これを読んで、考えさせられた。
Software is Beautiful:第3回 なぜ日本のソフトウェアが世界で通用しないのか|gihyo.jp … 技術評論社
確かに日本のIT産業は明らかな労働集約型になっている。そもそも業種・業界に係わらず、日本全体でゼネコン体質的な構造が多く見受けられるので、そういう労働集約ビジネスの形が受け入れられやすかったのかもしれない。
ここから脱却する方法なんていうとおこがましいが、転換するために必要な心構えや取組みについて書いてみたい。
まずは定義のおさらい
労働集約とか知識集約について、ここが端的に纏めていたので、ありがたく引用。
これは多くの場合は機械化が難しい分野で、単純労働力の提供が収益の源泉となっている産業。例えば飲食業・人的なサービス業・運送業などが代表例となる。一人あたりの、資本投下額が小さく、売上げに占める労務費の割合が高い。
2.資本集約産業
資本投下を行い、労働力よりも機械や設備の力で生産したりサービス提供をするような産業。メーカーや、大型商業施設などが代表例。一人あたりの、資本投下額が大きく、売上げに占める労務費の割合は下がる。
3.知識集約産業
知的労働力や、研究開発によって会社としての知識や技術力を高めることが収益の源泉となっている産業。投資ファンド、コンサルティング(ファーム)、ファブレスメーカー、製薬会社が典型例。一人あたりの、資本投下額はさほど大きくはならないが、成功している例では一人あたりの収益力は高くなる。
まあ、これらは厳密な境界はないわけだけど、イメージは十分掴めるかと。で、IT産業が労働集約型だと言われるのは、システム規模や作業内容を人月で見積りし、その積み上げで行われているからだ。労働力がそのまま金額になるのだから、その金額を下げることが競争につながる。これは問題視されているし、経産省も人月ではなくパフォーマンスベースでの契約を行うよう促している。
経産省-人月単価脱却に報告書
本題に入る。
知識集約産業になるためにどうするか
結論からすれば、ナレッジマネジメントにもっと投資した方が良い。ナレッジマネジメントというのは、言葉や概念ではわかるが、実際に仕組みを作り、組織に浸透させ、有効に活用させることは難しい。
勉強会を開いてみたものの形骸化していつの間にか開かれなくなり、作った資料は誰にも見られないままファイルサーバの端っこで放置されている。これでは、いつまでたっても作業は効率化しないし、組織に知識は蓄積・昇華されない。
経験論からすれば、やった方が良いよね、とみんな思ってはみるものの、日々の業務で忙しく、知識を纏めたり、共有する手段を構築するまでに至らない。圧倒的に「知識」を醸成することに対する投資が低いのだ。
知識集約産業とは知識の商品化
知識集約産業とは、端的に言えば知識を「商品化」することだと思っている。つまり、ひとつの知識パッケージで、複数の相手からお金を取ることができるか、だ。
例えばテレビのメーカーは、テレビをデザインし大量生産し、多くの客から対価を得ている。これと同様に、知識をデザインし、パッケージングし、複数の客から対価を得ることが理想だ。
自分がある企業の業務システム構築に携わったとする。似たような企業に売れるだろうか。そのとき、ナレッジの蓄積によってどれぐらいコストメリットが出せるだろうか。
システムを構築するときは、相手企業の業界慣習、業務の進め方に始まり、システムの機器設計や採用したアプリケーション、開発方法、プロジェクト管理など、あまたの知識が凝集されている。それを再利用可能なレベルまで引き上げてこと、知識集約産業と言えるんじゃないだろうか。
目の前に業務があるのに、どうすればいいのか
本気で実現するためには、リーダーの先導が必要だ。ナレッジマネジメントは、日々の業務からすると緊急性が落ちる。下のマトリックスでいうところの、左上の象限に該当する。緊急性はスタッフでも判断しやすいが、重要性はトップの決断が必要な場合が多い。つまり、緊急性を要しない作業は、トップがやる・やらないという方向性を示す必要があるのだ。
トップが実務レベルまで加味して、スタッフの日々の業務の中に、ナレッジマネジメントの構築・維持作業を組み込まなければいけない。SECIモデルで示されているようなサイクルを日々回していくための、作業の分担や役割の設定が必要になる。
3MやGoogleのように、20%ルールみたいな制度を作って、日々の業務と切り離した時間を半ば強制的に設けても良いのかもしれない。
それいしても、ナレッジマネジメントの資格とかないのかな。基本知識に始まり、業務設計とかツール活用とか、学ぶべきことは多いしそれなりに面白いのにな。データ分析とかいろいろ今後も注目される分野だろうし、勉強しよ。
野中 郁次郎,紺野 登 東洋経済新報社 2013-09-27
リクルートナレッジマネジメントグループ 日経BP社 2000-11-23