どの企業に就職すれば稼ぐことができるのか、を考える前に

今日は、社会にでて働くとして、どうすれば高い年収を得られるのか?ということを考えてみたいと思います。

特に今日書くのは、個別の企業の話ではありません。個別の企業を見る前に、以下の点を考慮して働くことを考えてみると良いでしょう。いずれも、統計上賃金の違いが生じているものです。

 

業界による違い

まず、業種・業界によって平均は違います。

いくつかデータがありますが、

平均年収ランキング2015(平均年収/生涯賃金) |転職ならDODA(デューダ)
業種別・業界別 平均年収ランキング(平成25-26年版)-年収ラボ

身を置いた業界や職種によって、ある程度年収のボリュームゾーンが見えてくるのは事実かと思います。

似たような話として、「ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学」で、企業の儲かる要因は何なのか?という研究に関する話が登場します。いくつか研究結果が示されているのですが、そのひとつであるマイケル・ポーターの結果は、以下のようになっています。

そしてこの分析で企業利益率のバラツキの約50%を説明できること、その内訳は産業効果が四割ぐらいで、企業固有の効果は六割ぐらいにとどまる、という結果を得たのです。

「産業効果」が4割というのは、企業がどの産業にいるのか?で儲けの4割は説明できる、ということです。結構大きいですね。それぐらい、「そもそもどの産業で勝負するか?」というのは、企業の収益性に与える影響が大きいということです。それはつまり、働く人の賃金にも影響を与えるのは当然のことです。

 

住む場所による違い

日本で考えると、都道府県別でみた場合に、圧倒的に東京での収入が高くなっています。以下は、都道府県別の一人当たり県民所得の推移を示しています。

Image
(出所:県民経済計算(平成13年度 – 平成24年度) – 内閣府)

東京はリーマン・ショックのあたりで落ちていますが、それでも他県と比べて圧倒的な差を形成しています。頑張っているのは愛知県ですね。

これは、いくつか要因はあると思いますが、都市というのは集積するほど効率が良いという点が大きいと思います。都市にいろんなものが集まることによって、インフラ設備の利用効率が上昇します。また、人材についてもコミュニケーションが密に行われることで、イノベーションを誘発しやすいと言われています。

詳細はこちらの本を参考に。

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働くという視点で考えれば、都市に行った方が賃金は稼ぎやすいという点は挙げられるでしょう。

 

企業規模による違い

日本の就職活動では、大企業に志望が集中すると言われていますが、賃金の面でみてもその選択には一定の合理性があります。

以前読んだ「フェルドマン博士の日本経済最新講義」では、大企業とそれ以外の賃金格差を以下のように示されています。

大企業の平均人件費は、中堅企業より七割高い。大企業のほうが資本が多いのですから、一人当たりの平均生産性は高いはずです。しかし、これほど差がつくはずはありません。
大企業では中堅企業より終身雇用が多いという慣習が労働の移動を阻み、賃金の格差につながっていると考えるべきです。逆の見方をすれば、大企業と中堅企業の賃金格差の大きさが、労働の流動性を阻んでいるということもできます。

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これは、大企業に所属するというだけで、賃金が高い傾向にあるということを言っているわけです。

 

ということで、上記をみると、社会に出て働く人たちはみんな東京に出て、平均年収の高い大企業に勤めるのが一番合理的というか、高い年収を期待できるということになります。

ただ、みなさんご存知の通り、ひとつの業界をみても企業によって違いがあります。ユニクロの給与テーブルが公開されて話題になりましたが、比較的年収が高くないとされる小売業において、非常に高い年収を獲得できるチャンスがあることがわかります。

ユニクロの「年収テーブル」公開が話題に 「超絶ブラックと思ってたわ」の声も | キャリコネニュース

最初に戻り、マイケル・ポーターの分析結果でも、企業の業績は「企業固有の効果が六割」も占めるので、個別の企業をよく分析するということも、非常に重要です。

それ以外にも、雇用形態でいえば正規雇用/非正規雇用の違いとか、男性/女性の違いなども統計上ははっきり違いが出ています。

自分はこういう仕事がしたい!ということもとても大事ですし、全く否定するものではないですが、こういう経済的な事実があるということも、頭の片隅に入れておく必要があるのではないか、と思う今日このごろです。

今日はこのへんで。

JINSという企業を改めて分析してみる

[memo title=”新しい記事書きました”]

新しい情報を確認されたい方はこちら。

JINSの業績をみながらZoffと比較する(2020年)

[/memo]

 

読者の方から質問をいただきました。

詳細は省きますが、こういう内容です。

JINSの将来性や経営の観点での管理人様の評価を教えて頂けませんでしょうか。

こういう質問をいただくと、自分の中でいろいろ調べるエネルギーが湧いてくるので好物です。笑

JINSについては、このブログでも何度か書いてきたのですが、市場環境などを含めて書いたのがこの記事です。

[kanren postid=”3676″]

これは2014年11月のものなので、ちょっと古くなっていますね。情報のアップデートがてら、ご質問に答えられればと思います。

メガネ市場について

まず、国内のメガネ市場全体になります。これは、2011年以降4年連続で上昇しています。

2014年の国内アイウエア市場規模は前年比101.7%の4,798億円であった。2011年以降4年連続のプラス成長となった。普段アイウエアを必要としないユーザーを取り込んだ非視力矯正市場という全く新しい市場の創出や、オリジナルブランドによる日本メーカーの復権、度付きアイウエアのインターネット通販の拡大などが主な要因である。

国内アイウエア市場に関する調査結果 2015 – 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

まさにJINSに代表されるような、低価格でファッション性の高いメガネが打ち出されたことで、新たな市場を開拓した形でしょう。

一方で、世界のメガネ市場がどうなっているか。データがほとんど見当たらなかったのですが、こういう記事がありました。

世界のメガネ市場規模は2013年時点で980億米ドル。国別では、米国が280億米ドル、日本が100億米ドルとなる。一方で、中国は561億1800万人民元(約87億米ドル)にとどまった。 1人当たり平均消費は、さらに少ない。13年末の人口で計算すると、米国が88.25米ドル、日本が78.60米ドルに上るのに対し、中国は41.24人民元(6.4米ドル)。伸び代の大きい市場といえる。

中国メガネ業界に成長ポテンシャル、近視人口は世界最多 | newsclip (ニュース、ASEAN、その他のニュース)

元データを正確に特定できなかったのですが、この数字を信じるならば、経済発展とメガネの消費量や消費額にはある程度相関があると思われます。今後は、経済発展していくアジア市場全体でメガネはもっと消費されていくのではないでしょうか。

まとめると、日本は成熟市場ではあるものの、回復傾向にある。海外では経済成長とともに今後のメガネ消費の上昇が期待できる、というところでしょうか。

JINSの業績について

JINSの売上と利益率はこんな感じで推移しています。

image (2)

当初ほどの利益率ではありませんが、売上高と利益率は直近では改善してきています。

次に、競合各社との比較で見てみます。まず前提として注意する必要があるのは、メガネトップという業界リーダーが上場廃止しており、比較が難しいという点です。なので、以下はそれ以外の競合との比較になります。

まず売上高の比較です。JINSは三城ホールディングスの次にあります。(企業名が見切れてますね。すみません。。。)

image (3)

次に営業利益率です。JINSが圧倒的に大きいですね。これはやはり、SPAモデルの強みでしょう。

image (4)

まとめると、日本市場では恐らく業界3位。利益率でみれば業界の中でトップ、という状況です。

今後の戦略

JINSの今後の戦略は、「CEOメッセージ」から読み取ることができます。

投資家情報ライブラリー(株主の皆様へ) | 株式会社ジェイアイエヌ

最新のものを見ると、ポイントを2つに絞って語られています。

革新的な商品の開発

一つ目が「JINS MEME」。ついに発売になりましたね。自分の状態を可視化できるメガネとして、僕も非常に注目しています。ソフトウェアを技術者に公開し、アプリケーションを開発できるオープンなプラットフォームになっています。今後、このプラットフォームがうまく育ち、キラーコンテンツが登場すれば、革新的な商品になる可能性を秘めています。このあたりの動きは、まさにIT企業さながらで、若い会社だからこそかな、というところもあります。

また、高い利益率があり、それを原資に商品開発や設備投資に回す、という好循環もSPAモデルの特徴です。

グローバル展開

もうひとつがグローバル展開ですね。2015年9月末現在で、中国は57店舗にまで拡大し、今後も大量出店を見込んでいるそうです。前述した通り、中国市場は伸び代が大きい市場であり、成長が見込めるのだと思います。

ここで競合の三城ホールディングスを見てみると、複数の国に海外展開しており、最も店舗数が多い中国だと75店舗あります(2016年3月期 第2四半期の事業報告書より)。ただ、2011年では138店舗あったのが、年々減少してきています。

戦略という点では、JINSがまさに時代の波に乗っている感があります。成熟していたメガネ市場をSPAモデルによる低価格とファッション性・機能性のある商品開発で席巻してきたJINSですが、今後の成長も期待できると思います。

あと、ネット通販に対応しているかというところも、ひそかな注目点ですね。オムニチャネル化はどんな小売業にも言えることですし、ネット専業のメガネ通販会社も登場しています。各社も力を入れていると思いますが、このあたりは経営の本気度合いが試されると思います。

参考:ネットと実店舗の融合が進む青山商事、パルコ、メガネースーパーのオムニチャネル事例を学ぶ | ネットショップ担当者フォーラム

まとめ

  • メガネ市場は、国内はやや改善。海外はアメリカが巨大市場で、中国は今後の成長市場。
  • JINSの売上シェアは(恐らく)国内3位。利益率はトップ。SPAモデルの強み。
  • 今後の戦略は革新的な商品開発とグローバル展開。

というわけで、「JINS MEME」を開発したり、ネット通販に力を入れていたりと、ITもうまく取り入れて強くなっている気がします。何より、競合と比べて数字や戦略に勢いを感じますね。

今日はこのへんで。

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【書評】フェルドマン博士の 日本経済最新講義

年末年始で、この本を読みました。

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ええ、ちきりんさんのおすすめにまんまとひっかかったわけですが、なにか?笑

この一冊 2015年から2016年へ – Chikirinの日記

ただ、最近「新・観光立国論」や「東京一極集中が日本を救う」を読んでいたので、地方を含めた今後の日本経済の論点というものがいろいろつながって、頭の整理と刺激になりました。

【書評】新・観光立国論

「東京一極集中が日本を救う」を読んで今年の地方創生を考えよう

 

特に地方再生に関する課題の提起については、新しい視点が含められていました。

 

地方再生の課題は「エネルギー効率」と「インフラのコスト」

最終章が「地方再生と教育改革」になっています。そして、地方における課題として2つ挙げられています。

一つ目はエネルギー密度です。

次はエネルギー密度です。前述の日銀レポートの中に、都道府県別のエネルギー効率が紹介されています。人口密度が高くなるほど、あるいは都市化率が高くなるほど、利用する一人当たりのエネルギーは少なくなります。これは当然です。地方に住んでいれば、スーパーへ買い物に行くのも遠いので、車を使う必要があるからです。

 

ここでいう「日銀レポート」というのは、「わが国の「都市化率」に関する事実整理と考察 ― 地域経済の視点から ―」です。

そしてもう一つとして、インフラのコストが挙げられています。

もう一つの課題はインフラのコストです。同じ日銀のレポートには、さまざまな社会インフラと都市化率との関係が載っています。たとえば、一人当たりの郵便局の数。同じく小学校の数、病院の数。さらに、一人当たりの道路の長さ。都市より地方のほうがコストがかかる現実が、非常にはっきり出ています。

 

2つとも、いわば地方は都市への集約効果が低いことが課題だというわけです。これまで日本は全体で都市面積を広げてきましたが、人口減少を迎えている今は、都市面積を広げるのではなく、都市に集約し生産性を向上させる必要があるわけです。特に、サービス業は都市への集積による生産性の向上効果が高いと言われています。

 

どうやって地方を再生させるのか

本書では、地方の生産性を高める方法についてのポイントも示しています。ひとつは選挙制度改革で、もうひとつが「稼ぐ力」の向上です。具体的には、以下のように書かれています。

選挙制度改革を進めると同時に、稼ぐ力をどう増やすのかが問題になります。ごく普通の経済常識で考えれば、答えは「生産要素」と「生産性」です。付加価値を上げる生産要素は、資本、労働、土地(地方ではとくに農地)です。生産性を上げるには、その三つの要素をつなげる技術が必要です。

 

つまり、こういう生産要素がうまく活用されていないので、稼ぐ力が停滞しているというわけです。東京などの三大都市圏と同じようにあらゆるものを集積するというアプローチではダメだと思うので、

  • 地方の都市部は可能な限り集積
  • 都市以外の土地を農業等(大規模農業)で活用

 

という両面のアプローチが必要なのでしょう。

口で言うのは簡単で、実行するのは難しいのかもしれませんが、実際に新しい行動で地方ビジネスを起こしている事例もあります。

【書評】地方創生ビジネスの教科書

 

それ以外にも、経済的な論点が多数

本書を読むと、それ以外にも多数の経済的な論点が述べられています。個人的に気になったのは、まず財政再建。

大前研一さんの「日本の論点 2015~2016」でも、「累積赤字の解消が日本経済最大の問題」と述べられていました。

「日本の論点 2015~16」を読んで今後の日本社会を考えよう

 

本書の中でも、今日本が置かれている財政状況がこう書かれています。

財政制度等審議会という財務省の有識者会議で、経済学者の富田俊基中央大学教授が同じような計算を行いました。すると、消費税を一〇%として、経済がうまく成長すると想定しても、年間六十兆円が必要になるというシナリオも出ました。  その六十兆円をどこから捻出するのか。すべて消費税に転嫁すれば、消費税率三四%です。逆に増税をまったくしなければ、百二十八兆円の社会保障支出の中から六十兆円を削らなければいけません。四七%ぐらいの削減です。結局は国民が増税と歳出削減の組み合わせを選択せざるを得ないのです。増税と歳出削減をどの割合で行うか、という選択です。

 

ということで、増税は行われてきていますが、歳出削減の議論が進んでいるかといえば、十分ではない気がします。

また、労働市場についても考えさせられます。例えば、男女の違いについてはこう書かれています。

では、男性と女性の割合をみます。右の正規雇用者のうち、男性は約六九%です。女性は約三一%にすぎません。非正規だと、ほぼ同じ比率で逆転します。すなわち、男性は三二%。女性が六八%。正規雇用で守られている人たちは、圧倒的に男性だとわかります。  同じ五千六百万人を就業状態別に分けると、無期契約社員は三千七百五十万人。有期契約社員は千七十万人。その男女別の内訳は、無期契約社員の六一%が男性。女性は三九%。有期契約社員では、男性が三九%。女性が六一%です。ここでもまた、同じ比率で逆転しています。予想通りといえば予想通りですが、産業界は女性より男性を手厚く守っているのです。格差社会というか、差別社会というか。これが現状です。

 

他にも大企業と中小企業の平均賃金の違いについても示されていました。いずれも労働市場が硬直化しているのがよくわかる数字になっています。

 

というわけで、本書を読めば、あらかた日本経済における論点がカバーされてるんじゃないでしょうか。具体的な数字に基づいた意見が述べられているので明快ですが、幅広いテーマになっているので、じっくり読むのがおすすめです。

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このブログで売れた洋書(2015年版)

このブログでは、洋書が結構売れているのです。というわけで、2015年にこのブログで売れた洋書を振り返っておこうと思います。

 

Marvin Redpost #1: Kidnapped at Birth?

ダントツで売れてるのがこの本ですね。

この記事で一番最初に紹介している点が大きいと思います。

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児童書で読みやすいので、洋書を一冊読みたいけど途中で挫折するのが、、、とかどれを買ったら良いかがわからない人にはオススメです。シリーズものなので、ぜひ他の本も!

 

White Death (Oxford Bookworms Library)

次がこれです。

Oxford Bookwormsというシリーズで、語彙が制限されており、わかりやすい文章になっているのが特徴です。

 

Who Was Helen Keller? (Who Was…?)

「Who was…?」という、偉人の伝記をコンパクトにわかりやすく収めた本になっていて、これも非常に読みやすいシリーズです。

詳しい説明はこちらから。

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それ以外でも、これらも売れています。このブログで紹介していないものもあるので、結構みなさん自分が興味がある人を選んでいるんでしょうね。

 

Discovery in the Cave (Step into Reading)

こちらもわかりやすい本ですね。

 

Sherlock Holmes and the Duke’s Son: 400 Headwords (Oxford Bookworms Library)

シャーロックホームズの原著は、無料で読めるのですが、読みづらいんですよね。こちらはOxford Bookwormsになっているので、わかりやすい語彙で文章が作成されています。そのような文章で推理小説を読めるというのは、楽しい!

 

以上です。やはり初心者向けのわかりやすい本が多く選ばれていますね。

洋書を読めるようになると、世界が広がります。今年もいろいろトライしていきたいと思います。

なぜ東芝が白物家電事業を整理する必要があるのかを検証してみる

新年ですね。新年早々書く記事ではないかもしれませんが、調べ物をしたので記事を書いておきます。

東芝がいろいろ波乱続きになっていますが、最近言われている一つに白物家電事業の売却があります。

東芝の室町正志社長は28日、産経新聞のインタビューに応じ、採算が悪化している白物家電、パソコンの両事業について実質的に売却する方針を示した。両事業とも、他社との事業統合を検討しているが、合弁会社をつくっても議決権の過半は持たず、東芝の連結決算への影響を抑える。これらにより、平成29年3月期の連結売上高は「5兆円割れの可能性もある」という。5兆円を下回れば、7年3月期以来、22年ぶり。事業規模を縮小し、生き残りを目指す姿勢が鮮明になりそうだ。

白物家電・PCを実質売却 東芝・室町社長インタビュー (産経新聞) – Yahoo!ニュース

 

ということで、なぜ今なのかを検証してみたいと思います。

白物家電の市場環境

白物家電の市場環境がどうなっているかを見てみます。会社四季報 業界地図2016年版によりますと、

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国内は成熟してきており、海外は成長しています。海外では新興国、特に中国が需要を牽引しています。国内は買い替え需要で一定規模が継続しているのが現状です。

また、国内市場にはダイソンやiRobot(ルンバ)などの海外勢が勢力を伸ばしており、決して楽な市場ではなくなっています。

ここから考えられるのは、国内を主戦場にしていると、厳しそうな感じがありますね。

売上高と利益率の推移

次に、東芝の売上高と利益率を見てみようと思います。事業構成が違うので、全体の売上で比較しても仕方ないですが、おおよその傾向はわかると思います。ただ、不正会計問題があるので、正確な数字でない部分がありますが。

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それでも、利益はギリギリのラインも経験しています。

競合との関係も見てみます。家電を含む競合としては、日立・三菱電機・パナソニック・シャープが挙げられます。

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利益率でみると、今話題の東芝とシャープが下がってきているのがわかります。一方で、パナソニックや三菱電機は、2012年頃に苦戦していたものの、それからは改善傾向になっています。

東芝における家電事業の位置づけ

東芝はいくつか複数の事業を展開しており、最新の報告書を見ると、6つの事業に分かれています。家電は、「ライフスタイル事業」に分類されています。

それぞれの業績を見てみましょう。(東芝投資家情報(IR):アニュアルレポートより)

電力・社会インフラ事業グループ

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コミュニティ・ソリューション事業グループ

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ヘルスケア事業グループ

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電子デバイス事業グループ

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ライフスタイル事業グループ

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その他事業グループ

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売上高と営業利益を並べてみてみると、家電を含むライフスタイル事業グループだけが赤字になっています。ライフスタイル事業の赤字要因が財務上どこにあるのかは、これ以上詳細にはわかりませんが、売上高の伸び悩みと赤字構造の継続は明らかに課題です。しかも、売上高として締める割合は16%もあります。

そして、東芝は家電の主戦場が国内になっており、海外生産拠点の集約の遅れ、円安の影響でコスト構造が高くなっていたようです。

現在、白モノ家電の7割~8割が、日本向けだ。アイロンやオーブンなど、一部製品を新潟などで生産しているものの、冷蔵庫や洗濯機は100%を海外生産に依存している。が、近年の想定を上回る円安によって、輸入採算が急悪化しており、コスト面で厳しい状況が続いていた。

東芝、白モノ家電で中国企業と組む意味 | IT・電機・半導体・部品 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

つまり、市場が成長しているのは海外であるものの、主戦場の比重が国内になっており、売り上げを伸ばすことに苦戦しています。一方で、海外生産拠点・販売拠点を整理できず、高いコスト構造になってしまったようです。

同じような状況だったパナソニックは、早めに事業を整理し、海外で生産を伸ばすとともに、競争力のあるコスト体質を作り出して、業績を回復させています。

「業績回復組の筆頭が、先の薄型テレビ戦争では歴史的大敗北を喫したパナソニック。2014年度は売り上げこそ3%減ですが、営業利益は実に25%増! TV事業の縮小・撤退で得た原資を電池やカーエレクトロニクス、エアコンなどに大注入し、欧米で車載用電池、中国でエアコンが大躍進しています!」

パナソニックが大復活海外での利益を元に激安価格で新製品を投入ライブドアニュース

 

というわけで、いろいろ見てきましたが、調査の過程で経産省の面白い資料を見つけました。少し古いですが、抜粋しておきます(情報家電メーカーの置かれている状況について)。

以下が家電メーカーの利益率の推移です。世界を席巻してきた日本メーカーはどんどん利益率を低下させてきているのがわかります。

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そして、低収益になっている原因としてこう整理されています。

maker_cost

複数要因を示されていますが、稼げない領域は整理し、稼げるところにスケールを出し、研究開発費などを投資していくことが求められています。

家電事業を売却することで、売上高も下がりますが、事業としてはスリム化されるはずです。不正会計問題から端を発した東芝は、今回の事業整理を機に、業績を回復させることができるでしょうか。

「東京一極集中が日本を救う」を読んで今年の地方創生を考えよう

新年明けましておめでとうございます。

新年最初の記事は、地方創生について考える一冊を紹介したいと思います。

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地方創生というのは安倍政権で登場した言葉です。これを取り上げるのは、今の政権がどういう考えを持っていて、国の形や地方のあり方がどうなっていくのか、考えてみる必要があると思ったからです。

 

今後必ず訪れる人口減少という衝撃

地方創生の目的は何か?ということを聞かれた場合、どう答えるでしょうか。この記事で、小泉進次郎氏が地方創生の目的を非常に端的に述べています。

小泉:地方創生というのは、すごく簡単に言ってしまうと2つのことです。 1つは東京一極集中をやめるということ。2つ目が、日本全体の人口減を食い止めるということ。この2つを地方創生の目的だと考えてもらって差し支えないと思います。

小泉進次郎が語る、地方創生の「2つの目的」

 

また、いわゆる「増田レポート」の登場も大きな話題になりました。若年女性が2040年までに半数以下に減ってしまう都市を「消滅可能性都市」として、それが全国の市町村のうち約半数にのぼるという衝撃でした。

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増田レポートの注目ポイントの一つとして、東京一極集中と人口減少を結びつけたことにあります。

これまでは、以下のサイクルが機能してきました。

  • 地方が人口を都市に供給する
  • 都市が富を生み出す
  • 生み出した富を地方に配分する

しかし、人口減少によって地方が人口を十分に供給できなくなったことで、このサイクルは成立しなくなってきました。特に、東京は出生率が低いので、都市に人を供給すればするほど人口が減っていくという問題が「東京一極集中の是正」と結びついたというわけです。

参考:図録▽都道府県の合計特殊出生率

 

東京一極集中を是正させるのは本当に良いことか

さて、前置きが長くなりましたが、本書は東京一極集中を是正することに対するアンチテーゼが述べられています。様々な切り口から述べられているのですが、基本的には都市に資源(ヒト・モノ・カネ)が集まることは、効率を高めることにつながります。

以前このブログでも取り上げましたが、このTEDのプレゼンを見てもらうと都市の効果がよくわかります。

都市および組織の意外な数学的法則

 

さらに、イノベーションは都市で人が集まることで生まれやすくなることが言われています。以下は、このブログで「年収は「住むところ」で決まる」の書評で書いた一節です。

そして、イノベーション企業は一箇所に集まる傾向にあることも重要なポイントです。ICTが進化して、コミュニケーションコストがタダみたいに低くなり、情報の伝達速度が著しく速くなりました。それでも、人が直接集まるとイノベーションが生まれやすくなる、ということがわかっています。 なぜ直接集まった方がイノベーションが生まれやすいかは、本書の中でいろいろな理由が述べられています。僕なりに解釈すれば、やはり電話やメール、SNSなどコミュニケーションは多様化しましたが、それが故に、直接対面で会うことによるアイデアの創出効果が、相対的に高くなったのだと思っています。

【書評】年収は「住むところ」で決まる | Synapse Diary

 

【書評】年収は「住むところ」で決まる

 

本書では、世界における日本、東京の位置付けや競争環境が述べられています。その上で、先ほど紹介した「地方創生」の目的や「増田レポート」に対しては、こういう観点が抜けていると指摘しています。

つまり、「地方創生」という大きなテーマを語るうえで、「人口減少」と「東京一極集中」という2つの論点を絡めたことが、「増田レポート」の新しさだったわけだ。とはいえ、「増田レポート」は「東京一極集中に歯止めをかけるべきだ」「地方に人を戻せ」と訴えるものの、東京ひいては日本の競争力をどう高めるべきか、については語っていない。
また、東京への人口の集中が地方消滅の元凶のように論じているが、一極集中が進んだ背景には、一定の経済合理性があることについては触れられていない。国の政策によって無理矢理東京に連れてこられた若者はいないのだ。仕事の数、生活環境など、彼らには彼らなりの、東京に出てきた理由がある。その事実を無視して地方に帰らせるという結論ありきの議論は、やや乱暴な感が否めない。

結局どうすればいいのさ?

僕は地方が人口減少の中で衰退してくのが良いとは思いません。一方で、東京の都市としての強みも、非常に経済合理性から見て有益だとも思っています。

僕なりの解釈を少し述べておくと、地方はあり方を変えていく必要があると思います。そのヒントは、本書の中のこの一文にあります。

その一方で、なぜか日本の市街地の面積は広がり続けている。同じく国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、三大都市圏および政令指定都市を除く全国県庁所在地の人口は、1970年から2010年の40年間で平均2割しか増加していないのに、DID(Densely Inhabited District=人口集中地域)の面積は2倍に拡大したという。

 

つまり、地方では都市面積が拡大し続けてきたわけです。コンパクトシティという言葉も出てきていますが、各地域で都市を集積させることで経済合理性を生み出しつつ、都市や人が住む場所を再構築する必要があるのではないでしょうか。

 

というわけで、今年は地方創生も重要なテーマであり続けるでしょう。どう言う政策が展開されるかも注目ですし、福岡のように起業などを盛り上げる機運がそれぞれの地方で高まるかもしれません。どこに住んでいようと、人口減少の影響は必ず受けることになります。皆さんは地方創生をどう考えるでしょうか。本書を読んで、ぜひ考えてみてください。

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ITサービス市場における競争環境を調べてみた

大晦日ではありますが、ITサービスを提供する企業の売上高と利益率の関係を整理してみました。

インプットにしたのは、「四季報 業界地図2016年版」です。

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そして、整理してみたのが以下のグラフです。

itservice

このグラフから読めるのは、売上高が5000億円ぐらいの規模までで複数の企業が存在しており、利益率はばらついているということです。それは、ITサービス企業と言っても、得意分野やビジネスモデルが違っていることが一つの原因と考えらえます。

例えば、野村総合研究所は証券業や流通業に強く、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は通信キャリアや流通業、エネルギー業界に強くなっています。また、大塚商会は中堅・中小企業に強く、ネットワンシステムズはネットワーク構築を得意としています。

ただ、売上規模が大きくなると、様子が変わってきます。富士通、NEC、日立、NTTデータは利益率がある程度収斂されてきています。これらの企業も得意とする領域はある程度異なるとは思いますが、それでもスケールを追求すると、結構違いが生じにくくなるのではないかと推察されます。

国内のITサービス市場は、今後はやや成長率が鈍化するものの、堅調に伸びていくという予測が出ています。

2016年以降も国内ITサービス市場は堅調に拡大が続くとIDCではみています。しかし、成長率は2015年までほどではなく、2014年から2019年にかけての年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は1.9%にとどまるとIDCでは予測しています。変化するのは成長率だけではなく、提供するサービス内容も同様です。足元での市場成長をけん引しているのは、主にクライアント/サーバーシステムなどを中心とした「第2のプラットフォーム」に関わるシステム構築ですが、今後はクラウド、モビリティ、ソーシャル技術、ビッグデータ/アナリティクス、さらにはIoT(Internet of Things)などの、「第3のプラットフォーム」に関わるITサービス支出が急激に拡大していくと考えられます。この「第2」から「第3」へのシフトに対応できないITベンダーは、淘汰されていく可能性さえあるといえます。

国内ITサービス市場予測を発表

 

移り変わりが早いIT業界だけに、新しいビジネストレンドに対応できなければ、淘汰される可能性もありますね。

野村総合研究所とNTTデータの戦略の違いは、数字に表れている

 

国会議員の育休についてネガポジ分析してみた

年末ですね。久々にデータ分析を実行してみました。

Twitterでデータ分析してみようと思い、テーマとしてこれを選びました。

国会議員カップル「育休とりたい」 制度ないけど計画:朝日新聞デジタル

 

Twitterからデータを抽出

「国会議員 育休」という条件で検索して、その結果を分析します。APIの制限で1500件ぐらいしか取得できないので、結果としては昨日・今日のツイートだけが対象になります。

tweet

結構みなさん、つぶやいてるんですね。まあ、それが想定されたからテーマに選んだのですが。タイムラインをここに貼っておきますので、なんとなく雰囲気はわかるかな、と。

 

頻出語を可視化

つぶやき結果を形態素解析して、頻出語を可視化します。結果はこんな感じです。

wordcloud

「橋下」というキーワードが多く登場してるようですが、どうやらこれが原因みたいですね。

ネガポジ分析もやってみる

ネガポジ分析というのは、登場するキーワードの特性から、その文章がポジティブな感情表現なのかネガティブな感情表現なのかを分析するものですね。今回は、これをやりたかったというのがあります。

早速分析結果です。

negaposi

3/4がポジティブという結果が出ました。これ、どう感じますかね。

ちなみに、このネガポジ分析は以下の記事を参考に行っています。

R言語 – テキストのネガポジ度を分析する – Qiita

比較的簡単にできるので試してみましたが、日本語の文章をポジティブ/ネガティブで分類するというのは、それほど簡単なものではなく、アプローチの仕方によって結構結果は変わります。ニュートラルな文章というのもあるでしょうし。今回示した結果も、あくまで一つの推測手法だと捉えてください。

別のアプローチとして、ヤフーがリアルタイム検索として「感情」を推測していますが、それでみると否定的な感情が多い結果になっています。

yahoo

「国会議員 育休」のYahoo!検索(リアルタイム) – Twitter(ツイッター)、Facebookをリアルタイム検索

 

分析結果はともかく・・・

蓮舫さんや橋下さんは、任期が限定されていて身分が保証されているのに、その間に育児休暇ってさ?という論点なのだと思っています。ただ、海外では総理や経営者も育児休暇を取得しており、どんな形であれ、広くそれを認める形にすれば良いのかな、と思います。

育児というのは、「休暇」とついていますが、ある意味戦争ですしね。。。。生まれたての子供の面倒を見るというのは、本当負担が大きいものです。国会議員にそういう制度が十分じゃないなら、これを機に整えればいいのかな、と。

経済成長を考える時に人口というのはとても重要です。最近読んだ「新・観光立国論」で書いてありましたが、日本が高度経済成長を達成したのは、人口が劇的に増加したためです。人口の増加は経済にとても大きなプラスのインパクトをもたらすのです。

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それでも日本は間違い無く人口減少に向かっていきますし、人口減少の影響は今後いろんなところで表面化していくでしょう。その減少速度を少しでもゆるやかにするためにも、子供を産み育てることが、社会に取ってプラスであるということを理解し、いろんな制度が変わっていけばいいなと思います。

 

今日はこのへんで。

【書評】ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学

ビジネススクールで経営学を学んでも、その後はなかなか知識がアップデートされない、という実感があります。そういう意味では、本書はなかなかない一冊です。経営学に関するいろんなトピックが、最新の論文等を踏まえて紹介されており、ビンビン刺激されました。

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ビジネススクールで学ぶ知識は「最先端」というわけではない

これはビジネススクールを否定するわけではありません。特性上、そうならざるを得ないというのが僕の感想です。

  • ビジネススクールは実務家を生むことを主眼に置いており、比較的基礎を学ぶところ(最先端かどうかは二の次)
  • 学校というスタイルの特性上、タイムリーにアップデートするのが難しい

また、最近は統計によるデータ分析がどんどん発達していますが、経営学にもその考えが強く出ており、「科学的」に理論を証明することが経営学者の関心であり、役割になっているとのことです。

経営学者は、何百・何千・何万、場合によっては何百万という企業データ、組織データ、個人データを使った統計分析をしたり、あるいは人を使った実験やコンピューター・シミュレーションをしたりして、その経営法則が正しいかどうかを確認していくのです。

 

以前、「優秀な経営学者は、会社を経営できるのか?」が議論になったことがありますが、この本を読めば、それは必ずしもイコールでないこともわかるでしょう。

経営学者はなぜ自分で会社を経営しないのか?一橋大学教授が答えたところ堀江貴文氏が強烈なツッコミ | netgeek

 

両利きの経営、コンピテンシー・トラップ、トランザクティブ・メモリー etc.

最新だけあり(あるいは僕が知らないだけなのかもしれませんが)、いろいろ知らない用語が出てきました。本書は特に組織論にフォーカスした本というわけではありませんが、組織論を中心に非常に面白い示唆が紹介されていました。

まず「両利きの経営」というのは、こういう風に紹介されています。

「両利きの経営」の基本コンセプトは、「まるで右手と左手が上手に使える人のように、『知の探索』と『知の深化』について高い次元でバランスを取る経営」を指します。

 

これだけではわかりづらいかもしれませんが、次の「コンピテンシー・トラップ」と合わせて理解することで、僕は納得できました。

この企業の知の深化への傾斜は、短期的な効率性という意味ではいいのですが、結果として知の範囲が狭まり、企業の中長期的なイノベーションが停滞するのです。これを「コンピテンシー・トラップ」と呼びます。

 

つまり、企業経営には「新しいアイデアを求める動き」と「ある領域の知識を深める動き」の両方が必要になりますが、一旦事業として形成すると、その領域を洗練することに注力する傾向が強く出てしまい、新しいアイデアを求める動きが低下する、ということです。

これは、僕は実感としては非常に納得します。どうしても、目の前の仕事をこなしていると、それを大幅に見直したり、新しいアイデアを導入するという思考自体が失われることがあります。そうでなく、積極的に情報を探し求めることも時々やらないと、組織は閉塞的になっていくということです。

トランザクティブ・メモリーというのは、組織全体で知識を高めるのではなく、組織内で「誰がそれについて一番詳しいのか」を知っておくことが、組織全体の知識能力を向上させる、という考え方です。英語でいえば、「Know what」ではなく、「Know who knows that」を高める方が効果的、ということです。

非常に捉え方が面白いなと思いましたし、それが学習効果として高くなるのだとすれば、組織のあり方やコミュニケーションの仕方も、「こうした方がいいかも」というアイデアがわいてきましたね。

 

それ以外にも、最近話題のダイバーシティに対する考え方、最近はあまり聞かなくなったCSRの効果など、様々な示唆が豊富に出てきます。ポーターなど基本的な経営学は学習したけど、、、、という人にとっては、非常に面白く読める本だと思います。

冬休みの読書にどうぞ。

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【書評】新・観光立国論

訪日観光客がどんどん増えている、というニュースが流れていて、政府や自治体も観光戦略に力を入れています。人口が減少し、 GDPを増やして経済的に成長していくことが難しいと言われている日本で、観光によって外貨を稼ぐことができる点で、有力な産業として期待されています。

実際に訪日観光客数は、近年大きく伸びています。

スクリーンショット 2015:12:27 16:07-2

(出所:日本政府観光局「訪日外客数(2003年〜2015年)」)

そして、この本を読むと、まさに観光は日本のGDPに大きく貢献できる可能性があることが理解できるでしょう。

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著者は、イギリス人アナリストで、今は日本の国宝・重要文化財の修復を手がける小西美術工藝社の社長を務めるデービッド・アトキンソン氏。アナリストだけあって、単なる「外国人の目」で見た感想などではなく、統計的なデータを論理的に積み上げ、そこに自分の着眼を加えていくという、まさにプロの仕事でした。ありがとうございました。

ということで、GDPへの効果も以下のように試算されています。

もしも私が提言するように、2030年に外国人観光客8200万人、平均支出金額20万円という目標が達成されれば、波及効果込みで、年間の経済効果は32兆円になってもおかしくはありません。外国人観光客のために観光インフラを整備することで、国内の観光市場も活性化されますので、より大きな効果が見込まれます。

アトキンソン氏、「新・所得倍増計画」を提言 | レジャー・観光・ホテル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

日本のGDPが500兆円程度なので、非常にインパクト高い成長分野であることがわかります。

一方で、日本の置かれている現状として、厳しい面もたくさん指摘されています。

詳しくは本書を読んでほしいのですが、いろいろと刺激的です。冒頭は、日本の経済状況がうまく整理されていて、人口減少による影響や、生産性向上・移民政策・女性活用などが経済的にどのようにインパクトを与えうそうか、端的で分かりやすい内容になっています。

 

今後の経済状況を理解する上で、観光分野というのは間違い無く大きくなります。それを理解するなら、ぜひ読んでおくと良いでしょう。

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