新年ですね。新年早々書く記事ではないかもしれませんが、調べ物をしたので記事を書いておきます。
東芝がいろいろ波乱続きになっていますが、最近言われている一つに白物家電事業の売却があります。
東芝の室町正志社長は28日、産経新聞のインタビューに応じ、採算が悪化している白物家電、パソコンの両事業について実質的に売却する方針を示した。両事業とも、他社との事業統合を検討しているが、合弁会社をつくっても議決権の過半は持たず、東芝の連結決算への影響を抑える。これらにより、平成29年3月期の連結売上高は「5兆円割れの可能性もある」という。5兆円を下回れば、7年3月期以来、22年ぶり。事業規模を縮小し、生き残りを目指す姿勢が鮮明になりそうだ。
白物家電・PCを実質売却 東芝・室町社長インタビュー (産経新聞) – Yahoo!ニュース
ということで、なぜ今なのかを検証してみたいと思います。
白物家電の市場環境
白物家電の市場環境がどうなっているかを見てみます。会社四季報 業界地図2016年版によりますと、
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国内は成熟してきており、海外は成長しています。海外では新興国、特に中国が需要を牽引しています。国内は買い替え需要で一定規模が継続しているのが現状です。
また、国内市場にはダイソンやiRobot(ルンバ)などの海外勢が勢力を伸ばしており、決して楽な市場ではなくなっています。
ここから考えられるのは、国内を主戦場にしていると、厳しそうな感じがありますね。
売上高と利益率の推移
次に、東芝の売上高と利益率を見てみようと思います。事業構成が違うので、全体の売上で比較しても仕方ないですが、おおよその傾向はわかると思います。ただ、不正会計問題があるので、正確な数字でない部分がありますが。
それでも、利益はギリギリのラインも経験しています。
競合との関係も見てみます。家電を含む競合としては、日立・三菱電機・パナソニック・シャープが挙げられます。
利益率でみると、今話題の東芝とシャープが下がってきているのがわかります。一方で、パナソニックや三菱電機は、2012年頃に苦戦していたものの、それからは改善傾向になっています。
東芝における家電事業の位置づけ
東芝はいくつか複数の事業を展開しており、最新の報告書を見ると、6つの事業に分かれています。家電は、「ライフスタイル事業」に分類されています。
それぞれの業績を見てみましょう。(東芝投資家情報(IR):アニュアルレポートより)
電力・社会インフラ事業グループ
コミュニティ・ソリューション事業グループ
ヘルスケア事業グループ
電子デバイス事業グループ
ライフスタイル事業グループ
その他事業グループ
売上高と営業利益を並べてみてみると、家電を含むライフスタイル事業グループだけが赤字になっています。ライフスタイル事業の赤字要因が財務上どこにあるのかは、これ以上詳細にはわかりませんが、売上高の伸び悩みと赤字構造の継続は明らかに課題です。しかも、売上高として締める割合は16%もあります。
そして、東芝は家電の主戦場が国内になっており、海外生産拠点の集約の遅れ、円安の影響でコスト構造が高くなっていたようです。
現在、白モノ家電の7割~8割が、日本向けだ。アイロンやオーブンなど、一部製品を新潟などで生産しているものの、冷蔵庫や洗濯機は100%を海外生産に依存している。が、近年の想定を上回る円安によって、輸入採算が急悪化しており、コスト面で厳しい状況が続いていた。
つまり、市場が成長しているのは海外であるものの、主戦場の比重が国内になっており、売り上げを伸ばすことに苦戦しています。一方で、海外生産拠点・販売拠点を整理できず、高いコスト構造になってしまったようです。
同じような状況だったパナソニックは、早めに事業を整理し、海外で生産を伸ばすとともに、競争力のあるコスト体質を作り出して、業績を回復させています。
「業績回復組の筆頭が、先の薄型テレビ戦争では歴史的大敗北を喫したパナソニック。2014年度は売り上げこそ3%減ですが、営業利益は実に25%増! TV事業の縮小・撤退で得た原資を電池やカーエレクトロニクス、エアコンなどに大注入し、欧米で車載用電池、中国でエアコンが大躍進しています!」
というわけで、いろいろ見てきましたが、調査の過程で経産省の面白い資料を見つけました。少し古いですが、抜粋しておきます(情報家電メーカーの置かれている状況について)。
以下が家電メーカーの利益率の推移です。世界を席巻してきた日本メーカーはどんどん利益率を低下させてきているのがわかります。
そして、低収益になっている原因としてこう整理されています。
複数要因を示されていますが、稼げない領域は整理し、稼げるところにスケールを出し、研究開発費などを投資していくことが求められています。
家電事業を売却することで、売上高も下がりますが、事業としてはスリム化されるはずです。不正会計問題から端を発した東芝は、今回の事業整理を機に、業績を回復させることができるでしょうか。