりにバッシングも受けやすいのかもしれません。コストを低くするということは、取引先を絞り、競合を潰し、市場全体が広がらないイメージがあるからでしょう。

本書を読むとアマゾンが十分に「探検者」であると思いますが、今後どういうイメージになっていくんでしょうか。